「チームAI」vs「チームHuman」若手クリエイティブ対決！　────「ad:tech tokyo 2025」レポート

2025.12.23

「チームAI」vs「チームHuman」若手クリエイティブ対決！　────「ad:tech tokyo 2025」レポート

クリエイティブ領域でも、ますます活用が進む生成AI。昨年のad:tech tokyoで行われた、生成AIに若手クリエイターが挑んで好評を博したセッションが、バージョンアップして帰ってきました。JAAA（日本広告業協会）のインターネット広告委員会に所属する各社のメンバーが、「チームAI」と「チームHuman」に分かれてアイデアを競い合い、会場の拍手による勝敗決めも大盛り上がり。さて、どちらが勝ったのでしょうか？！

本稿では2025年10月22～24日に開催されたad:tech tokyo 2025のExhibition Stageでのセッション「AI×Human - Creative Crossover-」の模様をお届けします。

永田芽衣
株式会社I&S BBDO　クリエイティブグループコピーライター

根本怜太朗
株式会社電通デジタル　第1アカウントプランニング部門

森澤敦史
株式会社東急エージェンシー　第5統合プランニング部　アートディレクター

天野豪紀
株式会社日本経済社　統合マーケティング局・プランナー

高田滉平
株式会社Hakuhodo DY ONE　AI戦略企画室クリエイティブAI企画部部長

モデレーター：
西村大輔
株式会社東急エージェンシー CXデザイン局　局長

販売現場を助けるソリューションを開発したい

西村: モデレーターを務めます、東急エージェンシーの西村です。このセッションはJAAA（日本広告業協会）のインターネット広告委員会がお送りします。当委員会は、デジタルマーケティング領域における広告会社のプレゼンスアップと、インターネット広告の信頼性向上を目的に、さまざまな課題に取り組んでいます。

昨年のad:tech tokyoでは、あらかじめ生成AIで考えたコピーに対し、若手クリエイターたちがこの場で考えたコピーとどちらが良いかを競った結果、若手の皆さんの圧勝に終わりました。そのセッションの反響がとても大きく、第2弾をやらせていただくにあたり、今回は「若手同士で対戦してもらおう」という考えで、「チームAI」と「チームHuman」に分かれてクリエイティブに臨むことになりました。

西村: それぞれ自己紹介を兼ねて、普段からAIを使っているかどうか、うかがえますか？

根本: 電通デジタルの根本です。AIはまったく使っていないのですが、今回チームAIとして初めて試してみました。

高田: Hakuhodo DY ONEの高田です。僕はAI推進の部署にいるので、かなり初期から使っていました。

西村: 今回は電博でチームAIとして、よろしくお願いします。続くお三方は、チームHumanです。

永田: I&S BBDOでコピーライターをしています、永田です。AIは、コピーのアイデア出しなどに使って、ヒントにしています。

森澤: 東急エージェンシーでアートディレクターをしている森澤です。僕もAIはかなり使っていますね。

天野: 日本経済社の天野です。僕はプランナーなので、企画の構成やデータ分析などに使っています。

西村: ありがとうございます。さて、お題は3問あります。すべてAIへのプロンプトで作成するチームAIは2時間、人力によるチームHumanは3時間内で、コピーとボディコピー、デザインまでを制作しました。ただし、チームHumanのデザインはラフスケッチまでとし、追ってAIも部分的に活用しながら改めて仕上げてもらいました。勝敗は昨年同様、会場の皆さんの拍手の大きさで決めたいと思います。

それぞれ、制限時間中はこんな感じでした。机に出ているものがまったく違いますね。

左がチームAI、右がチームHuman

6Gスマートフォン、どうアピールする？

西村: では、早速ひとつ目のお題に参ります！　商品は6Gのスマートフォンで、社会人全般に向けた認知獲得が目的です。

西村: では、両チームの案を見てみましょう。クリエイティブまで出すとどちらの案か分かってしまうので、コピーで対決します。

①

②

西村: では、このどちらが良かったか、会場の皆さんに聞いてみましょう。①が良かった方！

会場: （やや大きめの拍手）

西村: けっこう多いですかね？　では②が良かった方！

会場: （①と同じくらいの拍手）

西村: これは甲乙つけがたいですね、今回は同点ということにしましょう。
どちらのチームだったか、クリエイティブとともに明かしますと、まず①がチームAIの案でした。これはどのように発想したんでしょうか？

根本: 最初に6Gに関する紹介文を調べると、BtoBでどう変わるかというものが多かったので、「ユーザーにとって何がいちばんの価値なんだろう」と2人で議論をしました。そこから、今見ている景色を空間ごと共有できる、みたいなのはおもしろいよねという話になり、それを一言で表せるコピーをAIと探りました。

西村: クリエイティブは、どのように指示したんですか？

高田: Googleの「Nano Banana」という、会話形式で画像を生成できるAIで作成しました。まず、スマートフォンを触っているだけの画像を出させて、何度か調整した上で、別で作成したスマートフォン内の画像をはめ込みました。段階を踏むと、例えば色味がおかしくなったりしたので、その都度指示して直していきました。

西村: なるほど。では②についてチームHumanに聞いてみましょう。
3人で分担して考えていったりしたのですか？

永田: いえ、はじめは3人でそれぞれの考えや調べたことを共有しました。方向性が見えてからは、森澤さんにはラフのほうに集中していただいて、私と天野さんでコピーに時間をかけていきました。

森澤: 普段の業務では、コピーができてからグラフィックに取り掛かりますが、今回は制限時間があったので、とにかく先に手を動かそうということで、同時進行になりました。

西村: クリエイティブのポイントなどは？

天野: 議論の中で、「6Gになると“圏外”という概念がなくなるのかもね」という話が上がったんです。で、私が一人旅の最中に友人にビデオ通話をしたことを思い出し、こういうことが場所を問わずにできるようになるといいよね、といった流れでボディコピーを練っていきました。

西村: なるほど。次の2つのお題と比べて、このお題だけ「6G」という具体的に見えている技術やプロダクトがテーマだったので、その点で考えやすいところと難しいところがあったかもしれないですね。

高田: このお題がいちばん難しかったですね。

永田: そもそも6Gに詳しくないので、どう言い換えるかが難しかったです。

1000万円のタイムスリップツアー、魅力は？

西村: では2つ目のお題です。「1990年代の日本へGO！　タイムスリップツアー2泊3日の旅」の認知を獲得してください。……登壇してくれている5人は、90年代をリアルタイムで過ごしていないと思いますが、80年代のいわゆるバブルがはじけて、いろいろなカルチャーが生まれた時代ですね。そこをどうポイントにするかを見てみたいなと思って、こんなお題になりました。

西村: 早速、2つの案を見てみましょう！

①

②

西村: では会場に聞いてみます。①が良かった方！

会場: （やや大きめの拍手）

西村: 多そうですね。②が良かった方！

会場: （やや小さめな拍手）

西村: おっと、①の勝利のようですね。制作者を発表しますと、①がチームHumanでした！　おめでとうございます。皆さん、どういうポイントでつくりましたか？

永田: 90年代を過ごした方々がこの時代をどう表現していたかな、と思い返すと、「昔は良かったね」という言葉をよく聞いた気がしたんです。
今と違ってスマホがなく、メディアも多様ではなかったころは、皆が一点集中で熱狂できたのかもしれない。それを体験できるのが、この旅のおもしろさじゃないかと考えました。

天野: 調べる中で、90年代の魅力をものすごい熱量で語るnoteを読んで、この熱量をうまく表現できないかと。ひとつ目のお題の流れで、スマホの圏外がなくなる良さもあるけど、スマホに残せない良さもあるよね、と話し合いました。

西村: では、チームAIにも聞いてみましょう。どういうポイントでつくりましたか？

根本: まず、90年代について調べました。そのころを知っている、今の40～50代の方に当てるようなイメージです。「スマホがない」という点はチームHumanの着眼と同じですが、スマホがない、つまり情報の流通がゆっくりだったことが特徴かなと考えました。

高田: クリエイティブは、ドアを開けたらその時代に行く、という指示を出したのですが、ちょっと僕の90年代感がずれていたみたいですね……部屋を暗くして、と後から追加したので。

西村: たしかに、こんなに暗くないかも（笑）。グラフィックをアニメーションにしたのは、何か意図が？

高田: いえ、はじめに出てきたイラストを写真にしたかったのですが、あまりうまくいかなくて。写真からイラストにするのは、けっこうできるのですが、イラストから写真へのような抽象的なものの具体化は難しいのかなと思っています。

BtoB商材「ネジ」の問い合わせ獲得、どうする？

西村: それでは最後のお題にいきましょう。こちらは中小企業や町の工務店のようなイメージで、ビジネス関係者に向けたBtoBのクリエイティブです。ポイントは、目的が認知ではなく問い合わせなので、ちゃんと問い合わせにつなげることですね。特徴をうまく使ってコピーに落とし込んでみましょう。

西村: 2つの案は、こちらです！

①

②

西村: ①が良かった方！

会場: （やや大きな拍手）

西村: やや多いですかね。では②が良かった方！

会場: （やや小さな拍手）

西村: これは、①の勝利ですね。こちらを担当したのはチームAIでした、おめでとうございます！　このクリエイティブについて、教えてもらえますか？

高田: ネジにまったく詳しくないので調べたところ、回転する力の効果を表す「N・m（ニュートンメートル）」という単位に行き着いたりして、ネジの性能を表すのに使いました。また、「曲がらない」ことが大きな特徴だと思い、それを強調したいとAIに指示したところ、特許があるといいと薦められて。それで、特許の内容を具体化してもらいました。