ヒット習慣予報 vol.391『積み立てモチベ』
はじめまして!この度、ヒット習慣メーカーズに仲間入りしました、仙田です。
新卒一年目というひよっこではありますが、どうぞよろしくお願いいたします。
世間はもう12月ですっかり年末ムードです。あっという間の2025年でしたが、皆様の一年はいかがでしたでしょうか…?毎年この時期になると、「来年こそあんなことしたいな...」と自分の欲望が湧いてきます。
ちょっと先の未来の楽しみを作ることでモチベーションを維持する。その楽しみの発見方法・管理方法も近年より多様化し、進化してきているようです。
今回は、私たちが日常的に行なっている、いつかの自分たちに向けたご褒美を用意する行為を「積み立てモチベ」と題して、近年の代表的な事例を集めてみました!
1つ目の事例は、【お楽しみ予約】です。
この「お楽しみ予約」は、SNS上で見つけたやりたいことや行ってみたい場所などを保存しておいて、未来の自分のためのウィッシュリストを作成しておくことを指します。
InstagramやXなどSNSの投稿保存機能を活用しているのは私だけではないはずですよね?
事実、ここ10年でのウィッシュリストの検索数はこんなに伸びています。
▼「ウィッシュリスト」検索量推移(2017年以降・日本)

まさに、積み立てモチベの代表的なものといえる「お楽しみ予約」ですが、人によって色々な貯め方があると思います。
私の場合はSNS上で気になった投稿を一時保管し、さらにそこから“欲しいもの”“食べたいもの”“行きたい場所”に分類してスマホのリマインダー機能に移行するという、2倍の手間をかけた予約表の作成に勤しんでいます...。(これをしている時間もまた楽しい。)
こうして温めておいた予約表は、休日にフリーな時間ができた時や、ふと自分へのご褒美が欲しいタイミングで活躍します。リストの中身を実行できた時、気になっていたものや場所に行けた嬉しさだけでなく、過去の自分からのオーダーに応えた気分になり、満たされた気分になれるのです。結局、自分の喜ぶツボを一番理解しているのは自分自身なのだと、つくづく実感するタイミングでもあります。

2つ目の事例は、【パブリック備忘ログ】です。
これは主に、“他者”を相手にするSNS上で“自分”のための日常記録を行うという少し矛盾した行為のことを指します。
特に近年の代表的なものでいえば、BeRealやInstagramのサブアカウントではないでしょうか?
今の時代は、SNSアカウントが名刺代わりとなり、その人の象徴として扱われています。だからこそ、「自分の外ヅラ」のための投稿アカウントでは、一種のフィルターをかけた状態で写真を選択し、厳選した想い出を公開している人がほとんどです。
一方、フォロワーを限定し、安全地帯として運営するサブアカウントでは、日常のありのままの様子を投稿し、SNSというツールを利用した備忘録として活用する人も多くなってきています。
いつかの自分がその記録を見返し、懐かしく温かい気持ちになれることこそ、このパブリック備忘ログの魅力でもあり、積み立てモチベとしての機能でもあります。飾らない自分の日常をも第三者的視点から肯定し、過去を糧に出来る場所と言えるのかもしれません。
実際に、私の友人も過去の投稿を見返すことが習慣化していて、「そういえばあれ楽しかったからまた行こうよ」と声をかけてくれたり、出かけている時も互いにサブ垢を眺めて思い出に浸ることもあるあるだったりします。

そして最後の3つ目は、【取り寄せタイムカプセル】です。
これはコロナ禍を経て需要の高まったお取り寄せ品を使った積み立てモチベの方法の一つです。中には、数年~10数年も待つものもあるお取り寄せ品。19年待ちのコロッケや12年待ちの梅干しなど、家に届く時には、購入していたことすら忘れていることもあるあると言います。
しかし、その待ち時間こそが、未来の自分への贈り物を熟成させるためのスパイスとなります。実際にSNS上でも、「お取り寄せグルメはワクワクの最高峰」「ちょっとしたサプライズ感でより嬉しい」などの意見も多く寄せられています。
通常の買い物とは異なり、時間を超えたご褒美の予約は、「未来に確実に楽しみが訪れる」という約束を自分自身と交わす行為ともいえます。長年待ち望んだ品を味わう体験は、過去の自分から託されたタイムカプセルのように、ワクワクできるのです。

さて、いくつかの事例を紹介してきましたが、なぜ昨今このような「積み立てモチベ」が増えているのでしょうか。
まず、現代人は将来について悲観しがちだからという考えが挙げられます。インターネットの進化で、不安定な世の中についての情報なども多く出回るようになりました。その中で「いつかの自分の支えになる」ものをあらかじめ蓄えておこうという先回り精神が生まれたのではないか、と考えます。
そして、多様なコンテンツの管理・保存がより手軽になったことも、もちろん理由の一つです。おすすめ機能の発達により、自分の好きなものがさらに目に入りやすくなったことで、モチベーションになるコンテンツの存在を身近に感じられるようになっています。また、そのコンテンツの保存方法も、デジタル機能の発展で簡略化され、いつかのための蓄えがさらに気軽に行える行為になってきているといえるのです。
最後に、「積み立てモチベ」のビジネスチャンスとして、下記のようなことを考えてみました。
「積み立てモチベ」をめぐるビジネスチャンスの例
■ すぐには買えないもののみを集めた、いつか届く商品限定の通販サイト
■ 未来のどこかで予定しているイベントのために貯金を支援する家計簿アプリの新機能
■ 実現できなかったことを記録すると、次年のスケジュールに自動プロットするカレンダー機能
今の自分がいつかの自分を支え、過去の自分に今の自分が支えられる。
私の社会人生活も半年が過ぎましたが、社会の荒波に飲み込まれることなく、自分にとっての小さな喜びを日々大切に保管していこうと思います。
▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。
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博報堂プロダクツ デジタルプロモーション事業本部 アクティベーションプランニング部
ヒット習慣メーカーズ メンバー2025年に博報堂プロダクツへ入社。一人前のプランナーを目指し、とにかく頭を捻り続ける毎日。積み立てモチベ力はあるのに、肝心な金銭の貯蓄能力が不足中。今年のお年玉に期待です(23歳)。


