AIの力で高度化するプランニング バイイングの再現度をどこまで担保できるか?
テレビをはじめとするマスメディア、さらにデジタルからオフラインの店頭での行動までがデータでつながるようになった時代。メディア投資戦略にイノベーションを起こすような新たな取り組みが始まっています。本連載では企業側、メディア側、広告会社側それぞれの領域で新たな取り組みを始める方たちに取材。今月は月刊『宣伝会議』編集長の谷口優氏が聞き手となり、博報堂の飯塚隆博とThe Trade Desk(以下、TTD)の佐藤大希氏に、マーケティングの現場で起きている課題をテクノロジーがどう解決できるのか。その方向性について議論を行います。
※本内容は、「AdverTimes.(アドタイ)」に2026年2月4日に掲載されたものです。
https://www.advertimes.com/20260204/article533189/
緻密な戦略通りにいかない?広告出稿の“実装の壁”
- 谷口
- 価値観が多様化する時代に対応して、マーケターはより精緻なターゲティングを企画するようになっています。しかし、ターゲティングを精緻化しても、実際に広告を配信する「エグゼキューション(実行)」の段階になると、思い描いた戦略通りに再現しきれないというジレンマが生まれています。
マス広告と比較すれば、デジタル広告はターゲティングの精度は高いはず。それなのに、なぜ、思い通りに実行するのが難しいという声が上がってくるのでしょうか。
- 飯塚
- まさに、これは現在のマーケティングにおける大きな課題です。
戦略上では、「誰に・いつ・どこで・何を伝えるか」という設計図を高い解像度で描けるようになりました。しかし、実行フェーズでは個別の媒体やプラットフォームの仕様に戦略を合わせる「部分最適」に陥りやすい。確かに各プラットフォームでの配信において精緻なターゲティングは可能です。しかし、その仕様が各社独自に進化したあまり、複数プラットフォームを横断した「全体最適」のコントロールは、かつてないほどに難しくなっているのです。
- 佐藤
- 媒体ごとのサイロ化が進んだ結果、マーケターが「人」を起点に描いたはずのカスタマージャーニーが、実行段階では解像度が下がってしまうケースが少なくありません。
その結果、意図した効果検証ができない点も影響し、全体最適のPDCAサイクルが機能しなくなる。これが多くの企業で起きている課題です。
また現在のメディア環境では、かつてのように「テレビは認知媒体、デジタルは獲得媒体」といった単純な役割分担が成立しにくくなっています。生活者はチャネルを横断して行動しており、各接点がブランド認知と購買意欲の双方に影響を与えているからです。
デジタル広告における複数のプラットフォームのみならず、デジタル以外の複数メディアを横断して、統一的にマーケターが設定したターゲティング通りに広告を配信できることが求められています。
その実現に際して重要なのが、「枠」単体ではなく「人」を軸にメディアを捉える視点です。対象となる人にどう届き、どう行動が変わったのか。その分析を基に、次のアクションを設計していく。この発想の転換が、今マーケターに求められていることです。
- 飯塚
- これまでは、その統合や調整を現場の運用担当者が人力で行っていました。しかし、メディア環境がここまで複雑化した今、人手による対応には限界があります。戦略が高度になるほど運用負荷は増大し、結局、ひとつの戦略を全ての媒体に共通の精度で落とし込むのが難しくて、今は運用担当者が手作業で「この媒体ならこの設定が近いかな」と調整しているのが現実なんです。
こうした課題に対し、戦略を複数媒体にまたがってシームレスに反映・最適化し、実行の質を底上げする仕組みが求められています。その解決策のひとつとして博報堂が開発したのが、「AaaS DemandPlatform(以下、ADP)」です。
- 佐藤
- 今回、私たちTTDも「ADP」の「戦略を媒体横断で忠実に実行する」という構想に強い共感を持ち、機能提供という形で参画させていただいています。
- 飯塚
- 機能の第一弾として、「AaaS(※)」を用いた分析から導き出したペルソナを、博報堂DYグループのプランニング知見を学習したAIが、各DSP/媒体の最適なターゲティング設定へ自動変換・推奨します。これにより、戦略の意図を正確かつスピーディーに実行現場へ届けることが可能になります【図表1】。
マーケターが追うべき成果は、短期的なクリック率や視聴率だけではありません。売上やブランド資産への中長期的な寄与が求められています。「ADP」が企画フェーズと実行フェーズのギャップを解消することは、広告活動を「コスト」ではなく、「事業成長への投資」として可視化していくプロセスでもあります。
※広告業界で長らく続いてきた「広告枠の取引」によるビジネス(いわゆる「予約型」)から「広告効果の最大化」によるビジネス(いわゆる「運用型」)への転換を見据えた、博報堂が提唱する広告メディアビジネスのデジタルトランスフォーメーションを果たす次世代型モデル<AaaS®は博報堂の登録商標>
【図表1】AaaS Demand Platformの目指す未来

「AaaS Demand Platform」はAIを活用し、策定した広告戦略をシームレスに媒体横断で再現し広告配信を最適化・実行するエグゼキューションプラットフォーム。広告配信結果を戦略やADPに戻すことで、戦略立案・実行を繰り返し学習し進化していく。
- 佐藤
- TTDが一貫して追求してきたのは、分析や示唆が特定のメディアのなかに閉じず、広告主の「資産」としてマーケティング戦略全体で活かされる柔軟性を提供することです。透明性の高いデータに基づき、戦略をブレさせずに実装できて初めて、マーケティングは企業にとっての投資になります。そして、その活動の結果得られるデータは、資産として蓄積されていくはずです。

月刊『宣伝会議』編集長の谷口優氏(写真右)が聞き手となって、博報堂の飯塚(中央)、The Trade Deskの佐藤氏(左)と共に、戦略と実行を地続きにする「ADP」の可能性について語り合った。
- 谷口
- 最後に、今後の展望をお聞かせください。
- 飯塚
- マーケターが本来向き合うべきは、プラットフォームに個別最適化された日々の配信の設定ではなく、事業成長につながる戦略の構築です。この「ADP」によって戦略ターゲットを各DSP/媒体の最適設定へと自動変換し、狙い通りの配信を確実に実現できれば、質の高いPDCAを高速で回すことが可能になります。
私たちが目指しているのは、戦略と実行が分断されることなく、ひとつの意志として機能する世界。マーケターが「理想」を諦めなくてよいマーケティングのスタンダードをつくっていきたいと考えています。
- 佐藤
- テクノロジーが運用作業の負荷を引き受けることで、マーケターは「顧客インサイトの発見」や「創造的なストーリーテリング」といった、本質的な領域により多くの時間と思考を割けるようになるはずです。
この記事はいかがでしたか?
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博報堂 AaaSビジネス戦略局 局長
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佐藤 大希The Trade Desk Japan
Client Service Director


