ヒット習慣予報 vol.388『Z世代の蒸しライフ』
こんにちは。ヒット習慣メーカーズの中久保です。
私が住む北海道でも雪が降り始めました。一年をとおして体を冷やすのは良くないということが共通認識である昨今ですが、やはり冬は一段と体をあたためるケアの必要性を実感します。
そんななか、いまZ世代では食事や美容をなど身体のケアのなかでも「蒸す」という方法が改めて注目されており、オールシーズン行う日常習慣として取り入れているひとが増えてきているようです。
実際にGoogleトレンドで見てみると「蒸す」の検索数はここ5年間でゆるやかに上昇しており、5年前と比較すると約2倍になっていることがわかります。

(出典:Googleトレンド「蒸す」のYouTube検索数推移)
今回は「Z世代の蒸しライフ」と題した新習慣について、事例を交えながらご紹介いたします。
事例の1つ目は、「せいろ蒸し」です。
「せいろ」と呼ばれる竹や木でつくられた円い箱型の調理器具に野菜、肉、魚、卵などを置き、沸騰している鍋の上にせいろごとのせ、10分ほど放置するとできあがる蒸し料理の調理法です。この「せいろ蒸し」で朝ごはんや夜ごはんをつくるZ世代のひとが多くなってきている気がするのです。さまざまな具材に一気に火を通すことができ、栄養バランスの整ったごはんを短い時間で手軽に作れることや、アレンジの多彩さが人気の理由であることがSNSの投稿からも見て取れます。また、油を使わずに調理できるため、からだへのやさしさという点にも魅力を感じ「せいろ蒸し」を習慣的に取り入れるひとが多くなっているようです。

事例の2つ目は、「よもぎ蒸し」です。
「よもぎ蒸し」は韓国が発祥の民間療法・美容法で、美容意識の高い女性を中心に日本の若い世代のなかでも広まりつつあります。乾燥させた「よもぎ」などの漢方生薬を煮立たせた蒸気を、下半身を中心に全身に浴びる温熱療法です。からだの内側を温めることができるため冷え性の改善ができたり、大量の汗をかくことでデトックスしたりできるようです。特殊な機械を使うエステなどと異なり、簡易的なセットを使うだけで自宅でいつでもできるという手軽さもあり、サロンでの体験だけでなく自宅での習慣として取り入れるひとが増えているようです。

事例3つ目は、「自家製マントウづくり」です。
マントウは漢字で「饅頭」と書きますが、日本でいう「まんじゅう」とはまったく異なる、中国の蒸しパンです。主に中国の華北地方で米や麺と並ぶ主食として食べられており、具材や餡は一切入っていないシンプルさはマントウの特徴のようです。SNSを覗いてみると、いま、日本でもこれを自宅で朝ごはんに作るというZ世代のひとの投稿が見られます。せいろや普通の鍋を使って蒸す方法、電子レンジとお皿だけで蒸す方法など、様々にトライするひとの様子があるのです。一度で4~5個つくり、時短と節約を両立しながらもナチュラルでおいしいパンを作ることができるという点もうれしいポイントだという声もあります。また、焼いたり揚げたりしないため油を使わずつくれるヘルシーさ、蒸すことによるもっちりふわふわな独特の食感も、習慣的に取り入れたくなる理由となっていることがキャプションやコメントからは見て取れます。
では、なぜいま「Z世代の蒸しライフ」が新しい習慣となりつつあるのでしょうか。
ひとつは、丁寧な暮らしへの憧れと疲れが背景にあるのではないかと考えます。時間やお金をかけて丁寧に衣食住や心身のケアを営むことに憧れを持っている反面、現実的には仕事や遊びなどアクティブな活動にもエネルギーを使いたいZ世代にとって、無理して丁寧な暮らしを追い求めることには疲れてしまい習慣化しにくい傾向にあると思います。その点、「蒸しライフ」は自宅でも無理なく習慣化できるくらいの手軽さがありつつ、自然な材料やケア方法で自身を大切に扱っているという自己肯定感の向上もうまれる、ちょうどいいライフスタイルとして取り入れられるようになっているのではないでしょうか。
もうひとつは、シンプルかつ自然派な生活への共感が背景にあると思います。先ほど挙げた3つの事例は、どれも自然と共生していた古代から中国や韓国に存在する生活文化を現代に取り入れた習慣です。食や美容についても複雑なコンテンツが増えており、身体への負担や危険性があまりはっきりわからない情報が多くあふれる現代社会を生きるZ世代にとって、できるだけ自然のものをそのまま体に取り入れるような、シンプルな食生活や美容法はより信頼でき、いま改めて魅力的に感じられるものになっているのではないかと思います。
「Z世代の蒸しライフ」のビジネスチャンス例
■ 旅先で地域限定ブレンドの「よもぎ蒸し」と地域の特産品でつくる「せいろ蒸し」を合わせて体験できる宿泊プラン「蒸しリトリート旅」の提供
■ インドやモロッコなどアジア各国で親しまれている伝統的な蒸し料理を手軽につくれるキットの開発
■ 病院や飲食店などの待ち時間に手軽に蒸気でリラックスできるグッズの開発とサービスの提供
皆さんもぜひ、「蒸しライフ」を取り入れてこの冬をほっこり過ごしてください!
▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。
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北海道博報堂 / ヒット習慣メーカーズ メンバー2023年に北海道博報堂に入社。プランナーとして修行中。
魅力がわからないと言い続けていたサウナに、いまさらハマりつつあることを誰にも言えずにいる。


