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生活動線を考えたら、新しい広告の形が見えてきた<後編>
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生活動線を考えたら、新しい広告の形が見えてきた<後編>

博報堂DYグループは2017年12月、グループ横断型の新組織「デジタルロケーションメディア・ビジネスセンター」を設立しました。生活者の、移動しながら変化する生活シーンと無意識下での気分の移り変わりを重視し、その動線上にあるメディアを再構築、また、新たなメディアビジネス開発を支援する専門組織です。中でもデジタルサイネージやモバイルなど、生活動線上の接点を大きく拡大させる可能性をもつ"デジタルロケーションメディア"に着目し、活動しています。

前編に続き、本センター設立の経緯や今後の展望などについて、博報堂DYホールディングス マーケティング・テクノロジー・センター 開発6グループのグループマネージャー兼デジタルロケーションメディア・ビジネスセンターのリーダーを務める佐藤智施と、博報堂 総合プラニング局 ユーザーエクスペリエンスデザイン部長で本センターにも所属する入江謙太が語りました。

調査結果から導き出した、6つのモード

入江

モードを体系化する際、あらゆる気分にリーチするのは現実的ではないと考え、調査結果を参考に6つに集約しました。まず一つ目が通勤・通学中を捉えた「ウォームアップモード」です。このモードは、今日のニュースや天気、トレンドなどについて積極的に情報を集め、気分を高めている状態です。
二つ目は、会社や学校に着いてから仕事や勉強に集中する「フォーカスモード」です。このモードでは、仕事や勉強に集中しているため、それ以外の様々な情報に接触したいという気持ちはありません。ただし、仕事や勉強に関連した情報であれば深堀りして調べることがあります。
三つ目は「ハンティングモード」です。スーパーで食材を買っていたり、ショッピングモールを歩いていたりといったプライベートな状況を想定しています。セール商品や、お店のレビューなどの情報を求めています。
四つ目も同じプライベートな状態ですが、もう少し目的のない買い物などをしている「アンテナモード」です。友達と外出していて、こんなお店が流行っているらしいとか、こんなイベントが話題らしいと一緒に調べたりします。
五つ目は「ひまつぶしモード」です。ちょっとした休憩や、待ち合わせで人を待っている時間を想定しています。このモードではSNSを見たりチャットをしたりすることが多く、堅苦しい情報よりも、少し気が抜けた情報がマッチします。
最後が「オープンマインドモード」です。帰宅の動線上を想定しており、仕事も勉強も終わり、これから食べる食事であったり、プライベートな情報を集めようとするモードです。気持ち的にも時間的にもゆとりがある状態ですね。

デジタルロケーションメディア・ビジネスセンターが発表した6つの「モード」
佐藤

こういったモードを意識した広告コミュニケーションを制作・運用することで、電車の車内広告や駅のコンコース広告が、会社や学校の行きと帰りでは全く違うものになる、といったことが起きますよね。生活導線上のシーンに応じて心理状態が変わるので、データを活用して、その変化を捉えることが大変有効です。

入江

こうした生活者像の具現化は、過去にも誰かしらが想定したことはあったと思うんです。ただこのタイミングで形にできたのは、ロケーションメディアが徐々にデジタル化されてきて、時間帯によって広告コミュニケーションを変えることが可能になったり、スマホなどを組み合わせて広告コミュニケーションの効果を定量的に測定することができるようになってきたことが大きいと思います。「今だったら本気になって取り組めば実現できそうだ」と思うことで、実現の可能性はぐっとあがりますよね。

佐藤

私は最初に6つのモードを見たとき、アンテナモードが面白いと思いました。このモードは誰かと一緒に居て、一緒に情報を探す場面を想定しています。自発的ではないけれど、新しい発見に出会いたいという生活者モードは、これまでにない考え方だと思います。

入江

このモードもアンケートの分析結果から分かったことですが、個人的な実感として「人と一緒に居る時にスマホを見ることが段々失礼だと思われなくなっているな」と感じていたのも大きいんです。みんなでご飯に行こうと話しているとき、誰かが会話しながら調べて「近くにおいしいエスニックレストランがあります」とかいうのが当たり前になってきている。スマホは会話を邪魔するものではなくサポートするものになってきましたね。

必要なのは、「モード」を捉える仕組み作り

佐藤

生活者のモードを可視化するだけだと不十分で、可視化された生活者のモードを捉える仕組みが必要だと考えています。モードを捉えるためにはメディアの再構築が必要になる。私が考えているのは、場所や時間に応じて心理状態やモードが変わるのであれば、場所と時間を軸にメディアを再構築していけば、モードを捉えられる可能性が高いのではないかということです。その変化を捉えることによって、情報受容性の高い広告コミュニケーションを行うことができる。

入江

メディアオーナーの視点で作ったメディアパッケージを買うだけではなく、広告コミュニケーションを行いたい広告主側が自分でどんな風に広告コミュニケーションを行いたいのかを考え、納得する形で広告コミュニケーションを実行する。「モード」がその一つのきっかけになったら嬉しいです。

佐藤

今後はそういった考え方をデジタルロケーションメディアに限らず展開していきたいですね。より効果的な広告コミュニケーションを提供できるようになれば、広告主はもちろん、なにより生活者に心地良い情報を届けることが出来る。まさに生活者発想をフィロソフィーとしている博報堂DYグループの使命であり、社会的な意義だと思うんです。

入江

そのためにはデジタル広告のプラットフォーマーとの協業も必要ですし、適切なコンテンツを作るためのクリエイティブも大切になります。当センターの果たす役割が重要になりますね。

佐藤

当センターはこれからも、“リアル空間に新たなデジタル接点を生み出し、生活者へ新しい発見や気づきを創り出す“ことをテーマに掲げ、博報堂DYグループの総力を上げて取り組んでいきます。今後の活動に、ご期待いただきたいですね。

<終>

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  • 博報堂DYホールディングス マーケティング・テクノロジー・センター グループマネージャー
    大学卒業後、メーカー、ITベンチャー、外資系マーケティングサービス、M&Aコンサルティング企業で、事業開発およびサービス開発のキャリアを積む。
    2013年5月、株式会社博報堂入社、2017年4月から出向して現職。
     
  • 博報堂 統合プラニング局ユーザーエクスペリエンスデザイン部長
    様々な業種のクライアントとともに、事業コンサルティング、企業・商品ブランディング、商品・サービス開発、マーケティングからクリエイティブ・デジタルまで一貫したコミュニケーション・プランニングを行ってきた。近年は、プロモーションを超えた、UX視点でのサービス領域の開発に積極的に取り組み、博報堂の次世代マーケティングを現場から牽引している。