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ヒット習慣予報 vol.374『勝手にサマータイム』
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ヒット習慣予報 vol.374『勝手にサマータイム』

こんにちは。ヒット習慣メーカーズの上利です。

今年の夏も恐ろしく暑いですね。
私が子どもの頃(20年ほど前)は真夏でも30度を超える日はそこまで多くなかったように思いますし、小学校ではたしか室温が25度を超えないとクーラーをつけてはいけないルールがあったけれど、なかなか超えなくて先生に文句を言っていたような…。

「暑さ対策」はもはや命を守るための行動として重要性を増しており、コロナ禍を経て人流が戻った2023年以降、老若男女問わず誰しもが重要視する夏の最大トピックとなっています。

<「暑さ対策」に関する検索数の推移>

 出典:Googleトレンド

このペースで、もしくはここから加速度的に温暖化が進んだら、10年後は一体どうなることやら、それこそ私たちの生活習慣は大きく変化するのではないかと思います。

ということで今回は、猛暑による生活習慣変化の兆しを取り上げます。
日本には正式な「サマータイム制度」はありませんが、あまりの暑さから自主的に外出を朝・夜の涼しい時間にずらす「勝手にサマータイム」を実践する生活者が出現しているのです。もちろん根本的な地球温暖化対策が急がれる状況ではありますが、目下の猛暑にうまく適応するビジネスチャンスにも目を向けてみたいと思います。

まず一つ目にご紹介するのは、「昼間のホテルステイ」です。
ホテル業界ではコロナ禍の外出規制の影響で宿泊需要が落ち込んだ一方でリモートワーク需要の高まりによってデイユースが需要増加しましたが、ここ最近は猛暑の時期に合わせプール利用や冷たい飲み物の提供をセットにしたデイユースプランを打ち出すホテルが増えているのです。
また、訪日観光客の日本旅行vlogを見ていても、暑さを避けて昼間はホテルで過ごし、朝と夜にだけ観光するという旅行スタイルを見かけます。特に日本よりも涼しい地域から訪れた観光客にとっては、この暑さの中外出するというのは到底考えられないのかもしれません。
SNS上では、夏の推し活遠征で「昼公演と夜公演の間をホテルのデイユースで過ごしたらシャワー・着替えもできて生き返った」「朝グッズ列に並んだら一度ホテルのデイユースに避難して体力温存」等、デイユース利用をおすすめする声が多く挙がっていました。
夜にチェックイン、朝にチェックアウトという従来的なホテルステイでは最も暑い昼間に外出しないといけませんから、こうしたデイユースを上手く組み合わせて旅行をするのは賢い時間の使い方のように思います。旅行中の昼間の時間帯をホテルでも十分楽しめるようなサービスの提供は、ホテル業界にとってもビジネスチャンスになりそうです。

次に紹介するのは、「早朝/夜レジャー」です。
夏休みの子どもに色々な体験をさせたくても昼間の外出は熱中症が心配、といった子育て層のお悩みに応え、遊園地施設や各種体験施設が、早朝や夜に時間帯を絞ったチケットを発売するようになってきています。特に水族館や動物園では、生き物たちの夜ならではの行動も見られるため、時間をずらした利用には暑さ対策だけでない魅力もあります。
SNS上でも、「夜の動物園に行ったら、子どもたちは普段外出しない時間帯の外出にテンションマックス、親は涼しくて助かる」といった声があり、夏の親子にとってwin-winな選択のようです。
しかし、遅い時間の子どもの外出は安全性や生活リズムの乱れへの不安も伴うため、親子ともに安心して遊べるアイデアにビジネスチャンスがありそうです。

最後にご紹介するのは、「犬の夜散歩」です。
犬と暮らす人々にとってこの暑さは大問題です。犬は地面との距離が人間よりも近いため高温にさらされやすく、熱くなったアスファルトで肉球をやけどしてしまう危険もあります。愛犬家である私の両親は毎年夏場の散歩は早朝に済ませていたのですが、今年の夏は早朝ですら涼しくないことが多く、夜散歩が日課となりました。
街中でも、夜遅い時間に犬を散歩させている人が増えたように思います。安全のために光る首輪を付けてふわふわの体毛をカラフルに光らせた「光る犬」を見かけることも増え、この「光る犬」の可愛らしさはSNS上でよく話題となっています。
また、夜の涼しい時間帯に営業するナイトドッグランも増えてきています。暗い夜でも危なくないようイルミネーションで明るく綺麗に飾り付けるなど工夫を凝らしたナイトドッグランは、暑い夏も犬が思い切り芝生の上を走ることができる貴重な場所として、これからさらに需要が高まるのではないかと思います。

では、なぜこういった「勝手にサマータイム」が広まりつつあるのでしょうか?
もちろん「地球沸騰化」とまで言われる夏の暑さの深刻化が一番の理由です。熱中症問題も大変深刻で、命を守るためにも暑さを回避する行動が推奨されています。

それに加えて、コロナ禍を経てリモートワークやフレックスタイム制度が普及し、働き方や時間の使い方がフレキシブルになったことも影響しているのではないでしょうか。翌朝の出勤時間を少し遅らせることが可能なら、多少夜遅くに外出や犬の散歩をしても問題はありませんし、逆に早朝の涼しい時間に出勤して早めに仕事を終わらせ、夜のレジャーを楽しむこともできます。
こうした働き方の変化も背景に、気候に合わせた時間の使い方の工夫が、これから定着していくのではないでしょうか。

最後に、「勝手にサマータイム」のビジネスチャンスとして、下記のようなことを考えてみました。

「勝手にサマータイム」のビジネスチャンスの例
■暑い時間帯を休息時間として有効活用するための、昼寝専用ドリンク
■昼間外出しなくても家で楽しめる、昼帯の大型番組配信
■遊び・夕食・入浴をすべて済ませられて就寝時間に響かない、温浴施設の子ども向け夜間プレイグラウンド営業

 まだまだ暑い日が続きますが、みなさんもぜひ、できる範囲で「勝手にサマータイム」を導入して、少しでも快適なサマーライフを探求してみてはいかがでしょうか。

▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。

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  • ストラテジックプラニング局
    ヒット習慣メーカーズ メンバー
    2022年 博報堂に入社。
    エンタメと語学のオタク。学生時代から演劇を続けており、現在は脚本演出として毎週末稽古に励んでいます。