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対談!EC+【第6回】EC生活者って何?‐リサーチから見えてきたEC生活者のイマとミライ-
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対談!EC+【第6回】EC生活者って何?‐リサーチから見えてきたEC生活者のイマとミライ-

博報堂DYグループ内のEC領域のナレッジやスキルを集約し、クライアント企業のEC事業を戦略構築から実装・運用までフルファネル、ワンストップでサポートする「HAKUHODO EC+」がお送りする、EC事情の最前線をさまざまなプロフェッショナルの方とご紹介する連載「対談!EC+」。
「対談!EC+」連載の第6回は、博報堂買物研究所の所長に就任した垂水友紀とともに、〈EC生活者〉―24時間いつでもワンクリックでものが買える購買スタイルを生活に積極的に取り入れている人たち―の最新の行動・意識調査の結果を読み解きました。
※本記事は、本日発表したリリース<博報堂DYグループ「ショッパーマーケティング・イニシアティブ®」HAKUHODO EC+、「EC生活者調査」を実施>の調査結果をもとに、EC生活者について深堀した対談記事です。

経済合理性と利便性を重視する〈EC生活者〉

奥山
この連載では、これまでいろいろな視点でECの現在と未来についてディスカッションを重ねてきました。今回は、ECユーザーの最新動向をデータから紐解いていきたいと思います。はじめに、今回深堀りする、<EC生活者調査>のコンセプトから説明していただけますか。
小田
コロナ禍が始まって以降、リアル店舗に人がなかなか来てくれないという状況が続き、企業のECシフトが大きく進みました。それに適応する形で生活者の購買行動のオンラインシフトも進んでいます。店舗に足を運ばなくても、24時間いつでもワンクリックでものが買える。そういう購買スタイルを生活に積極的に取り入れている人たちを、僕たちは〈EC生活者〉と呼んでいます。では、〈EC生活者〉は具体的にどのような意識でどのような購買行動をしているのか。それを調べたのがこの調査です。

奥山
調査からどのようなことが見えてきたのでしょうか。
三宅
まず、〈EC生活者〉が利用しているECサイトについて調べたところ、どの商品カテゴリーにおいても、大手モール型ECを購入先として検討している人が多いことがわかりました(図1)。ECモールを単なる購買チャネルではなく、「検索しながら買う場所」と考えている人も増えているようです。

【図1】ECで購入する際の検討先

小田
大手モールはあらゆる商品を取り揃えているし、商品の詳細な情報やレビューを参照することができます。それによって、ECモールが情報検索メディア化しているということです。
垂水
例えば、美容感度の高い生活者にインタビューをすると、一日に一度はECモールにアクセスして、ランキングを見たり、新商品の情報を見たりする人が少なくありません。まさに、ECが情報取得のためのメディアになっているということですよね。
三宅
次に、〈EC生活者〉がECを利用する際に重視しているポイントについて見ていきたいと思います(図2)。多かったのが、「送料がかからない」「通常価格が安い」「商品を検索しやすい」「思いついたときに商品が買える」「早く配達してくれる」といった回答でした。この結果から見えてくるのは、〈EC生活者〉は経済合理性と利便性をとくに求めているということです。

奥山
なるほど。「送料がかからない」「通常価格が安い」などは経済合理性を重視した視点であり、「商品を検索しやすい」「思いついたときに商品が買える」「早く配達してくれる」は利便性を重視した視点と言えますね。
三宅
さらに性年代での違いを見てみると、男性20代、女性40代以上の層は割引、クーポン、ポイントサービスなどを重視していることがわかります。この層の〈EC生活者〉は、より強く経済合理性を求めているようです。

【図2】EC利用重視点

垂水
40代以上の女性が経済合理性を重視していることは以前から指摘されていましたが、20代男性にそういった傾向が強まっているのが興味深いですね。若い生活者がコストや時間のパフォーマンスを大切にするようになっているということなのかもしれません。

三宅
もう一つ興味深いのは、〈EC生活者〉の半数近くが、複数の大手ECモールを併用していることです。これは状況に応じてモールを使い分けているということであり、企業側から見れば、複数モールに出品することでユーザーとの接触を増やすことができるということです。
小田
これも、経済合理性と利便性を重視する姿勢のあらわれと言えそうです。複数のECモールを比較してみて、どのモールで買うのが一番得か、送料はどうなっているか、ポイントは使えるかどうか、配送までどのくらいかかるか、といったことを冷静に検討して、そのつど使い分けているのだと思います。

ECでの購入利用経験率が高いのは「書籍・メディア」「電気機器」「ファッション」

奥山
コロナ禍以降、ECモールだけではなく、ネットスーパーでの購買も増えていると言われています。ネットスーパー利用についての調査結果も教えていただけますか。

三宅
ネットスーパーの利用がとくに多いのは20代男性です。やはりコロナ禍以降、巣ごもり消費が増えていると考えられます。
小田
主婦層の皆さんには、生鮮食品などを買う場合は、リアル店舗で自分の目で商品を確かめたいというニーズがあると思います。その点、若年層の男性は、店に行かなくても買えるという利便性の方を重視しているのかもしれません。
垂水
飲料などは、リアル店舗よりもネットスーパーのほうが安い場合もありますよね。それから、飲料は重くて運ぶのがたいへんですから、届けてもらった方が楽という心理もありそうです。ここでも経済合理性と利便性の両方が重視されているように思います。
奥山
「安いものを、より早く」ということですね。では、ECでは具体的にどのようなものが買われているのでしょうか。
三宅
それぞれの商品カテゴリーで、リアル店舗とECでの購入について調べてみました(図3)。それによると、ECでの購入経験があるジャンルは、上位から「日用雑貨」「食料品」「書籍・メディア」「電気機器」「ファッション」でした。この中でとくに「書籍・メディア」「電気機器」「ファッション」は、オフラインよりもECでの購入経験率がかなり高い結果となっています。

【図3】各ジャンルの店舗利用率・EC利用率

小田
書籍や電気機器に関しては、参照できる情報がリアル店舗よりもECの方が多いので、より購買を検討しやすいということがあると思います。一方、ファッションは数年前まではEC化が進みにくいと言われていたカテゴリーでした。オンラインではサイズ感がわからなかったり、着たときのイメージが湧きにくかったりするからです。しかしコロナ禍以降、コーディネート画像を掲載するなどして、着用イメージを伝えるサイトが増えています。また、返品無料サービスや、まとめてオーダーして気に入ったもの以外は返品できるサービスを展開しているECモールもあります。そういった仕組みが充実してきたことで、オンラインで衣服を買う心理的ハードルがかなり低くなったことがファッションのオンライン購入経験率が高まっている要因だと考えられます。

奥山
ECの購買では「失敗したくない」という心理が働くわけですが、それに対して安心感を与えるさまざまな仕掛けができてきているということなのでしょうね。
垂水
ファッションに関しては、ECだけで買えるアイテムを揃えているブランドもありますよね。リアル店舗では大量に売れないけれど、ECでは売れるような商品です。そのような商品を買っている人も多いのではないでしょうか。
小田
例えば、4XLサイズの服のようないわゆるスーパーメンズ向けの商品などは、ネットでしか買えない場合も多いですよね。
奥山
電気機器やファッションなどを購入する際、〈EC生活者〉はどのようなことを重視しているのでしょうか。
三宅
重視しているポイントとしてとくに多く挙げられたのが、「価格が安い」「配送料が無料」「品質が良い」の3つでした。いずれも、生活者のニーズに応える企業努力によって実現している要素と言えると思います。(図4)

【図4】EC利用重視点(電気機器・ファッション)

「ECシフト」が起こっている商品カテゴリーとは

奥山
続いて、EC全体のトレンドと、そこから見えてくる課題などについて、調査結果から検証していきたいと思います。
三宅
今回の調査では、商品カテゴリーごとの「EC購買シェア率」を調べました(図5-9)。これは、全チャネルでの購買額の中でECでの購買額がどのくらいの割合を占めるかを数値化したものです。
小田
「EC購買シェア率」は、流通金額ではなく、生活者の実購買データをベースにしたものです。企業側の視点ではなく、生活者の視点で購買実態をリアルに捉えた数値と言えます。

【図5】各ジャンルのEC購買シェア率

【図6】ボディケア・ヘアケアのEC購買シェア率(性年代別)

【図7】日用品のEC購買シェア率(性年代別)

【図8】飲料のEC購買シェア率(性年代別)

【図9】アルコールのEC購買シェア率(性年代別)

三宅
その結果を見ると、「健康食品・飲料」「化粧品」のEC購買シェア率はそれぞれ約7割、4割以上と非常に高くなっています(図5)。さらに、このEC購買シェア率を性年代別で分析すると、「ボディケア・ヘアケア」「日用品」「飲料」「アルコール」のECシェア率は、女性よりも男性が高いことがわかります。(図6-9)

これらのカテゴリーは、従来は主にスーパーやドラッグストアなどで購入されていたものです。それらのカテゴリーに「ECシフト」が起こっているということです。その要因は、リアルよりもECの利便性が高くなったことにあると考えられます。とくに、リアル店舗よりも高い利便性を提供しているサービスの代表例として、商品が即日配達される「クイックコマース」が挙げられます。

小田
昔でいう「御用聞き」のモデルですよね。近所の酒屋や米屋に電話をすれば、すぐに配達してくれるという。
奥山
以前からあった商品お届けのモデルがDX化したのがクイックコマースとも言えそうですね。「ボディケア・ヘアケア」や「日用品」のカテゴリーのECシェア率が男性の方が高いという結果はどう見ますか。
垂水
おそらく、男性の方がブランドスイッチが少ない傾向があるからではないでしょうか。同じブランドを使い続ける場合は、店頭で商品を検討する必要がないですよね。決まった商品を、よりお得に、より便利に買っているということなのだと思います。

〈EC生活者〉が求める「ゼロマイル購入」

三宅
以上のような結果から見えてくるのは、〈EC生活者〉には「ゼロマイル購入」の欲求があるのではないかということです。自宅から店舗に足を運ぶラストワンマイルの距離をゼロにしたいという欲求です。
小田
ラストワンマイルを配送に委ねることによって、自分は移動せずに買い物ができるという便利さを非常に重視しているということです。しかし、すべての企業が〈EC生活者〉のゼロマイル欲求に対応することは難しいし、リアル店舗からすれば、生活者のラストワンマイルの移動がなければビジネスは成立しません。その課題を解決する方法を考えていく必要があると思います。
垂水
いかに店舗に足を運んでもらうか、ということですよね。おそらく、方向性は3つあると思います。1つは、店舗で過ごすことを楽しいと感じてもらえる仕掛けや、五感に訴えるような仕掛けをつくっていくことです。そこに行かなければ体験できない価値を提供するということですね。もう1つは、ECでは買えないような品揃えを店頭で実現すること。また、それと近い発想ですが、PB(プライベートブランド)を強化して、それを店頭だけで販売していくという方法も有効だと思います。
三宅
もう1つあるとすれば、ECとリアル店舗を連動させることではないでしょうか。例えば、オンラインで商品を注文して店頭で受け取る「BOPIS(Buy Online Pick-up In Store)」というスタイルが欧米では浸透しています。ECとリアル店舗をシームレスにつなげていくアイデアが今後は必要になりそうです。
奥山
いろいろなことを相談できるプロがいたり、話を聞きたい店員がいたりすれば、店舗に足を運ぶ人が増えそうですね。
小田
靴のサイズをしっかり計ってアドバイスしてくれるシューフィッターのような存在ですよね。たんにものを売る場所ではなく、体験価値を提供する場所として捉えないと、リアル店舗に顧客を誘引しにくい時代になってきたということなのかもしれません。

企業と生活者が対話する場としてのEC

三宅
最後に、「ECで商品を買う際に受けたいカスタマーサポートは何か」という質問に対する結果を紹介しておきたいと思います。ECでの購入が進んでいる「日用雑貨」と「飲料」のカテゴリーで〈EC生活者〉が求めているサポートについて聞いたところ、20代には「チャット・電話等で相談したい」という強い要望があることがわかりました。若年層は、対話することで購入行動を支援してほしい、あるいは安心感を得たいという欲求があると考えられます。つまり、「対話購入」へのニーズがあるということです。

これは企業のEC戦略の大きなヒントになるように思います。企業と生活者が対話をしながら「つながるEC」を実現していくことが、ECビジネス成功の1つの鍵となると言えるかもしれません。

小田
利便性や経済合理性に応えていくことには限界があって、行くところまで行けば差別化が難しくなります。しかし、「対話」の内容は商品カテゴリー、顧客層、状況などによってさまざまなので、同質化しにくい傾向があります。人間的対話によって、いわば「血の通ったEC」を実現することがこれからは求められるようになる。それが僕たちの仮説です。
奥山
ECは人と人がつながる場であり、そのつながり方はさまざまであるということですね。
垂水
最近盛んになっているライブコマースなどは、そのつながり方の1つの方法ですよね。誰が商品を売っているか、誰がリコメンドしているかが重視されるという点で、まさに「血の通ったEC」と言えると思います。
奥山
最後に、ECへの取り組みに関して今後の見通しをそれぞれお聞かせいただけますか。
小田
しばらくは、利便性を向上させることがECビジネスを展開する企業にとっての一番の課題になると思いますが、その先にあるのは、「企業と生活者がつながるタッチポイントとしてのEC」だと考えています。〈EC生活者〉との豊かなつながりを実現するための構想から実装までを私たちHAKUHODO EC+が支援していきたいと思います。
三宅
ECの利用法は今後ますます多様化していくと思います。多様性に対応した新しいECの形をクライアントともに見つけてきたいですね。
垂水
メタバースなどの最新技術を使って、EC上でリアルな体験ができるようになれば、〈EC生活者〉はさらに増えていくと思います。合理的なだけでなく、楽しく買える仕組みが実現するといいですよね。
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  • HAKUHODO EC+リーダー
    博報堂 ショッパーマーケティング事業局
    メーカーDX推進グループマネージャー
    2004年博報堂中途入社。大手通信会社を中心に長らく営業職を担当し、2019年より現職。ショッパーマーケティング・イニシアティブのメンバーとして、EC領域に特化した組織横断型プロジェクトチームである「HAKUHODO EC+」を推進する。
  • HAKUHODO EC+
    博報堂 ショッパーマーケティング事業局
    メーカーDX推進グループ ビジネスプラニングディレクター
    2019年博報堂中途入社。マーケティングリサーチ会社や大手ECモールでのキャリアにおけるデータ・ドリブンな事業支援経験をもとに、様々な企業のEC事業戦略策定から施策の実行にいたるフルファネルでのコンサルテーションに従事。
    「HAKUHODO EC+」のメンバーとしても、グループを横断したEC業務対応やソリューション開発を推進。
  • HAKUHODO EC+
    博報堂 ショッパーマーケティング事業局
    メーカーDX推進グループ コンサルタント
    2019年博報堂入社。家電・自動車のコミュニケーション戦略立案や日用品・食品のEC事業戦略立案を担当するなど、幅広いプラニング業務に従事。
  • HAKUHODO EC+
    博報堂 ショッパーマーケティング事業局
    博報堂買物研究所 所長
    2016年博報堂中途入社。化粧品、日用品、飲料、健康食品など消費財のマーケティング戦略、商品開発、サービス開発に従事。
    2022年より現職。「買物インサイト」を起点に、新しい買物を生み出すソリューションを提案・実行する実践的研究所を運営