ヒット習慣予報 vol.128 『おうちエール』
こんにちは。ヒット習慣メーカーズの楠田です。
すっきりしない天気が続きますが、いかがお過ごしでしょうか。私は、新型コロナウイルスの影響で先延ばしになっていた、関西支社への転勤をようやく終え、先週より関西で働き始めました。社会人になってからずっと東京でしたが、地元関西に10年ぶりに戻ってきて、関西ローカル番組を見たり、お笑い番組を見たり、あーこの感じ、というのを久しぶりに実感しております。関西でも在宅ワークが中心の生活にしているので、仕事周りの変化よりも、日々の暮らし周りの変化により敏感になっています。何より、愛してやまない阪神タイガースの試合中継を地上波で見られるので、個人的には仕事終わりの一番の楽しみになっています。
さて今回のテーマは、そんな自宅での試合観戦などのスタイルがこれまでと変わって来ていることを取り上げたいと思います。これまでは、試合観戦は、スタジアムに行って生で応援するか、テレビなどでじっくり観戦するか、のどちらかだったかと思います。ただ直近では、無観客試合でのプロスポーツの再開に伴い、各所で様々な取り組みが行われ、新たな観戦スタイルが出てきています。そのスタイルを、「おうちエール」と名付けてみました。“おうち”でじっくり観戦しているはずなのに、そこにまるでスタジアムにいるような“応援(エール)”が加わってきていることからこのように命名してみています。
まず、今回の背景となっている無観客試合。Googleトレンドを見てみると、明らかに新型コロナが話題になった時期に突出していますね。これまでは違反があったり、暴動の可能性があったりするときなどに、罰則として無観客試合が行われてきました。今回は、皆さんの健康を守るための無観客試合なので、スポーツによっては異なる呼び方をするところも出てきていますね。
では、実際に「おうちエール」がどのように広がりつつあるかをこれから少しご紹介していきたいと思います。
まずその代表例と言えるのが、スポーツ観戦。各チームが様々な工夫を凝らして実施されています。テレビ中継を見ていると、スタジアムで実際に応援しているような演出、ビデオ通話アプリを活用して、バックスクリーンに映ったり、バックネット裏で応援しているような演出だったりしていますね。また、選手を応援するためアプリを活用して、そこでのチャット機能や、これまでスポーツにあまり導入されてこなかった、投げ銭機能など、やり方は様々です。これは、今回の無観客試合がきっかけではありますが、これまで通りにスタジアムに人が入るようになっても、家庭の事情や、チケットが手に入りにくいなど、様々な理由から中々スタジアムに足を運べない人がおうちからでも、エールを送れるようになったので、今後も定着していくかもしれませんね。また、この様々な取り組みを通じて、これまでよりも、スタジアムでの観戦がもう一歩アップデートされる可能性もあるかもしれません。
次に、アーティストのライブ。新型コロナでの外出自粛初期の頃は、ライブ映像を無料公開するなどで話題になっていましたが、最近では、アーティストが無観客ライブを行い、そこにファンが、パソコンやスマートフォンを活用して観戦するための仕組みが導入され始めています。こちらも、実際に会場で、アーティストの呼びかけに対して、ファンが応えるように、インターネットを通じて、実際に会場にいるような感覚でやり取りを楽しんだりする様子も伺えました。こちらも、人気アーティストだと、チケットが取りにくいこともあったりしますが、今後も、生で楽しみたいときと、おうちで楽しみたいとき、など分けて楽しむこともできそうですよね。
そして、最後は、映画です。最近ではようやく映画館がオープンして、遅れていた新作の公開がそろそろ、という感じになり、少しずつ元に戻ろうという動きも出ています。ただ、まだまだ座席数が制限されているうえに、これまで映画によって行われていた応援上映はしばらく難しそうです。そこで、映画館で上映予定だった作品が、動画配信サービスでの上映に切り替える作品も一部出てきています。また、オンライン上で友人とグループを作って同じ映画やアニメを見ながら、応援上映を楽しむスタイルも登場し始めています。例えば、オンタイムでコメントを書き込みながら、これからの展開予測だったり、こうなってほしい、というような気持ちを綴ったりして、楽しむ様子がみられています。そうすることで、家にいながら誰かと同じ時間を共有し、感想を共有することで、映画館で友人などと一緒に応援しながら見ているような感覚や、映画終わりのカフェで会話している時間の共有の代替となったりしています。このような取り組みは、まだ海外が中心だったりはしますが、今後、日本でもこのような観戦スタイルは広がっていくかもしれませんね。
では、なぜこのような「おうちエール」が広がっているのか、理由を考えてみました。
大きな要因が2つあると思います。
一つは、「参加性」です。どうしても家にいて、一人もしくは家族などとみているだけだと、静的・受動的で、自分が関わっている、という認識は薄いと思います。それに対し、「おうちエール」は、自分がアクションを起こすことができるため、まるでスタジアムや会場、劇場にいるような感覚を味わうことができるので、おうちにいても、これまで以上に楽しい形になっているのではないでしょうか。
もう一つの要因は、「双方向性」です。自分が起こしたアクションに対して、誰かが反応してくれる。アーティストだったり、同じように観戦している人だったり、画面越しのMCだったり。このリアクションがあることで、同じ空間にいなくても、まるで同じ空間でそのものを楽しんでいるような気分になれるからではないでしょうか。
「おうちエール」によるビジネスチャンスの例
■ 今年中止のところが多い、夏の花火大会を、リアル会場だけでなく、
自宅からでも「たまや~」などと楽しめるような仕組みを構築する。
■ おうちでの声援が、スタジアムでも実際に声援としてでるような
仕組みを構築する。
■ 競馬を自宅で楽しむときも、テレビ中継を見ながら、
友人などと盛り上がることができるような仕組みを構築する。
など。
今はまだまだ、試行錯誤の段階だと思うので、これからどのような進化・深化を遂げていくのか、がとても楽しみですね。さて、今日も関西は天気が今ひとつなのですが、試合をやってくれることを願いながら、おうちエールを楽しみたいと思います。
▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。
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博報堂関西支社 MDB推進局 統合プラニング部
ヒット習慣メーカーズ メンバー2011年 博報堂に入社。
入社以来、マーケティング職に従事し、お得意先や世の中の課題と向き合う。基本、テレビっ子。ドラマと、阪神タイガースをこよなく愛し、阪神の勝ち負け次第で翌日の気分がちょっと違う虎吉。