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サブスクリプションは顧客を理解するチャンスだ。博報堂×三井情報によるサブスクリプション導入支援の取り組み
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サブスクリプションは顧客を理解するチャンスだ。博報堂×三井情報によるサブスクリプション導入支援の取り組み

サブスクリプションモデルによるサービスが徐々に社会に浸透しています。以前はソフトウェアなどの無形固定資産が中心でしたが、最近はアパレルなど実際の“モノ”を扱うビジネスでも用いられるようになってきました。博報堂と三井情報は2017年11月に企業のサブスクリプションビジネスへの変換支援を始めとしたデジタルトランスフォーメーション領域での協業を開始。サブスクリプションビジネス支援プラットフォーム「Zuora」を始めとするITツールを活用した、企業のデジタルトランスフォーメーションを推進しています。
サービス提供の中で出てきた課題や成果、今後の展開などについて博報堂 CMP推進局の島野真が、マーケティングシステムコンサルティング局の稲毛亮太、三井情報の大森洋馬氏に聞きました。

サブスクリプションが盛り上がってきた背景とは

島野
まずは自己紹介からお願いいたします。
大森
三井情報の大森です。私は長い間、携帯電話キャリアの課金システムを担当していました。携帯電話は元々サブスクリプションモデルと言えるような料金体型なので、クラウドになる以前からサブスクリプションに親しんできました。
当時は自社運用(オンプレミス)でのシステムでした。ユーザーのニーズに細かく応えられる一方で、初期費用が高かったり、重いシステムになってしまったりと何かと大変でした。そのため、クラウド型のサービス提供に注目し、代表的なクラウドサービスの販売や、企業のニーズに応える形で複数のサービスを組み合わせて提供するなどしています。特にその中でも「Zuora」を評価しており、2016年5月に国内で最初に販売代理店契約を結びました。
 
稲毛
博報堂マーケティングシステムコンサルティング局の稲毛です。我々のメインミッションは、企業のデジタルトランスフォーメーションを幅広くお手伝いさせていただくことです。デジタルトランスフォーメーションの最初の段階で、そもそもどういったことに取り組むべきなのかを提案させていただいたり、その後のフェーズでシステムの設計や実装をしたり、システム稼働後にはそれらの運用支援までさせていただいています。サブスクリプションサービスについても、データとプラットフォームの活用によりマーケティングを変革する手段として注目しています。
島野
2017年11月にサブスクリプション支援サービスでの協業を発表しています。そもそもサブスクリプションの価値とは何なのか、改めて教えてください。
稲毛
元々サブスクリプションという言葉自体は、雑誌の定期購買とか企業から生活者が定期的に商品を買うことを意味していましたが、昨今の注目度の高まりには、サブスクリプションの提供する価値の拡大が影響しています。ビジネスモデルとしては、“モノやサービスを定期的に提供して対価を得る”という従来の意味から、“モノやサービスの利用による価値を提供し続けることで対価を得る”への変化を指しています。契約しておしまいではなく、継続的に優れた体験を提供し続けることで対価をいただくということが重要になっています。
大森
サブスクリプションが盛り上がって来た背景には、商品がコモディティ化して価値が目減りしてきたことが挙げられます。優れたモノを作れば、それがそのまま売れたという時代でなくなってきています。モノをただ納めるのではなく、企業と顧客が繋がり続けることが重要です。人が求めている価値は常に変化しますが、その変化に合わせた価値を常に提供できないと飽きられてしまうのが今の世の中です。人がいま何を求めているのか知り続けることが今まで以上に大切になるので、マーケティングが欠かせません。
稲毛
サブスクリプションの盛り上がりの背景には、技術の進化によって生活者の意識や行動の変化を把握するための細かいデータが取れるようになってきたことも挙げられます。それをうまく利用して対応していかないと、差別化が図れない状況になってきています。

提供する価値を常に進化させ、価格設定も柔軟に対応させていくことが重要

島野
以前から定額課金という意味でのサービスはありましたが、現在のサブスクリプションサービスを検討する際には認識を改める必要があるということですね。
大森
常に利用者のニーズをデータで把握して、常に対応を進化させていかなくてはならない点が大きな違いですね。ただし、データが取れるとは言っても、それをどう活かすかは非常に難しい部分です。
サブスクリプションモデルと定額課金の違いで、もう一つ大きいのはパッケージやプライシングの部分です。納得感のある価格でなければまず買ってもらえません。最初は流入を増やすことが重要になるので、市場調査なども参考に納得感のある価格を打ち出すのが重要です。特に、アパレルなどのように在庫を抱えなくてはならないビジネスだとスタートがシビアになりますね。
稲毛
広告コミュニケーション以外にもどうやってビジネスを成立させるか、顧客にどう伝えるかなど、企業が考えなくてはいけない課題はたくさんあります。我々博報堂の持つ、マスやデジタルや店頭など様々な接点を通じた顧客接点での市場創造の取り組みや、マーケティングやクリエイティブ、プロモーションなどの課題解決力がお役にたてると考えています。
大森
価格の部分で言うと、常に柔軟な価格戦略を展開していくために専門の部署を作ることが必要な場面もあるかと思います。今までは事業計画書に価格を書いたらそれがずっと固定されるケースが多くありましたが、現在のサブスクリプションではそれは通用しません。価格は市場が決めるものだという考え方で、柔軟に対応していくことが求められます。
稲毛
そこがこれまでのパッケージと違うところですよね。契約して終わりなのではなく、一人一人の顧客の意識や行動に注目し、その人にとって常に最適な商品やサービスを提供していくことがサブスクリプションにおいて重要なことになります。常に期待を上回る価値を提供し続けることで契約が継続されますし、納得したうえでより単価の高い契約に移行してもらうことも重要になります。
毎月価格を変えたり中身を変えたりすることが求められる場合も出てきます。利用者のニーズに応える形で自社のサービス内容そのものを変えていく柔軟な発想やそれを実現する仕組みが重要になります。
大森
最近、初月無料のサービスをよく目にすると思いますが、これは今までお話したことを踏まえたものです。会員をまず集めて利用を促進させます。動画配信サービスであれば、4K対応だったり、使えるデバイスが増えるなどアップグレードしたくなるような設計をすることも大事になります。状況によって、新規を獲得するよりも既存の顧客にアップグレードしてもらう方を優先しよう、など市場を確認しながらスピーディーに決断します。こういったことはこれまでの売り切りモデルでビジネスをやって来た人にはなかなか難しいところですね。

システムの導入だけでなく、マーケティング全体の設計が重要

稲毛
ビジネスモデルを作ること自体はできたとしても、今までやってきたことを100%変えるのは難しい。そういった場合、例えば複数ある商品のうちの一つに絞ってサブスクリプションサービス化を検討する、といった始め方もあり得ますでしょうか。
大森
試験的に始めるのはありだと思います。ただ、最初にビジネスモデルを考えずに取り敢えず始めてみる、では間違いなく失敗します。今までは一度売れば利益が上がっていたものが、毎月少しずつの利益に変わります。営業担当者は短期で売り上げを立てたいので、サブスクリプションより従来型のモノ売りをされたがる場合もあります。会社の仕組みを変えたり、営業担当者の意識を変えていく必要もあるかもしれません。
島野
サブスクリプションモデルの導入にあたって、社内の評価基準なども含めて変えていくことが重要ということですね。
大森
自社内に止まらず、卸や販売店が関係している場合には同じ説得が必要です。ただし、実際にサービスを始めると、顧客と繋がれるようになることに大きなメリットを感じるはずです。これまでのビジネスだと1回売ったら終わりで、何回も会うのは馴染みの顧客だけでした。サブスクリプションであれば、定期的に顧客と接触できるので、従業員が自身の貢献を感じやすいという付帯効果もあります。
稲毛
自社内や取引先、生活者など、いろいろな方面を説得する必要がありますね。生活者に向けてという点では、より一貫性や継続性が求められます。例えば、“自分が加入したサービスが半年でなくなってしまった”だと見え方がよくありませんよね。長く付き合うということをベースにした、商品づくりや商品の届け方、コミュニケーションを考えていくことが大切です。
売り切りの消費財の広告であれば、“昨日の施策の効果はこうだったから今日はこうしよう” というのをやることで効果・効率を上げていくのですが、サブスクリプションサービスでは、実証実験の1つの施策だけのように“ちょっとうまくいかなかったね”と変えることはできません。サブスクリプションサービスでは、その変えることの失敗がビジネスに直結するので、覚悟は必要です。
大森
そういった厳しい部分はありますが、取引先やクライアント企業と成功体験を共有できるところは素晴らしいですよね。当社はビジョンとして“共創”を掲げているのですが、サブスクリプションだと取引先やクライアント企業と一緒にサービスを作っている実感が強く得られます。まさにSIer冥利につきるなと感じています。

日用品や消費財メーカーも真剣に検討

島野
冒頭にもお話がありましたが、サブスクリプションのプラットフォームとして「Zuora」に注目した理由を改めて教えてください。
大森
我々がサブスクリプションサービスを作りあげる過程で、契約の管理に非常に困っていました。定期契約なので必ず更新があったり、請求が年や月で違ったり、複数年契約があったりもして、非常に複雑です。従来のERP(Enterprise Resources Planning)を売るビジネスでは契約期間の概念がないので事務処理は手作業で対応できましたが、サブスクリプションサービスでは事務処理が一気に増えて、人手も増えていたんです。
このままでは利益が出ないということになり、事務処理をシステム化して効率化する方法を探しました。そこで見つけたのがZuoraです。我々はSIerなので自社でシステムを構築することも考えたのですが、その時点のニーズは分かっても、ビジネスが成長した際に必要になってくることが見えていませんでした。そのため、成長に対応できるサービスとしてZuoraを選びました。
島野
他のサービスと比較してZuoraが優れていたのはどんなところですか。
大森
やりたいことが網羅されていたことと、発展性ですね。プライシング戦略のスピード感を落とさずにビジネスを展開することができました。
Zuoraは納めて終わりではなくて、定着化サービスが大事なんです。機能をしっかり使い切れるようにサポートしたり、新機能が出たらご説明します。そうしたことを心がけていますし、それが解約の抑制にも繋がると考えています。価格設定に加えて、運用や定着の支援を大切にしています。
例えばアパレルの場合、服の交換を提案できます。逆に交換しない人は興味がないということなので解約のリスクが高いんです。DMPでプロファイリングして“あなたに合う服はこんな服ではありませんか”と常に提案していくことが大切です。運用では、こういった部分が強みになります。
稲毛
生活者がサービスを利用する中で、何を考えてどう行動しているかを捉える周辺の仕組み作りですよね。DMPも大切ですし、それをどう生かすかを考えるのも、サービス開始の段階から必要です。
データを生かす場合、全部人間がやるのは難しいので、どこを人間がやってどこを自動化するのかの切り分けも大事だと思っています。例えば、刺激を作る、飽きさせない為の意外性のあるデータの組み合わせを考えるのは人間がやって、実際のリコメンドは自動化する、といったように。
島野
どういう業種で利用が始まっているのでしょうか。
大森
ソフトウェアなど無形資産を持っているところはイメージがつきやすく話も進みやすいのですが、自動車会社や家電メーカーなどがいまは真剣に検討している段階ですね。皆さん共通して「ビジネスモデルを変えないと生き残れない」という強い危機感をお持ちです。ただし最初に考えるべきポイントを外さないようにしないと、ただのレンタルサービスになってしまいますので、それを踏まえて真剣に検討されている企業が多いです。
稲毛
最近では日用品や消費財のメーカーも真剣に検討を始めています。今まで顧客と直接の接点を持てなかったメーカーが、サブスクリプションであれば顧客が何を感じているのかが、分かるのがメリットですね。
人口が減っていくのに加えて、競合との差別化が難しくなっています。
それゆえにビジネスモデルを根本から変えていくことが必要になるのですが、サブスクリプションサービスは、顧客の声を聴きながら着実に実施できるので、堅実かつ新しい変革のモデルとして期待されているのだと思います。
大森
今まではメーカーには顧客基盤がありませんでした。誰が買っているか分からず、それではマーケティングができません。顧客が何を欲しているか理解するためのものとしてサブスクリプションを捉えている企業も多いです。
稲毛
一方で難しいのは、サブスクリプションのビジネスを始めるときには、その時点でお客様のことをしっかり知らないといけない、という部分ですね。我々はそのためのお手伝いもしていきたいと考えています。すぐに形にならなくても長い目でお手伝いさせていただければと考えていますので、まずはお気軽に相談していただきたいなと思います。
博報堂は長年に渡り広告でお手伝いする会社でしたが、近年は広告に加えて生活者の変化に合わせた体験設計や、データを活用したマーケティング革新をご提供する会社になっています。マーケティングシステム領域にも力を入れており、ビジネスを革新させるために重要なマーケティング基盤構築から活用までトータルでサポートするのが我々です。三井情報様などにご協力をいただくことで、ビジネスをトータルでお手伝いできると自負しています。サブスクリプション領域のテーマでも、様々な企業から最初にお声がけいただく機会がさらに増えればと願っています。
  • 大森 洋馬
    大森 洋馬
    三井情報株式会社
    社会インフラ第一営業本部 第二営業部 第一営業室 マネージャー

  • 株式会社 博報堂
    マーケティングシステムコンサルティング局 マーケティングシステム部 

  • 株式会社 博報堂
    CMP推進局