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Society5.0が目指す超スマート社会 「都市」と「生活者」視点で、どんなサービスデザインが描けるか
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Society5.0が目指す超スマート社会 「都市」と「生活者」視点で、どんなサービスデザインが描けるか

YOMIKOテックアイデアソン ワークショップレポート

“オールデジタル化”社会(生活のデジタル化)では、テクノロジーとデータにより都市における課題の解決や、人間中心の新たな生活習慣の創出が目指されています。YOMIKOは都市生活研究所を中心に、都市と生活者が互いに作用しあい生まれる新しい潮流を洞察し、企業や社会のマーケティングやイノベーション活動を提示していくことをミッションに掲げています。都市と生活者視点で“オールデジタル化”時代の新たな商品・サービスを創発するプログラムの体系化にも取り組んでおります。

YOMIKOでは2014年からテクノロジーを活用し新しいサービスアイデアを短期間で創発する、ワークショップ型社内人材育成プログラム「テックアイデアソン」を続けてきました。そのノウハウを基にテクノロジーインプット×ワークショップに、サービスデザインのプロセスを取り入れ、社内の様々な部門より選出されたメンバーにより実施した取り組みをご紹介します。

“個人の力では解決できない”パブリックな場の課題発見

過去のテックアイデアソンで、「スマートホームで変わる、暮らしのサービスアイデア」をテーマにした際、“家の中” (プライベート空間)で解決したい課題が思った以上に小さく・乏しいことが感じられました。

日本の都市の住宅事情を考えたときに広さや価格、豊かさには課題があるものの、機能や利便性においては課題や不満が少ないのではないか、生活者の不足・不満はむしろ、“個人の力では解決できない”パブリックな場、「日常的に利用するパブリック空間」にあるのではないかということが考察されました(図1)。

図1

そこで今回は『「生活のデジタル化」時代のサードプレイスとは?パブリック空間での不満・課題を発見し、より良い都市生活を実現するサービスアイデア/その実現方法』をテーマに、都市生活研究所の研究テーマでもある「次世代サードプレイス」という概念を参加者にインプットした上でアイディエーションとサービスデザインを実施しました。

いま、「サードプレイス」という概念が再び注目される背景として、社会構造の大きな変化が挙げられます。

【社会構造の大きな変化】
●より長く生きるようになり、一人きりの時間が増えた
●家族は3・4人構成のわかりやすいものではなくなった
●晩婚化・未婚化はかつてより、自分の時間を増やした
●働き方・キャリアの積み方は、選択肢が膨大に増えた
●国境を越えて旅をすることが、誰にもフランクなものになった

この社会構造の変化により、生活者の暮らしは大きく多様化し、自主性・つながりがより求められる時代になったと考えられます。その変化を受け入れるべき都市のなかで、サードプレイスがもっとも敏感に対応をしはじめているのです。

そして都市における「場」が、大きく変わろうとしています。“住まい”“働く場”“公共空間”、それぞれの価値や機能がシームレスに融合しつつあり、いままでにない生活者の「居場所」と「居方」が都市に生まれつつあると我々は考察しています(図2)。

図2多様化するサードプレイス

サービスデザインでは多くの実績を持つパートナー企業に協力いただき、ストーリーボードによるUXデザインにチャレンジしました。

「都市」と「生活者」視点から垣間見えた、テクノロジー・データを活用した
「次世代サードプレイス」への期待

本プログラムは東京・大阪で実施し、計20のサービスアイデアが生まれました。街路・公園・公衆トイレ・フードコート・スタジアム・フェス会場・キャンプ場等のパブリックな空間体験を、テクノロジーやセンサー等で取得可能となるデータ(環境・行動データ、行政や企業のオープンデータ等)を活用し“より便利に効率的に快適に”したいという利便性向上型のサービスアイデアが多く生まれました。

そのなかでも印象的だったのは、既に膨大な“情報”があるにもかかわらず“実は自分(家族)にとって良い居場所(サードプレイス)が見つかっていない”“やりたいことがあるのにそのための場がない(わからない)・手段がない”という課題感があることでした。

いずれにおいても日常生活においてあきらめていた課題感を再認識することで、テクノロジーやデータによる課題解決に、生活者としてのリアリティが感じられるアウトプットとなりました。また、テクノロジーやデータにより実現される新しい生活習慣への期待をメンバー間で共有したり、住民×地域の社会×地域の事業者といったステークホルダーが3方良しになるサービス構造をつくろうという視点もみられました。

これにはストーリーボードによるUXデザイン(できるだけ絵で表現し共有する)が機能したと思います。ワーク後ブラッシュアップした一例をここに紹介します。

はかどる場所を探す人と、お店をデータでマッチング「ハカドル・ナビ」

起案者は、勉強や仕事等が快適にできる場所を探し彷徨う週末サードプレイス難民。
街中のお店に、勉強や仕事がより捗る環境という「ハカドル基準」で店内環境データを公開してもらうことで、仕事や勉強が捗る場所を探す生活者とお店との新しい関係を創るサービスです。

このサービスで表示される“おすすめ”情報源は、空席、Wi-Fi環境のみならず店内のノイズ、室温、照度、テーブルサイズ等含めた「店内の環境データ」。お店は“ハカドル“場所という新たな価値を提供することで隙間時間や従来の顧客とは別の人達を集客できるという双方にとって益になるサービスです。

UIイメージ
はかどらせたいシゴトの種類をタップすると、その時の店内データの状況から相応しい
周辺のお店がレコメンドされる。

上記は一例ですが、ほかにもブラッシュアップした事例として公園に集まる人にふれあいが生まれ街を持続的に活性化させる「TRASH QUEST」や「働くママ」の強いペインから起案されたIoTサービス「キッズログ」といったサービスアイデアが生まれました。

良い生活をしたいという本質的な欲求は変わらない

今回の取り組みは、「次世代サードプレイス」の概念から未来のサービスアイデアを考えることで都市と生活者視点でのアウトプットを創出する試みでしたが、今後どれだけデジタル化が進んでも生活者がリアルな空間で生活していくことに変わりはなく、自分や家族にとってより良い生活をしたいという本質的な欲求は変わらないのではないかと思います。

一方で人口減少・高齢化をはじめ様々な社会環境変化の中で、自分たちの生活を維持するために“新しい生活習慣”が求められる時代に、ストレスなく豊かさを実感できる手段や環境の提供、“個人の力では解決できない”コトやモノを企業等から提供される商品・サービスに期待することも大きくなるのではないかと思います。
“オールデジタル化”社会が前提の中で「生活者が欲する商品やサービス」をどう実現するか。その一つの手段としてYOMIKOはサービスデザイン・プログラムの提供に今後も取り組みたいと考えています。

都市生活研究所、テックアイデアソンの取り組みはYOMIKOウェブサイト
https://www.yomiko.co.jpでご覧いただけます。

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  • 読売広告社
    デジタルマーケティングセンター センター長代理
    1996年読売広告社入社。営業としてPHS事業AE、FTTH環境でのコンテンツ配信実験を大学と協働し企画・運営。また、通信事業サービスの中期事業計画支援をコンサル会社と協働で担当。2007年からはデジタル領域に軸足をおきソリューション・統合プロモーションディレクターとして活動。自社開発ではスマートデバイスを活用した住関連向け営業支援ソリューション「スムスマート」開発等をおこなう。現在は、デジタルマーケティングセンターで新事業・サービスのUX・UIデザインのプロデュース業務に従事。