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ヒット習慣予報 vol.244 『裏アカ消費』
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ヒット習慣予報 vol.244 『裏アカ消費』

こんにちは。ヒット習慣メーカーズの永井です。

突然ですがみなさん、裏アカをお持ちでしょうか?裏アカとは、「裏アカウント」の略称で、SNSでメインとなるアカウントとは別に、身元を隠しながら、承認したフォロワーしか閲覧できない「非公開アカウント」にしたり、自分の好きな趣味についてだけ投稿したりするサブアカウントをいいます。
下記の調査結果からデジタルネイティブである10-20代の半数以上が何かしらの裏アカを所持しており、若者にとっては裏アカを所持することは一般的になっています。

出典:STRATE「SNSの裏アカに関するアンケート」(2021年11月26日)

また、総務省がまとめている調査データによれば、世界各国のTwitterの匿名・実名率を比較すると、日本人の匿名利用率は7割超と高いスコアになっており、身元がバレないSNSアカウントを持つことは日本人特有の傾向といえそうです。

■Twitterの実名・匿名利用

出典:総務省「ICTの進化がもたらす社会へのインパクトに関する調査研究(平成26年)」より作成

SNSの登場によって、誰にでも情報発信できるようになった一方、“誰にでも”は発信したくない情報があり、「これだけは隠していたい」といった情報発信に対するインサイトがうかがえます。そんな全世代的な「裏アカ」インサイトに応えた商品やサービスが、ここ最近、オンラインからオフラインまで続々と誕生し始めており、今回は「裏アカ消費」と題して、いくつかの事例をご紹介したいと思います。

まずは、趣味を隠す「隠し部屋」です。
昨今、多くの世代で「推し活」が注目され、アイドルやアニメのグッズを買い集める方が増えてきているなか、それ専用の「隠し部屋」が設計されている賃貸マンションが話題になっています。誰かを自宅に招く際、集めたグッズのショーケースなどが並んでいると、隠しておきたい趣味が丸わかりになりますが、隠し部屋があることでゲストに気づかれない点が好評のようです。同様に、趣味専用としてトランクルームを借りる人も増えてきているようです。
余談ですが、先日SNSで、夫が1人で外泊しているのを怪しみ、探偵をつけて尾行したところ、妻に内緒で推し活を楽しんでいた!といった投稿がバズっていました。今の時代、家族内であっても隠しておきたい趣味がある人も一定数いるのかもしれませんね。

次は、属性を隠す「半匿名のSNS」です。
オンラインゲームやメタバースのアバター、VTuberなどは身元を明かさずとも、他者と楽しく交流できる点で人気ですが、仲良くなりそうであればFace to faceで会ってみたくなることもあるでしょう。人見知りの私にとっては、最初は匿名で誰かと交流できるのはなんともありがたいことでありますが、そんなニーズに応えて「半匿名」のSNSも登場しています。利用者はアプリ内の友達に対して、実名か匿名を選択してメッセージを送ったり、1対1で個別チャットをしたり、これまでの人間関係を気にせずコミュニケーションが取れるサービスのようです。手持ち無沙汰で誰かと他愛もないことを話したいが、相手の顔色をうかがってしまう人にはもってこいですね。

最後は、顔を隠す「覆面パーティー」です。
仮面をつけ身分素性を隠して行われる舞踏会、「仮面舞踏会」。この中世ヨーロッパ起源の社交文化が、一部ではありますが、婚活パーティーやバーでのイベントなどでライトなカタチになって楽しまれていることがSNSで散見されました。先日のハロウィーンも全国的に盛り上がりを見せましたが、普段の自分を隠しながら見知らぬ誰かと盛り上がるのはどこか非日常感があって楽しいものですよね。SNSアカウントでは実名より匿名を好む日本人らしさも感じますし、リアルの世界でも匿名で出会えるイベントやサービスが、今後増えていくかもしれません。

さて、いくつか事例を紹介してきましたが、なぜここまで「裏アカ消費」が盛り上がっているのでしょうか。
まずは、自己防衛のインサイトが考えられます。今や自分の好きなことの発信やリアルな世界での行動が、他者の心無い誹謗中傷を受けて傷つけられてしまったり、晒されてしまう危険性があります。そんな自分の「好き」すらも否定されうる時代の処世術として、裏アカ的な消費のニーズが高まっているのではないかと考えます。
もう一つは、SNSで世代を飛び越えて、先入観なく「好き」で繋がれるようになったこともあるかと思います。昨今、ファッションや音楽などの〇〇年代カルチャーのリバイバルがさまざまな市場を賑わしていますが、世代間を飛び越えて共有できるものが増えたことで、家族や同世代よりも深く共感できる「趣味友」やその環境が整ってきているからではないでしょうか。

最後に、「裏アカ消費」のビジネスチャンスについて、少し考えてみました。

「裏アカ消費」のビジネスチャンスの例
■好きな趣味同士がマッチングして借りられる「裏アカシェアハウス」の開発。
■相手によって、匿名と実名を使い分けられるメッセージアプリの開発。
■覆面などを着用し、リアルの場でも秘匿性の高いなかで楽しめる音楽ライブ。
など。

私は極度の人見知りで、できるだけ人に嫌われたくない性格のせいか、気になっているけどなかなか扉を開けられないお店が多々あります。「裏アカ」のように、身なりや身元を明かさず、入店できればなぁと、執筆しながら思いました。

▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。

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  • 北海道博報堂 / 博報堂生活者エクスペリエンスクリエイティブ局
    ヒット習慣メーカーズ メンバー
    2018年北海道博報堂に入社し、2021年から博報堂生活者エクスペリエンスクリエイティブ局に複属。多拠点居住を夢見て、定期的に実家のある宮古島に帰りながら、北海道と東京を股にかけ、マーケティングとクリエイティブ、二足のわらじを履いた生活を送っている。