「最新データで紐解く『TikTokトレンド徹底解剖』」考察 ~TBWA HAKUHODO×TikTok for Business共同レポート~
TBWA HAKUHODOのマーケティング組織「65dB TOKYO」は、TikTok for Businessと共同で制作したレポート「最新データで紐解く『TikTokトレンド徹底解剖』」を2024年9月に発表しました。
本レポートは、TikTok for Businessのファーストパーティーデータを、SNSや動画プラットフォーム上のソーシャルボイスを分析し企業のマーケティング支援を行う「65dB TOKYO」が活用・分析してまとめたものです。
“TikTok売れ”という現象が生まれ、そのことが広く認知されている昨今、TikTokで生み出されたコンテンツは世の中のトレンド形成に大きな影響を与えています。そのため、多くの企業やブランドにとって、TikTokは生活者に向けたコミュニケーションツールとして欠かせない存在となっています。
その一方で、TikTokがテキストに依存しない非言語でのコミュニケーションが中心のプラットフォームであるがゆえ、TikTokでのトレンド形成の実態を把握することが難しいという課題がありました。
そこで、第三者的な視点、ソーシャルボイスの分析を専門とする「65dB TOKYO」が、TikTok for Businessのファーストパーティーデータを活用し、TikTok内で生まれるトレンドを他のプラットフォームデータと比較、分析。発生したトレンドが、他のプラットフォームにどのように派生しているのか、多くのユーザーの共感を得たポイントはどこなのかという、これまでのサードパーティデータ分析では解明しきれなかった点を考察しています。
本稿では作成に携わった両社のメンバーが、共同レポートのポイントについてご紹介します。
宮井 美咲
TBWA HAKUHODO
Trend Chaser / Insight Strategist
王 澤
TikTok for Business Japan
Creative Strategy Manager / Data Analyst
ミーム「#フーフー飯店」 はなぜ盛り上がったのか?
- 王
- 私はこれまでTikTok for Businessのファーストパーティーデータを活用し、プラットフォーム上のトレンド分析やレポート作成を行ってきましたが、第三者の視点でTikTokでのミームや流行、話題などが生まれ、盛り上がっていくのかを調査したいと考え、本レポートを発行することとなりました。今回は、65dB TOKYOさんと共同で制作したレポート「最新データで紐解く『TikTokトレンド徹底解剖』」をもとに、いくつかのトピックを深掘りしていきたいと思います。
まずは「ハッシュタグトレンド」です。
TikTokでは新しいトレンドが“毎秒”生まれていると言っても過言ではありません。そこで、2023年から2024年にかけて急激に増加した1000を超えるハッシュタグを厳選し、直近のトレンドを図のように「再現しやすい要素」と「乗っかりやすい要素」に分類しました。
- 宮井
- 「再現しやすい要素」の中で紹介したいのは、ミーム化した「#フーフー飯店」です。ミームとは、インターネット上でユーザーが真似したりアレンジを重ねたりしながら広がっていくコンテンツのことで、「#フーフー飯店」は「TikTok上半期トレンド大賞2024」ホットワード部門賞を受賞するなど、大きく話題になったので、ハッシュタグ自体は聞いたことのある方が多いかもしれません。
- 王
- 「食事の風景を真上からの画角で撮影する」のは、非常に面白いと思います。2024年1月4日に初めて投稿され、2月15日からは急激に投稿数が伸びていることがわかりました。宮井さんにお聞きしたいのですが、「#フーフー飯店」はなぜ一気に話題化したのでしょうか。
- 宮井
- 以前は、華やかで“映える”ような日常が流行っていましたが、最近では、よりリアルで飾らない自然体の様子をSNSやプラットフォームに投稿するユーザーが増えてきています。こうした背景があるなか、「#フーフー飯店」が盛り上がった理由として2つのポイントがあります。
1つ目は「撮影手法の新しさと手軽さ」です。真上から撮るだけという誰でも簡単にできることから、様々に使いやすかったことが挙げられます。もうひとつは「唯一無二のネーミング」だったことです。「#フーフー飯店」というキャッチーさも、多くの投稿でハッシュタグが使われた要因だと言えるしょう。
他プラットフォームと比較すると、Googleトレンドを参照すると、TikTok上で話題化した後に検索されていることから、TikTokが流行の起点になり他のプラットフォームや検索エンジンにも広まっていったと分析できます。
- 王
- TikTokを運用している企業が、新しいトレンドを生み出したい場合に抑えておくべきポイントは何かありますか?
- 宮井
- まずは「誰でも気軽に真似できる仕組みを作る」ということです。「#フーフー飯店」は頭上から撮影するだけという、簡単に取り組めるものだったからこそ大きな話題化につながったので、「景色を綺麗に撮る方法はこれ!」といった撮影手法を用意するなど、再現しやすさを作ることがトレンドを生むための重要なポイントです。
また、頭上画角は、他にもエレベータープリクラなど韓国発のトレンドも大きく影響しており、こうした潮流も意識していくことが必要になってくるでしょう。
ファンの熱量・行動力を取り入れ、“盛り上げを一緒に作る”
- 王
- ありがとうございます。次いで「再現しやすい要素」の中で取り上げたいのは推し活の「#最高の一瞬」です。これは、あるアーティストが自身の楽曲にエフェクトを組み合わせて発信したことで広まったトレンドで、エフェクト使用時にハッシュタグが表示される機能を活用していました。
エフェクト作成者であるアーティスト本人が初めて投稿して以降、絶え間なく盛り上がり続け、1年を超えるくらいの長いトレンドになったのはとても興味深いものだったと感じています。この辺りについて、宮井さんはどのように解釈されていますか?
- 宮井
- こちらは話題化するまでに3つのフェーズがあったと考えています。まずは最初のアーティスト本人の発信で「みんなの#最高の一瞬も見せてね」という呼びかけで、ファンのUGC(User Generated Content)を創出することにつながりました。さらに、アーティストのファンも普段からTikTokで発信することに慣れている層だったため、瞬く間にエフェクトとハッシュタグ利用が増加していったのです。
こうした、ファンの熱量・行動力をうまく取り入れて楽曲を盛り上げる方法はスタンダードになってきています。それは、ファンの「推しにみられたい」、「推しのために何かしたい」というインサイトをうまく叶えることで話題化につなげていくアプローチは、今後もトレンドを作っていく上で重要だと言えるでしょう。
- 王
- ファンと共創していくのは非常に大切なことだと思うのですが、企業の公式アカウントで実践する場合のポイントを教えてください。
- 宮井
- 楽曲で発信、拡散するためには初速の勢いが一番重要であり、「ファン層を活用して初速を盛り上げる 」ことが大事なポイントです。コアで協力的なファン層がいる場合には、“盛り上げを一緒に作る”ことを意識することで、コミュニティ形成と話題化を同時にしやすくなるでしょう。
加えて、「汎用性のあるワードで動画の広がりを作る」といいでしょう。
今回の「最高の一瞬」というハッシュタグのように、人によって異なるシチュエーションになるようなユーザーのアクションを限定しないワードを設定することで、さまざまなUGCを生み出しやすくなります。
TikTokトレンドはこうして生まれる。仕掛けづくりのポイント
- 王
- ポイントを解説いただきありがとうございます。ここからは、「再現しやすい要素」を持つミーム、エフェクト/楽曲、コンテンツ、推し活の4つのカテゴリーにおけるハッシュタグを分析した結果について紹介したいと思います。
これらの再現しやすい要素をみていくと、再現性のあるトレンドを生み出すためには以下の4つのポイントに分類できることがわかりました。
トレンドを作る際にはこれらのポイントを意識して、各カテゴリの詳細ポイントを参考に要素を取り入れていくといいのではないでしょうか。
続いてはトレンドに乗っかりやすい2つの要素についてです。
乗っかりやすい要素にはモーメントとニュースの2つがありますが、まずはモーメントを詳しく取り上げます。「モーメント」とは、お正月・母の日・ハロウィン・クリスマスなど季節のイベントやそのシーズンに起きる現象・事象などのことです。例えば「#母の日」の場合、「モーメント×要素」を組み合わせた投稿が非常に目立っているのが分析できています。
- 宮井
- 毎年5月になったら、「#母の日」の投稿数が絶対盛り上がるというのが特徴的ですが、もうひとつ面白いと思ったのは「投稿が盛り上がる兆候はいつから出ていたか?」を分析したところ、3月に投稿されていたものがトレンドに影響を与えていたことです。このことからモーメントを先取りする仕込みが大事だということが見て取れます。また、母の日にちなんだ投稿は伸びる傾向にあるので、モーメントに関連したインサイトを掛け合わせることもポイントになります。
- 王
- モーメントに関連したインサイトの掛け合わせでは、どのような具体例が挙げられますか?
- 宮井
- 「母を喜ばせるレシピ」など、母の日に感謝を届けたいと思う生活者がどういうことを調べたいかなどを考えて、企画に落とし込むことが重要になります。
- 王
- ありがとうございます。次に、番組や世界大会など、特定の時期に行われていた出来事に関連する話題を指す「ニューストレンド」を見ていきたいと思います。スポーツの世界大会を例に挙げると、イベント期間中で最も盛り上がりが見られたのは優勝が決まる週だったのが読み取れます。宮井さんは、この点についてどのように解釈していますか?
- 宮井
- TikTokと他のプラットフォームで共通だったのは、優勝時に最も盛り上がりを見せていたことでした。ただTikTokでは、選手に関する切り抜きやハイライトが盛り上がり、振り返りをする流れが見られた一方、他のプラットフォームではリアルタイムの実況や勝敗についての話題が盛り上がっていました。このことから、TikTokではニュースに関連するハイライト要素、他のプラットフォームではニュースのリアルタイム性が重要になってくると言えます。
以上、ご紹介した6つのポイントを組み合わせることで、TikTokのトレンドを新たに生み出すことができるかもしれません。ぜひ、日頃の業務に生かしていただければと思います。
ブランド・企業に関する話題に特化した調査のご相談は、以下ウェブサイトまでお問い合わせください。
http://65db.jp/
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TBWA HAKUHODO
Trend Chaser / Insight Strategist2022年、TBWA HAKUHODO65dB TOKYOにジョイン。SNS運用やアイドルプロデュースの経験を活かした生活者視点でのインサイト発掘、最新のトレンド分析、アイディア開発を強みとしている。Z世代や推し活などトレンドコンテンツをはじめ、キャラクタービジネス、行政、自動車、外食チェーンなどあらゆる分野においてソーシャルリスニングを中心に分析から戦略・企画立案まで一貫して行う。
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王 澤TikTok for Business Japan
Creative Strategy Manager / Data Analyst2020年にTikTok for Business Japanにジョイン。ファーストパーティーデータを活用し、クリエイティブ分析、ユーザーインサイト発掘のためのダッシュボード開発、データ分析を中心に取り組んでいます。