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デジタル化による生活者ニーズの変化に対応するために
PLANNING

デジタル化による生活者ニーズの変化に対応するために

世の中のデジタル化の進展の中、データドリブンマーケティングの取り組みによってプランニングをいかに進化させていくかということと共に、生活者の意識や行動そのものが変化していないか、その結果未知のニーズが生まれてきていないか、をより深く洞察することが重要になってきています。
その新しいニーズを読み解き、そのニーズに対応した「Purpose策定」と「最初の一歩のアクション」を同時に進めることの必要性について、博報堂第二プラニング局ストラテジックプラニング一部長の二木久乃が解説します。

1.「デジタル領域で成果を出している」ときこそ気をつける

最近は「デジタルマーケティングでの成果」をあちこちで耳にします(それ本当にデジタルマーケティングの成果なの?というものも含めて)。実際、データマネジメントを駆使することでコンバージョン(CV)と非CVの行動上の差を埋めるべく改善を繰り返し、効率的なビジネスモデルやコミュニケーションフレームを構築することが可能になっています。
その一方で限られた範囲のデータ分析による成功に注力するあまり、分析のスコープ外で発生していた“ニーズの変化”に気付けず対応が遅れてしまった、ということも多々あるように思います。

2.デジタル化による“ニーズの変化”は、掴むのが難しい

デジタル化は、モノやサービスだけでなく私たちのニーズも変化させているのですが、このニーズの変化は「突然」ではなく「じわじわ」変化するので、掴みづらいように感じます。それに加え、これまでのカスタマージャーニーや購入重視点の外で新しいニーズが生まれたりするので、余計に発見が遅れるのではないでしょうか。
「服を買う」を例に出してみると、これまでは「お店でお気に入りの服を見つけたい」というニーズを満たせば購入(CV)に直結していたので、ウインドーショッピングを楽しめる空間デザインや、各々のアイテムの魅力を店員が説明できることが重要でした。しかし近年では、例えばインスタグラマーがブランドを立ち上げ始めたことで、服単体より背景も含めた写真全体の雰囲気が重要になり、「その服を着て思い通りの雰囲気をつくりたい(その雰囲気でインスタにアップしたい)」という新しいニーズが生まれてきています。これまでのカスタマージャーニーや購入重視点を基準に生活者の行動や意識を観察していたら、このニーズの発見に少し時間がかかってしまうかもしれません。そして、このニーズが大きくなるようであれば、重視すべき購入重視点、顧客接点やサービスの仕方も再検討する必要が出てきます。
デジタル化による“ニーズの変化”には、スコープを広げて敏感になることが重要です。

3.“ニーズの変化”をウォッチするだけでなく、“市場の範囲”ももう一度見直す

また、カテゴリーによっては、“ニーズの変化”だけでなく“市場の範囲”について、もう一度見直す必要があると思います。
例えば、「学び市場」です。これまでは「趣味領域」「教養領域」「仕事スキルアップ領域」くらいに分類しておけば競合も明確でしたし、ポジショニングもしやすったと思います。しかし、「友人の披露宴のために、急いで動画編集の仕方を習得したい」という趣味でも教養でも仕事でもない「短期集中実践的領域」といったような、こんなニーズもデジタル化によって拡大しています。YouTubeで無料で習得できそうですが、こういったニーズも含めて市場を見ていく必要があります。学び市場は「効果実感」「効率」「仲間で楽しく」「自己表現」などのキーワードに向かって動いているように思います。

4. “ニーズ”と“企業の提供価値”のGAPを可視化することが重要

“ニーズの変化”を掴むのが難しくなっているので、「市場のニーズ」と「企業の提供価値」の「GAPを可視化すること」にトライするのがいいと思っています。「GAP」を測ろうとすると、必然的に新しいニーズにも目を向けて仮説構築するようになりますし、「可視化」することで関係者にスムーズに課題を共有でき、物事が速く進むようになるからです。
GAPの可視化には意識調査で行う方法もありますが、アクチュアルデータを活用して簡単にみる方法も有効です。Googleトレンドと自社サイトのアクセス数やCV数の推移を比較することでGAPがあるか判断できます。(図3①:自社サイトへのアクセス数は低下傾向にあるが、該当する商品領域の検索数は増加傾向にある場合。拡大する市場ニーズを自社で獲得できていない可能性が高い)

意識調査で行う場合は、単純にそのカテゴリーにおけるニーズ・購入重視点・提供価値について仮説も含めて呈示し、「時代にあっている」「(時代に関係なく)自分は重視する」「この企業が提供してくれそう」のスコアを定量調査上で質問し、ずれが生じていないかを測定します。実際に「時代には合っているけれど、自分は重視しない」というニーズもあって、デジタル化の反動のようなニーズも見え隠れします。時代は「スピードや効率重視」だけど、自分は「コツコツ、地道にやりたい」みたいな感じです。

5. 可視化されたGAP分析から、「追加」「維持」「捨てる」べき価値を整理し、Purposeを考える

“ニーズの変化”に気付いたとしてもこれまで何十年も続けてきた、利益を生み続けてきたビジネスモデルや提供価値をニーズに合わせて変更するのはたやすいことではありません。
しかし、まずは、可視化されたGAP分析を見て、「追加すべき」「維持すべき」「捨てるべき」価値(商品やサービス、イメージなど)を見極めて、できるところから手をつけるというスピード感が必要です。
その際に、Purpose(企業の存在意義)を考慮することが重要になってきていると実感しています。自社の利益追求だけでなくユーザーの生活をどうよくしていこうと思っているのかも今の生活者はチェックして判断基準にしています。だからこそ、本来はPurposeが伝わるようなサービスや商品設計、コミュニケーション戦略があると強いです。

6.Purpose策定と同時に“最初の一歩”のアクションを実行する

Purposeや新しいニーズに対応した商品やサービス、ビジネスモデルを考え始めると、改革する意思はあるしスピードが必要だとわかっていても、どこから進めるべきかわからない、とになりがちだと思います。また、Purposeが定まるのを待ってから、Purposeに合うサービスや商品設計、コミュニケーション戦略を考えていくと市場の変化に追いつけなくなる場合も多々あります。
だいたいの方向性が見えたら、まずできるところから手をつけてしまう、というのが重要だと思います。最初の一歩として簡単にアクションが起こせるのは、KPIの変更や、商品ラインアップの統廃合、PKGやHPの見せ方、キャンペーン設計やCRM施策などだと思います。通常の業務で行っていることから変えていく。
最初の一歩のアクションはなるべく具体的にアウトプットイメージをつくって、目指すべき方向を関係者が共有していくことも大事だと思っています。
デジタル化によるニーズの変化に対応するためには、新しいニーズを読み解き、そのニーズに対応した「Purpose策定」と「最初の一歩のアクション」、大きなイメージと小さな一歩、これを同時進行するべきです。

7.さいごに

突然プライベートの話しに変わりますが、最近主婦のお友達から、「ヒサノちゃんならつきあってもらえると思って」と誘われ、キンプリのコンサートに行ってきました。40代、ジャニーズ初体験です。かわいいペンライトを片手に、着飾った10代20代に混じって「立ち見の可能性があるから」と準備万端の大荷物をかかえてどや顔の友達。最初は会場に馴染めなかった私たちも「シンデレラガール」の頃にはノリノリで楽しんでいました。
初体験は、幾つになってもドキドキしていいものだなと思います。デジタル化のおかげで(キンプリは全く関係ありません)、年齢関係なくいろいろな初体験ができる時代になっていると思います。チームラボのデジタルアートミュージアム初体験のときも、デジタルで自然と同等以上の美しい空間が創れることに感動したのを覚えています。 
市場がどんどん変化して企業もどんどん変化していかなくてはいけない時代、マーケターとしては難しくて面白い時代だと思っています。というより、むしろ楽しんでいかないと後悔しそうだと思って仕事をしています。

  • 博報堂 第二プラニング局 部長
    2000年博報堂入社。
    ACC TOKYO CREATIVITY AWARDSマーケティング・エフェクティブネス部門審査員
    新商品開発・コミュニケーション戦略・事業戦略などに従事
    これまで担当してきたブランドや企業は、トイレタリー・飲料・自動車・食品・教育・製薬・化粧品・ファッションなど、多岐にわたる
    最近はゴルフにはまっているが、スコアは120前後で伸び悩む