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Googleの技術を駆使して企業のデジタルマーケティングをサポートする──D.Tableが目指すクライアント支援の新しい形
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Googleの技術を駆使して企業のデジタルマーケティングをサポートする──D.Tableが目指すクライアント支援の新しい形

博報堂DYグループにおけるデジタルマーケティングの中核企業であるデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社(DAC)と、Googleのソリューション活用のエキスパートであるクラウドエース株式会社が、新会社D.Table株式会社を設立したのは2020年2月です。Googleのソリューションによって企業のデジタルマーケティングを支援するビジネスに特化したD.Table。そのトップを務めているのが、DACの小山裕香と、クラウドエースの松本健治です。同社のビジネスモデルや、この1年半余りの取り組みについて、2人に語ってもらいました。

小山裕香
D.Table株式会社 代表取締役社長

松本健治
D.Table株式会社 取締役副社長

Googleの技術活用に特化する理由とは

──D.Tableが設立されたのは2020年2月でした。はじめに、この会社のミッションについてお聞かせいただけますか。

小山
ひと言で言うと、「Googleの技術活用に特化したコンサルティングサービスを提供する会社」です。
松本
Googleの提供するソリューションを活用して、企業のデジタルマーケティング全般を支援するのがD.Tableのビジネスです。クライアントによって課題やニーズは異なります。クライアントが必要としているものを把握して、必要に応じたサービスを提供しています。

──なぜ、Googleの技術活用に特化しているのでしょうか。

松本
大きな背景として、データ取り扱いのルールが厳格になっているという事情があります。これまでのようにCookieを活用した広告配信などができなくなると、自社が保有するデータ、いわゆるファーストパーティデータの活用が非常に重要になります。ファーストパーティデータを活用するための機能を豊富に揃えているのがGoogleであり、何より技術的に洗練されていて使いやすいという大きな特徴があります。ファーストパーティデータの活用を主体としたデジタルマーケティングにGoogleのソリューションを活用することが現状では最適である──。それが、僕たちがGoogleの技術活用に特化したサービスを提供している理由です。

──具体的にはどのようなソリューションがあるのですか。

松本
「Google Cloud」と「Googleマーケティング プラットフォーム」の2つです。Google Cloudは、Googleが提供するシステム基盤で、サーバー、データマネジメント、BI(ビジネスインテリジェンス)、アプリケーションといったさまざまなレイヤーをその基盤の上でつなぐことができます。もう一つのGoogleマーケティング プラットフォームは、デジタルマーケティングの広範な施策に対応できる統合型のプラットフォームです。
小山
クライアントのデータ活用のステータスはさまざまで、すでにシステムやソリューションを導入されているケースも少なくありません。Googleの強みの一つは、他社のソリューションの機能をつなぐことができる点にあります。すべてをGoogleにすることをクライアントお勧めするわけではなく、Googleを基盤としながら、クライアントのニーズに応じて柔軟にいろいろなツールを組み合わせて、最適なデータ活用の実現を支援する。それが私たちのスタンスです。

データ活用における「自走」に向けた支援

──D.Tableのビジネスモデルについてご説明ください。

小山
一般に企業のデジタルマーケティングは、マーケティング側からスタートするケースと、ITやシステム側からスタートするケースに分かれます。マーケティング側からスタートするケースではITのスキルが不足し、逆にIT側から始まるとマーケティングの知見が不足する傾向が見られます。

D.Tableには、マーケティングのプロである博報堂DYグループのメンバーと、ITやGoogleのソリューションのプロであるクラウドエースのメンバーがいます。そのメンバー達が、クライアントのデジタルマーケティグにおいて不足しているところをサポートするのが基本的なサービスモデルです。

松本
デジタル人材は社会全体で不足していて、クライアント側にも、私達の側にも十分な人材がいるわけではありません。ですから、私達はそれぞれの人材の力を合わせて一つのチームをつくり、その総力によってクライアントのデジタルマーケティングを成功させていくのが最良のモデルであると考えています。

ただし、そのチームの主体となるのはあくまでもクライアントです。クライアント側が主体となり、ゆくゆくは独力でデータを活用できるようになることを支援することがD.Tableの目標です。

──データ活用のインハウス化(内製化)をクライアントとともに実現するということですね。

小山
もちろん、インハウスモデルがデータ活用の唯一の正解であると考えているわけではありません。インハウス化を目指さないケースの支援もさせていただいています。

しかし、インハウス化には多くのメリットがあることも確かです。データ活用のプロ人材を社内で育成できること。データ活用の知見を社内に蓄積できること。それから、多くの顧客情報を含むファーストパーティデータを自社で取り扱うことによって、セキュリティ上のリスクを最小化できることなどが挙げられます。

松本
目指すべきインハウス化のレベルはクライアントによってさまざまですが、まずはクライアントとの対話を通じてゴールを定めて、そのゴールに向けて、最終的にはクライアントがデータ活用において自走できるようになるまで並走させていただく。それがD.Tableの主な役割であると定義しています。
小山
私達が支援させていただいたクライアントが自走できるようになって、データを活用して世の中にインパクトをもたらすことができたら、すごく嬉しいですよね。
松本
もちろん、自走できるようになった後にもさまざまな課題は出てくるはずです。クライアントが新しい課題に直面した時はそのつどサポートさせていただきながら、長期的なおつき合いを続けていけることが理想ですね。

ダイバーシティがクライアント理解の力になる

──会社設立からこれまで1年半余りの取り組みについてお聞かせください。

小山
専門領域が異なる2つの企業が融合して生まれた会社だったので、1年くらいはすり合わせに多くの時間がかかりました。見積もり一つをとっても、マーケティング側とIT側では出し方が全然違うんですよ。

最初にクライアントに提出するお見積もりは、あくまでも「概算」であるべきであるというのがマーケティングの側にいる私の感覚です。取り組みの過程で、新しい課題が見つかってやるべきことが増えることもあるし、逆に当初の想定で必要と考えられた工程がいらなくなることもあるからです。

松本
一方のクラウドエース側はIT業界のプレーヤーなので、要件定義を最初にしっかりやって、トラブルを可能な限り防ぐというのが基本的な考え方です。
小山
実際に一緒に働いてみると、私たちの方に反省すべき点が多かったですね。クライアントとの信頼関係をつくるには、厳密な要件定義が必要なケースがあることを学びました。
松本
僕たちも同じで、案件によっては最初から要件を厳密に定義できない場合もあることを博報堂DYグループのメンバーから教えてもらいました。例えば、クライアントの側でゴールが最初から明確ではない場合は、動きながら柔軟に細かなところを決めていった方が、クライアントのニーズに合っているわけですよね。
小山
結局のところ、クライアントの状況や案件の内容によって、重視すべき点は異なるということで、その考え方が今のところ両者の一致点になっています。組織や文化の完全な融合にはまだまだ時間がかかりそうですが(笑)。

──D.Table自体にダイバーシティの緊張感があることによって、クライアントの多様な要望に応えられるということもあるかもしれませんよね。

松本
確かに、100%の融合を目指す必要はないのかもしれません。クライアントの課題がマーケティング寄りならば博報堂DYグループの知見によって支援し、課題がシステムやIT寄りならクラウドエースのスキルでサポートする。そんな多様性を残しながら、いかにうまくやっていくか。それがこれからの課題です。
小山
最近、いろいろな場面で「ワンテーブル」という言葉を耳にします。いろいろな立場の人が寄り合って話し合いながら何かを生み出していくことを意味する言葉ですが、それぞれがそれぞれの立場を主張し続けると、テーブルは一つでも組織自体は「多層化」してしまいます。それぞれの強みを保ちつつも、多層化せずに同じ価値観を共有していければいいですよね。
松本
価値観を共有しようとする日々の営みが、クライアントの困りごとを理解する力にもなる。そんなふうにも思います。社内のパートナーを理解するために努力してきた経験を、クライアント理解にぜひ生かしていきたいですね。

人材をいかに育てていくか

──これまでのビジネス上の成果はいかがですか。

小山
すでに数社のクライアントを良い距離感で支援できる体制ができています。いわゆる「委託」で仕事を受けるのではなく、「並走」する形での支援です。

1年半ほどさまざまなクライアントのお話をうかがってきてわかったのは、「困りごとはさまざまだけれど、ある程度のパターンはある」ということです。そのパターンを踏まえたソリューションをつくれば、多くのクライアントにご活用いただける可能性があります。そうして生まれたソリューションの一つが、クライアントの機械学習活用を支援する「ML Booster」です。

松本
ご相談の入口になるのは、CDP(カスタマーデータプラットフォーム)の構築に関するものが多いのですが、CDP構築は手段であって目的ではありません。CDPはあくまでもファーストパーティデータを活用する基盤であり、重要なのはそれを使って何をやるかです。その目的が具体的なマーケティング施策であり、それを支えるのがBIや機械学習活用のソリューションです。現在、「Boosterシリーズ」として、ML Boosterに続くソリューション開発をCDP構築で必要な4つのステップで進めています。4つのステップは、データを集約し使いやすい状態にする「CDP Booster」、現状を正しく認識するためにデータを可視化する「BI Booster」、機械学習でデータ活用をおこなう「ML Booster」、データから得られたインサイトをもとにコミュニケーションを変える「Marketing Booster」です。

小山
D.Tableの支援領域はデジタルマーケティングですが、オフラインでの施策を必要とされるクライアントももちろんいらっしゃいます。その場合は、博報堂DYグループのさまざまなリソースをご提供することが可能です。重要なのは、データが整備された状態をつくり、そこからいろいろな施策の可能性を広げていくことです。私たちが責任をもって伴走させていただきます。

──現状の課題をお聞かせください。

小山
「人」に尽きますね。クライアントの課題を解決する最適な方法があるのに、それを担える最適な人材が足りない。そのようなケースがこれまで何度かありました。先ほども話があったように、デジタル人材は社会全体で不足していますから、社内で人材を育てていくしかないと思っています。
松本
私達のビジネスは、テクノロジーやエンジニアリングに精通しているだけでは成り立ちません。クライアントと対話し、課題解決の道筋を見つけていくコンサルティングの力が必要とされます。エンジニアリングの力とコンサルティングの力をあわせ持つ人材を、クライアントとの実際のお仕事の中で育成していくのが最良の方法だと思います。

──設立時の目標に対して、現在のD.Tableはどのくらいまで来ていると思いますか。

小山
半分ですね。点数で言うと50点くらいだと思います。

──残りの50点は。

小山
実績です。クライアント支援の実績を積み重ねて、結果を出していくことが何より大切だと考えています。ご相談の数は日々増えているので、一つ一つに丁寧にご対応しながら、着実に成果を生み出していきたいですね。
松本
自社でデータを運用していきたいと考えていらっしゃる企業が私達の主要のクライアントになるわけですが、デジタルマーケティングに取り組みたいけれどどうしていいかわからないといったご相談でももちろん対応させていただきます。お話を伺えば、何が足りないか、何が必要かを整理、判断させていただけるはずです。
小山
マーケティングの困りごとでもデジタルに関するお悩みでも、Googleのソリューションで何とかできることはたくさんあります。気軽にご相談いただければ嬉しいですね。
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  • 小山 裕香
    小山 裕香
    D.Table株式会社 代表取締役社長
    インターネット専業広告代理店を経て、2007年博報堂DYインターソリューションズ(現:デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社)入社。
    運用広告、ダイレクトマーケティングなど、大量のデータを継続的に取り扱う部門での経験を経て、マーケティングシステム基盤構築のチームを立ち上げ、多くのBI/MA環境の構築に携わる。
  • 松本 健治
    松本 健治
    クラウドエース株式会社 執行役員 事業推進本部長
    D.Table株式会社 取締役副社長
    呉服屋から一転して国産ソフトウェアメーカーの営業・営業企画に従事し、クラウドエースへ参画。営業責任者から事業本部長を経て2021年より執行役員に就任。Googleプロダクトを利用したデータドリブンマーケティングを推進するために2020年2月からD.Table株式会社の取締役副社長に就任。