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超売り手市場の今、企業が取り入れ始めた採用コミュニケーションとは?
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超売り手市場の今、企業が取り入れ始めた採用コミュニケーションとは?

世の中の情報環境が大きく変化するなか、新卒採用においては未だに大手就職情報サイトに頼った情報発信や情報取得が一般的です。ここ十数年、採用におけるコミュニケーション手法はほとんどアップデートされていません。

スパイスボックスでは、ソーシャルリスニングを活用した独自の企業、ブランドのコミュニケーション戦略設計メソッドを応用することで、時代のニーズに合った「採用コミュニケーション」サービスをスタートさせました。

今回、そのサービス内容から具体的な取り組みや今後の展望まで、株式会社 スパイスボックス 採用コミュニケーション事業部 事業部長 プロデューサー 秋山 真に話を聞きました。

新卒採用にパラダイムシフトが起きている

――なぜ今、採用コミュニケーションに目をつけられたのでしょうか。

国内の若年層の人口が減り続けるなか、新卒採用市場は大手の人気企業であっても人が採れない超売り手市場となっています。さらに、今は「この会社に入れば安心」といった保証がないVUCA時代のため、若者の働き方や会社選びの視点はどんどん多様化しています。こうした中で、採用活動はより本質的になるべきタイミングを迎えていると言えます。

私は現在20代ですが、自分の就職活動での経験も含め、若者から見ると今の「企業選び」は本当に難しいと感じます。限られた情報の中から就職先を選んだ結果、結局入社数年で「イメージと全然違った」と離職する人もいます。こうした状況に、今の学生や学生を採用したい企業が持つニーズや課題が顕在化していると思いました。

スマホやソーシャルメディアの登場により、ここ十数年で学生の生活や就職活動のあり方は大きく変化しました。学生の周りに様々な種類の情報が溢れ、価値観が多様化するなか、これまで鉄板だった採用セオリーはもはや通じなくなっています。企業側も採用手法を時代に合わせてアップデートしていく必要があると思います。今こそ採用にもマーケティングやコミュニケーション設計の考え方が必要です。

従来型の採用活動によるミスマッチに悩む企業の中には、これまで必ず使っていた大手就職情報サイトへの掲載を取りやめる企業も出始めています。そうした企業は、すでにダイレクトリクルーティングなどの新しい採用手法を整え始めており、人材採用のパラダイムシフトが加速していると感じます。

――これまで効果的だった採用手法が、なぜ今通用しなくなっているのでしょうか?

例えば、先程もお話しした就職情報サイトの場合、一つには学生の価値観の多様化により、就職情報サイトを使わずに就職活動をする優秀な学生が増えていることが理由です。この場合、大手就職情報サイトのみに頼った採用活動を行うと自社が必要とする様々な価値観や能力を持った人材に出会えなくなってしまいます。また、通常、就職情報サイトは毎年オープンとクローズの時期が決まっており、その時期以外に就職活動をする学生に会うこともできません。今は、就職について真剣に考えている学生ほど、企業の情報収集を早めにスタートさせ早々に受ける企業を絞ってしまう傾向があります。

学生の「動き」が変わっているなか、企業側がそれに対応しきれないと応募者を集めることが今後、年々難しくなっていくことは間違いありません。実際に業界によっては、すでに数字にはっきりと表れています。

デジタルコミュニケーションの会社が、採用コミュニケーション領域に踏み込む理由

――デジタルマーケティングを手掛けるスパイスボックスが、なぜ採用コミュニケーションをはじめることになったのでしょうか?

現在、スパイスボックスでは、戦略領域としてソーシャルメディア上で企業、ブランドの認知、好意形成を行う「エンゲージメント・コミュニケーション」施策支援に取り組んでいます。SNS上に顕在化している生活者の口コミや行動データを収集分析できる独自のソーシャルリスニングツール「THINK」を活用し、SNS上の生活者データをブランディングやプロモーションなどのコミュニケーション戦略設計に反映させるのです。「採用コミュニケーション」とは学生に対する企業ブランディングであり、自社がこれまで培ってきたこのノウハウを十分に活かせる領域だと判断しました。

また、私自身、学生時代から「採用活動おける学生と企業のニーズのギャップ」に問題意識を持っていました。当社が持つノウハウを生かすことで、学生と企業の適切なマッチングが図れるのではと感じ、ビジネス化を提案しました。実際に世の中的にも注目していただけており、今年7月に「採用コミュニケーション事業」としてスタートをさせた際には、日本経済新聞をはじめさまざまなメディアで取り上げていただきました。

――具体的に「採用コミュニケーション」がどのようなサービスなのか教えてください。

ソーシャルリスニングツールの「THINK」でSNS上のデータを調査、分析し、そのデータを元にさまざまな採用コミュニケーション施策を設計、実施していくサービスです。

例えば、SNSデータから「学生がA社に対してどんなイメージを持って、どんな反応をしているのか?」や「A社の何を評価しているのか?」、といったインサイトをさまざまな角度から導き出します。その調査結果を元に、インタビュー記事やブランディング動画、イベントなどさまざまな採用コンテンツに落とし込んでいくのです。また、「THINK」を使えばWeb記事を「特定のテーマでエンゲージメント量が多い順に抽出する」こともできるため、学生間で話題になっているメディアに、ターゲットに対して有効なアプローチで記事を出稿することなども可能です。このようにSNSデータの収集、分析とそのデータを元にしたコミュニケーション戦略設計、コンテンツ制作、ディストリビューションまで一気通貫で支援します。

これからの採用活動において、どんな規模の企業にとっても、「求める人材のインサイト」や「求める人材にどんな情報を発信すべきか」を知ることはとても有益です。そのためこのサービスでは、採用人数が10名程度の企業様から1000名規模の企業様までさまざまな企業様に引き合いをいただいております。また現状では、新卒採用に特化していますが、手法としては中途やアルバイト採用にも十分対応が可能です。

「採用コミュニケーション」サービスの活用事例

――サービスの活用事例をいくつか教えてください。

ある大手メーカー様と去年から1年間取り組みをさせていただいています。近年の国内製造業にまつわる報道の影響もあり、学生が業界に抱くイメージがそもそもポジティブではないという課題感がありました。そこで、誤ったイメージや偏見を解消し、正しく企業価値を理解してもらいたいというのが先方のご要望でした。

加えて、学生の情報収集方法のデジタル化や就職活動の早期化などもあり、同社の採用活動自体を変えなければならないという意識もお持ちでした。これまでの採用コミュニケーション戦略をデジタル中心にシフトさせるべく、戦略設計部分を我々に任せたいとご依頼いただきました。

従来、この大手メーカーでは「事業」や「技術」、「商品」に関しての情報発信量は多かったものの、「働く場」についてはほとんど発信してきませんでした。そこで、特にミレニアル世代以降の若者に見られる、「報酬」や「昇進昇格」という要素よりも「働く意義」や「働く環境」を重視する傾向に着目し、同社の「働き方」や「仕事環境、風土」、「働く人の志」、「会社のビジョン」などを学生に伝えることで共感してもらえるコミュニケーションをとる方向に切り替えました。

まずは、学生が就職活動で重視している「企業イメージ」や「働き方」、「キャリア」などに関して、同社や競合企業についてどのようなことがSNS上で話題になっているのか調査、分析することからはじめました。調査を踏まえ、特に多くエンゲージメントしていた「ワークライフバランス」や「ダイバーシティ」、「グローバルな働き方」などを現在の学生がどう捉えているのかをさらにさまざまな視点で可視化し、コミュニケーション戦略に落とし込みました。同時に学生の間でエンゲージメントされているメディアの選定も行いました。

調査を踏まえたアウトプットの一例としては、一般的には無名でも学生の間では大きくエンゲージメントしているキャリア系メディアを発見し、調査から導き出したターゲットに響く文脈で人事担当者が語るタイアップ記事を出稿しました。さらに、SNS上のアドで本記事の情報拡散を図ったところ、大きくエンゲージメント数を獲得することが出来ました。これにより同社のターゲットに留まらず、これまでにない層へのアプローチにまで繋げることができました。

――この施策において良かった点、課題が残った点を教えてもらえますか。

良かったことに関しては、同社にとってこれまでとは全く違うフィールドで集客をかけたことで、質と量の両面において母集団を広げることができたことです。

コミュニケーションのプロである我々が入り、学生にエンゲージメントしやすく、かつその企業独自の強みや良さが伝わる表現を使って的確に情報を届けたことで、「実はこういう価値観を持った企業なんだ」、「ここで働くってこういうことなのか」と学生が共感し、納得した上で選択肢の一つに選んでくれているようです。

これから検証していく必要がある部分としては、今回のコミュニケーションを基点に採用した人が、実際に期待通りの人材だったかどうかという点です。採用活動の成否を決めるのは、入社後それぞれの人が実際にどれほど活躍したかで、その検証には少なくとも数年は必要です。その意味では、当社のサービスの成果を検証できるのはもう少し先です。学生と企業のマッチングを目指すのであれば、目の前の集客数を追うだけではなく、中長期的な視点を持って学生と企業のエンゲージメントを追求する必要があると考えています。

Face to Face も大事にしていく

―― 就活メディアやソーシャルメディアなどで情報を積極的に収集していない学生には、どのようにアプローチしていくのでしょうか?

前提として今ほとんどの学生はデジタル上の情報に触れています。ただし、そうは言ってもリアルの場でのコミュニケーションは重要です。そこでスパイスボックスでは、学生コミュニティの支援や体験プログラムを組んで対面でのコミュニケーションを行うなど、リアルな場での学生との繋がりも構築しています。内容によってはSNS上では顕在化しにくいこともあり、ソーシャルリスニングの結果だけがすべてではありません。時には学生への直接ヒアリングを含めて方針を立てることもあります。

――今若者や学生は、企業に対してどういったことを求めているのでしょうか?

常日頃から SNS データだけではなく、 直接学生と話すことでイメージを膨らませていますが、これは難しいテーマです。

その上で主観も入りますが、我々が今感じているのは、「ネームバリューのある会社で働きたい」や、「長期間かけてじっくり何かを成し遂げたい」といった価値観よりも、粒度はさまざまですが、自分なりに目指しているものがあって「このタイミングにこの会社にいることで、何を得られるのか」を軸にして企業選びをしている学生が多いと感じます。

コンテンツとしても、「入社後、どんな仕事をするのか」ということよりも、学生たちと年齢が近い入社1~2年目くらいの社員が「どんな価値観を持ってここにいるのか」や「どんな人生計画を持ってそこで仕事をしているのか」といった情報にニーズがあることがデータからも見えています。就職活動では、一生勤められる会社というよりも、長い人生の“ファーストキャリア”を探しているんだと感じます。

――サービスの今後について教えてください。

一番の強みとなっている、採用コミュニケーションの戦略設計やクリエイティブの部分は引き続きクオリティを上げながら実績を作ってきたいと思っています。それに加え、今後は採用の入り口である採用広報の部分だけではなく、面接などの各選考ステップもエンゲージメント視点で支援できないかと考えています。例えば、学生インサイトを踏まえた選考フローや面接方法の設計、選考官に対するコンサルティングなどがあると思っています。採用におけるコミュニケーションで中心となるのは、必ずしもメディア上の情報や動画などのコンテンツだけではありません。選考を通して学生が出会う「社員」の思考や行動が最大の企業ブランディングに繋がります。

また、もう少し先の未来には、「就職活動という枠組みだけではない採用コミュニケーション」の取り組みも視野に入れています。「選考で話す」というコミュニケーションと、単純に「この会社で働く知り合いと一緒にランチに行く」というコミュニケーションは全く異なります。僕らとしては後者の方での気づきやマッチングも支援できればと思っています。

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  • 株式会社 スパイスボックス 採用コミュニケーション事業部 事業部長 プロデューサー