いまどき女子のデジタル活用術! VOL.3 ~日常に溶け込むSNSの利用実態と広告活用のヒント~【後編】
「SNSに関する定量調査」の結果をもとにした博報堂キャリジョ研メンバー座談会の後編です。それぞれのSNSのトライブや、コロナショック下でSNSとの接触の仕方がどう変わったか、最適なプランニングのあり方とは、などについて語り合っています。SNSを活用したコミュニケーションを模索している企業のご担当者必読です!
(前編はこちら)
SNSごとに違うトライブ・相性の良いカテゴリ
──SNSの種類によって、相性のよい生活者グループ、いわゆるトライブは異なるのでしょうか。
- 佐藤
- トライブはSNSごとに異なりますし、どのトライブをターゲットにコミュニケーション施策を組み立てるかによって、SNSの使い方も変わってきます。まずYouTubeについてです。ユーザーには、音楽やゲーム、アニメが好きな人が多く、そのような人たちは同じように一つの娯楽としてYouTubeを利用しています。一方、やや意外ですが、コスメ好きのユーザーも多いようです。これは、美容系Youtuberの影響と思われます。
- 信川
- ゲームもコスメも、コミュニケーションのミッドファネルからロウワーファネル、つまり興味関心の醸成から購入意向の喚起までをYouTubeで行うことが可能です。ユーザーの関心が高いコンテンツに対して広告を出稿できるだけでなく、動画広告ならではのリッチな情報を伝えられるからです。
- 佐藤
- TwitterもYouTube同様、ゲーム、アニメ、コスメ好きのユーザーが多いという傾向があります。コスメ好きが多いのは、これもYouTubeと同じように、美容に特化したアカウント、いわゆる「美容垢」の影響がありそうです。
- 戸澤
- Twitterはゲームやコスメのプロモーションとの相性がとてもいいのですが、文字数制限があって伝えられる情報が限られるので、ミッドファネルやロウワーファネルよりも、アッパーファネル、つまり認知獲得に向いていると言えます。
- 佐藤
- 次にInstagramですが、ユーザーの中で多いのは、旅行好き、ファッション好き、コスメ好きです。とくに、コスメ、ファッション、美容サービス、美容家電といったカテゴリーはInstagramの活用がマストだと思います。アッパーファネルからロウワーファネルまでの展開が可能なのもInstagramの特徴です。
- 横山
- Instagramで購入までの導線を描くことができることを証明したデータはこれまでほとんどありませんでしたが、今回の調査でそれが明らかになりました。とくに若年層では、Instagramを見て商品やサービスを購入するという傾向が顕著です。
- 下萩
- Instagramで人気のある旅行系コンテンツは、コロナ自粛の間に利用が減ると思っていたのですが、むしろ人気が高まっているようです。アフターコロナをイメージしながら旅行コンテンツを利用しているのだと思います。今後も旅行カテゴリーは伸びていきそうです。
- 信川
- 旅行に関連して、車などのカテゴリーの関心も高まっていくかもしれませんね。
- 瀧川
- 旅行やファッションを始め、生活者の趣味や興味関心に合うメッセージをビジュアルで訴求できる点がInstagramの強みです。「興味×ビジュアル」の展開には、さまざまな可能性があると思います。
- 佐藤
- 最後にFacebookです。FacebookはInstagram同様、旅行好きのユーザーが多いという結果が出ています。また、アウトドア好きが多いのもFacebookの特徴でした。もう一つ今回の調査で明らかになったのは、ほかのSNSと比べて可処分所得が高いユーザーがFacebookには多いということです。レジャーやライフイベントに費やせるお金も多いという傾向があります。
- 瀧川
- それから、ほかのSNSと比べてFacebookはプライベートな「オフモード」よりも「オンモード」で利用される場合が多いようです。そう考えれば、BtoBの商材やサービスと最も相性のいいSNSと言っていいかもしれません。同じ理由で、金融、人材募集、教育・スキルアップなどのカテゴリーでFacebookを活用するのも有効ではないでしょうか。さらに、企業のCSR情報やSDGsへとの取り組みをFacebookで訴求するのも一つの方法だと思います。
- 横山
- Facebookは、どちらかというとアッパーファネルからミッドファネルで力を発揮するメディアと考えられていますが、ユーザーとの相性がいいカテゴリーであれば、ロウワーファネルまでの誘導も可能です。PO配信(前編参照)を活用すれば、FacebookとInstagramの中でより誘導効果の高い面に広告を配信することが可能になります。
- 戸澤
- 例えば、20代女性をターゲットにしたコスメ商品なら、まずカテゴリーの相性が良いInstagramを中心にメディアプラニングをして、Facebookを含めてPO配信することで、自動的にメディア横断で効果の高い面に寄せることができる、という感じですよね。
- 下萩
- 雑誌社がSNS広告を使うケースも増えているのですが、やはり大きな効果があるのはPO配信のようです。今後、広く紹介していきたいですね。
SNSの広告は「自分に合った情報」
──これまでSNSは、興味関心を醸成するミッドファネルに強いと言われてきましたが、購買までの施策をSNSで組み立てることも可能になっているようですね。
- 佐藤
- とくにInstagramはその傾向が顕著です。また、SNSから直接コンバージョンに至らなくても、購買検討の段階でTwitterやInstagramを見ている生活者は非常に多く、SNSは直接的、間接的に購買に寄与していると言っていいと思います。
- 下萩
- 購入意向喚起については、テレビよりもInstagramが効く、という結果も出ていました。
- 信川
- カテゴリーで見ると、コスメ、ファッション、旅行のほか、自動車や家電などもSNSで購買を決めるユーザーが多いようです。
- 横山
- 広告だけでなく、企業アカウントからのメッセージ配信も活用することで、購買の確率はより高まります。
- 瀧川
- 雑誌社などとコラボレーションをしてタイアップコンテンツをつくったり、アカウントを共有したりするのも購買につなげる有効な方法です。自社ですべてを完結させるのではなく、ほかのメディアやコンテンツホルダーなどの世界観を借りながら商品やサービスをアピールする方法が今後いっそう広まっていくと思います。
──インターネット広告には、「いつも追いかけられている気がする」「何度も同じ広告が表示される」など、ネガティブな印象をもっている人も少なくないと言われます。いまどき女子は、SNSに対してそのようなネガティブな感覚はないのでしょうか。
- 佐藤
- もちろん、広告を「必要のない情報」と捉えている人は皆無ではありませんが、むしろ、「自分に合った情報」「魅力的な情報」と感じている人が多いことは間違いありません。とくに10代女性はポジティブな感情を抱く層が顕著に多いですね。バナー広告と比べても、SNS広告の注目度や信頼度は高く、例えば10代女性の50%以上がInstagramの商品広告やインフルエンサーを起用した広告を信頼しているという結果が出ています。
- 瀧川
- 興味深いのは、明らかに広告とわかっていても、それがタイムリーに表示されることに好意をもっている人が60~70%程度と多いということです。いまどき女子の多くは、どのようなアルゴリズムで広告が表示されるかを理解しているので、自分が好きな情報にたくさん「いいね」をつけて、興味のある広告をより多く表示させるというテクニックを使っています。一方、アルゴリズムの理解が浅い40代以上は、タイムリーな広告表示に対する好意が減少するという結果も出ていました。
- 横山
- 広告もコンテンツの一つと捉えているということですよね。SNSでは生活者と広告のよりよい関係が成立しているように感じます。
- 戸澤
- テレビや雑誌などのマスメディアで見かけた商品がSNSの広告として表示されると、安心感を与えられるという結果もありました。異なるメディアで3回程同じ商品の広告にあたると、世の中で流行っていると認識し自分事化されエンゲージメントが上昇するという、「フリークエンシー3の法則」があるのかもしれません。引き続き検証してみたいですね。
コロナショックによって日常動線に組み込まれたSNS
──コロナショック下で、SNSの活用の仕方に変化は見られましたか。
- 横山
- 全般に接触時間が大きく増えていて、YouTubeでは、さまざまなジャンルの視聴回数やアップロード数が増加しています。Twitterの場合は、投稿や閲覧内容に変化が見られました。投稿のテーマで増えたのは、やはり「テレワーク」「在宅での過ごし方」「健康管理」などに関するもので、閲覧が増えているのはニュースやエンタメ関連です。FacebookやInstagramでも、家で過ごす様子を投稿するユーザーが増えましたね。
- 佐藤
- オンライン飲み会や、レッスン系コンテンツを見ながらのダイエットなどのムーブメントも起きました。「家にいながら誰かとつながっていたい」「家にいる時間を有効に使いたい」と考える人が非常に多かったということなのだと思います。
- 瀧川
- コロナの影響を大きく受けたエンタメ業界を盛り上げるために、SNSを通じてクラウドファンディングを行う動きも活発でした。リレー式コンテンツやコミュニティ型ゲームも話題になりましたよね。
- 戸澤
- SNSが情報収集と発信のためだけのツールではなく、「楽しみ」や「癒し」を得るためのメディアになったのだと思います。
- 信川
- それと、コロナショックによって、SNSは多くの生活者の日常動線に完全に組み込まれたと思います。とくにいまどき女子にとっては、今まで以上に重要なツールとなったのではないでしょうか。
- 下萩
- メッセージを発信する企業にとっても、それぞれのSNSに適した活用の仕方をあらためて考えるチャンスかもしれませんね。
SNSの特性を踏まえたプラニング・クリエイティブ開発を
──今回の調査結果を受けて、SNSのメディアプラニングやクリエイティブ開発の提案の可能性が広がっていきそうですね。
- 佐藤
- この調査であらためて明らかになったのは、SNSごとに異なる利用シーン、トライブ、カテゴリーとの相性、ファネルへの貢献などがあるということです。クライアントの課題とそれぞれのSNSの特性に応じたプラニングやクリエイティブ開発を行っていくことが重要だと思います。
- 横山
- KPIに応じて広告出向先を使い分けることを意識するということですよね。それによって、認知や好意形成だけではなく、購買行動に確実につなげることが可能になります。
- 下萩
- SNSをこれまでのメディアやツールに例えるなら、Twitterは「テレビのニュース・情報番組」、Facebookは「電話」、YouTubeは「テレビのバラエティ番組」、Instagramは「雑誌」と言えると思います。もちろん、SNSがこれまでのメディアを代替するものということではありません。例えば、YouTubeはテレビのバラエティ番組との親和性があるので、コンテンツの展開の仕方やメッセージの発信の仕方をテレビと連動させると効果的ということです。
- 信川
- 繰り返しになりますが、コンテンツをそのまま流用するのではなく、SNSの利用シーン・接触態度などに合わせてアレンジすることで効果はより大きくなります。例えば、YouTubeの場合、いまどき女子の5割は「ながら見」をしています。ということは「ながら見」に適したコンテンツ、案としては、音に重点を置いたミュージックビデオのようなコンテンツや広告が有効なのではという発想が必要ということです。
- 戸澤
- 相性のいい商品カテゴリーもSNSごとに異なるので、その点でも使い分けが必要です。これらのSNSの特徴を踏まえて、より有効にコミュニケーションへと活用する方法を、今後クライアントの皆さんとともに考えていきたいですね。
- 瀧川
- 今回の調査結果をもとに、私たちは現在、クライアントの課題をSNSで解決するソリューションメニューを開発しています。ご興味があれば、ぜひ気軽にお問い合わせいただきたいと思います。
***
以上、第3回ではいまどき女子のSNS利用実態と広告活用のヒントをご紹介しました。
次回は、”ソーシャルリスニング”分析の結果をもとに、女性をとりまく社会問題やコミュニケーションの際に気を付けるべきポイントについて語っていただく予定です。
ご期待ください!
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