おすすめ検索キーワード
オンライン会議、捗っていますか?  ――オンラインだけでどこまで創発できるか?vol.5
PLANNING

オンライン会議、捗っていますか?  ――オンラインだけでどこまで創発できるか?vol.5

「◯◯の件。今週どこかで1時間程お時間いただけませんか?」
「水曜の午後イチなら空いてるよ。」
「じゃあそこで1時間ください。場所は10階A会議室で。」
「え?オンラインじゃないの??」

業種にもよるかと思いますが、もはや会議はオンラインが前提、オフラインで会議をするには何か特別な理由が必要です。
これは今の状況が特殊であるから、とも言えますが、『どこからでも会議に参加できる』ということはわたしたちにとって大きなメリットです。空いた時間をより有意義に活用することができるはずです。

少し先の未来、わたしたちの働き方はどうなっているのでしょう?
半年前のように当然のこととしてオフィスに集まり、同じ空間で働いているのでしょうか? 働く場所は個々人が選択しオンラインとオフラインを組み合わせた働き方が定着しているのでしょうか?

それは誰にもわかりません。ただ後者のように個々人が働く場所をもっと自由に選択できるようになったとしたら、それは多くの人の人生により多様な選択肢を与えてくれるはずです。

◯働きながら本気で子育てに取組むことが簡単になる。
◯住む場所を自分の好みや家族との関係で選択できる。
◯移動に費やしていた時間を学びの時間に転換できる。
共働き世帯、東京一極集中、生涯学習。これらの変化は今社会が個人が抱えている大きな問題を解決しうる革新に繋がっていくはずです。

みなさん、こんにちは。VoiceVisionの上地です。
VoiceVisionは『ひとりひとりの声から、もっとステキなこれからを』というビジョンをかかげ、ファシリテーションの技法を活用し、様々な共創を企画・促進しています。その活動を通じて大切にしているのは“創発”です。ひとりでは思いつかなかったようなアイデアを多様なメンバーで議論する事で創り出し実現していく、そんな活動を日々進めています。

そんなわたしたちが今抱えているのが、
「どうすればオンラインでのアイデア創発をもっと活性化できるのか?」という問いです。

リモートを取り入れた今の生活がスタートしてはや半年。オンライン会議でもオフラインと変わらずできることと、なかなか難しいことが見えて来ています。“アイデア創発”という領域はその中でもオンラインでの実現がかなり難しい領域かと思います。もしそのアイデア創発までがオフラインと変わらずオンラインで実現できたとしたら。むしろオンラインでの方が創発が捗るとしたら? その先にはきっと、“より多くの人が人生の多様な選択肢を選び取ることができる”世の中が待っているはずです。

まさにそんな想いからスタートした本連載も今回が最終回、様々な“オンライン創発チャレンジ”を振り返りながら、そこから見えてきた“オンライン会議での創発のポイント”についてお話ししていきたいと思います。

■そもそもオンラインでの創発は難しいのか?

「やっぱりアイデア会議はオンラインでは難しいな」多くの人が感じていることではないでしょうか? “共創”をテーマに掲げるVoiceVisionでは様々なカタチでのアイデア創発のプロジェクトを手がけてきました。そんなわたしたちも、やっぱりオンラインでのアイデア創発は難しいと感じています。

いったいなぜ難しいのでしょう?

そもそも創発を活性化するには、参加者ひとりひとりのホンネを“ひきだす”ことと、ひきだしたホンネをぶつけ合い新しい視点を“うみだす”ことが必要不可欠です。(創発を活性化する“ひきだし”と“うみだし”については、VoiceVisionの前連載『データをひきだすファシリテーション術』をご参照ください。)

オンラインではオフラインと同じやり方でやろうとしても、この“ひきだし”と“うみだし”をスムースに進めることが困難なのです。

◯オンラインで“ひきだす”難しさ

ホンネを“ひきだす”には、参加者の心の壁を打ち壊しホンネを出しやすい“空気”を創る事が重要です。しかしオンラインという同一空間にいない状況では、同じ“空気”を共有すること自体が困難です。オフラインで人は自身の周辺全てから“空気” を感じ、そこに対して働きかけています。つまり、縦横360度の接点が存在していることになります。一方、オンラインではPCのモニターだけが参加者とその会の接点となります。モニターサイズにもよりますが、参加者の視界で考えてざっくり縦横5度だとすると、接点のサイズはオフラインに対して1/72×1/72、つまり、実に1/5184にしか満たないことになります。その小さなモニターから発信する情報で“空気”を共有する必要があるわけです。オンライン会議で感じる息苦しさは、このようなところからもきているのかもしれません。

またオンライン会議では、話者の存在がオフライン以上に際立ちます。多くのオンライン会議ツールでは、声を発した人が大きくモニターに映し出されます。何の気なしに出した音で、自身の姿が映し出され驚いてしまう、なんて経験をされた方も少なくないのではないでしょうか? そのような環境で話すわけですから、話す側には「きちんと話さなければいけない」「何かいいことを言わなければならない」という“緊張感”が発生します。これは他の場ではよい方に働くこともあるかもしれませんが、こと創発として考えると非常に大きなマイナスになります。創発で重要なポイントとして何を話してもいいんだと“緊張感”を緩和することが上げられます。何の気のない発言にこそホンネが潜んでいたり、何を話してもいい環境だからこそ他の人の意見に対して発言しやすくなるのです。

そしてそもそも、参加者はモニターの先で何か別のことに夢中になっているかもしれません。同じ空間に集まっていれば、そこには「何か同じ事をするんだ」という強制力が働きます。先ほどの接点の大きさの話にも関わりますが、オンラインではその強制力が非常に弱いと考えた方が良いでしょう。必ずしも全ての参加者がその会に対して意欲的でない可能性もあるわけですから、会に対する“参加意欲”をどれだけ早いタイミングで醸成できるか? もオフライン以上に非常に重要なポイントとなるはずです。

◯オンラインで“うみだす”難しさ

複数人での対話から新しい視点を“うみだす”には、誰かの発言に対して他の参加者がどう感じているのか? を把握し、参加者全体で共有していくことが重要です。例えば、誰かが非常に優れたアイデアを思いつき発言し、他の参加者全員が「いいアイデアだ」と感じたとします。オフラインであれば、その発言に対する周囲のちょっとしたリアクションや表情から、その“共感”を、発言者はもちろん、全ての参加者が瞬時に感じ取ることができます。そうすればその先は、そのアイデアを中心に議論を進めることができるはずです。オフラインの場ではこのような小さな“共感”の共有が、様々なレイヤーで生じているわけです。これは逆に賛同者と非賛同者がいる際にも、会をファシリテートする重要なヒントになってくれます。賛同者と非賛同者の理由を共有し、その相違点を探ることで、次に議論すべき方向性が見えてくるからです。

オンラインではこの“共感”の共有が非常に困難です。オンラインでプレゼンを行った経験がある方であれば実感されているかと思いますが、小さなモニターからでは発言者が周囲の反応を把握することすら困難です。ましてや他の参加者がその他の参加者の反応を把握することはより難しいでしょう。

このようにオンラインでの創発は様々な視点から困難です。その難しさを乗り越える課題として以下の4つを上げさせていただきました。

・ホンネを出しやすい“空気”づくり
・何を話してもいいという“緊張感”の緩和
・全ての参加者の“参加意欲”の醸成
・参加者同士での小さな“共感”の共有

ここからはこの4つの視点からこれまでの挑戦を振り返ってみましょう。

■オンラインだけでどこまで創発できるか?4つの挑戦からわかったこと

【挑戦①】
1時間ポッキリで創発はうまれるのか?1時間ぽっきりアイディエーション

この挑戦は、オンラインホワイトボードツールを活用することで事前ワークとオンラインでのアイデア会議をシームレスに繋ぐという取組です。つまり“空気”づくりを阻害している情報接点の小ささを、時間をうまく活用することで乗り越えようという挑戦です。

結論としてはアイデア創発の場がアイデア共有の場となってしまい、創発を強く活性するには至りませんでした。

オンラインツールを活用することで事前ワークとオンラインでのアイデア会議を物理的にシームレスに繋ぐことには成功したものの、創発のプロセスとして議論を深める設計が足りていなかったのではないかと考えています。“共感”の共有を実現するためにも、事前ワークで抽出した個々のアイデアから参加者同士の共感を生みうるポイントはどこにあるのか? 相反する視点がどのように存在しているのか? を把握した上で議論を組み立てる必要があったということです。一方で、事前ワークによって参加者ひとりひとりの“参加意欲”を高めることには成功しました。結果アイデアの共有に時間がかかりすぎてしまいましたが・・・。

(挑戦①の詳細はコチラ⇒1時間ポッキリで、創発はうまれるのか? ーーオンラインだけでどこまで創発できるか?vol.1

【挑戦②】
建前・理性をアイスブレイク!アイスブレイクしかしないワークショップ

この挑戦は、創発を阻む“心の壁”をオンライン会議ツールの投票機能やGoogleストリートビューといったオンラインだからこそ活用できるツールによってぶっ壊すという試みです。つまり2つ目の課題である“緊張感”を緩和するオンラインならではのやり方を探る挑戦です。

この挑戦からはオンラインならではの創発の可能性を感じることができました。

 

前述の通り、これまでどおりの情報発信やインタラクションでは限られたサイズのモニターから“空気”を共有することは難しいですが、そこにオンラインの様々なツールを活用することでオフラインでは実装が難しい“共通体験”を会のプロセスに組込むことができました。この挑戦ではアイスブレイクとしてそれらの“共通体験”を活用しましたが、議論のプロセスや創発の刺激となるインプットのプロセスに組み込むことで、より多様な創発のカタチを実現できるかもしれません。

(挑戦②の詳細はコチラ⇒建前・理性をアイスブレイク。 ――オンラインだけでどこまで創発できるか?vol.2

【挑戦③】
本当の“あなた”はどれ?色んな顔でワークショップ

この挑戦は、オンライン会議ツールでの各参加者の表示映像(画像)および、表示名を切り替える事による、『表情による“共感”の共有』と『匿名性が生み出す発言の自由さ』どちらがより創発を促進するのか? の検証です。

結論としては、特にある程度限られたメンバー、人数での創発においては、『表情による“共感”の共有』がより重要であることがわかりました。一方で匿名性は仮説の通り自由な発言を喚起しており、特定の状況(不特定多数でのアイデア出しや明確な強弱が存在する他者同士での創発等)において、オフラインでは実現できないような議論の場を創り出す可能性を持っている、ということがわかりました。

この試みからの一番の気づきは、課題④(参加者同士での小さな“共感”の共有)が創発において重要度が高く、それを実現するための表情の開示はオンライン創発を実現する上で非常に重要だ、ということです。現状表情の開示がその最も簡単な方法ですが、挑戦①や挑戦②のようにオンラインツールを活用することで “共感”共有の新たな“共通体験”を設計することもできるかもしれません。

(挑戦③の詳細はコチラ⇒本当の“あなた”はどれ?  ――オンラインだけでどこまで創発できるか?vol.3

【挑戦④】
想定内を超えろ!あえて雑談ワークショップ

この挑戦は、雑談の効用を整理し、オンラインでのその可能性を探る試みです。リモートワークを導入する中で「雑談が減っている」「雑談の場からアイデアのヒントが生まれていた」と感じる機会も多いのではないでしょうか? その漠然とした“雑談”の価値を整理しオンラインで効果を発揮するためのポイントを抽出しました。

整理した雑談の効用は“発言しやすい場づくりができる”“ディスカッションの自分ごと化を促進する”“本題に対する新たな発想の視点を獲得できる”の3つです。改めて挑戦を振り返ると、確かにこれらの効用は雑談が持っているものでありオンラインでも活用可能です。しかし今回の挑戦を通じて、オンライン創発における雑談の一番の価値は、“オンラインで盛り上がる議論のデモンストレーションになる”ということのように感じました。今回の全ての挑戦を通じて感じた事は『わたしたちはオンラインでの議論に対してまだまだ不慣れである』ということです。携帯電話(PHS?)が普及し始めた頃、わたしたちは今程それを使いこなせていたでしょうか? そういう意味で今わたしたちは、テーマを問わず公私を問わず、オンラインでの議論に数多く参加することが必要です。特に創発という視点で考えると、ビジネスの会に限らず、より自由に気軽に、参加者が発言できるオンラインでの議論に参加すること。そこからは、これまでのオフラインでの常識に捕われずオンラインでの創発を実現するための、多くのヒントを得る事ができるのではないでしょうか?

(挑戦④の詳細はコチラ⇒想定内を超えろ!あえて雑談ワークショップ  ――オンラインだけでどこまで創発できるか?vol.4

■明日から使えるオンラインでの創発のポイント

計5回の連載は、いかがだったでしょうか?
より自由に働き方を選択できる世の中に向けて、『どうすればオンラインでのアイデア創発をもっと活性化できるのか?』という問いに発し、あえてオンラインだけでの創発に挑戦してきました。

そこからはオンラインを活用したこれからの創発のあり方や、いくつかのオンラインでの創発のポイントが見えてきました。ここではオンライン創発4つの課題に対して、明日から使えるオンラインでの創発のポイントを簡単に整理して連載の結びとさせていただきます。

◯ホンネを出しやすい“空気”づくり
⇒オンライン会議での限りある情報接点を最大限活用するために、会前後の時間を有効活用する。

オンラインツールを活用することで会でのディスカッションと事前事後のワークをシームレスに繋ぐ事が可能になります。事前ワークをうまく設計することで、参加者とより深く情報を共有し、事前での各参加者内での思考を促すことで、会での創発の密度を高めることができます。また今回の挑戦では実戦していませんが、事後のワークも含め創発のプロセスを少し長期的に設計し、創発のプロセスを蓄積しながら活性化することも、オンラインツールを活用すれば実現できるのではないでしょうか?

◯何を話してもいいという“緊張感”の緩和
⇒家から参加しているという状況を活用し、適度な“公私混同”を設計する。

家にいるということは多くの人にとって、よりリラックスした状況にあると言えるのではないでしょうか? その状況をうまく活用し、アイスブレイク等に個人的な趣味や普段の生活を引き出し、全体で盛り上がるようなセッションを組み込んでみてはいかがでしょう?

◯全ての参加者の“参加意欲”の醸成
⇒“参加意欲”が高い人にフォーカスしたチームビルディング。

SNSの浸透等で個人の想いを発信/実現しやすい世の中になってきています。その時、特定の価値を創造するチームは必ずしも“社内”に閉じて考えなくてもよくなっていくのではないでしょうか? より広く社会を俯瞰し、チームとして実現したい方向性に賛同する人(“参加意欲”が高い人)をチームに巻き込む事ができれば、そもそも“参加意欲”を高めるという発想は不要なのかもしれません。

◯参加者同士での小さな“共感”の共有
⇒まずは全員ノーミュート・マルチスクリーンで参加。表情(その裏にある感情)をお互いに可視化する。

オンラインでの議論は感情がこもらず無機質なものになりがちです。その状況は実はかなり発言しにくいものです。発言に対して大きく頷く人、少し怪訝な顔をする人がいてくれることは、話者に勇気を与え会全体の抑揚を生み出します。まずは自分から、少しオーバーに感情をモニターに投げかけてみませんか?

■さいごに

今まさにわたしたちの“働く”ということは大きく変革しつつあります。それは単にリモートか否か? ということではなく、“個を起点とした自由な価値創造への転換”なのだと思います。VoiceVisionではこれからも、そんな素敵な転換に向けて、オンラインを活用した創発の挑戦を続けていきます。ご興味ある方はお気軽にご連絡ください♪

sending

この記事はいかがでしたか?

送信
  • (株)VoiceVision 取締役
    1979年神奈川県横浜市生まれ。京都大学でコミュニティ、パーソナルネットワークの研究に取り組み。2005年に博報堂入社。ブランディング、コミュニケーションプランニング、商品開発、コンテンツ開発、コミュニティマネジメントなど、様々な領域の業務を通じ、人の思いと繋がりの大切さを痛感し、行きついたのが「共創」。
    2013年VoiceVisionの設立に参加。オープンイノベーションによる新領域開拓、多様なステークホルダーを巻き込むコミュニティの設計、共創人材の育成、共創型組織への構造改革を得意領域に、共創による価値創造のパートナーとして様々なコミュニティ/プロジェクトのプロデュース/ファシリテーションを手掛ける。