顧客発想でBtoBマーケティングとセールスをシフトするソリューション、「GRIP&GROWTH」とは?【BtoBマーケティングDXカンファレンス GRIP&GROWTH レポート②】
博報堂とアイレップは、2021年10月6~7日にかけて、BtoB企業のマーケティング・セールス領域のDXを推進するカンファレンス「BtoBマーケティングDXカンファレンス GRIP&GROWTH」を共催しました。BtoBマーケティングにおける潜在顧客の獲得や育成、その後のセールス領域に関する戦略や事業支援など、企業のDXを推進するための知識や戦略、トレンドや今後の展望について紹介しました。今回の第2弾では、DAY1の概要についてレポートします。
「戦略支援|マーケ&セールスを真に動かす『顧客発想の戦略術』」
登壇者:池田善行(株式会社博報堂 生活者エクスペリエンスクリエイティブ局 クリエイティブストラテジスト)
まず池田は、従来のプロダクトアウト型セールスに代わり現代は顧客の課題起点でのソリューション型セールスにシフトしているとし、顧客の課題を解決し続けることでLTVを高めるのが顧客発想のテーマだと述べました。そのうえで第一に、「マーケティングとセールスのパス回しによるフルファネル貫通作戦」が必要。マーケティングとセールスの見込み客に生じがちなズレを解消するには、“売れる確率が高く、かつ情報感度の高い見込み顧客”というパスをマーケがセールスに出すことが鍵になると語りました。そのためには、企業のペルソナを見てLTVの高い企業の特徴を可視化し、自社の提供価値もアップデートしてセグメントごとの攻略シナリオを考えるべきであるし、社員ペルソナも重要で、担当者と決裁者がどう意思決定するかを明らかにし、ソリューション導入の選定基準や必要なナレッジを細かく見極めることが必要と説明。業界、企業、部門、人という物差しでこれらを立体的に見ることで、マーケティングとセールスのパスがシャープにつながるはずと説きました。
第二に必要なのが「自社と顧客のwin-winの関係」。自社の課題解決のナレッジを掘り起こし、顧客の課題解決に最適なパスを出し続けることで常に顧客のお役立ちができる状態をつくるべきと語り、このナレッジタンクが顧客との関係性創りの重要な資源になり、またその場合は顧客理解があるマーケターと自社理解がある事業部が共創することを推奨しました。
第三に必要なのが「目的や状況で使い分ける、パス回しの作戦型」。ファネルのつくり方は見込み顧客のタイプにより異なり、たとえば特定企業には、ダイレクトにターゲティングしアプローチする狩猟型、顧客が広範囲の場合は、オウンドメディアでソリューション訴求し興味ある顧客を絞り、インサイドセールスで広い網をかけながらシャープに狙っていく。どちらの戦略が合うか見極めるべきと述べました。
「BtoBはさまざまなモデル、価値があるので、最適な情報価値の伝え方のシナリオを模索し強化する必要がある」と池田。最後に「セールスマーケティングは高度なチームワークを要する競技」なのだと理解し、顧客発想することでチームの得点力を上げ、さらに顧客に対してもパス回しを臨機応変に作戦として考えることが重要だと説きました。
戦略支援|GRIP & GROWTHのBusiness Strategy Solution ~顧客発想で事業を動かす戦略立案とは~
登壇者:米田吉宏(ユナイテッド株式会社 執行役員)
米田はまず事業戦略の潮流として、徹底的なリサーチに基づいた短期的な利益追求のための緻密な戦略から、サステナブルな利益追求、より主観的で流動的に変化に対応できるかが重視されてきていると説明。さらに、“我々は何者か”と“社会の要請”の間にあるパーパスを考え抜き、そこでビジネスを拡大していくことこそがサステナブルな利益成長につながると話しました。「重要なのは、自分たちが変化に柔軟に対応できる組織能力を持っていること、また他社に比べビジネスモデルや提供価値にユニークネスがあること、顧客との関係性の特徴といった、抽象的な部分の3つ」としたうえで、GRIP & GROWTHはスタッフ、クライアント企業、ユーザーを総称した「顧客」起点で戦略策定を考えており、顧客が何を望みどう変化したいかを見立てることが戦略視点としても有益と説きました。
GRIP & GROWTHでは、ソーシャルリスニングや顧客セグメンテーション、ペルソナ分析などで妥協なく徹底的に具体的に顧客理解を進めることができると米田。全社戦略・パーパスの定義、事業・機能別戦略策定、それに基づくオペレーションなど“全社的なトランスフォーメーション”を支援していると語りました。具体的な支援領域としては、事業ポートフォリオ開発、中期経営計画策定、オンオフ連携したデジタルマーケティングのオペレーション構築、人事評価制度などのほか、全社戦略から事業戦略、マーケティング戦略など戦略策定、顧客理解から磨き込みといったオペレーション変革・システム構築、また業務の可視化などによる業務改善策など、変革策の具体化を支援していると続けました。また組織戦略として、変革に伴う人事制度、人材用件の見直しや研修企画・実行、組織風土変革策の具体化も支援。再定義したパーパスを定着させるためのワークショップや評価制度なども支援していると語りました。さらにユナイテッドとしても、海外ブロックチェーンサービスの日本参入戦略の策定や、教育機関におけるデジタルUX実装など、スムーズな顧客体験を支援した例を紹介しました。
最後に、顧客評価を起点とした営業活動改革の具体的な事例を紹介。あるプロジェクトでは、売り上げの伸び悩みと差別化が課題だった営業活動において、まずは顧客に営業やサービスの評価を聴取、次に営業自らが改善点を検討、そして営業行動を変容させるというサイクルを一定期間回し続けたと米田。その際、自社と競合プロダクトの評価を相対化し、NPS指標で評価を実施。顧客の評価や指摘された内容も可視化しディスカッションすることで、評価をしっかりと受け止め“真因”を分析し具体的な改善方法を整理してもらったと解説。継続して徹底的な調査、分析、改善を行うオペレーションや企業風土を実現したと紹介しました。
戦略支援|顧客理解から「マーケティングの打ち手」を導き出す方法
登壇者:澤井和弘氏(株式会社才流 マーケティングコンサルティング事業責任者)
庄司健一郎(株式会社博報堂 生活者エクスペリエンスクリエイティブ局UXディレクター)
澤井氏は、まず冒頭で「BtoBマーケティングのドーナツ化現象」を指摘。デジタルマーケティングやMAなど施策はさまざまあるが、中心にあるべき戦略がなければマーケティング全体が部分最適になってしまうと説明しました。また、たとえば顧客が知りたい情報ではなく自分たちが伝えたい情報を中心にサービスサイトに掲載することで、問い合わせや商談・受注につながらない、正しくサービス内容を認識してもらえないこともあると澤井氏。購買プロセスについても、購買プロセスが想定と異なることで、SEを強化するなどの施策を実施しても問い合わせや商談は増えるが受注に繋がらず営業が疲弊するだけといった事態になりうると話し、顧客の正しい検討プロセスを知る重要性を説きました。
「顧客理解のための具体的な方法は?」との庄司の問いに、澤井氏は明日からできることとして、「既存顧客、見込み顧客へインタビューし、購買検討の実態を定性的に理解する」「サービスサイトを見込み顧客に閲覧してもらうなどのユーザーテストを行う」「問い合わせ、商談履歴、受注、失注、解約理由をデータで蓄積し確認する」「受注企業の経路分析を行う」「営業同行などを通し顧客と接する」「営業、インサイドセールス、カスタマーサクセスから情報を得て言語化しまとめる」「競合企業の事例インタビューの確認」と回答。その後、ペルソナをつくり、ペルソナごとに抱えている課題を言語化すること、次に必要なのはペルソナごとに売れるロジックを作り問題提起から提供価値の提示・行動の後押しまでのストーリーをつくることだと澤井氏。「売れるロジックをベースにしてサービスサイトや営業資料を作成すると見込み顧客が理解しやすいものになる」と話しました。続いて購買プロセスごとのタッチポイントを確認し、どういう態度変容を起こしてもらう必要があるかを整理することで、活用できるカスタマージャーニーマップがつくれると説明。庄司が「BtoBのカスタマージャーニーの特徴は?」と聞くと、「BtoBの場合、購買プロセスに関与する人が多いので、現場担当者、役員などで異なる興味関心のレベル、訴求ポイントを押さえ、それぞれに響くコンテンツが必要」と回答。さらに適切なマーケティングの階段設計を行えば、最初から商談を打診するのではなく小さなステップを踏みながら商談に誘導できるとし、「商談や受注までのコミュニーケーションが明確になり、インサイドセールスやMAを導入した場合も機能させやすくなる」と加えました。
顧客理解を徹底し、ペルソナ・カスタマージャーニーを作成し、どのチャネルにターゲットペルソナがいるのかを把握、ターゲットペルソナの課題を特定したら、それに応えるコンテンツも特定する。そして、自分たちが使っている言葉が伝わりやすいとは限らないので、言葉や広告文などより伝わりやすいクリエイティブをつくる。最後にターゲットペルソナのカスタマージャーニーに基づき、広告効果やサイトのコンバージョン率に影響を及ぼすCTAを提示する。こうして顧客理解からマーケティングの打ち手が明確になるとまとめ、発表を終えました。
顧客獲得|顧客中心で考える、魅力的なコンテンツの継続的な作り方
登壇者:志水哲也(株式会社タービン・インタラクティブ代表取締役)
志水は「自覚ステージ、検討ステージ、決定ステージそれぞれの中で顧客は多様なコンテンツを消費しながら、課題解決し先へと進んでいく。そこに適切なものを考えるのがコンテンツ計画」と切り出しました。その際潜在顧客の状態や行動を整理し、コンテンツの優先度を検討する必要があるが、欠かせないのが立場や業務特性を含めて詳細に描いたペルソナだと志水。BtoBマーケティングにおいては、顧客は企業内個人として肩書や役割があるためペルソナを描きやすいとしながらも、あくまでも一個人として、情報源や家庭内でのチャレンジなども含め見ていくべきと解説。「ペルソナを固定化してもターゲットは狭くなることはなく、むしろ一個人に届くものは周囲にも届くと考えるべき」と続けました。さらにこの人がどう課題に気づき、どう情報を求め、どういう行動に出るかといったバイヤーズジャーニーと合わせ、各部署が参画したワークショップで意見を出し合い、最良のものをつくるべきとしました。続いて商品がニッチなので対外説明用のコンテンツがない、機密事項が多く外注できないといったケースには、すでにある営業資料からまとめることを推奨。時間がないというケースには、資料とインタビューで外注が可能だし、ブログやセミナーで使用した情報も再利用できると志水。コンテンツをつくるスキルについては、外部プロがつくった専用テンプレートを活用するなどプロと協業し、最終的に社内業務としてノウハウ化すべきとしました。
具体事例として取り上げた商船会社のケースでは、コンテンツ戦略として既存のサービス概要資料のオファー化やブログ執筆フローを構築したほか、既存の名刺データや展示会で獲得するオフラインリードと自社サイトをベースに獲得したオンラインリードの、両者を統合的にナーチャリングしていくプログラムを実施。ローンチ前からKPIを設定し、現在も定例会で効果を確認。クライアントが必要そうな表現や機能を盛り込み、簡単にコンテンツを制作し更新できる専用テンプレートとモジュールを提供することで、現在も高品質なコンテンツをスムーズに発信し続けているとしました。
最後にポイントとして・ペルソナ、ジャーニーから導かれるコンテンツの配信計画をまとめること、・スマートなCMSを設計し運用・KPI検証を高速で回すこと、DXを一過性の施策と考えず経営課題として考えることの3点を挙げ、「コンテンツは全体をドライブする大きな鍵。まだ見ぬ潜在顧客が喜ぶコンテンツをぜひつくり続けてほしい」とまとめました。
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博報堂 生活者エクスペリエンスクリエイティブ局
GRIP & GROWTH 統括ディレクター/プロジェクトリーダー
クリエイティブ・ストラテジスト
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米田 吉宏ユナイテッド 執行役員
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澤井 和弘才流 マーケティングコンサルティング事業責任者
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博報堂 生活者エクスペリエンスクリエイティブ局
GRIP & GROWTH プロジェクトサブリーダー
UXディレクター
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志水 哲也タービン・インタラクティブ 代表取締役