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マーケティング変革の原動力はポジティブなマインドセット!
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マーケティング変革の原動力はポジティブなマインドセット!

デジタルトランスフォーメンションの影響で、マーケティングにも大きな変革が求められています。

データプラットフォームは、セグメントレベルのDMPだけでは不足となり、個人レベルのCDPが急速に台頭しつつあります。それに伴い、デジタルマーケティングシステムも、24時間365日、それもマイクロモーメントと呼ばれる極めて短いタイミングを捉えての情報収集および提供ができるレベルが求められるようになってきました。AI活用も本格化してきています。

急速な変化にキャッチアップしようと、多くの企業がデジタルマーケティングへの投資を加速しています。マーケティングだけではなく、ビジネス全体のデジタル化は必須の流れであり、もはや後戻りはできません。しかし仕組みを作れば、実効性のあるマーケティングができるかと言えば、それほど簡単ではありません。

どのような変革でも同じことですが、マーケティング変革においても、まずはマインドセットを切り替えることが必要です。では具体的にはどのようなマインドセットが必要なでしょうか。順を追って一緒に考えていきましょう。

マーケティングへの期待

マーケティングに期待されている役割をひとことで言えば、「既存ビジネスの延命」と「新規需要の創造」ということになります。現在収益を上げているビジネスで可能な限り収益を上げつつ、その寿命が来る前に次の収益源となる新規ビジネスを立ち上げる、マーケティング手法によってその需要を作り出していくということです。

この件は近年重要性を増しています。Uber、Airbnbといったデジタルディスラプター(デジタルの力で既存のビジネスモデルを破壊する企業)が登場して、さまざまな業界で勢力地図が塗り変わっているからです。デジタルディスラプターがまだ出現していない業界でも、いつ現れるかはわかりません。むしろ近い将来に現れると考えて準備する必要があります。

しかし、この2つの期待は、相反するものであることに注意すべきです。

「既存ビジネスモデルの延命」を期待A、「新規需要の創造」を期待Bと呼びましょう。まずマインドの向きが正反対です。期待Aは守りのマインドですが、期待Bは攻めのマインドです。また、期待Aは今すぐ必要なことですが、期待Bは未来のために必要なことです。さらに方法論もまったく違います。期待Aはアイデンティティの見直しですが、期待Bはパーパスの追求です。

アイデンティティとパーパス

アイデンティティとパーパスという言葉が出てきました。少し説明しておきましょう。

アイデンティティとは、ブランドや組織の意味や価値における一貫性のことです。既存ビジネスにおいては、極めて重要な概念です。
アイデンティティが失われるとブランド価値は下落します。しかし時代に合わせてアイデンティティが更新されないとしたら、やはりブランド価値は下落します。当初の意味や価値を忘れずに、なおかつ意味や価値を時代に合わせていくこと、すなわちアイデンティティの見直しが、既存ビジネスモデルを延命するためには最も重要な施策なのです。

しかし、新規需要を創造するにあっては、そもそも確立したブランドアイデンティティが存在しません。新たに作り上げることが必要です。そのためにはどうしたらいいのでしょうか。

新たにブランドを作り上げていく際にはパーパス、すなわち存在目的を追求することが必要です。これから作り上げていこうとしているブランドや組織が何のために存在し、将来どのような方向に進んでいくかについて常に考え続けなければなりません。

「ティール組織」という新しい組織モデルが注目されています。ティール組織の特徴は、自主経営(セルフ・マネジメント)、全体性(ホールネス)および存在目的(エボリューショナリー・パーパス)追求の3つあると言われています。

ティール組織は進化型、すなわち継続的な変革を自立的に実施できる組織です。そのためにはパーパスドリブンである必要があるということです。少なくともティール組織の考え方は、新規需要創造を進めていく上で参考になるでしょう。

どのようにビジネスモデルの再構築を進めればいいのか?

このようにマーケティング組織は、「既存ビジネスモデルの延命」と「新規需要の創造」という相反する期待を背負っています。この2つをどうやって両立させていけばいいのでしょうか?

私たちが実際に使用しているビジネスモデルの再構築フレームワークがあります。それに沿って説明しましょう。

新しいビジネスモデルを評価するにあたっては、社会、産業、企業、および生活者にとっての「価値」が、従来の業界構造や仕組みを逸脱した新しい需要を産み出す潜在力があるかどうかを見極めることが必要です。このフレームワークは、その見極めを可能にするものです。

フレームワークの使用手順は以下の通りです。

●    パーパスを明確に言語化します。パーパスとは、社会課題と企業理念の交点、すなわち自社の企業活動ですべきことは何かということです。
●    パーパスを事業の生活者価値に当てはめます。生活者価値とは、最終需要者の生活を豊かにする新しいものです。
●    生活者体験を具体的なユースケース(利用シーン)としてイメージします。生活者が納得感を得られるかどうかを具体的なイメージの中で検証し、納得感を得られるイメージになるまでユースケースのデザインを続けます。
●    自社および自社を含むバリューチェーンを横断した、トータルなコストメリットがあるかどうかを検証します。これがなければ、新しい仕組みに関係者が参画することはなく、ビジネスを成功させるためのネットワークが育ちません。トータル・コストメリットのあるビジネスモデルになるまで考え続けます。
●    ITやデザインの観点から、ビジネスモデルを実現する方法を考えます。
●    最後に、期待される収益を試算し、想定されるリスクを洗い出します。何をKPIとするか、追加投資または撤退基準などを想像しながら、ビジネスとしてゴーサインを出すかを経営者が判断することになります。

マインドセットが多様な人材間のコミュニケーションを実現する

マーケティングへの期待に応えるためのフレームワークを簡単に紹介しました。
このフレームワークで実際にプロジェクトを進めるには、さまざまな専門性と志向性を持つ人材を集める必要があります。
専門性とは、大きく分ければマーケティング、テクノロジーおよびマネジメントの各分野の専門家が持つ知識、スキルおよびノウハウです。志向性とは、攻めに向くのか、守りに向くのか、攻守のバランスが良いのかなどといったことです。

こうした人材を社内だけで集めるのは困難になりました。他社、大学等の学術機関、自治体、起業家、フリーランスなど、異業種・異業態・異分野の人材が持つ知識、スキル、ノウハウを結集し、切磋琢磨しながら開発、改革、活性化等を進めていくこと――すなわちオープンイノベーションが求められています。

マーケティング、テクノロジー、マネジメントのそれぞれの専門分野に、社内リソースだけはなく外部リソースも加わって、「言葉の力」で関係者全員をつなぐことが、これからのマーケティング改革には必須だということです。

所属組織も専門分野も生い立ちも経歴も性別も、さらには国籍も多種多様な人たちが集まって、活発なコミュニケーションを実現していかなければなりません。異なるDNAの融合を前提とし、お互いの文化を共有しながらリスペクトしあわなければ、このようなコミュニケーションはおそらく成立しません。

だとしたら参加者全員が共通のマインドセットを持つことが必要になると思います。

マーケティング変革に必要なマインドセットとは

では、どのようなマインドセットを醸成し共有すればいいのでしょうか。

新規需要創造を進めていくにあたっては、安定した市場セグメントでの差別化という発想をいったん脇に置かなければなりません。あくまで起点は生活者であり、彼らにとっての新たな価値・体験を作り出そうという意気込みが大切です。

取り組みの当初は、新たに定義した生活者価値が事業の成長にわずかな貢献しかしないかもしれません。それでもPDCAを回しながら、試行錯誤を続けていくしかありません。

そのうちに小さな芽が大きく育つことを信じて、仲間とともにさまざまな試みを実践し続け、成長への強い意志を持ち続けながら、迷ったときは目的に立ち返り、あくまで目的を追い求め続ける――このようなポジティブなマインドセットが、多種多様な人材によるマーケティング変革(それはまさにオープンイノベーションです)の実現に欠かせないと考えています。

(マーケティング変革をサポートする専門集団「博報堂HMSC」についてはこちらをご覧ください:https://hmarsys.jp

  • 株式会社博報堂マーケティングシステムコンサルティング局 局長
    株式会社博報堂コンサルティング 代表取締役 共同CEO
    株式会社博報堂マーケティングシステムズ 代表取締役
    慶應義塾大学大学院 経営管理研究科修士課程修了。都市銀行、戦略コンサルティング会社を経て、2001年、博報堂ブランドコンサルティングの立ち上げに参画。IMJとの合弁で設立した博報堂ネットプリズム代表取締役社長、日立製作所とのビッグデータ解析プロジェクト、マーケット・インテリジェンス・ラボの共同代表を歴任。ITを活用したマーケティング改革を専門とする。