博報堂ゲームプロジェクト発!定量調査データベース「GATRIX(ガトリックス)」から紐解く国内アプリゲーム市場攻略の鍵とは
ゲーム案件に特化したストラテジックプラニングチーム「BXMゲームプロジェクト」は、アプリゲーマーを生活者視点で分析した定量調査データベース「GATRIX(ガトリックス)」を始め、これまでさまざまな独自ソリューションを開発してきました。今回、2025年2月に実施したオリジナル調査「GATRIX 2025」の結果を紐解きながら、国内アプリゲーム市場攻略の要点に迫ります。
スピーカー(左より)
株式会社博報堂
ストラテジックプラニング局 マーケティングプラニングディレクター
斎藤 大稚
株式会社博報堂 ストラテジックプラニング局
株式会社 ハッピーアワーズ博報堂
戦略クリエイティブディレクター
長縄 雄一郎
アプリゲーム市場の“いま”がわかる「GATRIX 2025」
―2025年に実施した「GATRIX 2025」では、国内アプリゲーム市場においてどのようなファクトが新たに見えてきましたか。
- 長縄
- 今回の調査からは、まず、たくさんお金をかけてアプリゲームを楽しむヘビーユーザーがわずか6%ほど、お金はかけずにライトに楽しむF2P(Free-to-play)ユーザーが65%ほどという数字が出ました。プレイヤーのほとんどがライトなF2Pユーザーであり、売り上げの7割を6%のヘビーユーザーが支えているという市場構造が見えてきました。我々も感覚的に把握はしていたのですが、この事実を今回の調査を通して改めてデータで示すことができたのは非常に意味があったと思います。

図:国内アプリゲーマー市場におけるユーザー分布
たとえばゲーム内では、特殊なアイテムや装備などを誇示することで、他のユーザーに対してある種の優越感を得ることができます。そうしたユーザー心理をふまえることも、売上比率の7割を占めるヘビーユーザーが来たくなるような環境づくりのポイントになります。これは推し活の構造とも類似していて、やはり「あの人すごいな」「自分はまだまだだな」など、同じ界隈内で称賛活動が行われる環境だと、ファンダムが活性化します。ゲームの場合はアイテムの獲得や所有という形でそれが特にわかりやすく可視化されるということも、今回の調査で見えてきた点です。
―そのような市場構造に対する一定の認識は、クライアント側にもあったのでしょうか。
- 斎藤
- はい。少し振り返ってみると、スマホが一般に普及しきった2010年前後のタイミングで、いわゆるソーシャルゲーム、スマホゲームと呼ばれるカテゴリーが誕生しました。
それまでは、コンソールゲームにおいて、ソフトを購入した時点でお金は支払い終えている「買い切りモデル」が主流で、オンライン課金型モデルは一部のPCゲームで採用されている環境 でした。それが、スマホゲーム登場以来、無料で楽しめるモデルが主流になり、有料コンテンツの活用によってゲームを進めやすくなったり、特殊アイテムやキャラが入手できたりするという構造になり、ビジネスモデル自体が大きく転換したんです。ですから当然開発者側も、できるだけエントリーの間口は広げておいて、その後はいかに「この世界を応援したい」というモチベーションを高めて、納得感のある購入体験を提供できるかというマインドに変わってきています。

―ありがとうございます。また今回、「ヘビーユーザー」と「F2P(Free-to-play)ユーザー」という対照的な両ユーザー層から見えてきたこともあるそうですね。
- 斎藤
- どのジャンルのゲームをプレイしているかを質問したところ、F2Pユーザーが突出して好むのがパズルゲームでした。どんな人でもカジュアルに遊べるし、有料アイテムがありつつもそれが決定的にゲーム体験に与える影響は抑えられています。一方、特にRPGは、ヘビーユーザーの方が好む傾向が強いです。物語性があるので話が完結するまでずっと没入できますし、アップデートで次の章が始まるといったこともある。熱意を持ってプレイし続けられることが好まれる要因かと思います。
- 長縄
- そもそもパズルゲームに代表されるようなカジュアルゲームの多くは、広告が頻繁に挿入されて、一定時間広告が視聴されるとまた無料のゲーム画面に戻るといったビジネスモデルを採用しています。有料アイテムなどの要素も少なく、結果的にその時々の時間つぶしにプレイするといったユーザーが多くなるのでしょう。
―パズルゲームのCMも日常的に頻繁に見かけます。
- 長縄
- こうしたテレビCMをはじめとするマス広告への出稿は、信頼感を醸成する上で、大きな役割を担っています。大規模なプロモーションを展開しているという事実そのものが、ユーザーに「このゲームなら長く楽しめそうだ」という期待感を与える手段なのかもしれません 。
- 斎藤
- そうですね。調査からはそうした「タッチポイントの違いによって変わるゲームの印象」について、興味深い3つの点が見えてきました。
1点目は、先の事例の通りに、TVCMやアプリストアの評価などが、ゲームタイトルの安心感や信頼感の醸成に役立つということ。それなりの権威性があるタッチポイントを介することで、新規タイトルへの期待感を醸成し、「みんなのゲーム」といった印象を形成できるということです。
2点目は、ゲーマーの方によるUGC風の広告などを通して、「話題のゲーム」という印象を形成することができると考えられることです。
3点目は、ゲームクリエイターがこだわってつくったエッジの効いたゲームなどの場合、特定のゲームストリーミングサービスやゲームショーなどのイベントなどで露出させることで、「本格派のゲーム」という印象を形成できることです。
より多くの方に買っていただきたいというのが基本ですが、届けたい層にきちんと届けるためには、どんなブランドとして見せたいか、どんな出目で接触させたいかといったこともコミュニケーション設計に組み込むことが必要です。そのための有効なデータが今回の調査で明らかになったということです。
ゲームに閉じずに、幅広いエンタメ領域を視野に入れて話題性をつくる
―博報堂が得意とするメディア戦略やクリエイティブの考え方を、アプリゲーム領域においてもしっかりと発揮していくことが、効果的な広告のためにも重要といえそうですね。
- 長縄
- まさにそうだと思います。最近はゲーム広告においても、多種多様なプラニング、アプローチの手法が求められるようになってきました。一昔前まではテレビなどのマスメディアのリーチをデジタル広告で補完する、テレビ×デジタルミックスのプラニングが主流でしたが、最近はストリーマーさんにゲームの体験版をプレイしてもらい、ユーザーに近い視点からゲームの魅力を伝えてもらうとか、渋谷の街中でリアルイベントを行ったり、あるいはプロモーション用に小説をつくってサンプリングで配布したりするなど、実にさまざまな手法の実践例が出てきています。いずれにしても、以前のように費用対効果のシンプルな指標だけでは効果は測りにくくなっているのが実情です。
また事前登録キャンペーンなどを通して、ローンチ前の段階でどれだけ熱量の高い人たちの間で話題になるかが求められます。そういう意味では、どのタッチポイントでどういう印象を作れるのか、今回の調査で科学的に解明できたわけですから、僕らの提案の質もより高めることにつながると思います。

―クライアントにとっては新作タイトルへの集客が最重要課題かと思いますが、そのためのメディア戦略についてはどうお考えですか。
- 斎藤
- 誰でもすぐに終わりそうなゲームにはお金をかけたくないですから、やはりプロモーション段階で、「このゲームは格が違う」「作り手の本気を感じる」と思ってもらうことが鍵になります。そのためにも、著名アーティストに主題歌を手掛けてもらうとか、人気バラエティ番組のプロデューサーにプロモーションコンテンツをつくってもらうなど、質の高いエンターテインメントとしても成立する顔をつくることが大切なのではないかなと考えています。
- 長縄
- 最近は類似タイトルがどんどん出てきたと思ったら、一定の人気を得た後にサービス終了するケースも増えていますから、「これも長続きしないんじゃないか」という不安を抱えるユーザーが少なくありません。長く人気であり続けられるかどうかは、ゲームそのもののクオリティはもちろん、広告プロモーションとしてスマホゲーム界隈に閉じずに、より幅広いエンターテインメント界隈を視野に入れたうえでの話題性を醸成することが重要だと思います。
たとえばとあるスマホゲームのタイトルは、2021年のローンチ以降着実にファンを増やし、いまやコミケでも最大数のブースを誇る存在になっています。一つのスマホゲームタイトルが、漫画やアニメと同じ土俵に立つ「世界観」を作っているんです。やはり、ローンチのタイミングでいかにそうしたヒットの可能性を感じさせるかが重要ですし、マス広告などを通して、「大衆から支持を得られそうだ」という印象を持ってもらうことが有効なのではないかなと思っています。

ゲーム業界は世の中の変化の兆しがいち早く表れるジャンル
―さまざまな規模のクライアント、さまざまな種類のゲームタイトルがあるなかで、改めて「GATRIX」の調査データはクライアントのどんな課題解決に役立ちそうでしょうか。
- 斎藤
- まず大前提として、世の中ですでに公開されているゲームに関するデータは、プレイの中身に関する内容が中心で、「GATRIX」のようにゲームタイトルをプレイする手前の部分でゲーム市場の実態やユーザー像を調査したデータはほかにありません。そこは我々独自の強みだと思います。
そのうえで、これまでお話した「どういう顔つきをつくるか」の先のフェーズとしては、ユーザーがダウンロードするまでの中間地点、つまりゲームについて知った少し先のユーザー理解が必要になってきます。マニアックな人たちが熱くなってプレイしているのか、一般の人たちがワイワイと楽しんでいるのか…。「これは友達と一緒にやると楽しそうだな」とか「一人で黙々と夜中やるのが楽しそうだな」といったフィーリングまでを非言語のメッセージとして伝えていき、理解してもらうことがとても大事になってくる。「GATRIX」ではそうしたユーザー像もジャンル別に分析していて、博報堂らしい解像度の高い生活者理解とともに、クライアント様へのご支援にうまく活用できるのではないかと思います。
- 長縄
- クライアントのサービスや商材の潜在的な魅力を引き出して伝えることが広告だとすると、ゲームの場合は、ユーザーが楽しそうにプレイしているその風景自体が広告になりえます。ただ、それだけだと素通りされてしまう場合もあるので、タレントさんを使うとか、魅力的で強力なコピーを打ち出すとか、ターゲットユーザーがそのコンテンツ自体に興味を持つような仕掛けを盛り込んでいくことになる。そういう意味でゲームの場合は、ほかの商材に比べて売り物が広告に近い存在であることを前提にしたプラニングが必要になってくるのだと思います。

―さまざまなエンターテインメントコンテンツがある中でも、特にゲームユーザーの生態から見えてくる特徴などはありますか。
- 斎藤
- いまはやはり、ショート動画など短時間でそれなりに面白いコンテンツが受け入れられていますよね。10分の動画、もっというと数秒のショート動画をどんどんスワイプして見るのが当たり前になっている。コンソールゲームを遊ぶゲーマーの人に話を聞いても、昔のように長い時間をかけて物語を体験するようなタイトルよりも、10分、15分でプレイできるゲームタイトルのファンが増えていると感じます。インスタント化するゲームの遊び方のもっとも尖った例が、パズルゲームなのだと思います。
いずれにしても、ゲーム業界はすごく変化が激しいからこそ、世の中のエッジの部分がいち早く出てくる業界ジャンルです。これからも、「GATRIX」の調査分析内容を手掛かりに時代の先端に立ったマーケティングを考え、変化の兆しをいち早く察知し、クライアントに最適な質の高い提案を行っていけたらと考えています。
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株式会社博報堂 ストラテジックプラニング局 / ハッピーアワーズ博報堂
戦略クリエイティブディレクター教育系出版社で企画・制作の経験を経て、2014年に博報堂入社。食品メーカー、旅行、自動車、ゲーム、自治体など幅広い業種でコミュニケーション戦略の策定を担当。2017年より現職。オンラインとオフラインを統合した体験設計で、生活者の幸せとクライアントのビジネス貢献の両立を実現することを信条とする。
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株式会社博報堂 ストラテジックプラニング局
マーケティングプラニングディレクターWebサービス業界でのUXデザイン/Webマーケティングを経て、2022年博報堂入社。金融、通信、ゲーム、スポーツなど様々な業界に対するコミュニケーション戦略を担当する。デジタル領域の出自を活かし、フルファネルでの統合プラニングを得意とする。


