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番組宣伝と視聴率の関係を可視化する!  ──データを活用してテレビコンテンツの価値向上を目指す「TV AaaS Lab」
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番組宣伝と視聴率の関係を可視化する! ──データを活用してテレビコンテンツの価値向上を目指す「TV AaaS Lab」

メディアが多様化している中、テレビ放送局は視聴率を上げるためのさまざまなマーケティング活動を進めています。博報堂DYメディアパートナーズは、データを活用した「AaaS(Advertising as a Service)」の仕組みを活用し、関西テレビとともに番組宣伝と視聴率の関係を可視化するチャレンジをこの4月から続けてきました。
9月にはテレビ施策の価値向上を目指し、共創コミュニティ「TV AaaS Lab」を始動。放送局と連携する体制を整えました。先行的な取り組みの中から見えてきたことと、これからの方向性について、関西テレビ マーケティングセンター(宣伝)の二人と、「TV AaaS Lab」のチームメンバーに語ってもらいました。

前田 香久氏
関西テレビ放送
コンテンツデザイン本部 コンテンツデザイン局
マーケティングセンター

大澤 郁予氏
関西テレビ放送
コンテンツデザイン本部 コンテンツデザイン局
マーケティングセンター

吉田 拓海
博報堂DYメディアパートナーズ
関西支社統合プラニング局 AaaSプラニング部

藤井 陸
博報堂DYメディアパートナーズ
関西支社統合プラニング局 AaaSプラニング部

コンテンツごとに異なる視聴率向上のアプローチ

──はじめに、テレビコンテンツのマーケティングにおける現在の課題についてお聞かせいただけますか。

前田
この15年ほどの間にさまざまなデジタル媒体が登場し、最近ではテレビモニター以外でコンテンツを楽しむ人たちも増えています。私たちの第一の役割は、番組をテレビでリアルタイムに視聴していただけるようなマーケティング施策に取り組むことです。一方で、録画や配信でコンテンツに接していただくことも大切です。リアルタイム視聴、録画・配信視聴を合わせ、トータルでいかに多くの視聴者にコンテンツを楽しんでいただくか。それが今のテレビ放送局の大きな課題だと捉えています。
大澤
いわゆる「トータルリーチ」という考え方で地上波、ネット配信を含め、コンテンツビジネスを総合的に成長させていくということが求められています。私たちが属している部署が「宣伝部」から「マーケティングセンター」に名称が変わったのも、狭義の宣伝にとらわれない、トータルなマーケティング戦略が必要であるという方針に基づいたものです。とはいえ、テレビコンテンツにおいて重要な指標の一つが地上波の視聴率であることは、忘れてはいけないのかなと思います。

──視聴率を上げる取り組みも変化しているのでしょうか。

前田
デジタル媒体への広告出稿やSNSの活用が不可欠になっています。もちろん、他の番組内やCMでの番組宣伝、ドラマの出演者による会見、アナログ媒体への出稿といった従来の方法も依然有効です。コンテンツを多種多様な見方で楽しんで頂くように、こちらもいろいろなコミュニケーション方法をミックスしていくことが必要であると感じています。

──番組の内容によってコミュニケーションの方法も変わるわけですよね。

前田
そうです。例えば、全国ネットドラマの場合、関西テレビが制作しレギュラーで放送しているのは月曜夜10時の一枠。この枠でクールごとにさまざまな作品を放映することになります。現在放映している『エルピス—希望、あるいは災い—』は社会派エンターテインメントなので、恋愛ものや学園ものなどのドラマとは違ったアプローチが必要になります。一方のバラエティも、テーマや出演者などによってコアターゲットが異なるので、やはりアプローチは番組ごとに変わります。では、どのようなアプローチがそのコンテンツには最適なのか──。それを見極めていくことが最も重要であり、またとても難しいところでもあります。

大澤
SNSで情報が拡散するアイデアを考えることが必要ですし、ターゲット層によっては企業とコラボレーションをして宣伝効果を高めるといったケースもあります。考えなければならないことは、以前より格段に増えているなと思います。

広告の接触データと視聴ログデータを突合する

──そういった課題を解決する取り組みのひとつが今回の「TV AaaS Lab」との施策ということですね。施策の概要をご説明ください。

吉田
「AaaS(Advertising as a Service)」は、広告をクライアントのマーケティング課題に合わせて運用し、成果を最大化していく博報堂DYグループのソリューションです。このソリューションをテレビ番組宣伝におけるマーケティングに活用できないかと考えて関西テレビさんとチャレンジしているのが今回の取り組みです。

AaaSを放送局のビジネスにも活かして、より放送コンテンツの価値を一緒に高めていくという想いで「TV AaaS Lab」というプロジェクトが立ち上がったのはこの9月からですが、実はそれ以前から、AaaSの仕組みを使って番組宣伝と視聴率の関係を明らかにする取り組みを関西テレビの皆さんと始めていました。まず、2022年4月クールのドラマでデジタル媒体やSNSに番組宣伝広告を出稿し、それがどのくらい視聴率に影響しているかを分析しました。その後、7月クール、10月クールのドラマや、いくつかのバラエティ番組でも同様の取り組みを続けています。今回立ち上がった「TV AaaS Lab」のプロジェクトが、今までの関西テレビさんとの取り組みをより良いものにするきっかけにできると良いと思います。

藤井
番宣広告の接触データと、インターネットにつながっているテレビの視聴ログデータを突合し、その関係を明らかにするというのが具体的な方法です。これによって、番組宣伝広告がどのくらい実際のTV視聴に繋がったかを可視化できると共に、データの切り方を工夫することで、デジタル広告のメニュー別/ターゲティング別/クリエイティブ別など様々な角度での分析が可能です。それを踏まえて、宣伝戦略や広告予算配分を最適化していくというのが、この取り組みの大きな目標です。
吉田
データを子細に見ていくことによって、どの施策が効果的で、どの施策はあまり効果がなかったかが明らかになります。その分析を議論のベースとして、次のクールの宣伝戦略のプランニングをより精緻化していき、視聴率に対する番組宣伝広告のインパクトを大きくしていく。そういったチャレンジを可能にするのが今回の取り組みであると考えています。

──データを見ながら1クールの中で広告展開の方法を変えていくといったことが可能になるのでしょうか。

吉田
将来的にはそれを可能にしたいと考えています。現段階で実現しているのは、例えばドラマの場合は、初動にあたる1話目から3話目くらいまでの期間にいくつかのメディアに広告を出稿し、それをまとめて分析し、次のドラマ番組宣伝に活かすという1クールのドラマキャンペーンごとのそれぞれの効果を可視化していくといったところまでです。
大澤
ドラマは、まずは初回放送を多くの視聴者に見ていただくことが非常に重要で、そこに多くの人を呼び込む方法を検証していくというのが、この半年ほどの取り組みでした。
藤井
デジタルマーケティングのように、短期間でPDCAを高速で回して効果を上げていくというよりも、広告施策と視聴率の関係をしっかり検証していくことをこれまでは重視してきました。
吉田
1つ1つの施策を腰を据えて分析し、知見をためていくことが現段階では最も重要であるというのが、僕たちと関西テレビの皆さんの共通認識でした。そのような知見をこの半年で着実に得られたという手ごたえがあります。

視聴率を上げる「勝ちパターン」をいかに見出していくか

──半年間の取り組みから見えてきたことをお聞かせください。

前田
広告に接触している人の年齢や性別などがデータから把握できることは、番宣広告を展開するにあたってとても有効であることがわかりました。広告接触者と番組のコアターゲットの関係を見て、どの媒体を選択すればいいか判断がしやすくなったことが、この半年間の取り組みの大きな成果の一つだと思います。
大澤
同じ媒体でも、コンテンツと枠の組み合わせによって、動画の方が効果的な場合もあるし、静止画の方がアクションにつながる場合もあります。それがデータから少しわかるようになったことは興味深かったです。その情報を元に、上司やプロデューサーに説明することもあります。

もう一つ、とても助かっているのは、担当者間で知見を共有できるようなったことです。ドラマの宣伝はクールごとに担当者が変わります。それぞれの担当者がコンテンツに合わせて宣伝方針を考えるわけですが、これまでは、WEB広告に関して、前クールの経験を必ずしも共有できていませんでした。いろいろなデータが得られるようになったことで、どのような媒体の活用が有効だったかといった知見を次のクールにいかせるようになりました。これを継続していくことが、番組宣伝の方法論の確立につながればよいなと思います。

藤井
歯がゆいのは、まさに現在放映中のドラマの視聴率を関西テレビさんが使っている尺度(i-NEX)でも十分に分かるくらい大きく向上はさせられていない事です。データ分析から視聴率を上げる「勝ちパターン」をいかに見出していくか。それが今後の課題ですね。
吉田
そういう意味では、この半年間は長い道のりの中のファーストステップだったと言えるかもしれません。僕たちと関西テレビの皆さんとの間で、ある程度の共通認識をつくることはできました。ここから次のステップに進んでいきたいと考えています。

地道な取り組みを続け、方法論を確立したい

──今後の見通しをお聞かせください。

藤井
この半年間、いくつかのデジタル媒体に出稿してきたのですが、今後は屋外広告などの活用も検討しています。屋外広告への接触動向を検証する技術はある程度確立されています。接触層と視聴率の関係などを分析することで、これまでにない知見が得られると考えています。

もう一つ、博報堂DYグループ内のクリエイティブチームや、テレビ広告枠の担当チームと連携して、番宣施策の効果をさらに上げていくことにもぜひチャレンジさせていただきたいと思っています。データを軸として人や機能をつなげ、テレビコンテンツの価値を多くの生活者に伝えていくこと。それが大きな目標です。

吉田
僕は、次のステップに向かう前に、ここまでの取り組みを一度整理する必要があると思っています。この半年間で、データ活用の道筋はある程度見えてきました。それをいったん整理して、次にやるべきことは何かを見極める。その作業を関西テレビの皆さんと進めさせていただきたいと考えています。
前田
ここまでの取り組みで、外部のメディアやSNS、あるいは番組のホームページを上手に活用することで、視聴率向上につながる「仕掛け」を作れる可能性も見えてきたと思います。ぜひ、今後チャレンジしていきたいですね。
大澤
データ分析に取り組んでみてよりわかったのは、データを活用するのも、それを使って視聴率を上げるのも、決して簡単ではないということです。また、データがすべて正しいわけではなく、万能でもないと思っています。新しいことにチャレンジしているということに満足してしまいがちなことにも気をつけないといけないなと…。模索しつつも効果的な方法を見つけるために地道な検証を続けていきたいと思っています。
吉田
おっしゃるとおりですね。一足飛びに成果を求めるのではなく、一つ一つ着実にスモールケースを積み重ねて、最適な方法論を丁寧に紡ぎ出していく。そんな取り組みをこれからも関西テレビの皆さんと続けさせていただきたいと思います。

TV AaaS Labについての最新情報はこちら↓

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  • 前田 香久氏
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  • 博報堂DYメディアパートナーズ
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