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インターネット広告とテクノロジーを長年探求してきたデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社(以下、DAC)が、「DAC Digital Update Week 2021」を開催。DACの各領域の専門家が、デジタルメディアとテクノロジーの、いま必要な知識と最新トレンドを分かりやすく解説しました。
本稿では、『ポストクッキー時代におけるCDPの重要性とDX推進の基礎』と題したセッションの内容をご紹介。昨今デジタルマーケティングにおいて注目を集めるCDP(カスタマー・データ・プラットフォーム)とは何か、どのように活用すればよいか、DACのソリューションと組み合わせた事例を交え解説します。

登壇者:
トレジャーデータ 株式会社
事業開発・パートナーシップ担当
執行役員 山森 康平 氏

デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社
パートナービジネス本部
第四ソリューションコンサルティング部
マネージャー 西橋 誠

■さまざまな環境変化の中でデジタルマーケティングに必要不可欠となるCDP

西橋
本日はCDP(カスタマー・データ・プラットフォーム)の基礎的なところから活用方法まで、また最後に弊社とトレジャーデータ株式会社(以下、トレジャーデータ社)との協業の取り組みについてもご紹介させていただければと思います。
まずCDPの重要性がなぜ高まっているかについて、その背景を4つご説明します。
1つ目は、消費行動の多様化によって顧客接点が複雑化していることです。現在のビジネス環境では、会員情報がデジタル上で登録されていたり、ECサイトで購買していたりと顧客接点がマルチ化しています。店舗の購買情報やアプリのデータなど分散しており、顧客理解がなかなか進まず、最適なサービスが提供しづらいのが現状です。そこでCDPを活用しデータを統合する必要性が出ているのです。
2つ目はプライバシーを考慮したデータ取得と管理です。国の動きとしては、2022年4月に改正個人情報保護法が施行される予定があり、個人情報収集における同意取得の義務化、たとえばクッキーの第三者提供やデータ用途の明示化が事業者に求められています。民間では主にアップルやGoogleなどで、3rdパーティクッキーの利用制限が行われている。そこでもやはりCDPの重要性が高まっています。
3つ目はマーケティングツールの増加とデータのサイロ化です。現在国内で利用可能なマーケティングテクノロジーが、2018年比の2.6倍にあたる1234種類と爆発的に増えており、今後ますますカオス化していくことが予想されます。
4つ目はさまざまな部署を横断した事業シナジー・事業モデル構想です。ほとんどの事業会社が複数の部署でさまざまなデータを扱っているかと思いますが、横断的にデータを触れる環境構築が重要になってきます。
このように、顧客理解を深めながらプライバシーへの配慮・管理、さらなるデジタル化に対応するためにも、自社でデータ管理するシステム、CDPが必要ということになります。

■顧客可視化から施策まで――CDPが可能にするデータ戦略

西橋
ではCDPを使って、一体どういうことが可能になるのでしょうか。実現できることは、顧客理解の深化とOne to Oneコミュニケーションの2点となります。それぞれに紐づく役割と機能を見てみると、CDPの顧客理解という点で必要なポイントは3つ、データを保有するという点と、それぞれの顧客データ・さまざまなデータを統合管理するという点、最適なコミュニケーションのためにその顧客を分析・分類するという点になります。次にOne to Oneコミュニケーションに必要な機能としては、つくったデータを施策に連携したり実行するという点、がCDPが果たせる機能と役割ということになります。

“実現できること”の2点をさらに詳しく見てみると、以下のようになります。

左側は、サイトの閲覧ログや顧客情報、配信結果などの事業会社がお持ちのデータを統合するという点と、取得したデータに対して同意管理プラットフォームで同意取得を経たデータ(いわゆるゼロパーティデータ)を統合するという側面。そして、右側のOne to Oneコミュニケーションはデータの施策の連携に該当する内容となっています。

それぞれを詳しくご説明します。
まずはデータからの顧客の可視化については、さまざまな施策に紐づいたデータが現状ではツールによって分断されているわけですが、それらをきちんと統合し、顧客を多面的に捉えてパーソナライズしていくことが必要です。

もう一つはOne to Oneコミュニケーションに関して。こちらの図の左側は従来のマーケティング施策、右側はCDP導入により可能になるコミュニケーション例です。

CDPを導入することで各ツールに保存されている行動ログを紐づけ、「それぞれのユーザーに対してどういった施策が効果的か」という観点でマーケティングを推進することが可能になります。データを統合し施策に応じたユーザーセグメントを渡し、分析し、その配信結果をまた一つの環境下に戻す。このPDCAサイクル実現が可能になりますので、チャネルデータを横断した継続的なユーザーコミュニケーションが、CDPを通じて実現可能ということになります。

ここで、CDP導入時における課題も整理してみました。
1つは個人情報保護法やプライバシー保護に関する規制をなかなか十分に理解できていない点。2つ目は、必要性も感じていて導入したいが、開発運用リソースやナレッジがなく検討導入に踏み込めない点。3つ目はコストが高く導入に時間がかかるため、なかなか体制が整えられない点があるかと思います。それぞれに対する解決の方向性としては、1つ目の場合、CMP=同意管理マネジメントプラットフォームを活用することで正しいユーザープラットフォームへの対応が可能になり、専門メンバーや外部パートナー様に同意取得の設計を対応してもらうことができ、安心な運用が実現すると考えます。2つ目は、開発なり運用なりそれぞれの領域でパートナー選定するのではなく、開発からマーケティングまで一貫して支援できるパートナー選定が重要になってくると考えます。3つ目は短期間で効果検証可能なPoCをしていくことが1つのポイントになります。どのデータをどう使いどう施策につなげるかを取捨選択することが非常に重要になります。

3つの課題への対応ポイントをさらに詳しくご説明します。1つ目は法/ガイドラインの正しい理解に基づいたポリシー設計。そして同意ツールを活用した運用効率化です。個人情報保護法やJIAAのガイドラインの正しい解釈に基づいた自社ポリシーを作成し、さらに、ウェブサイトを訪問した利用者にポップアップで同意を取得管理するルーツを活用する。これら2つを駆使しながら、ガイドラインに基づいたサイト運営、データ活用を行っていくことが重要です。2つ目はマーケティング視点を持つパートナー選定による環境構築。データ領域であれば、データの設計、有用なデータの見極めが必要になりますし、データの統合・分析であればシステムの環境構築や、データ統合のための開発が必要になってくる。またそのデータを使ってどういう施策をしていくのか、どういうKPIを設けてそれを運用、モニタリングしていくのかも重要。それらを横断的に統合してマーケティング施策を検討できるパートナーが重要になります。3つ目はコストを抑えた短期間でのPoCの実施。コスト、期間を短縮してどれだけ効果検証できるのかが重要になるので、たとえば広告施策データ、オウンドデータ、CRNデータなどがあるところで、どれを優先的に組み合わせて使うのかといった、データや施策の優先順位付けがポイントになる。それによってより効率的に、短期間でCDPの有用性の立証を進められるかと考えます。

■DACのデジタルマーケティングの推進力とトレジャーデータ社の製品力でさまざまなサービスを展開していく

西橋
トレジャーデータ社とDACの取り組みについてご紹介させてください。両社は先日パートナーシップを締結し、今後より拡大されるであろうCDP市場をもっと盛り上げ、これからDXを始めようとする企業様へのサービス提供を推進する予定です。ネットビジネスの先駆者としてデジタルマーケティングの経験と知見を持つ弊社と、CDPビジネスの先駆者として知見をお持ちのトレジャーデータ社と、シナジーが生まれることを期待しています。
山森
今回、DACの「AudienceOne®」や「DialogOne®」の構築にあるような高い技術力、機械学習や分析系のサービスも展開されている点で、比較的複雑な処理や導入プロセスが発生するCDPにおいても、きっとお客様に満足いただけるインプリメンテーションをご提供いただけるのではないかと考え、我々からパートナーシップ締結をお願いした次第です。DACは施策に直結したソリューションとその運用の経験・知見をお持ちなので、お客様にとってはROIのような、社内でよく問われる部分に対しても早く結果を出せるのではないかと思いますし、PoCの提供といったサポートもされていくということで、両社で今後よりお客様に寄り添った形でのサポートの提供が可能になるのではないかと考えています。
西橋
ありがとうございます。弊社のAudienceOne®、またDialogOne®といったサービス開発は、トレジャーデータ社とともに構築してきました。こうした実績はプロダクトに対する豊富な知見につながっています。また、DACは長らく、さまざまなデータを活用した分析や施策の最適化、あるいは施策の評価を行ってきたという点で、マーケティング活用方法への豊富な知見を有しています。この点でも2社にしか生まれないシナジーが期待できるのではないかと考えます。
山森さん、改めてトレジャーデータ社についてご紹介いただけますか。
山森
はい。トレジャーデータ社は10年程前にアメリカで創業、現在世界に400社を超えるお客様がいます。世界の従業員数約450人のうち開発含め200人を日本法人に配置。お客様のサポートをしっかり行える体制が整っています。世界中の企業でご利用いただいているので、すべてのタイムゾーンでサポートを提供できるほか、コンプライアンスやプライバシーに関するルールにおいても日本よりも厳しい国々の規制を守っているという点で、安心してご利用いただけるのではないかと思います。日本での我々のCDPシェアは4割を超えており、2位企業との差も年々広がっています。市場のトッププレイヤーとして、ますますCDPマーケットにおける地位を強固にできていると自負しています。

今後のCDPマーケットについては、年率30%以上で拡大すると試算しています。さらに直近の傾向としては、コロナ禍でチャネルシフト、即ちお客様との接点のデジタル化が急速に拡大しています。その流れで各企業が利用するITツールがますます増えてきている一方で、各ツールのデータが分断されて「データのサイロ化」が進んでいる印象です。元々存在していたDX推進の流れが、新型コロナウィルスの流行による強制的な生活様式の変化によって加速しており、結果としてCDPニーズも強く底上げされているような感覚を持っています。

西橋
ありがとうございます。今後はDACとトレジャーデータ社のより強固な結びつきで、さまざまなサービスをリリースする予定です。本日触れたPoCに関しては、DXスタートアップパッケージと題し、個人情報保護法のコンサルティングや、PoCをするにあたっての設計の支援――安価に短期間で効果検証できるようなサービス――を考えています。エンタープライズ様向けではなくさらに裾野を広げた企業様に対して特別プランがあるので、ぜひお問い合わせください。またプラットフォームIDを活用したCDPサービスとして、今後より規制が強まるクッキーに対し、それ以外の識別子を活用したCDPの構築をテーマにしたサービスも、リリース予定です。
今後のDACとトレジャーデータ様の取り組みに、ぜひご期待ください。
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  • 山森 康平
    山森 康平
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