ヒット習慣予報 vol.326『偶然マッチング』
こんにちは。ヒット習慣メーカーズの山崎です。
太陽ぎらぎらの暑い毎日ですが、みなさん、アツいブームはありますか?
わたしは20代後半になってようやく、あの国民的キャラクターの可愛らしさに気づいてしまい、ガチャガチャの小さなフィギュアを集めることにハマっています。(あの電気ビリビリの黄色い子です)
ガチャガチャはコロナ禍での一時的なトレンドのように思われていましたが、しっかり習慣として根付いているようです。
先日、お気に入りのキャラクターではない子が出てしまったのですが、それが思いのほか可愛くて、その子も推しキャラになりました。偶然の出会いがわたしの「好き」を広げてくれた瞬間です。小さくてかわいいものはいつだって人の心を惹きつけるのに加え、思わぬ出会いで「好き」が広がるドキドキ感についつい100円玉を投じてしまいます。
今回はそんな偶然の出会いを「偶然マッチング」と名付け、定着しつつある習慣についてご紹介します。
最初にご紹介するのは、「洋服との偶然マッチング」です。
パーソナルカラー診断や骨格診断、顔タイプ診断と、何かと「似合うのお手本」を与えられ、気づけば同じような服ばかり…という方も多いのではないでしょうか。そんななか広まってきているのが、「洋服との偶然の出会い」を後押しする洋服のサブスクサービス。もともとアメリカで生まれ、近年日本にも浸透してきています。ランダムに選ばれて届けられる洋服は、欲しいものを注文する方法では得られない出会いとドキドキ感がありますね。
続いて紹介するのは「本との偶然マッチング」です。
SNSでは「人生が変わる本10選」や「どんでん返しに驚く本10選」などランキングが溢れていて、本との出会いも至るところにあります。そんな多様化した本との出会いにも新しい選択肢が生まれているようです。
それは「中身の見えない本屋さん」。
そのようなお店にはブックカバーがかかったままの本が売られている棚があり、表紙やタイトルを知ることはできません。ただ、その本に対するレコメンドだけが書いてあります。例えば、「失恋したときに読んでほしい本」という読む理由が書いてあるものや、「読み終えたとき海に行きたくなる本」という推薦者の感想が添えてあるもの。
タイトルも表紙も作者もわからない中で、少しの情報だけを頼りに本と出会う特別な体験になりそうです。いつもなら手を伸ばさないような本に出会えたりするかもしれません。
最後に紹介するのは「旅との偶然マッチング」です。
旅行前にガイドブックを買ってあれやこれやと下調べをする人も多いのではないでしょうか。わたしもそうなのですが、まだ行ってもいないのに詳しくなりすぎたり、SNSで写真を見すぎて行った気になってしまったり…。その地に立ったときの感情を事前に準備してしまうみたいで、ちょっぴりもったいない気持ちになることも。
最近は、そんな人にぴったりの「切符を渡されるまで行先がわからないシークレット旅行」が人気のようです。
90年代にも一度ブームになったようですが、SNSの普及とともに友人同士のドッキリ企画として流行り、最近は旅行会社がプランとして組んでいたりと再燃していることがわかります。
では、なぜこのような「偶然マッチング」を求める習慣があるのでしょうか?
理由は大きく2つあると考えられます。
1つ目は、暮らしの中に偶然の出会いが減っていることです。
購買サイトを開くと、欲しいものを欲しいタイミングで欲しい場所まで届けてくれる時代。そしてその履歴を学習したAIに似たようなモノをレコメンドされる。SNSのトップページはわたし好みの投稿で溢れ、動画の配信サービスからも「あなたが気に入りそうな映画」をリストアップされる。そんな暮らしは便利ですが、すこしドキドキに欠けるのかもしれません。
2つ目は、情報が溢れすぎて、逆にどう選べばよいかわからない状態にある人が増えていることです。「20代に人気の旅行先ランキング」や「芸能人の人生を変えた10冊」など、選びやすくするためのたくさんの情報が逆に重荷になっているのかもしれません。
最後に、「偶然マッチング」のビジネスチャンスとしては下記のようなことが考えられるのではないでしょうか?
「偶然マッチング」のビジネスチャンス
■近所の美味しい料理屋さんが見つかる「選べないフードデリバリー」
■中身のわからないプレゼントを贈り合い一緒に開封を楽しむ「ランダムギフティングサービス」
■新しい趣味のきっかけと最初の一歩を応援する「ランダムチョイスの趣味スターターキット」
欲しいものが確実に手に入るというのはありがたい環境なのですが、贅沢なわたしたちはどこか食傷気味なのではないでしょうか。心揺さぶられるような、踊りだしたくなっちゃうような出会いを求めているのかもしれません。もしかしたら、偶然の出会いの中にだけ、運命が隠れているのかもしれませんね。
▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。
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博報堂ストラテジックプラニング局藤井チーム
ヒット習慣メーカーズ メンバー最近、「もしかして、すべては人間力なのでは…?」と気づき始めたマーケター4年目。仕事も、暮らしも、恋愛も、ボディメイクも何もかも。マーケターとして仕事の腕を上げるために、人間力もせっせと磨く今日この頃です。