データをひきだすファシリテーション術第6回
—意味を読み解き分類する技術—
”生活者データ・ドリブン”マーケティング通信をご覧のみなさん、こんにちは!
VoiceVisionの北島です。
これまでの連載で、ファシリテーション・クリエイティブに必要なスキル「ひきだし力」についてご紹介してきました。今回からは数回に分け、もうひとつの重要なスキル「うみだし力」についてお話します。大量のデータをもとに、単なる「ファクト」ではなくその深層にある生活者の意識「インサイト」を導くことがデータドリブンマーケティングでも重要ですが、「うみだし力」はそのための有力な武器になります。
~うみだし力の「くくる技術」~
うみだし力は「ひきだし」によってあぶり出てきた意見をまとめて今はない”新しい答え”を創ることで、3つの技によって構成されています。
今回は1つめの“くくる”=新しい価値やアイディアを見つけるために意味を読み解き分類する技術についてお話します。
様々な角度であがってきたデータから新しい答えを生むには、ユニークな視点で分類をしていく必要があります。
その代表的な技法として今回は3つご紹介しますので、ぜひここから学んでいってください!
~似ている情報を分類する技法~
最も基本的な「くくる」は、データを似ているもの同士で分類する技法です。
「KJ法」は文化人類学者の川喜田二郎氏が開発した整理術で、情報の書かれたカードをグループごとにまとめるのが特徴ですが、私たちはそれを応用して、「A面くくり」と「B面くくり」という2つのまとめ方を意識して使い分けています。
A面くくり:カード情報がもっている属性そのもの(性質・特徴など)でくくっていく方法。
B面くくり:表立って見えてはいないが、裏の意味(機能・価値など)を読み解いて共通することでくくっていく方法。
文字で表現すると小難しくなりますので、早速具体的な例で見ていきましょう!
例えば下記のように様々な飲料が並んでいる中、どのような視点で似た者同士を分類すればよいでしょうか?
以下の図は、「アルコール飲料」と「ノンアルコール飲料」で分類しています。
この分類は、飲料そのものの属性、つまり解釈のないそのままの特徴にあたるのでA面くくりになります。整理としては無難ですが、ここから新しいアイディアを発想していくのは難しそうですよね?
では、以下の図のようなくくり方はどうでしょうか。
「楽しくする」「豊かにする」「美しくする」「補う」など、この飲み物を飲むことによって得られる効果は何か?を想像しながらくくってみました。
こちらは裏の解釈を読み解いてのくくり方になりますのでB面くくりになります。
いかがですか?何か新しい発見は見えてきますでしょうか?
このように、誰もが分類できる事実でまとめるA面くくりよりも、自分の解釈を入れて読み解くB面くくりを取り入れた方がより創造性豊かなうみだしを実践することができるようになります。
ここでB面くくりのちょっとしたコツをお伝えしましょう!
先ほどの飲み物のデータの中から、まずは自分の気になるもの1つをピックアップしてみます。そして、その選んだデータと別のカードを選択したときに、どの2つに共通している価値は何かを考えてみます。
例えば、「黒酢」を選択した後に「赤ワイン」と結び付けてみて、この2つに共通する価値は何かを考えてみます。これらは「美をプラスオンしてくれる効果」が共通している価値だと読み解いたら、これと同じ価値に当てはまる他のデータを選んでいきます。
選び終えたところで、全体をくくりなおし言い換えをすると「将来の自分を美しくするもの」となります。
B面くくりのコツは、気になるデータをピックアップし、それに関する事象を重ねていくことですが、この「気になるデータ」の選び方は、これから注目されそうなものや他とは少し異質だったりするデータを選択することがポイントになります!そして“正しさ”よりも“どれだけ新しい見方を発見できた”か!がとても大切です。
~モレなくダブりなく分類する技法~
データを分類する際、なるべく抜けている要素がないように、一方で重なりもないようにまとめていくことが理想です。
MECEは「ミッシー」または「ミーシー」と読み、Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive(モレなくダブりなく、の意)の頭文字をとったもので、ロジカルシンキングに必須とされている概念ですが、これがしっかり理解できていると正確な答えを導き出すために必要な要素を網羅することができます。
具体的な例を挙げてMECEな状態とそうでない状態をご説明しましょう。
たとえば「パソコン」の構成要素を整理する際、どのように分類すればモレなくダブりもない状態になるでしょうか?下図をご覧ください。
左側のくくり方は「ハードウェア」と「ソフトウェア」で構成されていますが、これはパソコンにとって全ての要素となりますので、こちらの分け方はMECEな状態と言うことができます。
一方で右側のくくり、「Windows」と「Mac」という分け方ではOSは他にも存在しているのでモレがある状態。また、「ノート型」「デスクトップ型」「モバイル型」という分け方は、ノート型とモバイル型が同じ用途になっているのでダブっている状態と言えます。
モレなくダブりなくというのは、データを扱う上でとても大きな意味を持ち、モレはチャンスを逃したりミスを生み、ダブりは非効率や無駄を生みだします。したがってこの概念を体得することで、よりよい成果をあげることができるでしょう。
しかし、頭の中だけで考えていても分類が複雑になりパンクしてしまいます。そんなときに活用したいのが次にご紹介するロジックツリーです。
~構造化して整理する技法~
ロジックツリーは、問題の原因究明や解決策を導き出すための技法で、MECEを樹形図にして整理します。
「試合」を親としてロジックツリーを書いてみましょう!
例えば、試合の大事な要素を“人”と見立て、子情報のレイヤーを“参加者”としたときに、試合は「競技者」「審判」「観客」と3つの要素で成り立っていると分類できます。
次にそれぞれの人に必要とされる能力で分類していくと、競技者にとっての必要能力は「心」「技」「体」と分けていくことができるでしょう。審判、観客もそれぞれの能力で分けていきます。
このように樹形図に仕立てることで、課題を網羅的に捉えて考えて全体感を把握し、より多くの視点から発想することができるようになります。孫情報からその上の子情報、子情報からその上の親情報が読み取れれば理想的!大切なのは、親・子・孫、それぞれのレイヤー(階層)が揃っていることです。
いかがでしょうか。
こちらの方法も、B面くくりと同様“正しさ”よりも、“あなたなりの新しい発見”ができたかがとても大切なポイントになります。
ぜひこれまで紹介した3つの“くくる”技を用いて、今までは見えていなかった新しい価値の発掘にチャレンジしてみてください♪ きっとステキなアイディアが見つかるはずです^^
~さいごに~
VoiceVisionに入社して4年、メンバーのファシリテーターとしての姿を間近で見たり、弊社で運営をしている共創プラットフォーム“talkit”で実際に自分がオンラインファシリテーターをしたり、ワークショップを企画/運営するなかで感じたのは、私たちが提供するファシリテーションは、“上手な進行役/まとめ役”だけではなく、“参加者と共にWOWを創りだせる仲人”だと思っています。
今回の連載で、みなさまもVoiceVisionのファシリテーション・クリエイティブを習得し、いつものデータ整理法をワンランクアップさせてみてはいかがでしょうか?!
次回は”うみだし”に必要な2つ目の“まとめる”技術をご紹介します。
どうぞお楽しみに!!
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(株)Voice Vision コミュニティプラナー1986年徳島県生まれ、蠍座O型。東京理科大学工学部卒。
2010年WEB制作/デジタル関連会社に入社。WEBコンテンツ制作/運用やメルマガの制作/配信、海外約80カ国で開催されている絵画コンテスト事務局の運営業務に携わった後、2014年コミュニティプラナーとしてVoiceVisionに入社。一児のママとしての視点を活かしつつ、生活者との共創によって新しい価値を生み出し、その価値を世の中に広める「共創コミュニティ」の業務はぜひお任せください!