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ヒット習慣予報 vol.194『自拍館@中国』
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ヒット習慣予報 vol.194『自拍館@中国』

こんにちは。ヒット習慣メーカーズの江です。

先週末に立冬を迎え、いよいよ冬の始まりといった頃ですが、日本では緊急事態措置・まん延防止等重点措置の全面解除を機に、冬の訪れを感じさせないほどの陽気に誘われ、遠出して紅葉の絶景を撮りたいと考えている方も多いのではないでしょうか。

さて、今回取り上げたいテーマは、中国都市部の若者がこぞって「自拍館」という場所で写真の新しい撮り方を楽しんでいるという新習慣です。「自拍館」とは中国語で“自己(=自分)”で“拍照(=シャッターを切って写真を撮ること)”ができる“館(=場所)”のこと。
個性を大切にしていてこだわりも強く、SNSで頻繁に写真をアップしてシェアする中国の若者。人に写真をお願いすると、予想外のタイミングで撮影されたり、自分が思う通りの構図で撮れなかったりしますが、「自拍館」であれば自分の好きなスタイルに変装して好きな人と好きなポージングで思うがままの撮影が可能です。「自拍館」が提供するのは変装するための服装・道具、撮影機材や場所だけですが、利用者の若者たちは自らスタイリストやカメラマンをつとめるので、90年代に日本から入ってきて当時の若者が熱中したプリクラより遊び方のバラエティーが豊富で、よりユニークな没入感のある体験が楽しめます。中国のソーシャルリスニングツールを使って「自拍館」を確認すると、直近1年間上昇傾向なのがわかります。

〈「自拍館」に関する各種投稿総量の推移〉

出典:DATASTORY(中国)

通常、「自拍館」は都市中心部の繁華街に店を構えることが多いです。また、近年若者の間で人気を集めている民族衣装「漢服」、チャイナドレス、日本由来のJK(女子高生)制服やゴシック・アンド・ロリータ・ファッション、人気アニメや漫画の登場人物が着ている服などが数多く揃っているほか、本物感たっぷりのアクセサリー・小物類も充実しています。変装したスタイルに合った内装や背景幕などが施されているところも若者の心を鷲掴みにしています。さらに、プロのカメラマンが使うようなカメラや照明などの撮影機材が手軽に使えることもとても大きな魅力ポイントです。

(※写真はイメージです)

ではなぜ、こうして中国の若者の間で「自拍館」が人気を集めているのでしょうか?
一つは、SNS上でシェアする写真のクオリティもっと高めたいという気持ちに応えているからだと考えます。SNSはかつて、気軽に日常生活や趣味の話題を共有するための場所でしたが、最近は人の目を引き付けて関心を寄せてもらうべく、写真のクオリティを競うようになってきました。そのため、スマートフォンの写真加工アプリを駆使したり、半日も時間をかけて「自拍館」を利用して非日常的なシーンでかつ高品質の写真の撮影に力を入れる人が増えてきたのです。

そしてもう一つは、プライベートな空間が確保されているところだと考えます。ほとんどが完全個室の「自拍館」には、フォトブースとモニター、更衣室、たくさんの小道具があり、完全入れ替え制で他のグループと会うこともないので、このご時世においてソーシャルディスタンスも確保でき、人目を気にせずプライベートな空間でリラックスして思うままに撮影を楽しめるのが魅力ですね。

最後に、「自拍館」のビジネスチャンスについて、具体的に考えてみました。


「自拍館」のビジネスチャンスの例
■「自拍館」に併設してD2C特化型の化粧品売り場を設置。
■新作の映画、ドラマやアニメなどのプロモーション活動の一環として、そのテーマに合ったポップアップ型「自拍館」を開設。
■「自拍館」で撮った写真の出来栄えを診断して、写真撮影のアドバイスをしてくれるサービスを提供するアプリを開発。
など。

コロナ禍の中、仕事上のミーティングは、対面式からオンライン式にシフトされてきました。いつかオンラインミーティングのバーチャル背景ではなく、「自拍館」から変装して登場し、相手を驚かせてみたいなと思います。
 

▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。

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  • 博報堂DYホールディングス
    MTCグローバル開発グループ
    ヒット習慣メーカーズ メンバー
    2017 年博報堂に中途入社。
    近いようで遠い中国のヒット習慣から仕事のヒントを探す日々。
    中国で一番辛いと言われる故郷の湖南料理をこよなく愛する、生粋の「辛党」。