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【SXSW 2019レポート】テクノロジスト座談会 後編 テクノロジーで変わる日常。AI、5Gが当たり前になる未来。
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【SXSW 2019レポート】テクノロジスト座談会 後編 テクノロジーで変わる日常。AI、5Gが当たり前になる未来。

米国テキサス州オースティンで2019年3月に開かれた「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト) 2019」。本記事ではSXSWを視察した二人のテクノロジスト、中原玄太と金じょんひょんが、SXSWで感じたテクノロジートレンドや、そこから見えてきた今後のテクノロジーの進化の方向性などについてを前後編でレポートします。
後編では、AI、5Gといったトピックを中心に話し合います。

★前編はこちら

AIは、トレンドからインフラに

―AIについてはいかがでしょうか。新しい使い方など、発見はありましたか。

中原

使い方や発見についてですよね。AIって平たくいうと、人間のイマジネーションのシステム化の試み、だと思うんです。だから、人間の想像力を感じさせるいくつかの展示や発表は、すごく心に響きました。個人的な好みの問題かもしれないんですが、人間らしさを感じさせる新しい表現だったり、創造性を今より少しだけ拡張する試みといったものに対して、とてもリスペクトする傾向があります。

―AIをテーマにしたブース自体があまりなかったようにも感じました。

中原

参加者の皆さんの気持ちとして、もう当たり前に使っているので、AI部分について特に大声で言わなくてもいいよねってことなのかもしれませんね。今回事務局の公式Trendsでも、AIについての記載は特にはなかったですし、トレンドと言われる時期って構想段階が多いと思うんですが、もう今は実装のフェーズという印象があります。技術としては普通に使われていて、いい意味で目新しいものではなくなったということだと思います。
最適化などですでに使われるようになった一方で、その先のAIの使い方、例えば人とどう住み分けるかといったところは悩みどころなのかなとも感じました。
例えば、AIが写真展のキュレーターをやるなら、というテーマの展示があったんです。それは逆説的に、「AIがやるのを見せることで、これは人がやり続けていいんじゃないか」というのを示していたようにも感じました。

AIがキュレーションした写真展示を行っていたブース

中原

僕はこのAIキュレーターのように、AIがイマジネーションを伴って模索する取り組みって大好きなんです。AIが写真を選んだり撮ったりすると、人のコンテキストとは少し違う、今までの定石とはちょっと外れたものが突然出てきたりする。AIの魅力ってこのような、表現のちょっとしたズレや意外性に凝集されているように感じます。
ところで、人の代替えにAIを使うようなAI脅威論的な話って、その環境実現自体がとても難しいのではないかと感じています。例えば、AIは囲碁名人に勝てるくらい強くなりましたが、そのAIは囲碁しかできないものだったりしますし。特化したAIに人間が置き換えられるとかはいまはあまり想像できないですし、そんな未来はまだこないんだろうなという気がしています。
人の仕事が奪われるのではないか、という話はたぶんAIが初めてではなくて、表計算ソフト、ワープロ、電子決済、給与振込などのテクノロジーが登場するたびに言われてきたのかもしれません。でも実際は部分的なタスクの入れ替えくらいで、それほど問題になってないですし、あまり心配しなくてもいいのではと個人的には思っています。
AIで助かることもありますよね。例えばミスを無くすとか。SXSWインタラクティブイノベーションアワードのAI部門では、入院患者さんの状態をリアルタイムに解析して、患者さんがベッドから落ちたりするのを防ぐ取り組みが紹介されました。医療とAIでの事例としては、画像解析で疾患リスクを予測したり、いろいろな症状の候補を出して、それを見て先生が選ぶ、といった使い方もあります。一度AIでフィルタリングをするといったことですね。

衣食住のテクノロジーの増加

―金さんは昨年食育をテーマにしたプロトタイプをSXSWで発表されていましたが、(関連リンクpacoo)食に関する展示はいかがでしたか。

今年は、たくさんの企業が展示をしていましたね。誰でも失敗なくビールが作れるビールサーバーとか、朝食が作れるロボットとか。日本企業の展示だと、出汁を作ったり、日本酒でゼリーを作る取り組みもありました。お酒でゼリーを作るのは凄く難しいらしいんです。テクノロジーが入ることで、より便利になったり、より美味しく感じられるようになることも可能になると思います。個々人の好みに合わせられるようにする、という方向性ももっと盛り上がるんじゃないかと感じました。

―医療や健康に関する展示も多かったですね。

中原

AIは医療・健康に活用しやすいですよね。レントゲンの診断のような画像認識、パターン認識は、AIが最も得意とする分野です。人だったら見落としてしまうような疾病の兆候も見つけられたりするとよく聞きます。
医療関連の画像のデータは非常にたくさんありますから、AIの精度は上げやすいと思います。ヘルステックだと、スマートスピーカーを使って医療サービスを行う分野は関心が高いところだと思います。
中原

医療・健康は潜在的な市場が大きいから、みんな関心が高いのだと思います。あるスタートアップのピッチでは、DNA版のDMPサービスがありました。凄くプライバシー性が高いものなので、その情報をブロックチェーンで管理する、というものでした。ブロックチェーンは、医療・健康市場の起爆剤として今後どんどん技術活用されていくんでしょうね。

5Gが普及した世界での日常の変化

―CESではかなり熱かった「5G」関連はどうでしょうか。

SXSWでは、あまりありませんでしたね。珍しくないからかもしれません。展示としては、携帯電話の新機種展示で、5Gがある世界が体験できます、というのはありました。
中原

日本でももうすぐスタートしますね。5Gは、それが始まること自体が大事だと思います。CDMAが始まったときに近いと思います。最初は対応端末などは少ないかもしれませんが、徐々に拡大していく過程も含め、楽しみたいです。
 2019年1月の「Consumer Electronics Show(CES) 2019」では5Gが超注目テーマでした。自動運転に関する発表も多かったですが、それだって5Gインフラの活用を前提としたテクノロジーだったりします。そういう関連分野を巻き込みながら、5Gはこれからどんどん熱いテーマになりそうな予感がしています。

―CESではホットだったのにSXSWではあまり見られない、というのはどういう意味があるのでしょうか。

中原

SXSWって音楽で言うところのインディーズ感があります。一方で、例えるならCESはメジャーレーベルが主役の見本市という印象です。SXSWは、新たなテクノロジー用途に挑戦する、みたいな文脈のものって多いんですが、一方でCESはインフラテクノロジーそのものを作り発表する場だと思います。CESという大手企業ひしめくメジャーで5Gテーマがいまホットなので、この先5Gがインフラとして整ってからは、5G技術の新たな活用について、SXSWというインディーズで様々なアイデアが盛り上がりを見せるんじゃないでしょうか。
5Gを生かすためのシーズという意味では、SXSWにもいっぱい転がっていたと思います。脚本分析と生体反応に合わせて、映像のストーリーが生成できたり、とか。
中原

5Gの無線通信規格では、土管がこれまでと比較にならないほど大きくなります。これまで以上にいろんなデバイスが、直にネットワーク接続するケースが激増すると思います。さっきのARメガネもそうですが、未来のデバイスには大きな可能性を感じています。

―SXSWでは、会場内で電動キックボードが使えたり、モビリティ関連の話題もあったと思います。移動手段についてのトレンドを感じましたか。

想像していたより、みんな電動キックボードに乗っているなと感じました。中原さんも凄く楽しんで乗りまくっていて(笑)。
日常の慣れ親しんでいる移動とテクノロジーが組み合わさることで、キックボードのように体験自体はアナログだけど未来を感じることが出来る、便利で楽しい世界を実現出来ることを実感しました。
自転車が好きな人って、風が気持ちいいとか、地面と一体化出来る感じが気持ちいいという話をします。キックボードも街を身体で感じられるところが人気のポイントなのかなと思いました。また、街中で、バス型の自転車に乗客みんなでペダルを漕いでいる姿なんかを見て、街の空気を感じながら移動する体験を求める人が増えているのかな、とか、移動が目的になってなくてもモビリティは成り立つかもしれない、とか、いろいろ考えさせられることが多くありました。
中原

SXSW期間中にシェアリングエコノミーの潮流を感じたのは、配車サービスと電動キックボードでした。電動キックボードは本当に便利で、各人が自由に乗り捨てて、その場所で必要な人がまた使うというシステムです。バイクだとたぶん大き過ぎて同じことは無理な気がするし、キックボードがあのサイズだからこそのモデルだと思います。
シェアリングエコノミーは、提供インフラに対する利用者の利便性と信頼感が閾値を超えないと広がらないモデルと考えると、通信環境や決済セキュリティ、そして運営会社のプラットフォームと全てが成熟フェーズに入ってきた印象も強く持ちました。
あとその他に言及したいものとしては、競争環境のダイナミックさですね。一年前は配車サービスは1強のイメージでしたが、今年はライバル企業が台頭して、もう寡占市場とは言えない状況でしたし、キックボードも少なくとも4社が競合していました。

―今年のSXSWは、お二人ともSXSW出展経験のあるテクノロジストとして視察されて、どういう場所だと感じましたか。

「ポジティブカオス」だと感じました。展示はレイヤーも幅もばらばらで、数も多くあります。自分が持っている課題意識によって、情報が吸い取れたり取れなかったり。何かしらの課題意識や興味関心領域を持っていくと、参考になるネタはいろいろゲットできる場所だと思います。
中原

そうですね、今のデジタルインダストリー自体のカオスな状況と、SXSWが醸し出す独特のカオスさはパラレルな相似形を描いていて、それがエンジニアにとってとても居心地のいいイベントにしているのだと感じました。
  • 博報堂 統合マーケティング局所属
    テクノロジスト/ディレクター 中原玄太
    熊本県牛深市(現、天草市)生まれと育ち。
    主な著書に「EXCELでわかるLIBORディスカウントとOISディスカウント」(きんざい)、
    主な論文に「A NOTE ON NEW CLASSES OF INFINITELY DIVISIBLE DISTRIBUTIONS ON R^d」(Elect. Comm. in Probab.)、
    主なMV制作に「死神ナイトフィーバー / 杉本ラララ」(lalala music)、
    主な音楽活動にアルバム「”system”/カプサイシンコネクト2」(ULTRA-VYBE.inc)、
    主な広告賞に、ACC、Spikes Asia、ADFEST、
    好きな言葉は「言葉はさんかく こころは四角」。

    ※執筆者の部署名は、執筆時のものであり現在の情報と異なる場合があります。
  • 博報堂MPUブランド・イノベーションデザイン局
    インタラクティブプラナー/テクノロジスト
    Human X プロジェクトリーダー
    博報堂入社以来、テクノロジーを起点とする新しい体験の研究開発に従事。プロダクトの企画・開発、知財領域のマネジメント、大学との共同研究、電子工作やプログラミングを用いたプロトタイピング等を担当。クロスモーダルデザインWS幹事、Affective Media WS幹事、文部科学省科学技術・学術政策研究所専門調査員。