ヒット習慣予報 vol.151『辛い幸せ』
こんにちは。ヒット習慣メーカーズの中川です。
読者のみなさん、あけましておめでとうございます。2021年一発目のコラムは中川がお届けします。2020年はコロナの影響で様々な生活習慣が見直された一年でした。ヒット習慣メーカーズとしては『カイタイ新書』で念願の初出版もでき、社会の変化もともなって、多くのクライアントさんからお声がけいただきました。ありがとうございます。(引き続き、お仕事のお問い合わせは、お気軽に!)2021年は、そんな新たな取り組みを、ひとつひとつ実現させていきたいです。
さて今回のテーマは、「辛い幸せ」です。「つらい」ではなく「からい」です。毎日に、「辛い」を足して幸せになっている人が増えてきたというお話。まずは、下記のGoogleトレンドを見てください。「辛い」「甘い」「酸っぱい」「うまい」「しょっぱい」という味覚ワードの検索数の推移です。時間と共に大きく変化してることがわかります。その中で「辛い」に着目すると、もともとかなり低い水準でしたが2010年くらいから伸び始め、「甘い」を抜きさり、ついには「うまい」も凌駕して、味覚競争の頂点に躍り出ました。さらに最近は、他の味覚ワードとの差が開きつつあります。
〈味覚ワードのGoogle検索数の推移〉
実はこういう「おいしそうだな」「食べてみたいな」と感じる味覚ワードを広告業界ではシズルと呼ぶのですが、人気のシズル表現は、時代と共に変化していきます。例えば、「濃厚」というシズル表現は、不景気になると伸びると言われています。たしかに、社会情勢が不安定になると、コンビニのスイーツやテレビCMなどで「濃厚」という言葉をよく見かけるようになります。以下の2つのGoogleトレンドもご覧ください。様々なシズル表現の時系列変化ですが、ここ1年ほどで、大きく順位を変えています。具体的には「贅沢」「もちもち」「やみつき」「サクサク」などが増え、「ジューシー」が減っています。瑞々しさや鮮度よりも満足度、食べごたえ、歯ごたえを求める傾向が強まっているのでしょう。
〈シズル表現のGoogle検索数の推移〉
では生活者は具体的にどんな「辛い」体験をしているのでしょうか?SNSを眺めてみると「辛麵」「辛党」「辛活」などという辛い系ハッシュタグが多く見られます。ラーメンなどの麺類だけでなく、韓国料理、タイ料理、中華料理、カレーなど実に多くの「辛い幸せ」を実践しているようです。そういえば、テレビ番組でも激辛のものを芸能人が汗をかきながら食べる番組が人気ですね。
この「辛い幸せ」を語る上で、もうひとつ大事なトレンドがあります。それは「味変」です。味変とは、食べている途中で調味料を加えることで味を変えて2度、3度楽しむ行為。SNSを眺めるとラーメン、どんぶり、カレー、洋食など多岐にわたって味変を楽しんでいる模様が見られます。#味変というハッシュタグを追うと、一緒に#ピリ辛モヤシ #コショウ #スパイス #紅生姜 #ガーリック一味 #黒七味など辛い調味料を加えて味変するケースが多く見られます。Googleトレンドを眺めても、味変という検索ワードが2019年5月頃から上昇トレンドに転じており、直近も大きく伸びているのがわかります。
〈「味変」のGoogle検索数の推移〉
このように「辛い幸せ」を楽しむ人が増えています。そもそもここ数年辛いものを欲するトレンドがありましたがコロナによってそれが加速したのだと考えます。理由の一つはコロナで外出を控える中で少しでも自宅や近所で新たな刺激を得て楽しみたいという願望、そしてもう一つは体を動かす機会が減る中で辛い物を食べることで代謝を高めて汗をかき、体も心もすっきりさせたいという願望です。このようなご時世の中、辛い物を食べることで、多くの人が体調と感情をうまくコントロールしているのですね。
この『辛い幸せ』ですが、これからも多くの人が実践していくことが予測され、そこには新たなビジネスチャンスが広がっています。
『辛い幸せ』のビジネスチャンスの例
■ タイ風、中華風、南米風など様々な国のピリ辛味変をお手軽に楽しめるような新しい味変用調味料セットを販売する。
■ 近所の様々な辛い物を食べられる場所(レストラン、コンビニ、スーパー、商店街など)をレコメンドしてくれるアプリを開発する。
■ いろんな種類のピリ辛料理とペアリングさせたアルコールや清涼飲料のレコメンドや新しい商品を開発する。
など
かくいう私は、激辛は苦手なのですが、ピリ辛は好きで、何でもかんでも七味唐辛子をかけてしまいます。また、最近は謎に(!)タコスにハマっていて、ピリ辛のサルサをたっぷりかけるのも大好きです。でも、ついついいっぱいかけすぎて、結果おなかを壊すことが多いです(笑)。2021年は、辛い物からほどよい刺激をもらいつつ、明るい一年にしていきたいと思いますので、みなさん本年もよろしくお願いいたします。
▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。
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博報堂 統合プラニング局チームリーダー
ヒット習慣メーカーズ リーダーメーカーの商品開発職を経て、2008年に博報堂中途入社。
クリエイティブストラテジストとして、日々お得意先や社会の課題に向き合っている。飲みながらいろんな業界の人と話をするのが好きだが、気づくとお酒に飲まれている。好きな落語家は五街道雲助師匠。