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想定内を超えろ!あえて雑談ワークショップ  ――オンラインだけでどこまで創発できるか?vol.4
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想定内を超えろ!あえて雑談ワークショップ  ――オンラインだけでどこまで創発できるか?vol.4

増える会議、減る雑談?

こんにちは。VoiceVisionの櫻井です!
VoiceVisionは「ひとりひとりの声から、もっとステキなこれからを。」というビジョンをかかげ、ファシリテーションの技法を活用し、生活者との対話から創発をうみ、マーケティングに活かす会社です。単に意思決定を促進するワークショップを実施するのではなく、そこに創発を促して、一人では達成しえない未想像の域に、複数の思考を掛け合わせることで辿り着くことを目指しています。

そんな、これまで数々のワークショップを開催し、ファシリテーターを務めてきた私たちですが、オンラインでの会議は「やりづらさ」を感じることがあります。
たとえば、
「個別での会話が交わせず、議題から脱線した話をしづらい」
「すべて全体での議論にならざるを得ないので、的を射た発言のみ求められるように感じる」
「画面越しで、誰かの話に対して同調や共感のリアクションを見せづらい」
などなど。

みなさんもオンライン会議で目に見えない壁を感じることはないでしょうか?
今回はそんな見えない壁を乗り越えるために、オンラインでの創発に「あえて雑談」を取り入れることにチャレンジしました! 

【仮説】

今回は「時間や動作など制限の多いオンラインでも、オフライン同様に“雑談”を取り入れることでより創発が拡がる」を仮説に設定しました。

検証を行う前に、VoiceVisionのこれまでのワークショップや会議でのファシリテーション経験から「雑談」の効用を整理すると

①    発言しやすい場づくりができる

②    ディスカッションの自分ごと化を促進する

③    本題に対する新たな発想の視点を獲得できる

の3つが挙げられます。
今回の実験では、オンラインワークショップを実施し、3つの効用をオンラインでも発揮するにはどうすればよいかを検証していきます。

それでは、実験開始!

【実験概要】

●本題:「これからの“アソビ”について考えよう」

●進め方:1.5時間の中で、前半は雑談、後半は本題のディスカッションを実施

●ワークショップの流れ:
1.    概要説明(本題を共有)            =10分
2.    雑談タイム                  =30分
3.    本題のディスカッション
・「アソビ」の課題と可能性               =25分
・これからの「新しいアソビ」とは?         =25分

【実験過程】

今回のワークショップは前半が雑談タイム、後半が本題を設定してのディスカッションとして分けて行い、雑談の効用を検証しました。
突然「それでは雑談を…」とぎこちない形ではじまらないよう、「最近、どんな週末を過ごしていたか?」という身近な問いから雑談をスタートしました。
このとき筆者は話を膨らませながら「メモ」をとっていました。

(以下、僕の心の声も入っています)

「週末は1万歩歩いています」(ふくらはぎパンパンなりそう、すごい…)
「家の中でワークアウトしてます」(音楽にあわせて踊るやつ、僕もやってます!)
「かばんづくりに飽きて野菜づくりしています」(本格的…!)
「家族で車の購入を検討しているのですが、今のキャンプ事情ってどうなんですか?」(たしかに気になる)
「遠出できない状況でもキャンプ好きは、デイキャンプに近いピクニックをBBQなどできる公園で家族と楽しんでますよ!」(ステキ)
「外に出ず家の中でも結構楽しめます!友だちやオンラインで知り合った人とのコミュニティ上で、ボードゲームや推理ゲームをするのにハマっています」(今のオンラインのボードゲームってこんなリアルなんですか!?)

人の多いところに行くことに抵抗を感じるご時世ですが、どなたも「楽しみの見つけ方」がとってもユニークで、思わずメンバー同士で質問をしあう場面も多くみられました。

前半は雑談を進めつつメモを取る方法で進めていましたが、そのまま続けると「場づくり」だけで終わってしまいそうな雰囲気に…。
そこで雑談を無駄話で終わらせないために、途中から筆者も「本題を考える上でのヒント」を得られそうな話があれば、その話について深掘りする質問をなげかけました。

たとえば「週末は何をして過ごしているか?」という質問への回答から派生して、
「家族、特に子どもたちと家で過ごされている方はどんなことをしてますか?」
「リアルな場で友だちと会うことが困難なご時世ですが、他の人とどうつながっていますか?」
「そんな今の過ごし方・楽しみ方で“不満”に思うことってありますか?」

となげかけてみました。すると、

「家で過ごす時間が長くなると“昔遊んでいたおもちゃ”を引っ張り出して子どもたちと一緒になって遊んでいる」
「子どもと遊ぶときは“楽しい+学びがある”ことを大事にしたい」
「オンラインコミュニティで、初めましての方とつながることもあり、人とのつながりは家にいても感じられている」
「最近の子どもがハマっているゲームも大多数とオンラインでつながるもので、子の自分を律する心に、参加するコミュニティの大きさが見合っていないように感じて心配」

など自分や家族との生活上の変化や課題が明かされ、自然と雑談は“意見交換”へとシフトしていきました。

ここから本題のディスカッションに入ります。
本題は筆者の最近の課題感から、人のつながりや生活が一層オンライン化していくこれからの時代において「私たちのアソビはどう変化していくのか」を設定しました。

先ほどの雑談メモをメンバーにシェアした状態で「アソビの課題と可能性」についてディスカッションを進めました。

 雑談タイムに交わされた「オンラインで完結する人とのつながり」や「子どもとアソビの関係」をもとに話は進み、アソビには楽しさに加えて、学びやつながりをうみだせるものが、これからも大事にすべきアソビであるという意見や、アナログな昔もデジタルな今も変わらないことなのではないか、という意見が出たところで、ワークショップは終了しました。

【検証:各効用をオンラインでも発揮するにはどうすればよいか?】

今回の仮説は「時間や動作など制限の多いオンラインでも、オフライン同様に“雑談”を取り入れることでより創発が拡がる」でした。
仮説検証にあたり、実施したワークショップの様子から「雑談の効用」をオンラインでも発揮するにはどうすればよいかを3つの効用からみていきます。

■    効用①「発言しやすい場づくりができる」

今回はアイスブレイクをせずとも、テーマ設定がないゆえに、発言しやすい和やかな雰囲気をうみだすことが容易にできました。また会全体の雰囲気を感じとりにくいオンラインでも、全員がその雰囲気を感じられるものにするにはポイントがありました。それは、ファシリテーターが、全員に共通して気軽に話し出せる話題から始め、積極的に話せる人よりも「話を切り出しにくそうにしている人」に話を振ることです。全員が話す時間をある程度均一に揃えることを意識すると、参加者全体の「話しやすさ」をうみだすことがオンラインでも可能になると考えます。

■    効用②「本題のディスカッションの自分ごと化を促進する」

雑談の途中で、参加者自身の話をする場面や、参加者同士で質問しあう場面が多くありました。雑談によって自分の話したいことや聞きたいことを自由に話せる機会をつくることで、話の中心に自身の経験や体験、興味関心を据えて話すことができます。また雑談の内容を本題に近い話題を設定することで、一見その後の本題のディスカッションでも、「私の場合は…」と話のテーマを自身に引き寄せて考えることができます。このときファシリテーターは、参加者自身の話を引き出すように話の振り出しや質問を投げかけることで、制限の多いオンラインであっても参加者の中で本題を「自分ごと」として捉えてもらった上でディスカッションを進めることができます。

■    効用③「本題に対する新たな発想の視点を獲得できる」

雑談の中で本テーマのヒントを得られそうな発言に対して、深掘りするように質問を投げかけました。参加者ご自身の経験・体験から語られる雑談をさらに深掘りしたり拡げたりすることで、「最近の楽しみ」「昔と今のアソビ」「大人と子どものアソビ」「オフライン・オンラインのアソビ」「アナログ・デジタルのアソビ」「自分と家族あるいは他者とのアソビ」といったように、発想の拡がりがみられました。
約1時間程度のディスカッションでここまで発想を拡散させられたのは、“雑談”をきっかけに、個々の課題、生活変化、価値観、経験、体験など多くの“発想の切り口”を得ることができたからであると考えます。的を射た発言を求められ発想の切り口が狭くなりがちなオンラインですが、雑談によって発想を拡げることが可能であると言えます。

これらのことから雑談の3つの効用は、オンラインでの創発の場においても有効であると言えます。

さらに新たな発見もありました。それは、雑談は「参加者の視点から本質的な課題をひきだせる機会」になりうるということです。
たとえば今回の雑談では、はじめに「週末の過ごし方」について話をした際に、本題を考えるヒントを得られそうな雑談の中の話題に対して深掘りを行いました。すると、「子どもと遊ぶときは楽しい+“学びがある”ことを大事にしたい」や「大多数とつながれるオンラインコミュニティを通じた遊びが、子の自分を律する心に見合っていない」など、参加者自身の経験上で感じられた課題をひきだすことができました。
これらのことから、たわいもない会話と思われがちな“雑談”ですが、実は「他者のリアルに迫る行為」であると言えます。特に今のような生活環境の変化が激しい時代は会議など人とつながれる時間に少しの雑談を加えるだけで、生活変化のリアルをききだす絶好の機会になると感じました。

上記の結果より「時間や動作など制限の多いオンラインでも、オフライン同様に“雑談”を取り入れることでより創発が拡がる」と言えます。
また今回の実験からは壁の多いオンライン会議こそ「雑談」が有効であり、雑談の設計次第ではより創発を拡げられると考えます。

【雑談の効用をオンラインでも発揮するための4TIPS】

ただし、創発を拡げるには注意が必要で、意図なく話題を振るだけの雑談は無駄話にとどまってしまいます。雑談のあとの創発を拡げるには“雑談を設計する”ことがマストです。
ここでは今回の実験から得られた、雑談の効用をオンラインでも発揮するためのコツを紹介します。

<雑談の効用をオンラインでも発揮するための4TIPS>

①    “発言しやすい場づくり”をするために、「発言機会」を平等につくる
→発言の自由度が高く、話題や話者に偏りが生まれやすいため、1人あたりの発言時間や機会を均等にする工夫が必要です。たとえば、全員に発言してもらうために発言時間は1人1分と決めて発言してもらうことや、ファシリテーターが「〇〇さんはどうですか?」など積極的に会話に巻き込むことが大切です。

②    “ディスカッションの自分ごと化を促進する”ために、雑談は本題に関連する話題からはじめ、参加者自身の経験・体験など創発に活きる話をひきだす
→創発の場やアイディエーションを行う場では、テーマに対して「これまで」と「これから」を考え、その上で「課題」や「可能性」を発想するワークフレームを活用することが多くあります。
今回の雑談のはじめ方も「最近の週末の過ごし方・楽しみ方(今)は?」→「昔(これまで)の過ごし方・楽しみ方は?」→「これからの過ごし方・楽しみ方は?」というように、時代を行ったり来たりしながら、話題を拡げることを意識して進行しました。
たとえば、アイデアを出し合う場などでは「これまではどうでしたか?」「現在・これからはどうなっていくでしょう?」とファシリテーターが“時世”をコントロールするように話題を振ることが有効です。

③    “本題に対する新たな発想の視点を獲得する”ために、「雑談のメモ」を残し、本題の“発想の切り口”としてシェアする
→雑談を本題に活かすために、雑談のメモを取り、内容を参加者とシェアできる状態をつくります。本題では雑談で話していた参加者自身が感じる課題などを“発想の切り口”に、アイデアを拡げていくことが可能になります。

④    “参加者の視点から本質的な課題を見つけだす”ために、「ききだし」を行う
→雑談からテーマの本質に迫るための気づきを得るには、雑談とテーマが重なり合う要点に対して「ききだし」を行うことが大切です。
たとえば「最近、こんなことにチャレンジしています!」という参加者の実体験に対して、「チャレンジしようと思ったキッカケは何ですか?」「どんなところに魅力を感じますか?」など話をききだすファシリテーションが、本題を考える上でのヒントを得やすくしてくれます。

何かと壁を感じていたオンライン会議ですが、今回の実験から「場づくり」や「創発性を高める」ことに“雑談”が有効であり、淡々とした報告会のような会議から脱するカギになりうると感じられました。今回の結果を活かし、淡々と進むオンライン会議を“新たなアイデアがうまれる創発の場”へと変えていけるとよいですね!
発想であふれる有意義な会議を増やすために、まずは「雑談」を取り入れてみてはいかがでしょうか。

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  • (株)VoiceVision コミュニティ・プラナー
    宮城県生まれ。同志社大学 商学部 瓜生原ゼミにて、ソーシャルマーケティングによる「日本の臓器移植に関する意思表示率向上」を目指す活動に携わる。大学時代に醸成された“社会への想い”から、より良い未来をつくるべく、自分や他者の世の中への気付きを共創によって“社会の気付き”にしたい想いで2018年にボイスビジョンへ。
    あらゆる立場・人・意見を交差させて発見を増やせる場、同じ志をもった熱いコミュニティづくりを目指し、日々勉強・奮闘中。

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