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“今、着手しないと5年遅れる”デジタルシフトのスタート地点 ~Withコロナ環境にBtoB企業はどのように適応すべきか Vol.1~
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“今、着手しないと5年遅れる”デジタルシフトのスタート地点 ~Withコロナ環境にBtoB企業はどのように適応すべきか Vol.1~

いまだ終息の気配を感じられない、新型コロナウイルスの世界的な流行。企業は「Afterコロナ」ではなく「Withコロナ」世界での生存という課題に直面しています。飲食や観光、旅行業などへのマイナス影響がクローズアップされがちですが、普段、生活者が直に接することのない、いわゆるBtoB企業のマーケティング・セールス活動にも多大な影響が出始めています。
いったいBtoBマーケティングにどのような変化が訪れているのでしょうか?Withコロナの世界でBtoBマーケティングはどのように進化すべきなのでしょうか?『デジタル時代の基礎知識『BtoBマーケティング』 「潜在リード」から効率的に売上をつくる新しいルール』(翔泳社)の著者であるアイレップの竹内哲也と、その監修者であるタービン・インタラクティブの志水哲也代表取締役が語りました。
第1回目は、「リードジェネレーション」「リードナーチャリング」の領域を中心にお送りします。

『デジタル時代の基礎知識『BtoBマーケティング』 「潜在リード」から効率的に売上をつくる新しいルール』

BtoBマーケティングのデジタルシフトが”理想”から”現実へ”

竹内哲也(以下、竹内)
新型コロナウイルス流行の影響は確実にBtoBマーケティングにも出ていますよね。ここでいうBtoBマーケティングは、「リードジェネレーション(リードの創出)」「リードナーチャリング(リードの育成)」「フィールドセールス(営業活動)」という、BtoB企業の一連のマーケティング・セールス活動のこと。本来もっと細かくプロセスを分解すべきなのですが、あえてシンプルにしておきます。以前は当たり前に実践できていたこのフローが、多くの企業でストップ、停滞してしまっている。
志水哲也(以下、志水)
新型コロナウイルスの流行が特にネガティブに働いているのは、BtoBマーケティングを完全に「アナログ/オフライン」で行っていた企業かもしれません。リードジェネレーションの役割を担っていた展示会やイベントは軒並み中止になっていますし、顧客の担当者が在宅勤務になってしまえばテレアポも難しい。往訪も困難になり、関係構築や商談も進まないという状況が増えています。「営業活動が一時的にストップしている」と相談を受けたこともありました。
竹内
アイレップには、デジタルシフトがある程度進んでいる企業からの相談も増加しています。多くの場合、デジタルシフトが実現しているのはリードジェネレーション、あるいはリードナーチャリングまで。フィールドセールスを含めてデジタル/オンラインで完結させるノウハウを持っている企業はまだ少ないのが実情です。新型コロナウイルスの流行以降、「リード創出や育成はできる一方で、商談や契約へのスピード感が失われている」という課題が顕在化しているようです。
志水
近年、日本でもBtoBマーケティングのデジタルシフトの必要性が強く叫ばれてきました。しかし、コロナ以前は旧来のオフライン/アナログ施策が十分に機能していたため、あくまで“理想”という捉え方をされていたような感覚でした。新型コロナウイルスの流行が、デジタルシフトを、取り組まなければならない“現実”に強引に引き上げたというのが実感です。

Withコロナ環境下のBtoBマーケティング

リードジェネレーションの課題は情報発信力の強化で解決する

竹内
BtoBマーケティングはリードジェネレーションからフィールドセールスまでを一貫したフレームワークとして捉えて取り組まなければならないものです。しかし、コロナ禍に対応する緊急的な打ち手を考えるうえでは、個別にデジタルシフトを推進することも重要だと思います。例えば、アナログ/オフライン中心で活動してきた企業がリードジェネレーションを強化したい場合、どこから手を付けるのがいいと考えていますか。
志水
真っ先に思い浮かぶのはWebサイトの改善です。マーケティング活動が停滞することは、顧客となりうる企業にとっての情報不足につながります。つまり、顧客自身が必要な情報を手に入れるために行動しなければならないということです。商品やサービスの選定・購買にあたって、顧客が自主的かつ綿密に事前調査を行うのがBtoB商材の特徴。Withコロナの世界ではこの傾向がより強まることが想定されています。

だからこそ、Webサイトを展示会レベルのコミュニケーションツールに進化させたい。展示会ではスタッフが顧客のニーズに応じて商品やサービスを紹介しますよね?一方的に性能やスペックを話し続けたりはしないはずです。ところがWebサイトではこれをしてしまいがちです。自社の商品・サービスを愛するあまり、押しつけがましい表現に陥ってしまうのです。

WebサイトはBtoBマーケティングのエントランスです。会社紹介やカタログではなく、顧客課題を解決するためのコミュニケーションツールとして捉えなおすことが非常に重要です。

竹内
アイレップでも、Webサイトを活用した情報発信力の強化に努めています。2020年6月にはマーケティング専用サイト「DIGIFUL(デジフル)」を立ち上げて、ほぼ毎日、新しいコンテンツを配信しています。運用開始後、1ヶ月程度しかたっていませんが、順調にリードも獲得できている。

コーポレートサイトしか持っていないBtoB企業も多いのですが、コーポレートサイトはブランディングや採用など、さまざまな目的を持って運用されるため、マーケティング特化の施策を打ち出しづらいという側面がありますよね。マーケティング専用サイトの立ち上げは、実体験に即したうえでおすすめできる手段といえます。

ちなみに海外では、大規模なカンファレンスが続々とオンライン化され始めています。しかも、期間限定ではなく常設型のWebコンテンツとして。コミュニティ機能やライブレッスンなど、インタラクティブ性が強いのが特徴で、オンラインだからこそ提供できる価値を追求している様子がうかがえます。世界中の企業が、Withコロナにおける新たな情報発信の方法を模索しているのです。

志水
身近なところに話を戻すと、リード化(氏名、社名、メールアドレス等の取得)のポイントを少し見直すだけでもWebサイトのパフォーマンスが大幅に改善する可能性があります。顧客との接点が「問い合わせ」や「お見積もり」だけでは敷居が高すぎます。ホワイトペーパーや事例集をダウンロードコンテンツとして用意し、低いハードルでリード化ができる仕組みを整えるのがいいでしょう。

MA(マーケティングオートメーション)に現れるデジタルボディランゲージを読み解く

志水
リードナーチャリングを強化したいなら、MA(マーケティングオートメーション)の導入は必須だと思います。MAを活用しきれているか否かが、BtoBマーケティングの成功を左右するといっても過言ではありません。マーケティングの世界観すらも変えてくれるのがMAなんです。

しかも、対面コミュニケーションが難しくなった現在、ますますその重要度が増したと考えています。なぜならMAは、顧客の細かな行動をデータ化して、自社商材に対する感情や思考までをも可視化してくれるツールだからです。

例えば、ウェビナーを実施したあとに資料を送ったとします。MAはその資料が顧客に「いつ読まれたか」「どこまで読まれたか」「どのページが何秒読まれたか」まで、顧客ごとにデータ化してくれます。もし、送付後1時間以内に、あるサービスのページを時間をかけて読んでいたなら、その顧客はそのサービスの導入に対して熱意を持っている可能性があります。であれば、追加の情報提供をしたり、個別ヒアリングの機会を提案したりすればいいわけです。

我々はこのような顧客の感情や思考が現れるデータの蓄積を「デジタルボディランゲージ」と呼んでいます。デジタルボディランゲージから顧客のニーズを読み解き、それに合わせてOne to Oneで有用な情報提供をし、商談や契約へと導く。まさにマーケティングの神髄じゃないですか。

竹内
おっしゃるように、BtoBマーケティングにおいてMAはなくてはならないツールだと思います。ただ、書籍『デジタル時代の基礎知識『BtoBマーケティング』 「潜在リード」から効率的に売上をつくる新しいルール』  にも書いたのですが、活用しきれない企業も多いですよね。せっかくのMAなのに、メルマガを自動で送るだけで終わっているケースが少なくありません。

私は、「マーケティング・オートメーション」という名前がよくないんだと思っているんです。どうしても、従来のマーケティング活動を「自動化」してくれるツールだと思われてしまう。MAを適切に運用するためには、専業の人員やPDCAサイクルを回すスキルも必要。まったく新しいマーケティングのスキームを構築するために必要なのがMAです。この点はしっかりと理解しておいてもらいたいですよね。

志水
日本のMAの活用状況は欧米に比べて10年は遅れているといわれています。アナログ/オフラインのマーケティング手法が十分に機能していたり、セールス部門の力が強い日本企業も多く、組織風土になじまなかったりで浸透が遅れたのです。

実はWithコロナ環境下でマーケティングに課題を抱えている企業には、MAを導入していない、導入していても活用できていない企業が多い。MAを活用できている企業のマーケティング部門は比較的、落ち着いて仕事を進めている。むしろチャンスだと捉えているふしさえあります。

先ほども言いましたが、新型コロナウイルスの流行によって、BtoBマーケティングのデジタルシフトは“理想”から“現実”へと変貌しました。日本の企業にもMAを利用した新たなマーケティングモデルの必要性が急速に認識され始めています。もし今、「いずれコロナウイルスの影響もなくなり、元のスタイルに戻れるだろう」とのんびりと構えていると、欧米の企業だけでなく、直に競合する企業に対しても、5年、10年と遅れを取ってしまうかもしれません。

以下、VOL.2「“そのデジタルシフトは成功しない”企業はBtoBマーケターを育成すべき」へ続く

『デジタル時代の基礎知識『BtoBマーケティング』』著者が語る
ウィズ・コロナ環境にBtoB企業はどのように適応すべきか Vol.2

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  • 志水 哲也
    志水 哲也
    株式会社タービン・インタラクティブ 
    代表取締役
    1999年に株式会社タービン・インタラクティブを設立。BtoB企業に向けた戦略的なWebサイト構築、マーケティング支援を進める。2014年にHubSpotのパートナーとなり、2016年にはBtoBマーケティング小説『ベテラン営業マンと若手Web担当者がコンビを組んだら』を上梓。2018年よりアイレップのグループ会社としてBtoBマーケティングサービスを拡大している。
  • 株式会社アイレップ
    執行役員
    早稲田大学政経学部卒。大手SI会社、経営コンサルティングファームなどを経て、2014年にデジタル・アドバタイジング・コンソーシアムに参画。2018年よりアイレップも兼務し、グループ全体の統合デジタルマーケティングを包括的に牽引。2019年度よりアイレップ専任執行役員。ソーシャルメディアマーケティング支援企業のシェアコト社外取締役も兼任。専門は事業開発。著書に『統合デジタルマーケティングの実践: 戦略立案からオペレーションまで』『デジタル時代の基礎知識『BtoBマーケティング』 「潜在リード」から効率的に売上をつくる新しいルール』がある。