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建前・理性をアイスブレイク。 ――オンラインだけでどこまで創発できるか?vol.2
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建前・理性をアイスブレイク。 ――オンラインだけでどこまで創発できるか?vol.2

オンラインアイスブレイク、どこまでブレイク!? 

「あらためて、アイスブレイクの重要性を感じられたね」。100回を超える生活者との共創ワークショップを実施してきたVoiceVisionメンバーから、トライアル後、最初に言ってくれた感想でした。

“生活者データ・ドリブン”マーケティング通信をご覧のみなさま、こんにちは。VoiceVisionの濱地です。
わたしのいるVoiceVisionは「ひとりひとりの声から、もっとステキなこれからを。」というビジョンをかかげ、ファシリテーションの技法を活用し、生活者との対話から創発をうみ、マーケティングに活かす会社です。単に意思決定を促進するワークショップを実施するのではなく、そこに創発を促して、新しいアイデアを生むことに重きを置いているので、オンラインで働くことが当たり前となりつつある今、オンラインでのワークショップの創発の可能性を日々探り、実践しています。

と言いつつも、じつは2回目の連載を担当する私はPR会社からVoiceVisionへ3ヶ月前にジョインした、まだ中途新人的存在です。そのため、今回の記事では、私自身がプロのファシリテーターであるVoiceVisionメンバーの素顔を知る意味でも、オンラインでのアイスブレイクをテーマに実験してみました。

仮説はずばり「オンラインならアイスブレイクはより効果的にできる」

リアルよりもオンライン会議だと、仕草や表情の機微を察することが難しく、なかなか相手の懐へ入りづらい。みなさまもお感じになられているのではないでしょうか? だからこそアイスブレイクで相手との距離を縮めることは、リアルの場よりもオンラインの場の方が必須かもしれません。

VoiceVisionでは、リアルな場におけるワークショップで、アイスブレイクを大きく2つの型に分けています。それが、自己紹介型と共同作業型です。アイスブレイクとは、ご存知の通り、人と人との間にある氷や壁を壊すことで、より効率的にワークショップで意見を吸い上げるようにすること。その中で自己紹介型とは、読んで字の如く、自己紹介をして、ニックネームを決めて、今日の参加目的や普段のことを話す・・・といった流れが多くあると思います。こうして相手を知ることで、はじめましての方々同士の間にある氷を割っていくのが自己紹介型。一方、共同作業型は、簡単なゲームなどを通して、場をあたためて氷を溶かすタイプと位置付けています。

さて、前置きが長くなりましたが、本題に入っていきます。仮説は見出しの通り、「オンラインならアイスブレイクはより効果的にできる!」です。それでは実験スタート。

【実験】
●テーマ:「アイスブレイク4連発」
●進め方:進行役(ファシリテーター)が4本のアイスブレイクを進行し
     各々のアイスブレイクを最後に議論・検証する形式
●使用したツール:
           汎用性の高い一般的なWeb会議ツール
●会議の流れ:
⓪Web会議ツールをOPEN
①ルール説明                     = 3分
②自己紹介型アイスブレイク1 各2分×7名 +α   =20分
③自己紹介型アイスブレイク2 各2分×7名 +α   =20分
④共同作業型アイスブレイク3           =15分
⑤共同作業型アイスブレイク4           =10分
⑥感想ヒアリングTIME                                     =22分

対面式のワークショップでは、まずありえない流れです。アイスブレイクしかしていません! どれだけ壊すの? って感じですが、あくまで実験なので、今回はVoiceVisionメンバーとじっくり1.5時間、自己紹介型2つ、共同作業型2つを実施しました。

ちなみに、メンバー同士はもちろん顔馴染み。そのため一見するとアイスブレイクは成功しやすく見えるかもしれませんが、知っている間柄だからこそ、知らないことを聞き出すのはかなりハードルが高いわけです。さあ、それではブレイクしていきましょう。1つめのアイスブレイクです。

アイスブレイク1/「最寄駅から自宅まで、あなたの通勤路を教えてください!」

まずは自己紹介型のアイスブレイクの一発目です。オンラインならではの企画として最初に考えたのは、Googleのストリートビューを使っての自己紹介アイスブレイクです。アフターコロナ以降の働き方を今後考える際に「出社」を社員の通勤路から改めて捉え直すことにも意味があるとも考え、このワークを1つめに設けました。

最初にファシリテーターである私がデモを2分で行います。最寄駅に人アイコンをドラッグして落として、あとは、そのままストリートビュー上でどんどん進んでいってご自宅までの道中を紹介するというやり方。それをオンライン会議の画面共有で参加者に共有するというシンプルな手法です。ひとり3分。「最寄駅から自宅まで、あなたの通勤路を教えてください」レッツトライ。

結果、これは相当に盛り上がりました。オンラインでしかできないストリートビュー共有。話をする方は、商店街を通ったり、海沿いを通ったり、ついつい寄り道したり、バスガイドみたく説明したくなってくる。また話を聴く側としても、ちょっとした観光気分を味わえる。そして随時質問も受けつけることで、私のみならず勝手知ったるVoiceVisionメンバー同士でも、知らなかった日常が見えることで、より個性が鮮明になる。この手法はチームビルディングのワークとしても活用できそうです。

でも問題がありました。それは時間です。紹介側も聴く側も、これ、かなり面白いんです。そうなると、ひとりの自己紹介の時間が10分にもなる人もでてきて、なかなか家に着かない。近所の名店とか子供の学校とか、それくらいの寄り道はいいけれど、いつも帰りに牛乳を買うお店の紹介とか、仕舞いには通勤路なのに迷うとか・・・そんな人も現れます。なので、チームビルディングのワークにも活用できそうですが、もはや飲み会ネタかもしれません・・・。

結論、アイスブレイクとしてはブレイクできるけど、時間配分に要注意なコンテンツでした。

アイスブレイク2/「自宅の本棚見せてください」

続いて、これもオンラインでしかできない企画として考えた自己紹介型のアイスブレイクです。リアルの場でも好きな本を教えてください、なんて類いのものはありますが、オンラインなら自宅の本棚を見せることができる。しかも本棚は人の内面を映すものと言える存在ゆえに、これは正直、アイスブレイクのコンテンツの中でも本命とふんでいました。

ルールはこうです。自席から本棚までカメラオンのまま移動。本棚を写してから、その中で至極の1冊を取って説明してもらう。ポイントは本棚だけでなく、本棚へ移動する際もカメラをオンにすることで、本棚以外の日常を垣間見れる可能性も考えていました。

結果は、残念ながら失敗でした。まず、本棚への移動をすることで、カメラを落とすなどの事故が発生・・・。また本棚の外観はみえるけど、本のタイトルを見せるには、カメラを寄せないといけないこともネックで、結局じっくり説明できなくなってくる。なので、ちょっと苦しいものでした。

ただし、おすすめの1冊を本棚から見せてもらうという流れはありでした。1冊のピックアップだけでも紹介した本が別の参加者の本棚の中にもあったりして、参加者間で共通の思考性をみつけられて、はじめましてでも参加者の普段の思考性は確かにわかる。なので結論は、アイスブレイクとしては改良の余地が多々あり。でも時間配分はコントロールしやすく、本棚を見せるまでの動線の確保をうまくできれば、活用可能という結論に至りました。

アイスブレイク3/「シバリしりとり」

次に行ったのが共同作業型のアイスブレイクの「在宅生活になって取り入れた、よかったこと」をシバリにした、しりとりです。ルールは簡単。挙手性の一抜け方式(回答できたらアガリ)で、家の中にあるものを持ってきて回答するというもの。しかもしりとりと言えど、単語の前に形容詞をつけてもOKにして、シバリがある分、回答しやすいものにしました。はてさて、どうなるか。

結果は、大盛況かつオンタイム進行! しかも生活がよく見えて面白い! でした。これはずばり即活用できます。まず、いいところが、参加者が家の中を走り回るようになるのです。簡単なゲームなのですが、先に回答をされると、残された参加者は焦ります。それが家の中を走るようにするのですが、そうすると画面から当然参加者が消えます。その際にオンラインゆえに画面の前にいなくちゃいけないという気持ちから解放されます。すると参加者の心にユトリが生まれて、焦りから来る緊張とあいまった状態をつくることができる。これはアイスブレイク後のワークにとって、いい場作りになります。

また家の中のものを持ってくることで、普段の生活がよく見えて、共通項も発見しやすい。例えば、今回の回答の中に「料理」という回答がありました。その際に、包丁とまな板を見せながらメンバーが回答するわけです。絶対にリアルのワークショップでは見えないものが、オンラインだからこそ見えてくる。「こだわりの包丁を使うほど、料理が好きなんだ。私も料理はこだわるのよ」といったようにです。これは、はじめましての相手の場合なら尚さら思考性が理解でき、共通項の発見もできてきます。

しかも、わずか10分でできるので時間配分の意味でもアイスブレイクとしてはかなり優秀といえます。ただし、シバリのテーマは生活と関係するところに設定しないと進行が難しくなる点だけ要注意です。

ちなみにVoiceVisionメンバーのしりとりは、
「衣類のしみとり」▶︎「料理」▶︎「料理を極めたら低温調理機にいきついた」▶︎「多肉植物のびました」▶︎「炭酸水」▶︎「イラスト再開」
でした。もはや回答? 文章になっている? 方もいますが、一応許容範囲ということで。

アイスブレイク4/「匿名アンケート」

これは現時点では、ある特定のWeb会議ツールのみで完結できる手法です。よくウェビナーの最後などでアンケートがあると思いますが、それと同じ方法を活用します。ウェビナーなどでは事後アンケートで活用するWeb会議ツールの投票機能を、アイスブレイクに活用してみました。方法はこうです。完全に匿名アンケートにして、質問を6つ用意。1分以内に回答してもらい、結果を即時共有する。ただただそんなルールでトライしました。

アンケート内容は、回答しやすいように、在宅生活に関することと、ちょっと笑いを誘うものを交互に回答するような構成で実施。Yes Noで回答するものとしました。

結果は、匿名性ゆえに本音が聞けてカスタム次第で十分にアイスブレイクに活用できる、でした。Yes Noの二者択一はサクサク回答できて、おそらく20問くらいまでは問題なくできます。そして回答後、結果の即共有を行うことで、会の参加者全体がどのような気持ちでいるのかをファシリテーターも参加者も測ることが可能。場の空気を即座に掴むことができ、今後の進行時の共通話題にも活用できるのでかなり有効といえます。それでいて、時間管理もしやすい。なので、このアイスブレイクも◎でした。

ちなみに匿名の場合オーナー自身も誰がどう回答したかはわかりません。なので今回の場合、3kg太った人がこの中にひとりいたようですが、それが誰なのかは本当にわかりませんのでご安心ください。

【結果と発見】

今回の結果はこうなりました。自己紹介型はブレイクのしやすさが高まるものの時間配分がリアルの場よりも難しく、共同作業型の方が時間配分が楽で、ブレイクのしやすさも企画次第でうまくできるといえます。

オフラインの場合、アイスブレイクはある種盛り上がれば、あとは対面ゆえにカバーできるので、まずは合格と見がちですが、オンラインでのワークショップでは、前述の通り、微妙な参加者の変化を把握しづらいのでカバーしづらく、掴みがかなり重要になります。掴み切れないと、ズルズルと実りの少ないワークショップにすら簡単になってしまう。

でもオンラインには、オンラインだからこその武器がたくさんあります。WEBを活用したり、モノで自分を表現したり、その武器をうまく活用することでリアルの場を超える盛り上がりをうむことは可能。とくに共同作業型のアイスブレイクであれば、仮説の「オンラインならアイスブレイクはより効果的にできる」は断言できます。むしろ、この後に続くワークのテーマと紐づけることで、より一層「でき」ます。

人と人の間の見えない壁を壊せばいいオフラインのWSと違って、オンラインではさらにその間にPC→通信→PCという物理的な壁をも壊す必要があります。でも、その物理的な壁と環境を逆に利用すれば、さらけ出せるプライベートの範囲も、誰かの発言の終わりを待つストレスも、意見表明のしにくさも、やり方次第でブレイクできる。今回の実験で、それは証明できたと思います。

アイスブレイクはひととなりを開示すること。冒頭の通り、今回はその重要性を再認識する結果となりました。私自身、メンバーのひととなりがよく見えたと感じています。皆様もぜひ、ご参考になさっていただければ幸いです。ただし時間配分にはくれぐれもお気をつけください。

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  • (株)VoiceVision コミュニティプロデューサー
    (株)オズマピーアール ビジネス開発本部/早稲田大学招聘講師・嘉悦大学非常勤講師
    編集者として出版界に10年近く身を置き、2011年オズマピーアール入社。コミュニティ開発部の部長を経て、2020年4月からVoice Visionへ出向中。大学講義もオンラインで実施中。リモートワーク生活で、インターナルコミュニケーションのウェビナーに聴講参加しまくっています。