ヒット習慣予報 vol.400『アプレ時間』

こんにちは。ヒット習慣メーカーズの佐藤諒平です。
当記事で、ヒット習慣予報はちょうど400回!いつも読んでくださっている方、たまたま今回読んでくださった方、みなさまありがとうございます。そして、これからもよろしくお願いします!
・・・などと言いつつ、私なんぞは担当したのはまだそのうちの10回…先輩方の積み重ねてきた偉大さを感じております。これからも努めて、そして楽しんで、おもしろい習慣の兆しをお伝えできればと思います。
閑話休題・・・
記事の内容としては400回だから特別編、ということもなく、いつもどおりで参ります。
今回ご紹介する習慣の兆しは、「アプレ時間」と名付けさせていただきました。この”アプレ”は、“アプレスキー”からとったのですが、この言葉、みなさんはご存知だったでしょうか?
元はフランス語で、直訳すると「スキーの後」。先般スキー場の多い町に行った際、海外にもたくさん滑りに行くというスキーヤーの方にお話を聞かせていただく機会があり、そこで私は初めて知った言葉だったのですが、どうやら「スキーやスノーボードを楽しんだ後、近隣で食事、飲酒、クラブ的な音楽イベント、スパなどを楽しむ文化」のことだそうで、西洋ではスキー/スノボと昔から密接にある文化のようです。
そして、Googleトレンドで検索推移を見てみると、直近、西洋のみならず世界的に注目されてきているワードであることが分かりました。ウィンタースポーツのシーズンに毎年検索されていますが、直近のシーズンでさらなる盛り上がりを見せています。

出典:Googleトレンド(「Après-ski」の検索 ※“すべての国”での検索量推移)
日本にも温泉が近いスキー場などはあるものの、アプレスキーと呼ぶような、お店や娯楽が充実し、かつ来訪者にも根付いているところはまだまだ少ないようです。
しかし、これを見た際に、スキー/スノボ以外でも昨今同じように、「その後」まで、大事な目的のひとつとして楽しみが広がっていることは、日本でもあるのではないかと気が付き、こちらをテーマとして取り上げました。
それでは、ここからは具体的にその例をご紹介していきます。
一つ目は、スキーと同じくアクティビティの分野で、「アプレサイクル」
サイクリング後に汗を流す・回復するといった目的で温浴施設に行くような行動はもちろん以前からあったのですが、それ以外にもサイクリング後、目的地での楽しみがこの数年で大きく広がっています。「カフェライド」といった言葉の浸透もその証左のひとつかもしれませんね。達成感とともに、景色の良いカフェやベーカリーで語り合いながら美味しいものを心行くまで楽しむ、アプリで走行の記録や映像をきれいに、見えるかたちで残し共有することで深く余韻を楽しむ、といった行動が代表的です。私自身も昨年夏にしまなみ海道を友人とサイクリングしたのですが、普段自転車に乗らない初心者にはサイクリング中が辛すぎて、むしろその後の楽しみのために、なんとか走破できたくらいでした。
二つ目は、「アプレ推しイベ」
昨今の推し活の広がりは言うまでもないですね。推し活をする人、推しのライブやイベントに行く人が増えるとともに、そのイベント参戦後までの楽しみが広がっています。たとえば、わかりやすいところでいえば、ライブ後に近くのお店に直行し、友人と感想の語り合い、グッズの撮影会をするといった行動や、カラオケでライブの曲を歌いなおすといった行動。また他にも、ライブやイベントのためにあえて少し遠い都市までも遠征し、後泊して翌日、その訪れた地での周辺観光を楽しみにしている人もSNSで多くみられました。推しに関連するスポットや、グッズが映える写真が撮れるスポットなど、綿密に下調べまでしている人も少なくないようです。
ちょっと違う角度から、最後三つ目は、「アプレ投票」
20年以上前のとある歌詞を元ネタとした、投票に行った後に外食する、という行動がいつしかSNSでミーム化し、昨今には、こうしたネタを知らずとも投票後に飲食店でのちょっと良い食事や、買い物といったご褒美的行動をし、SNSで共有することを楽しんでいる人が増えているようです。中には、投票が「いつしか行ってみたいと思っていたお店に思い切って行く」良い口実になっているような方もSNSで散見されました。ちなみに海外でも投票したことを示す券や写真によって割引するサービスを展開する飲食店や洋服店が多い地域はあるようです。こうした投票に対するご褒美は、投票をする本来の目的がすり替わってしまうという懸念をする声もありますが、まず投票に行くハードルを下げて意識付ける、という意味では、広がっても良い文化ではないかなと個人的には思いました。

では、ここまで事例をご紹介したような、主目的の「その後」まで大事な楽しみとする生活者の行動が、なぜ昨今広がってきているのでしょうか。
ひとつは、「どうせ外出するなら、その一度を楽しみ尽くしたい」という生活者の意識の高まりがあるのではないでしょうか。昨今は自宅で(あるいはもはやベッドからも出ずに)気軽に楽しめる娯楽が多くなり、外に出て楽しむようなことは、相対的に労力やお金がかかることになりました。だからこそ、一度の外出あたりの充実度を高めるべく、もうひと満足を積み足すような「その後」の行動をする人が増えてきたと考えます。
さらに、SNSやAIで情報収集する精度・簡便さが高まっていることも、こうした欲求を裏支えし、行動習慣の広げる要因になっていると考えられます。出かける前、あるいは主目的のために出かけている途中にでも、“ながら情報収集”が簡単にできることで、その後に行きたい場所/やりたいことが見つかり、行動する確率も高まっているのではないでしょうか。
今回も最後に、「アプレ時間」のビジネスチャンスについて考えてみました。
「アプレ時間」のビジネスチャンス例
■ 映画鑑賞後に、館内の一角で感想や考察の語り合い、記録作成などをゆっくりできるスペースの利用権と一杯の飲料サービスがついてくる、映画館ファン向け「アプレパス」サービス
■ フェス後に楽曲セットリストが、音楽ストリーミングサービスはもちろん、カラオケ店でも反映展開される「アプレフェス」サービス
■ 旅行中の写真を共有しただけで、自動でダイジェストのスライドショー動画や、スケジュールと写真が整理されて載っているアルバム本までつくってくれる、「アプレ旅行」盛り上げアプリ
など…
私は基本インドア派なので、アプレ時間の予定もつくって、一度の外出の満足度を高めたいと思うタイプです。この冬スキーをしに行くことにためらっていたのですが、アプレスキーも楽しめる場所になら行ってみたいなと、この記事を書いているうちに思い始めました。
▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。
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新潟博報堂
ヒット習慣メーカーズ メンバー2020年 新潟博報堂に入社。2023年より2年博報堂に出向後 帰任し、地域で一人前のマーケター・プラナーを目指して修行中。しっかり正月に太ったので年始からジムにゆるく通っています。ジムにいる筋肉質な身体を維持しているシニアの方々に尊敬の念が堪えません。


