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生成AIの時代こそ可能になる 「人に寄り添う」新しいブランド創造
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生成AIの時代こそ可能になる 「人に寄り添う」新しいブランド創造

博報堂の入江謙太が2025年12月に開催された「Generative AI Conference 2025」(日経ビジネス主催)に登壇。「AIとブランディング」と題した講演を行い、AI時代におけるブランドの本質的変化と、新概念「Branded AI Agent」を提唱した。

入江がまず指摘したのは、AI活用がもたらす「同質化」のリスクだ。「AIと対話してブランドを定義すると、どの企業が考えても似たようなブランドが構築されてしまう。データとアルゴリズムはある種の正解を導き出すが、マーケティングやブランディングの本質は"意味のある違い"をつくることだ」と強調する。

同質化との戦いは、実はブランディングの歴史そのものだと入江は説く。産業革命後、工業品の量産化が進むと「記憶」を残すためにビジュアルアイデンティティーやスローガンが生まれ、競合他社が現れると、次には「どのような思いで作ったか」という「意味付け」が重要になった。2000年代には、パーパスがブランドアクションに落とし込まれているかが問われるようになった。

そしてAI時代。「対話を通じてつながることが可能になった今、ブランドは生活者と対話しながら暮らしや心に寄り添えるかどうかが鍵になる」と入江は語る。ここで博報堂が提唱しているのが「Branded AI Agent」の概念である。「ブランドを記号でなく生命として捉え、AIエージェントで命を与える。思いを宿したブランドが、生活者と対話しながら暮らしを支えるAIエージェントへ進化させることがBranded AI Agentの考え方だ」と入江は説明する。

博報堂の「粒違い」を体現する 12のAIエージェント

このBranded AI Agentの具体例として紹介されたのが、博報堂が開発した「tsubuchigAI(つぶちがい)」というAIエージェント群のプロトタイプである。博報堂は「粒揃いより粒違い」という個性重視の企業文化を持つ。この精神を反映した、哲学者タイプ、おしゃれさんタイプ、体育会系タイプなど12種類の個性を持つAIエージェントを開発。2025年11月に開催された同社のイベントでは、これらのエージェントが講演内容を解説したり、エージェント同士が踏み込んだ会話を交わしたりして来場者に新しい視点や発見を提示し、イベントへの理解を多角的に深める様子が披露された。

この考え方は様々な業種に応用が可能である。例えば、テック業界の企業であれば「発明好きAI」が子供の自由研究の相談相手となるように、ブランドは人々の生活の中に入り込み、寄り添うものになる。入江は「ブランディングは、一度定義したら完成するものではなく、対話の中からヒントを得て進化し続けるものになる」と述べ、将来的には異なるブランドのAIエージェント同士が自律的に連携する「AI to AI」の可能性にも言及した。

ブランドCXサイクルで 事業成長を支援

博報堂では、このBranded AI Agentを中核に据えた「ブランドCXサイクル」というフレームワークで、企業の事業成長を支援している。ブランド独自の顧客体験をAIを活用して構築し、アプリ、EC、店舗などあらゆる接点で一貫したブランド体験を届ける仕組みだ。

Branded AI Agent構築の基盤となるのが、博報堂が持つ独自の生活者データである。購買データや意識調査データ、家族構成といった多様なライフスタイルデータを保有しており、ターゲット顧客を明確化した上でAIエージェントを精緻に設計できる点が強みだ。

また「バーチャル生活者」という手法も積極的に活用している。同社が保有する膨大な生活者データと独自のプロンプト技術によって、バーチャルな生活者を再現。このAIは、本音が聞きにくい生活者のインサイト発掘や、生活者からのクリエーティブ評価、CX AIエージェントの開発など様々な用途に活用されている。

講演の最後に入江は「AIの時代は、同質化の波にのまれない価値のある強いブランドをいかにつくっていけるかが重要。好きなものがある社会、愛せるものがある世界を皆さんと一緒につくっていきたい」と呼びかけた。
 

「日経ビジネス電子版Special」2026年2月20日に公開
掲載された広告から抜粋したものです。禁無断転載©日経BP

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  • 博報堂
    CXクリエイティブ局 局長 /
    エグゼクティブクリエイティブディレクター