MaaSで地方の移動問題の解決を目指す 「ノッカルあさひまち」の取り組み(後編)
博報堂とスズキは2020年8月から、富山県朝日町においてMaaSの実証実験「ノッカルあさひまち」を行っています。地域住民に協力を仰ぎ、自家用車を活用して買い物などの移動をサポートすることで、移動する機会を増やし、地域を活性化することが狙いです。実証実験を行うことになった経緯や、具体的な取り組みの内容、今後の展開などについて博報堂の畠山、堀内、常廣、菅原に聞きました。
地域を支えてきた公共交通と共存するMaaS
- 畠山
- プロジェクトを進める上で、自治体や住民の方だけでなく、地域のタクシー会社との連携も重要でした。常廣は何度も黒東自動車商会にも通って信頼関係を構築していました。
- 常廣
- 最初にお話に行ったときは「タクシー会社の需要が奪われてしまうのではないか」と懸念されていました。何回も通って社長と面会する中で、「朝日町は高齢者が多く、この先確実に人口が減っていく。タクシー会社だけでどうにかしようとするのは現実的ではない」というお話をしていただけるようになりました。社長は80歳で自らハンドルを握っており、そういった町の窮状を強く実感していらっしゃいました。
- 畠山
- 信頼していただく上で、ポイントになったのはどんなところでした?
- 常廣
- まず私が福井出身で、同じ北陸の朝日町は自分の地元と状況が重なる部分があり、課題を実感しやすかったです。何とか問題を解決したいと思って、一つ一つの課題について丁寧にお話することで納得いただきました。例えば、紙の地図を貼り合わせて、自分で考えたノッカルの停留所の配置を書き込み、「タクシー会社のシェアを奪うものではないんです」ということをお話しました。
- 畠山
- 黒東自動車商会から交通履歴のデータを開示いただいたのですが、中々そういったことはしていただけません。その交通履歴のデータは、ノッカルの最適な停留所の配置を考える上で大変参考になりました。
地方における交通ビジネスは右肩下がりになっていますが、黒東自動車商会のように長く地域を支えている事業者がいらっしゃいます。そういった歴史を理解し、尊重し、その上で共有するビジョンを作り共創することは、地方でMaaSを進める上で欠かせないと思います。
- 堀内
- 地元の交通事業者に敵対視されてしまうことは今後もあり得ると思うのですが、我々としてはそういった事業者も含めWin₋Winになるような形を提案したいと考えています。例えば、朝日町のケースで言えば、ノッカルの予約受付やドライバーへの通知といったオペレーションを黒東自動車商会にお願いしています。
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博報堂 ビジネスデザイン局 部長(兼)MaaSプロジェクトメンバー奈良県生駒市出身。
2003年入社後、営業職として広告業務などに9年携わった後に、営業職を離れ、従業員組合の委員長として会社運営へコミット。その後、大手通信会社を担当し、2016年人事局に異動。人事制度設計などを担当し、2019年度より社会課題解決と得意先課題解決を両立し、博報堂の次世代収益作りを取り組むプロデューサーとして邁進中。
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博報堂 CMP推進局 部長京都大学地球工学科、同大学院社会基盤工学専攻、修了。
2006年博報堂入社。入社以来、一貫してマーケティング領域を担当。
事業戦略、ブランド戦略、CRM、商品開発など、マーケティング領域全般の戦略立案から企画プロデュースまで、様々な手口で市場成果を上げ続ける。
近年は、新規事業の成長戦略策定やデータドリブンマーケティングの知見を活かし、自社事業立上げやマーケティングソリューション開発など、広告会社の枠を拡張する業務がメインに。
5G/IoTプロジェクトおよびMaaSプロジェクト リーダー
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博報堂 第二プラニング局福井県出身。2018年博報堂入社。
ストラテジックプラナーとして、飲料・不動産・商社などのクライアントを担当。コミュニケーション領域の戦略立案や、商品開発支援、サービス企画まで取り組む。地方出身の強みを生かし、地方MaaS領域の業務にも参画。
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博報堂 CMP推進局2020年博報堂入社。ストラテジックプランニング職として、CMP推進局に配属。ノッカルあさひまちを中心に、複数のMaaSプロジェクトを担当。生活者の移動を中心にした地域/周辺エリアの活性化を現在の興味領域としている。