ヒット習慣予報 vol.331『読書泊』
こんにちは。ヒット習慣メーカーズの中川です。
本屋に行くのが好きで、行くたびについ新しい本を買ってしまいます。でも、自宅に帰るとまだ読んでいない本が山のように積まれています。いわゆる積読(つんどく)というやつです。Googleトレンドで見てみると、積読の検索数がじわじわ増加していることがわかります。積読人口が増えてそうです。しかも、新しく買った本の方を読みたくなってしまうので、古い本は積まれたままで、さらに奥深くに追いやられていきます。どうしたものか?と思っていたら、どうやら、最近、まとめて本を読むために宿泊をする「読書泊」が流行っているらしいという話を耳にしまして、今回はそれについて調べてみようと思ったわけです。
▼「積読」の検索数推移
ひとつ目は「ホテルで読書泊」。
これは一番スタンダードな読書泊ですね。ブックホテルはその名の通り、本を楽しむためのホテル。図書館のように1万冊以上の本が所蔵されていて、好きな場所で思うがままに読書が楽しめます。手ぶらで行って、読みたい本を楽しめる手軽さがいいですね。また、自分が所有する本を持ち込んでゆっくり読書したい人のために、24時間おこもりステイを提案するホテルも増えてきました。例えば、昼12時にチェックインしたら翌日の昼12時まで滞在できるプランです。「読書合宿」という言葉もあるくらいで、チェックインからチェックアウトまで、食事以外は徹底的にホテルで読書をし続ける人もいます。SNSを眺めてみると、ひとりで行く人もいれば、夫婦や友達と行く人もいるようです。1泊だと物足りないから2泊3日する人もチラホラ。ちなみに、私の知り合いには、大量の積読本を段ボールで配送し、京都の長屋を1か月貸切って読破したという猛者もいました。こうなると、もはや修行ですね(笑)
次に「キャンプで読書泊」です。
ここ数年ぐっと身近な存在になったキャンプ。グループでのみならずソロキャンプに行く人も少なくありません。そんなソロキャンプの目的が読書!という人もいるんだとか。キャンプに行ってあれこれせわしなくするのではなく、あえて余裕のある過ごし方をする。自然の心地よく静かな環境の中で、誰に邪魔をされるわけでもなく、読書に励むことができるのです。森の中だけでなく海辺のキャンプも読書に向いているのだとか。話を聞いているだけで、思わずやってみたくなりますよね。日ごろのストレスから解放されて、心が穏やかになっていくこと必至ですね。
最後は「車で読書泊」です。
車で生活をするバンライフという言葉も一般化してきましたが、YouTuberの中にも車中泊動画をアップする人が増えていますよね。(※車中泊は健康面での危険性もあるのでお気を付けください)そんな車中泊のお供に読書。車の中の空間は集中力が高まりやすいので読書に最適なんだとか。車だけでなく、電車も読書に向いていて、乗り鉄、撮り鉄ならぬ、「読み鉄」という言葉もあるのだとか(笑)。その極めつけが寝台列車。目的地まで夜通し読書を楽しむ人もいます。鉄道好きにはたまらない、なんとも贅沢な時間の過ごし方ですよね。
では、なぜ「読書泊」は広がりつつあるのでしょうか。
ひとつは、のんびりホテルステイの浸透です。旅行と言えば、事前にみっちり計画を立てて、ホテルですごす時間は最小限に抑え、時間ある限りいろんな観光スポットを訪れるというケースが多かったと思います。でもコロナ禍の影響で、あくせく動き回るのではなく、ホテルでの滞在を目的としたホカンスが増えました。外出制限が落ち着いた今もなお、ゆっくりとホテルステイして、その様をSNSにアップする若者も多くいます。そんなホカンスに読書がぴったりというわけです。
もうひとつの理由は、ストレスからの解放です。スマホやテレビをあえて見ないで、ひたすら読書をする。そもそも読書に没頭するとリラックスできますし、日々のせわしない時間の流れからも解放される。ふかふかのベッドに、景色がよく快適な空間。ひと休みして温泉にも浸かったり。メンタルケアの新たな手段として、確立していきそうな予感がします。
このように広がりつつある「読書泊」ですが、そこには新たなビジネスチャンスが広がっています。
「読書泊」のビジネスチャンスの例
■おこもりステイの人向けに、外から部屋まで好きな本を届けてくれるホテル専用宅配ブックサービス。
■年に何回か読書泊をする人がお得に泊まれるように、ホテルが読書泊パスポートを発行する。
■鉄道会社が、図書館のように本をいっぱい積んだ寝台ブックトレインを運行する。
など
いや、ほんとに、読書泊したいんです。3泊4日くらいずーっとおこもりして、積読をつぎつぎに読破していく。そんな贅沢な時間。どこの宿がいいんだろう?と思いを巡らせるのも楽しいですし、誰かおすすめの宿を教えてほしいです!でも、いつも旅行行くときにいっぱい本を持っていくのですが、いろいろ移動しすぎたり、お酒飲みすぎたり、寝ちゃったり、一冊も読み終わらないケースが多々あって、そういう残念な未来も予測されるんですよねー(笑)
▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。
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クリエイティブ局 チームリーダー
ヒット習慣メーカーズ リーダー
エグゼクティブクリエイティブディレクターメーカーの商品開発職を経て、2008年に博報堂中途入社。
ECDとして、広告のみならず商品、サービス、事業にいたるまで幅広い領域に携わっている。今年に入って、レコードプレーヤーを買いました。レコード屋さんに繰り出して、ジャケ買いをして、家に帰ってドキドキしながら曲を聴くのが最近の楽しみです。