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オンラインがけん引する生活変化 ~最新調査データが明らかにするNew Normalの風景
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オンラインがけん引する生活変化 ~最新調査データが明らかにするNew Normalの風景

新型コロナウィルスによる外出自粛の影響により、オンライン活用の拡大と、それによる生活変化が幅広い領域で起こっています。博報堂プラニング局では3月および5月に、こうした変化に対する生活者の意識や今後に向けてのニーズを調査。ウィズコロナ時代における新たなソリューション開発・マーケティングチャンスの探索を行っています。
博報堂プラニング局で行った調査結果の分析を基に、本稿ではまずオンライン活用実態における変化の全体像をとらえ、その後「ビューティー」、「エンタテインメント」など分野ごとに、より詳しい姿を掘り下げていきます。

写真左から)博報堂プラニング局 金田 彩佳、岡 彩子、泰永 麻希、原田 侑夫

【オンラインがけん引する生活変化】

■テレワークの日常化で生まれるイエナカ・家族のNew Normal

外出自粛によってテレワークを導入する企業が増加した結果、今回の調査では営業職の約75%、事務職の約50%の方がテレワークを実施しているという結果になりました。緊急事態宣言解除後も、「New Normal」としてテレワークを採用する企業も一部あり、転職市場でも「テレワークを推進しているか」が新たな視点になるという話もあります。実際に生活者に話をうかがったところ、6割がテレワークを魅力的な働き方ととらえており、その理由として「移動時間が削減・効率化できる」「子育てがしやすい」「プライベートを充実させられる」そして「(テレワークによって)公私の時間を臨機応変に使いたい」という回答もありました。生活者自身がポジティブな変化の兆しをすでに感じ出していて、今後テレワークは働き方の選択肢の一つとして定着しそうな予兆が見えてきています。
ではこうした変化から、どんな具体的な事象が起こり得るのかを順に見ていきたいと思います。

 

1.スキマ時間の活用
趣味を始めたい/深めたい、語学や資格の学習をしたい、学び直しをしたい、教養を深めたいという人が、3月時点ですでにそれ以前より増加傾向にありましたが、5月にはほぼ倍増しました。テレワークにより時間に余裕ができ、さらにその期間がかつてないほど長期化したことに加え、「スキルがないとこれから生き残っていけないのではないか?」という先行き不安の高まりも原因としてあるのではないかと思われます。さらには副業を志向する人も3月から5月にかけて増えていて、スキマ時間に習得したスキルを活かす場として、あるいは収入の複線化を図りたいという意図が感じられます。

2.イエナカ充実ニーズ
時間に余裕ができたこと、また外出自粛によって、家族そろって食卓を囲む機会が増え、外食の機会は激減しました。その結果、イエナカでのエンターテインメントという意味でも、新しいレシピやひと手間加えるような料理に挑戦する人が増加していることが調査からわかりました。そうした家庭では、「家族の会話が増えた」「家族の関係がよくなった」などの実感が得られているようで、今後の継続意向も高いだろうと考えられます。

3.イエナカ再区分ニーズ
先述のポジティブな変化の一方で、テレワークが続くと、自宅内における空間・時間のオンオフの区切りが曖昧になります。その結果、共働き世帯、都市部の家庭中心ではありますが、仕事に集中しづらいとか、逆にプライベートの時間も落ち着けないなどの声も出てきています。現在リビングで仕事をしている人は6割いて、5割は家では集中できないと言っている。今後、たとえばコワーキングスペースが充実している街の人気が高まるなど、住む場所の選び方にも影響があるかもしれませんし、集中できる環境づくりに役立つような家具類、あるいは気分の切り替えスイッチになるような飲み物、食べ物、音楽といったアイテムも、再区分のツールとして求められていくかもしれません。

4.家族のあり方/夫婦の役割分担再考
中学生までの子を持つ親のうち3割ほどが、パパの在宅時間が増加したことでパパの子育てが増えたと回答しています。さらに3割くらいのパパが料理や家事をすることが増えたと回答し、5割強のパパが、それによって子どもとの関係がよくなったと感じていることがわかりました。これまで時間がないことを言い訳にしていた側面も現実としてあったかもしれませんが、子どもとの時間を取りたくても取れなかったパパがこういう形で家事育児に参加するようになっている。これは面白い変化だと感じますし、世の中の流れが大きく変わっていく兆しであると考えます。また、テレワークの普及により、たとえば予定よりも早く育休から復帰したいとか、家計を助けるために就職したいというママも増える可能性があります。そうなれば一層男性の家事育児参加が不可欠になりますから、改めて夫婦の役割分担について問われる機会になるのではないでしょうか。そうすると、たとえばこれまでママ視点しか反映されなかったキッチン用品にパパの視点も取り入れる必要が出てくるでしょうし、購買の傾向も変わっていくでしょう。我々マーケターはこうした変化に注目すべきですし、今後は変化をサポートするサービスが求められてくると考えます。

 

■OMOが作る買い物のNewNormal

感染予防の観点から、今のところ5割程度の人が、行動規制緩和後もセールなど人が集まる場所に行くこと、旅行に行くこと、デパートでの対面接客などを避けたいとしています。ちなみに実際には人で溢れている街もありますが、調査上ではそういう結果になっています。今後接客に期待することとしてヒアリングした内容から、考えられる4つの変化についてご紹介します。

1.減るウィンドウショッピング・増えるネット情報ニーズ
店を訪れる回数を最小限にするために、ネットの口コミやサイトを確認するなど、プレストアの検討がより重要になっていくと考えられます。実際に、これまでなら3店舗回っていたところを2店舗に減らすということも起きていて、事前に買うものを決めてから出かけるという人は3月から5月にかけて1.5倍ほど増加している。プレストアでの情報の充実が、ブランドの顧客獲得には非常に重要になってくるだろうと考えられます。

2.接客は対面で受けたい
一方で、高価格帯の化粧品や自動車の購入を検討中の人へヒアリングした結果、新商品を検討する際にはコロナ以前同様の対面接客を望むという声が多く聞かれました。リモートワークなどである程度ビデオ通話に慣れたという人でも、高額商品である以上、店の特定の雰囲気や、信頼できる担当者のもと大切に購買したいということでした。またオンライン接客では、応答に一歩間が開いて会話がスムーズに進まなかったり、やはり少し心理的距離を感じるためか、いくつか質問をしそびれたという声も出ています。また当然化粧品や自動車なら試してみないとわからない部分も大きく、オンライン接客を体験して改めて、対面接客でなければ選びにくい、対面接客の良さに気付いたといった声も多く聞かれました。そういう方は、対面接客が復活するまで、化粧品の場合は新商品購入をあきらめて前と同じブランドをECサイトを通じてリピートしたり、自動車の場合は検討を延期、あるいは本当だったら3、4店舗回りたいところを、ネットで情報を絞り込み、1店舗の車種の中から選んでしまうということでした。

3.特定のプロセスはオンラインを希望
ただ、いずれにしてもそうした生活者が接客を求めるタイミングは、本当にものを見たいその瞬間に限られるのではないかと我々は考えています。特に自動車の場合、書類のやり取りやちょっとした質問をオンラインでできる仕組みをつくったことで、逆に好感・信頼感が増したという声も出ている。顧客視点から、顧客にとって本当に便利で楽しい購入体験とはどういうものかを考えた接客というものが、今後は信頼感の醸成にもつながるし支持されていくのではないでしょうか。オンラインとリアルの垣根をシームレス化させ、いかに顧客体験中心で考えていくかが問われていくと考えます。
さらに言うと、たとえばオンラインでの「定期購入」は便利な反面、ぺースが合わずにやめてしまうというケースもありました。今回のデジタル活用の拡大で、オンライン購入で便利になりきれなかったそうした側面の改善が進み、一歩先のサービスへと進化するきっかけにもなるのではないかと感じています。

4.感染対策の見える化ニーズ
予約ができる、入場制限を行っている、対面が気になる人はオンラインで相談可能、あるいは店舗前で体温測定し高温の方の入店をお断りしている…そうした感染対策を行っていることが事前にわかれば、多くの人がより出かけやすく感じることもわかりました。実際9割の方が自分はエチケットを守っていると答えていて、もしエチケットを守れていない人が一人でもいれば、そこへは行きたくないと感じています。たとえばオンラインで、「普段の同時刻」や「現在」の混み具合がわかったり、入場制限などで安心して来店できる時間帯を確保するなどの仕組みづくりが進めば、安全確保と経済活動再開の両立が可能になるでしょう。

■オンラインFace to Faceで近づく距離・広がる可能性

オンライン飲み会、オンラインでのブランドや有名人とのファンミーティング、生配信などが非常に増えた結果、リアルとオンラインの使い分けはもちろんですが、オンラインならではの楽しみ方も発見されてきています。

1.リアルとオンラインの使い分け、オンラインならではの楽しみ方
あるアーティストの場合、配信ライブでは絶対に出せないような炎の演出を加えたり、あるいは配信を通じて有名人と同じ空間でお酒を飲むような感覚を得られて、距離が縮まったと感じられているようです。また、チャット機能やハッシュタグを通じて、自分のつぶやきを有名人が拾ってくれるということもある。有名人との距離感がぐっと縮まり、より身近に、より楽しく感じられる関係性が現実になってきています。現状ではオンラインイベントの参加経験率はまだ1割くらいですが、参加者の満足度は5割くらいと非常に高い。もちろんリアルにはリアルの良さがあるので、今後はリアルとオンラインの市場がハイブリッドに広がっていくのではないでしょうか。

2.距離を超えた交流
実際には場所が遠いとか子どもを連れていけないなどの理由で参加できなかったイベントや行けなかった場所をオンラインで体験できるようになり、喜ぶ声もありました。距離を超えた交流を可能にするという意味で、オンライン活用はビジネスチャンスとしても大きいと考えます。

3.自分の気持ちを高める応援消費
応援消費をしたいと回答した人は9割に上りましたが、実際に5月中旬までに実践した人は1割という結果が出ています。自分を含めて世界中が危機に直面している状況下で、誰も彼も応援することはできません。本当に自分が大切だと思う相手をピンポイントに、そしてダイレクトに応援したいという気持ちは高まっているようですが、その相手を選ぶ方法や、その人に届ける手段もなかなか見つけられていないということなのかもしれません。一方で、ごみ収集車の人に感謝の手紙を書くなどの活動が全国に広まったように、たとえ相手が知らない人であっても、この人の行動に共感する、この人を守りたいと思った相手に対しては、行動が迅速になり、どんどん広がっていく。やはり今必要なのは、生活者の「応援したい」という気持ちと、それを届けたい相手を結ぶ手段なのではないでしょうか。それは、共鳴できるような活動を周知したり、琴線に触れるストーリーで応援消費を促すといったことであり、そこにこそ我々広告会社が担うべき役割があると考えています。

次回は、「ビューティー」における変化について詳しく見ていきます。

※調査概要 コロナに関する意識調査 
■調査手法 インターネット調査
■調査期間 第一回 2020/03/27-28
      第二回 2020/5/19-20(※39県での緊急事態宣言解除後)
■調査エリア:全国                                 
■調査対象者:20-79歳男女 1200ss(各回)

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  • 博報堂第三プラニング局 ストラテジックプラニングディレクター
    2010年博報堂入社後、ストラテジックプラニング職として 
    製薬会社・食品・家電・金融などをコミュニケーションプラニングや商品開発を担当。
    ヘルスケア領域(健康・生活習慣・予防・未病・共生・介護)に関心があり、
    博報堂ヘルスケアタスクフォースの中心メンバーとして、生活者理解やソリューション開発を行っている。
    保育園児を抱える、共働き世帯の母でもある。

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