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テクノロジーとクリエイティブの力が生み出す「まだ見ぬ価値」──フロウプラトウと博報堂のコラボレーション
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テクノロジーとクリエイティブの力が生み出す「まだ見ぬ価値」──フロウプラトウと博報堂のコラボレーション

最新の技術と卓越した表現を組み合わせてさまざまなクリエイティブやソリューションを生み出してきたライゾマティクス。そこからデザインと事業開発を担う事業体としてフロウプラトウが生まれたのは2019年のことでした。フロウプラトウと博報堂のコラボレーションがスタートしたのは、フロウプラトウ発足から間もなくのことです。この2年間の協業とそこから生まれた価値について、両社のコアメンバーに語り合ってもらいました。

千葉秀憲氏
フロウプラトウ 取締役

西濱大貴
博報堂 マーケティングシステムコンサル局
博報堂 生活者エクスペリエンスクリエイティブ局
博報堂DYホールディングス マーケティング・テクノロジー・センター

栗田昌平
博報堂 生活者エクスペリエンスクリエイティブ局

長期的な視野でクオリティを向上させていきたい

──フロウプラトウと博報堂のコラボレーションがスタートした経緯をお聞かせください。

千葉
ライゾマティクスの一部門であったライゾマティクスデザインが、フロウプラトウとして一つの事業体になったのは2019年でした。それまでライゾマティクスが生み出してきた技術、アイデア、表現などをより広くビジネスに活用していくにあたって、広告会社の皆さんと何か一緒にできないかと考えたのが、博報堂にアプローチさせていただいたきっかけでした。最初は具体的な案件などがあったわけではなく、おつき合いができる可能性があるかどうかをまずは探ってみようという感じでした。
西濱
それに博報堂が高速で反応したわけです(笑)。
千葉
ライゾマティクスの研究開発分野が取り組んできたのは、新しいアイデアを使って小さなアウトプットをつくりながら、自社主催のイベントなどで人々の反応を見て、可能性がありそうなものを大きく育てていくという活動でした。そうやって僕たちがこれまで蓄えてきた「武器」と博報堂の力を組み合わせれば、何かが生まれるに違いない。そんなふうに考えていました。
西濱
この技術発展論は、博報堂でいうナレッジ開発、発想法の考え方に近いと思います。自らアイデアや技術を生み出して、それを広告コミュニケーションやワークショップ、イベント、クリエイティブなどの「血肉」にしていくという方法です。

千葉
つけ加えるならば、それに長期的スパンで取り組むということですね。一般的な広告制作の期間は3カ月くらいです。もちろん、その期間の中でやり切らなければならないのですが、3カ月では達成できることに限界があるのも事実です。

僕たちの方法論は、長い視野をもって徐々に成長させていけるものをつくり、その成長の過程でアウトプットとして提供できるものを提供していくというものです。博報堂と何か一緒にできるなら、長期的な取り組みにしたいという思いがありました。

同じ価値観を共有するための「思考実験」

──これまでの2年間でどのようなことに取り組んできたのですか。

西濱
はじめの頃は、ライゾマティクスがこれまでつくってきたものをひと通り見せていただきながら、その中のアイデアを使って応用するなら何ができるかというディスカッションを繰り返しました。一度使ったことのある技術でも、使い方、デザイン、インターフェースなどを替えることで、別の領域で使えるということがあります。例えて言えば、和食づくりで磨いた包丁さばきをフレンチやイタリアンに活かし、新たな価値を生み出すといったことです。そうすれば、技術やソリューションの価値をより広い範囲に届けられるのではないか。そんな議論を重ねてきました。
千葉
僕が考えていたのは、博報堂、あるいは広告業界の皆さんとの距離をどう詰めていくかということでした。今から10年前の2010年前後は、今振り返ると「インタラクティブバブル」で、インターネットのキャンペーンに大きな予算がついて、とにかく目立つものを大量につくることが目指されていた時代でした。

しかし、つくったものの役割は3カ月でなくなってしまう。これはとても儚いことです。その頃僕たちが考えていたのは、自分たちが成長して、自分たちのやり方で仕事ができるようになったら、3カ月ごとに頭の中身を切り替えて仕事をするよりも、継続して高いところまで上っていけるような仕事をしたいということでした。それによって僕たちが生み出せるもののクオリティは上がっていくし、それがクライアントにとっての価値にもなる。そう考えたわけです。

しかし、このような発想は広告ビジネスの世界ではあまり一般的ではないと思います。この発想を博報堂の皆さんと共有することができれば、これまでにはない新しいものをいっしょにつくっていけるはずです。この2年間、何度ものミーティングを続けてきましたが、それは一種の思考実験の場だったと思います。

西濱
博報堂側の僕たちは、フロウプラトウのやり方を理解し、それを自分たちのものにして、さらに具体的な仕事に結びつけようと考えてきました。メンバーはそれぞれに専門分野や興味のある領域が異なるので、一人ひとりが自分の軸足をもって考えることを大切にしてきました。
栗田
僕は、このソリューションを使えば、こんな課題が解決できる──。そういうパターンをいくつも考えて、ミーティングのたびに自主プレゼンをしていました。
千葉
そんなことを繰り返すうちに、ソリューションの具体的な活用の仕方がわかってきて、案件化の道筋が徐々に見えてきたわけです。

西濱
このコラボレーション以前にも外部のプレーヤーとの協業はあったのですが、その多くは製作や調査など、はじめから目的が明確になっているものでした。目的を明確にせずに、まずは両者の文化を交換していくところから始まったのは、このコラボが初めてでした。今は、お互いの言葉や思いが伝達の過程で目減りすることもなく、しっかり伝わるようになっていると感じます。
千葉
異なる立場の人たちが協調するという意味で、僕は「ハモる」という言葉をよく使いますが、いい感じで「ハモってきた」という実感がありますね。もちろん考え方が完全に一致しているということではなく、それぞれの役割が不明確なままであっても、ある程度同じ方向を向くことができているということです。具体的な案件が始まったらメンバーそれぞれの役割と責任領域を明確にする必要がありますが、その前の段階では役割はぐちゃぐちゃのままでいいと僕は思っています。
西濱
あえて役割のようなものを説明するなら、僕の役割はフロウプラトウの資産を「博報堂ナイズ」するとどうなるかを考えることで、栗田の役割は具体的な案件につなげる方法を考えることです。ほかのメンバーにもそれぞれに役割めいたものはありますが、千葉さんがおっしゃるように、それは必ずしも明確なものではなく、一人ひとりが自分のやりたいこと、実現したいことを考えながら、全体でチームを動かしているという感じですね。

企業間のコラボではなく、人と人のコラボ

──すでに実現している案件はありますか。

栗田
飲料系メーカーが主催するオンラインライブや、嗜好品メーカーの新商品の世界観を体験できるリアル空間づくりなど、すでにいくつか実現しています。

博報堂の側の僕たちは、クライアントの課題をどういうコンセプトで解決し、どういう新しいユーザー体験をつくるかを考えました。一方のフロウプラトウの皆さんは、これまでの資産をいかしながら、そこに活用できるソリューションを開発し、かつイベントや空間でそれを安定的に運用していくところで力を発揮してくださいました。技術開発とその安定的運用の両方を最高のクオリティで実現できるプレーヤーはほとんどいないと思います。やはりフロウプラトウはすごいと思いましたね。

西濱
フロウプラトウと博報堂がタッグを組んだことのインパクトはクライアントの皆さんも感じてくださったようです。コンペに勝つことができたのも、このタッグの可能性が認められたからだと思います。この取り組み以降もさまざまなご相談をいただいていますし、実現に向けて動いている案件もいくつかあります。

──このコラボレーションの面白さや醍醐味はどこにあると感じていますか。

西濱
千葉さんがおっしゃるように、長期的な視点で、継続的に、どんどん上昇していける。そんな活動ができる点だと思います。
栗田
続いていくもの、あとに残るものがつくれる可能性があるということですよね。圧倒的なクオリティをもつツールやソリューションに日々接することができる点もこのチームの面白さだと感じています。
千葉
このチームは、企業間のコラボであると同時に、人と人のコラボであるという感覚があります。建前ではなく本音で、昔からの友だちのような感じでいろいろなことが話せる。それがこのチームの魅力ですね。人と人のつながり方にもPDCAがあって、そのサイクルを回す中で、いい関係がつくれてきたという手応えがあります。

デジタルに求められる「エシカルな視点」

──デジタルを取り巻く環境の変化をどう捉えていますか。

千葉
いろいろなものをデジタル化するのはごく普通のことであるという共通認識が、この10年くらいの間にかなり定着しました。一方で、デジタルにも「エシカル(倫理的)」な視点が求めれるように感じています。

すぐに使われなくなるようなものをつくるのは、時間とコストの浪費です。また、先ほど西濱さんも話していたように、一つの要素技術は、使い方や表現の仕方を変えることで応用の可能性が広がります。つまり「テクノロジーが無駄にならない」ということです。インタラクティブバブルの頃のように、とにかくソリューションやデジタルコンテンツを量産すればいいという時代ではなくなってきているのだと思います。

西濱
インタラクティブバブルの頃は、インターネットやデジタルの海の中でピカピカ光るものをつくらないと人が寄ってこなかったわけですよね。今はむしろ、使いやすさ、自然さが求められるようになっていると感じます。デジタルをスペシャルなものと考えるのではなく、人々の日常に馴染む居心地のよいものにしていくことがこれからは必要です。

栗田
デジタル化する必然性がないものを無理やりデジタル化しても意味がないわけです。僕が大事にしているのは、「このデジタル技術を僕の母親は使えるだろうか」という視点です。月並みな言い方になりますが、やはり「デジタルの民主化」という考え方が大切だと思います。
西濱
「技術的にはできるけれど、生活者発想の視点で見るとそれはいらない」というものはつくらなくていいわけですよね。本質を見極めながら、新しいものを生み出していくという発想を忘れてはならないと思います。しかし、それは決して簡単なことではなくて、長期的な試行錯誤が必要な取り組みです。その点でも、同じ目線で長く一緒に仕事ができるチームには存在価値があると思います。

──最後に、今後このチームでチャレンジしていきたいことを教えてください。

栗田
クライアントの皆さんとともに、価値が長く続いていくものをつくりたいですね。
西濱
僕たちのやり方に共感してくださるクライアント側のご担当者にも、ぜひこのチームに加わっていただけるといいですよね。そこからさらに新しいものが生まれると思います。
千葉
面白そう、自分も成長できそう、新しいものが生み出せそう──。そんなモチベーションがある方がいれば、ぜひ参加してほしいですね。クライアントと一体で動いていくことができれば、できることも格段に増えるはずです。

僕たちのチームに限らず、いろいろな立場の人が一緒になって心を通わせながら仕事ができるチームがあちこちに増えていくといいと思います。このようなスタイルが広まれば、面白いものがどんどん生まれていくのではないでしょうか。

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  • 千葉 秀憲氏
    千葉 秀憲氏
    フロウプラトウ 取締役
    1976年茨城県生まれ。東京理科大学理学部卒。
    株式会社ライゾマティクスの創設メンバー。プロデューサーとして、国内外の大規模な案件に従事。数多くのプロジェクトのプロデュースのほか、会社全体を俯瞰し、企業経営を行ってきた。2019年、これまで培ってきた表現のための研究開発、企業とのコラボレーションをベースとしたクリエイションを活かし、社会実装・還元を目的とした株式会社フロウプラトウを設立。
  • 博報堂 マーケティングシステムコンサル局
    博報堂 生活者エクスペリエンスクリエイティブ局
    博報堂DYホールディングス マーケティング・テクノロジー・センター
    慶應義塾大学大学院にてタンジブルインタフェースの研究を行った後、2011年博報堂入社。マーケティングシステムコンサルティング局所属、マーケティングテクノロジーセンター兼務。フロントエンド、バックエンド、ソフトウェア、ハードウェアなど幅広いテクノロジーに関する知見を持つ。テクノロジーの進化を生活者価値に変換し、企業やブランドのアップデートに関わるメディア開発やサービス&UX開発、ブランディングといった業務を得意とする。
    受賞歴:ACCメディアクリエイティブ部門 ブロンズ
    社外活動実績:デジタルハリウッド大学特別講師、『イノベーションデザイン 博報堂流、未来の事業のつくり方』出版協力、特許第6654721号 喫食判定システム、コンピュータプログラム及び情報機器
  • 博報堂 生活者エクスペリエンスクリエイティブ局
    大学卒業後、電機メーカーにエンジニアとして入社。UI/UX開発、データ分析に携わり2014年より博報堂入社。データやテクノロジーを活用したデジタル体験やサービス・プロダクト開発、インスタレーション制作業務などに従事。
    受賞歴:ACC ニューテクノロジー賞、ADFEST モバイル部門 ブロンズ受賞 等
    社外活動実績:アドテック東京登壇 等