マーケティングの意思決定を正確でスピーディにするマーケティング・インテリジェンス・プラットフォーム Datoramaの価値
ばらばらに蓄積されているマーケティングデータを一元化し、一つのダッシュボード上で可視化する──。そんな機能をもつのが、セールスフォース・ドットコムが提供するMarketing Cloudのアナリティクス製品「Datorama(以下、デートラマ)」です。博報堂DYグループ内でデータマネジメントを担うスタッフとセールスフォース・ドットコムのスタッフが一体となってこのプラットフォームを運用し、クライアントのデータ活用を支援する取り組みが続いています。その「デートラマチーム」のキーパーソンに、このマーケティング・インテリジェンス・プラットフォームの価値を語ってもらいました。
「ワンチーム」で課題を解決していく
──はじめにデートラマについて紹介していただけますか。
- 橋本
- デートラマは、イスラエルで2012年に創業したデートラマ社が開発した独自のマーケティング・インテリジェンス・プラットフォームです。日本法人が設立されたのは15年で、18年8月にはセールスフォース・ドットコムの一員となりました。現在は、セールスフォース・ドットコムのMarketing Cloudという製品群の一つとなっています。
マーケティング・インテリジェンス・プラットフォームとは、ばらばらに蓄積されたマーケティング関連のデータ、例えば、オフライン・オンラインのメディアデータや調査データを統合し、可視化するツールです。これによってマーケティングの意思決定をスピーディにし、マーケティングのROI(投資対効果)を高めることが可能になります。
- 小山
- 私たちのグループはデータでマーケティングの意思決定スピードを上げることをミッションとし、組織横断で博報堂DYグループ全体のデータマネジメントを支援しています。我々がデートラマのPOCを行なったのは2016年で、17年の本格導入以降、橋本さんたちと二人三脚でデートラマの運用を進めてきました。
- 橋本
- デートラマを活用していただく際は、ユーザー側にアドミニストレーター(管理者)の役割が必要になるのですが、博報堂DYグループには現在10人以上のアドミニストレーターがいらっしゃいます。ここまでの規模で活用いただいているケースは多くはありません。
- 小山
- デートラマにはカスタマーサクセスというポストセールス(導入後の支援)のチームがあります。ポストセールスチームの皆さんと、技術面、ビジネス面の定例ミーティングや経営層へのQBRを一緒に行うことで、具体的な課題や目標を共有し、博報堂DYグループとデートラマがワンチームとなって成長することができています。導入後の支援をしっかりしていただいているので、たいへん助かっています。
- 橋本
- 活用に際して課題が発生したら、決して放置せずに、向き合って修正しようとする。そこが博報堂DYグループの皆さんの素晴らしさだと思います。チームをまとめて、成長させていこうという明確な意志を感じます。私たち自身も決して完成した組織ではないので、「成長痛」を共有しながら、一緒に前に進んでいるという実感がありますね。
──デートラマは具体的にどのように活用されているのですか。
- 小山
- 目的に応じて様々なマーケティングデータをモニタリングしています。特にメディア関連のデータのレポーティングに活用することが多いです。
- 橋本
- デートラマを導入いただくお客様には、お客様が理解しやすいようにMPO(マーケティング・パフォーマンス最適化)、MSO(マーケティング・セールス最適化)、CLO(クライアント・ロイヤリティ最適化)、BHO(ブランド・ヘルス最適化)というの4つのフレームワークとそれに関係する指標やデータを共有させていただいています。
現在、博報堂DYグループとクライアントに主に活用いただいているのはそのうちのMPOです。
- 小泉
- データが一カ所に集約されることのメリットは非常に大きいと感じています。規模の大きなクライアントの場合、何十人というご担当者が一つのデータソースからレポートをつくったり、意思決定をしたりしなければなりません。それが一元化され、可視化されていることで、業務が非常にスムーズになっています。
- 柳原
- 現在は、博報堂の主要クライアントの40以上の事業でデートラマによるデータ共有を行っています。ほとんどがメディアデータですが、段階的にMSO、つまり営業系のデータと連結させて、メディアと売上の相関関係を可視化していくことをクライアントともに目指したいと考えています。それによって、クライアントのマーケティングの意思決定は、さらに精緻かつ迅速になるはずです。
データをアクションにつなげていくことが必要
──デートラマをめぐる現在の課題とはどのようなものですか。
- 橋本
- デートラマを使うと、これまでウィークリーやマンスリーで確認していたデータをデイリーで見られたり、自動でレポート作成ができたりするようになります。しかし、それによって組織として何を実現したいのかが明確でないと、構築したダッシュボードを十分に使いこなすことができません。マーケティング活動をどのように変える必要があり、そのためにどうデータを活用しなければならないのか。そして、それを実現する組織のあり方とはどのようなものなのか──。それをマネジメントと現場が共有しておく必要があると思います。
- 小山
- もう一つ、よくあるのが、KPIが明確ではないケースです。KPIがはっきりしていないと、データを具体的なアクションにつなげていくことはできません。まず目標を明確にし、そこに到達できているかどうか、到達していないのであればどうすればいいのかを考える中から必要なアクションが見えてくる。それがデートラマの有効な活用法だと思います。
- 常住
- デートラマのダッシュボードは、クライアントのニーズに応じて細かにつくり込むことが可能です。私たちアドミニストレーターにとっては、いかに「アクショナブル」なダッシュボードのUIをつくるかが常に課題となっています。データを表で見せるのか、棒グラフにするのか、あるいは円グラフにするのか──。それによって次のアクションへのつながりやすさが大きく変わってきます。ファーストビューだけで次にとるべきアクションが即座にわかる。そんなUIが理想だと考えています。
- 小泉
- アクショナブルなUIをつくるには、要件定義をしっかりしなければなりません。どのようなデータをどのくらいの粒度で入れていけば、アクションが起こしやすくなるのか。それを最初の段階で見極めておかないと、「使えないダッシュボード」が出来上がってしまいます。それまで暗黙知だった要件を時間かけて解きほどいて、データを定義する作業が欠かせません。
- 橋本
- 要件定義においては、マネジメントのビジョンを実現できるものにすることも重要ですが、そのデータを現場で使うエンドユーザーの声も重要になってきます。定義された要件と現場のニーズや作業内容が乖離している場合も、「使えないダッシュボード」になってしまいます。
- 柳原
- 要件定義やUIのつくり込みは、経験によって大きく左右されます。その点で、多くのクライアント案件をサポートさせていただいている私たちには大きな強みがあります。
新しいツールを導入することは、PDCAのフローを新たに構築することに等しいと私は考えています。ふさわしい作業フローがともなっていないと、たんに数字を追うだけになってしまいます。ツールを使いこなせるフローをクライアントともにつくっていけるところに、私たち広告会社の存在意義があると言えるのではないでしょうか。
ダッシュボードから「分析コミュニティ」へ
──今後はどのような取り組みをしていくのですか。
- 小山
- 私たちは、ダッシュボードを「分析コミュニティ」と呼ぶべきであると考えています。多様な現場担当者が多様な使い方をして、データを価値に変えていくコミュニティです。博報堂DYグループのマーケティングとデータマネジメントの力とデートラマの皆さんの知見を合わせて、そのコミュニティをどれだけ豊かなものにできるかがこれからの課題ですね。
- 柳原
- デートラマを活用することで、クライアントと私たち広告会社双方の業務がかなり効率化しました。今後は、さらにその先にあるビジネスへの貢献を実現していくことが目標になります。そのために、先ほども言ったように、メディアデータを営業データにつなげること、さらにはCRMにまでつなげていくことを実現させたいと思っています。
- 常住
- レポーティングの自動化は実現できたので、今後はそれを「自走化」、つまりクライアント側のご担当者が必要に応じてカスタマイズできるような体制をつくっていくことがアドミニストレーターである私たちの目標です。そのためには、教育研修などのサポートを提供していくことも必要であると考えています。
- 小泉
- 効果検証も課題の一つですね。デートラマを導入した後で、業務時間がどのくらい減ったのか、あるいは意思決定のスピードがどのくらい上がったのか。その成果を見て、ダッシュボードを作り替えていく作業ができれば、デートラマの価値はより向上します。クライアントのメリットを生み出すには、地道な取り組みを続け、経験値を積み重ねていくことが必要です。また、クライアントの事業領域に関する知識だけではなく、データのハンドリングスキル、ソリューション知識、など多くの知見も必要です。今後もデートラマのみなさんと共に取組んでいきたいと思います。
- 橋本
- デートラマには「One Team, One Dream(ひとつのチーム、ひとつの夢)」という考え方があります。同じく、セールスフォース・ドットコムには創業当時から「Ohana」というお客様、従業員、パートナー、コミュニティなどを家族のように互いを大切に思い、共に楽しみ、世界をより良い場所にするために協力し合うという企業文化を持ち合わせています。
そのカルチャーを博報堂DYグループの皆さんと共有し、引き続き、ワンチームでクオリティの高いデータマネジメントを実現していきたいと考えています。
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橋本 薫セールスフォース・ドットコム
Datorama, a Salesforce Company
ディレクター/クライアント・サクセス&アカウント・マネジメント
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