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「5G」で社会はどう変わるか。博報堂には何ができるのか。
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「5G」で社会はどう変わるか。博報堂には何ができるのか。

5Gの商用化が目前に迫っています。報道などで取り上げられる機会が増えている一方で、“高速・大容量”以外のメリットについて理解できていない、という方も多いのではないでしょうか。そこで5Gで社会がどう変わるのかについて、5Gに詳しい博報堂 ビジネスデザイン局の中村旭宏と、CMP推進局の堀内悠が語り合いました。

5GはBtoBへのインパクトが大きい

中村
私は営業として通信キャリア企業を長く担当してきました。「5Gとは何か」とまわりの人間に聞かれることも多いですが、世間でよく使われているキーワードは“高速・大容量・低遅延・多接続”の通信規格です。ただ、最近、我々のチームで行った5Gに関する独自調査によると、「5Gのことをよく知っている」と答えた人は5.9%にとどまり、「興味を感じる」という人も10.1%でした。結局、多くの人は「通信のスピードが今より早くなる」くらいにしか思っておらず、“高速・大容量”に世の中のイメージが固まってしまっているため、このように“5Gに関する表層的な理解”にとどまっているという結果になっているように思います。
堀内
私はデータドリブンマーケティングやメディア開発の部署にいて、マス~デジタル~リアルまで様々なマーケティング業務を扱っています。今日お話する5Gについては、メディア環境が大きく変わるんじゃないかという部分に誤解があると思っています。クライアントさんによく言われるのは、「5Gでスマホが凄くなって、テレビを見なくなるんでしょ」ということです。でも決してそうではないと思っています。
5Gによってもちろんスマホでできることは増えますが、テレビでできることも増えるという解釈をすべきです。データ駆動型の社会と言われますが、扱えるデータが増えることで、新しい価値がどんどん生み出せる。産業や事業構造の変革、サービス変革という観点で言えば、5Gでテレビなど既存メディアの価値も大きくUPするかもしれない。
中村
かつて、4Gが始まった際には、“画像などが多いリッチなページがサクサク見れる”、“重い動画がすぐにダウンロードして観れる”といった一般生活者にもわかりやすい領域、つまりBtoCに向けたサービスが進化しました。4Gが普及した現在、大抵のことは「今のスピードのままでも不自由なくやれている」ため、5Gへの期待値や興味が低くなってしまっているのではないでしょうか。
実際、「5Gは産業のためのもの」とも言われており、一般生活者に向けての技術というよりも、BtoB領域へ与えるインパクトが大きいと考えられています。

例えば、遠隔での重機操作などがわかりやすいと思います。遠く離れた工事現場にあるブルドーザーを、例えば都心の会議室にある遠隔操作用のコクピットから操作をするわけですが、4Gを利用して遠隔操作しようとすると、コクピット側に映し出される映像に“ジャギー”と呼ばれるギザギザが入って乱れたり、コクピットからの操作指令がリアルタイムに伝わらず、遠隔地のブルドーザーの動きにタイムラグが生じたりします。これが5Gを利用するとブルドーザー側から送られてくる映像が鮮明かつ高精細であるため、まるで現場のブルドーザーに乗っているかのような没入感を得られます。また、操作に関してもコクピット側からの操作に遅延せず、リアルタイムにブルドーザーを操作することができるようになります。このように、5Gが社会全体のいろいろな領域に入り込むことで、ひとつひとつのサービスに「革新」が生まれ、その集合体として生活やビジネスが変革していくんだと思います。

堀内
これまでテレビが白黒からカラーになり、パソコンが普及し、スマホが登場しました。スマホの普及率はほぼ飽和しています。今後デバイスとしてさらに進化するかというと、大きくは変わらないでしょう。

あるシンクタンクが行った調査では、5Gで起こるのはデバイス市場の成長ではなく、その上に乗るアプリやクラウド市場の成長だ、としていました。つまり、通信の市場に関わるのは通信キャリアだけではなくなるということです。スマホという制限もなくなるかもしれなくて、例えば今部屋の中で回線に繋がっている機器は5個だったのが、5Gでは100個になるとか。紙やペットボトルが回線に繋がったり、いろいろなものが回線に繋がるようになる。そのような状況になると、流通やモビリティ、ヘルスケアのような通信とは一見関係なかった産業が、5Gを活用して新しいサービスを競って提案するようになるでしょう。

中村
5Gとは、単に通信スピードが上がるのではなく、生活やビジネス、ありとあらゆる世界の変革のスピードが上がるということですよね。でも、冒頭の独自調査結果にあったように、まだあまりそうした5Gの本質が理解されていないと感じています。

5Gで何ができるか、どの企業も考えるべき

堀内
私はクライアントから「5Gが始まるとテレビはどうなるの」と聞かれたときは、「テレビの価値もスマホの価値も上がります」とお答えしています。例えばテレビのデータ放送が、もっとスムーズでリッチになります。
またテレビの視聴デバイスとしての価値も5Gによってさらに価値化するかもしれない。今、いろいろな映像配信系のサービスがありますが、ディスプレイとしてテレビを使っているケースが多いですよね。
5G時代になって、テレビの上にカメラのようなデバイスがついて視聴者のデータを取得し、マーケティングやブランディングに活用するようになるかもしれません。そういったことを想定しても、テレビの価値は依然として高い状況が続くと思います。

そして5Gは、スマホやメディアではなく、産業やサービスそのものを変えるものだともお答えしています。すでに、5G時代を見越して、提携をする企業も相次いでいます。自動車会社と通信キャリアの提携や、海外では、自動車会社同士のモビリティ部門が統合したり、といった動きがあります。MaaS(Mobility as a Service)関連のサービスであれば、自動車だけではなく、生活者の移動手段や生活サービス全般を考える必要がある。鉄道やタクシー、カーシェア、さらに買い物やエンタメなど、様々なサービスが包含されますし、何よりも、それらを統合するプラットフォームが大切。まさに自動車メーカーは、モビリティサービス会社になる必要がある。

電話を例に考えると分かりやすいですが、昔はただ電話がかけられれば良かったのが、動画がみられたりクーポンを取得できたりというサービスを提供するようになり、料金プランも変わってきた。自動車でも同じように、移動手段自体がサブスクリプションモデルになるかもしれない。海外では、自動車・鉄道・自転車など、様々な移動手段を横断して、定額で利用できるサービスなどもあります。5GやIoTが普及すると、企業も生活者に何を提供できるのか、フラットに考えなくてはいけません。

中村
企業が提供するサービスのバージョンが、一段階上がるということですよね。でもその答えはまだ見つかっていない。
自宅でのスポーツの視聴体験なども、大きく変わると言われています。これまでの映像は、放送局側でスイッチングしてカメラアングルが切り替わっていた。つまり、放送局側が「これだ!」と考えるアングルを、いわば“押し付けられて”いたわけですが、5Gでは自分が好きなカメラアングル映像を自由に選ぶことができるマルチビューイング視聴が可能になります。これがどういうことか私なりに考えてみたのですが、人それぞれその瞬間に感じていることは違います。私はサッカー経験者なので、サッカーを観る際には、ボールがない場所でどのようなフォーメーションになっているかや、大事な局面局面で監督がどこを見ているかといったようなことが気になります。ですが、サッカー未経験者はそうではなく、やはり、ボールを持っている選手を中心に観戦をしたいと思うんです。つまり、ひとりひとりの興味はまったく違っていて、本来、観たい映像も違う、ということなんです。
これまでは放送局主導のスイッチングで放送される映像が決まっていたのですが、5Gはこれを解き放っていきます。見る人ひとりひとりの思考や、感情、興味に合わせた形で無限の視聴スタイルが実現されたとき、それは実はスタジアムに行くことよりももっと心を動かす可能性を秘めており、新しいスポーツエンタメを生み出すかもしれない、と考えたりしています。

さらに、映像に「体験」が組み合わさっていくことも考えられます。例えば、ラグビーのスクラムの映像と選手の体重などの情報から、瞬時にスクラムで選手が感じる衝撃の大きさをクラウド上で集計して計算、データ化することが可能となります。そうなると、あとはそれをどこでもリアル化することができる。例えば、映像を見ている人の座席がその衝撃をリアルタイムに再現して激しく揺れる、といったことが実現できてしまう。
他にも、ラインアウトで選手を持ち上げられているのがどれくらいの高さかを、椅子の上がり下がりで表現するといったことも可能でしょう。5Gのリアルタイム、低遅延の特性によって、こういったまったく新しい観戦スタイルを創造することが可能になります。

堀内
今のお話のように、5Gで得られるようになったデータをどう扱うかがマーケティングの課題になると思います。ここは日本企業が弱いところなので、意識していかなくてはいけないところだと考えています。スマホの連絡の機能と位置情報を組み合わせてつくられた配車サービスのように、どの企業でも使える機能の組み合わせは日本企業が考えてもおかしくないサービスでした。
このように、新しいデータが取れるようになったとき、それをどう組み合わせてサービスにするかはとても大きな課題なんです。日本は今あるものを連続的に捉えてしまいがちで、ありものを組み合わせて革新的なサービスを作ることが不得意な傾向があります。
それと繋がるのが、クライアントから「5Gのことは分かったけど、うちの会社がそれとどう関係あるのか」と聞かれた場合に感じる危機感です。どう関係あるのか、ではなくて新たに得られたデータから革新的なサービスを思いつかなくてはいけないと思います。その部分は、博報堂がお手伝いできるところだと思います。

5G時代も生活者を知る博報堂の強みが生きる

堀内
完全に、例えば…という話ですが、インターネットで海外競馬の馬券を購入したいとします。現状の技術だと、完全なライブ配信は難しくて、ヨーロッパと日本で数十秒は映像がずれてしまう。海外で実現しているようなリアルタイムでベッティングするような仕組みは難しい。でもこれが5Gになると、ライブ配信も可能になり、リアルタイムで馬券購入ができるといったように、コンテンツの楽しみ方も変わる。
5GやIoT市場の可視化という意味では、「5G環境のショーケースを作りましょう」という流れが潮目になりそうだと感じます。スマホの世界ではなくて、どのような未来を描けるのか?これはまだ可視化されていない。博報堂としても、通信キャリアさんや様々なクライアントさんと一緒に、5Gによる体験や生活の変化を描いて行きたいと思っています。
中村
5G時代においてはもうスマホにこだわる必要がなくなるんですよね。いまBluetoothを介してネットと繋がっているような機器が、そのままネットに繋がるようになる。
自動車会社からモビリティカンパニーに変わると打ち出す企業があるように、通信会社は通信のインフラから革新のインフラになっていく必要があると思っています。つまり、すべての企業の変革の裏側には、通信会社が存在する、という世界です。企業が未来に向けてサービスを開発したり、イノベーションを起こそうとする時、必ず5Gによる通信を前提に考えることになる。そうなると通信キャリアとの協業が必ず必要になってくるので、そのお見合い役として、我々が機能する。こういったいわば「ビジネスマッチング」こそが我々がこれからクライアントの皆様にできること、そして、積極的に取り組むべき領域だと考えています。
博報堂には、面白いCMを考えたり、人の心を動かすコピーを書いたり、目を奪われるデザインができるクリエイティブ人材がたくさんいます。そうした人材が、こうした「ビジネスクリエイティブ」に取り組んだら、どんなことが生まれれるのか!?既存の戦略コンサルティングではなかなかブレイクスルーできない状況を突破する原動力こそが、博報堂の「クリエイティビティ」だと考えています。
堀内
テレビがひょっとすると、今まで以上に価値化するかもしれない、ということと同じように、僕らマーケティングのプランニングもさらに大きな価値を提供できるかもしれません。世の中全体がデータ化するのであれば、朝起きてから寝るまですべてのタッチポイントがIoTとなる。それはつまり生活者との繋がりがさらに増えて、提供できるものも増えて、より豊かな体験や生活のお手伝いをできる可能性もある。5Gのような技術インフラを、生活者の体験価値として提案することは、長年「生活者発想」をフィロソフィーとしてきた僕らが凄く得意なことですし、博報堂がクリエイティビティを発揮できる部分だと思います。
中村
5G時代のキーは、「人の気持ちが動く瞬間を、最大公約数的に考えない」ということだと思っています。これまでは万人に受ける形にせざるを得なかったものが、個々人に全対応できる時代が来ます。無数にある生活者の気持ちを考え、生活者一人ひとりの気持ちが動く瞬間をサービスに組みこむ。デザインシンキングなどにおいて、一番多い層についてばかり考えるわけじゃなくて、エクストリームユーザーなど先進的な少数意見についても真剣に考えてきました。そんな僕らだからこそ提案できることが、5G時代にはあるように思います。
堀内
本当の意味での“生活者データ・ドリブン”マーケティングですよね。これまではデジタル上のビッグデータを扱うことが多かったけど、リアルな場でのデータも活用できるし、そのデータを生活者個々の体験にフィードバックできる。
中村
まずは5Gの読み解きを一緒に考えるところからスタートしつつ、その企業がお持ちのサービスや商品、どんな方向に舵を切っていくべきなのかということを、クライアントの皆様と一緒にプランニングしていきたいと思っているので、なんでもご相談いただけたらと思います。
博報堂の中でも、ビジネスリソースをどう結びつけるかチャレンジしていきます。これからは単一の企業の課題解決であっても、その企業の中だけでは解決しなくなってくるでしょう。前述の通り、クライアント様同士を結びつけて協働プロジェクトを立ち上げるといったようなことも積極的に考えていきたいと思っています。
堀内
今後5年ほどは5Gによる産業や生活の変化が重要になると思います。その後は、さらに、スーパーリージョン構想やグローバル統合の時代に。そこを見据えれば、様々な課題をどう解決していくか?個別企業だけでなく、オールジャパン?オールアース?までとは言いませんが、企業同士で協力して解決していくことも必要になってくると思います。
  • 博報堂 ビジネスデザイン局
    2001年博報堂入社。大手自動車メーカー担当を経て、現在、大手通信キャリアのアカウントプロデュースを担当。
    いわゆる広告コミュニケーションではなく、クライアントの事業自体をサポートしていく領域にて業務を担当。事業部主体のプロモーション施策はもちろん、UI/UX開発や新商品・サービス開発、クラインと同士のビジネスマッチングなど、プロジェクト型の業務が得意領域。得意先のプロフィット創出に、いかに広告会社がコミットできるか!?という課題感を持ち、日々奮闘中。
  • 博報堂 CMP推進局
    京都生まれ京都育ち。2006年博報堂入社。入社以来、一貫してマーケティング領域を担当。
    事業戦略、ブランド戦略、CRM、商品開発など、マーケティング領域全般の戦略立案から企画プロデュースまで、様々な手口で市場成果を上げ続ける。
    近年は、新規事業の成長戦略策定やデータドリブンマーケティングの経験を活かし、自社事業立上げやマーケティングソリューション開発など、広告代理店の枠を拡張する業務がメインに。
    ※執筆者の部署名は、執筆時のものであり現在の情報と異なる場合があります。