いまどき女子のデジタル活用術! VOL.2 ~コスメ系インフルエンサーの実態からわかる“女の子のハートの掴み方”~【前編】
働く女性を研究する博報堂キャリジョ研(以下キャリジョ研)※が、いまどきの女子を取り巻くデジタル環境、デジタル活用の実態などについてご紹介する本連載。(前回までの記事はこちら。VOL.1前編 後編)第2回のテーマは「インフルエンサー」。“ファンを多く抱える普通の人”という従来のイメージを超え、もはやクリエイターでありマーケターであり、タレントでもある彼女たちの姿に迫り、これからの広告のヒントを探っていきます。彼女たちの実態からわかる、女の子たちのハートの掴み方とは?
※博報堂キャリジョ研とは
博報堂および博報堂DYメディアパートナーズの女性メンバーにて、2013年に立ち上げた社内プロジェクト。キャリア(職業)を持つ、特にお金と時間を自分のために使いやすい子どものいない女性を「キャリジョ」と定義し、インタビューや定量調査、トレンド分析などを通じて「キャリジョ」を徹底的に研究。その成果を社内外にナレッジとして共有し、日々のマーケティング・プランニング業務に生かしています。
■クールにコスメを紹介。辛口美容系チャンネルの先駆者!サラ(コスメヲタちゃんねるサラ)さんの場合
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基本DATA
名前:コスメヲタちゃんねる サラ
紹介:正直で細やかなレビューが人気の美容系YouTuber。落ち着いたトーンで丁寧に紹介するスタイルは幅広い世代の女性から支持を得る。「新作コスメレビュー」や「メイク動画」の一方で、コスメに絡めた思い切りのいい企画動画も人気。
主なフィールド:Youtube「コスメヲタちゃんねるサラ」
https://www.youtube.com/c/CosmeWotaSara
チャンネル登録者数:457,000人(2020年2月現在)
活動開始期:2015年~
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- キャリジョ研
- YouTubeチャンネルで拝見していたサラさんと実際にお会いできて嬉しいです!
まず、サラさんのインフルエンサー活動のきっかけは何ですか?
- サラさん
- 中高時代は校則が厳しくて当然メイクも禁止されていたんですが、大学生になって自由になった途端、それまでの反動からかメイクにのめり込みました。お金が入ったら即コスメを買うというくらいコスメ好きになって、SNSなどで新作情報をリサーチしては買うかどうか判断していました。でも正直、写真の加工が激しすぎたりして色味などがわかりにくいなとも思っていたんですね。そんな折、Youtuber瀬戸弘司さんの動画がきっかけで佐々木あさひさんや関根理紗さんといった美容系Youtuberの動画をチェックするようになり、「彼女たちのようなインフルエンサーになれば新作コスメが入手できるはず!」と思って、大学4年の時に動画を投稿し始めたのがきっかけです。ちなみに大学卒業後、メイクを一からしっかり学ぼうと美容の専門学校にも通いましたが、結局メイクのよしあしは人の「好み」によるんだなと思いました(笑)。
- キャリジョ研
- サラさんが最初の動画を投稿されてから4年後の現在、チャンネル登録者数は45万人を超えています。美容系インフルエンサーのなかでも、サラさん自身はどんなところが支持されていると思いますか?
- サラさん
- 基本的にまず、私個人を「人」として好きになってもらいたいと思っているので、コスメの紹介をメインに据えつつ、旦那を動画に登場させたり、趣味のゲームについて触れたりと、飾らない素の自分、私の人となりが伝わるような話題も提供するようにしています。もっというと、YouTube以外のインスタやTwitterなどのSNSをやっているのも、「私はちゃんと生きているリアルな存在なんだよ」ということをみんなに感じてほしいからです。それから、ブランドコスメばかり使うなど、あまりに“キラキラ感”しかない動画だときっと見る気がしなくなると思うし、私自身も「この価格でこのクオリティがある」という商品が好きなので、プチプラや100均コスメも積極的に紹介しています。よく「声のトーンが低くていい」とも言われるんですが、たしかにこの声だとハイトーンボイスのキラキラな感じは出せない(笑)。でも逆に、そのおかげで話に説得力を持たせられるのかもしれません。
- キャリジョ研
- たしかに、サラさんの人となりや性格が動画越しに感じられる企画が多いですね。では、バズるコンテンツづくりの秘訣は何ですか?
- サラさん
- 動画を見てもらえるかどうかの決め手は、8割方サムネイルとタイトルにあると考えています。例えばこの(手元でスマホを見せてくれる)「ひとえについて」はシンプルだけど程よく過激でうまいなと思います。シンプルで分かりやすいのはもちろんですが、「緑コスメだけでメイクしたら草になる説」とか「クリスマスツリーになりたい」とか、ほかの人がやらなかったりちょっと奇抜だったりすると、興味を持ってもらいやすいです。登録者数はコツコツ伸びてきたなという感じですが、動画投稿を始めてから4カ月後くらいに、プチプラコスメとデパコスで顔を左右半分ずつメイクしてみるという動画をアップしたところ、初めて登録者数がぐっと伸びました。この「半顔メイク」による比較動画は今や定番ネタになっています。
- キャリジョ研
- 半顔メイクはサラさんから始まった企画なのですね!普段はどんな風にPDCAを回していますか?こだわりの仕事術などあれば教えてください。
- サラさん
- YouTubeでは、どんなに面白い動画でも1週間もすれば忘れられてしまう。なので週に2本は投稿するようにしています。自宅の書斎で1時間撮影し、2時間で編集。ネットサーフィン中や入浴時、寝る前などにアイデアがわいてくるので、その都度スマホのメモ帳にネタをメモします。先日は歯医者にいるときに、「デンタル用品だけでメイクしてみたら…!?」なんてことも考えていました(笑)。普段は出不精なので通販で買い物することが多いですが、新作コスメの場合は先行発売しているお店に行き、発売日と同時に動画を出すようにしています。投稿して20分くらいはどれくらい再生数が伸びているかアナリティクスをチェック。それ以前に投稿した動画も、だいたい1日の決まった時間にアナリティクスを確認し、反応を見ながら次の投稿内容につなげるようにしています。
- キャリジョ研
- 芸能人も続々と参入してくるなど、最近のYouTubeは変化の激しい世界だと思いますが、今後どのように活動していきたいですか?
- サラさん
- この1年の変化として私が特に感じているのは、SNSにおけるフォロワーのリテラシーが上がってきているということ。かつてはアンチコメントが来るのも仕事のうちだと思っていたけど、最近はアンチコメントに対して反論コメントをしてくれる人も増えた。コメントが優しくなったなと感じます。あと、芸能人の方々はもともと持っている影響力が大きいので、たしかに脅威ではありますね。今は特定の趣味などジャンルもどんどん細分化してきていますが、その「人」にファンがつけばどんなコンテンツだろうがちゃんとバズるものだと思っています。
これからも、ネタ系もできるし商品紹介もきちんとできる人として、活動を続けていきたいですね。
- キャリジョ研
- ありがとうございました!
==インタビュー取材を終えて==
インフルエンサー、侮るなかれ
単発の投稿内容だけではなく、ファンの獲得や定着のさせ方まで、ここまで戦略的に考えてコンテンツを出し分けているとは思いもよらなかったです。
サラさんの趣味であるゲームや彼氏、声のトーンなど、コスメ以外のこともさらけ出すことでファンがつくのも納得です。
コスメへの愛も絶大で、これぞ「好きを仕事にする」を体現していると感じました。
ファンを「つける」インフルエンサーと、すでにファンを「持っている」芸能人
最近では、YouTubeやSNSを活用する芸能人も増えていますよね。SNSを通じて、テレビでは見られない芸能人の人柄や日常が覗ける上に、ファンとの距離も縮まります。特定コンテンツに限らず「自分自身」にファンをつけようとするインフルエンサーからすると、すでに大勢のファンを抱える芸能人たちのSNS進出は大きな脅威であるといえます。象徴的な事例としては、人気イケメン俳優がYoutubeやLINE、SUGAR(双方向ライブ配信アプリ)を始めたことがTwitterやInstagramなどSNS上で爆発的に話題になっていることでしょうか。
毎日ネタを探して投稿のPDCAもまわして、炎上のリスクも考慮する……。インフルエンサーの仕事は想像もできないものでしたが、命を懸けてやっているなとつくづく実感しました。
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博報堂キャリジョ研博報堂および博報堂DYメディアパートナーズの女性メンバーにて、2013年に立ち上げた社内プロジェクト。キャリア(職業)を持つ、特にお金と時間を自分のために使いやすい子どものいない女性を「キャリジョ」と定義し、インタビューや定量調査、トレンド分析などを通じて「キャリジョ」を徹底的に研究。その成果を社内外にナレッジとして共有し、日々のマーケティング・プランニング業務に生かしています。