現場1年目用 データマーケティング・マニュアルvol.2 プレゼン作成のコツ│パワポの前に紙・ペン・ワード
プレゼンでお悩みの皆様へ
データマーケター7年目の横井が現場1年目の方向けに「実践ノウハウ」をお伝えする連載。Vol.1では「マーケティングの基本となる3つの問い」「指示を受けたら負け、という心得」をご紹介しました。Vol.2では「資料化し、プレゼンする」現場仕事のコツをお届けします。
現場仕事の3ステップのうち、いきなり3番手から紹介となります。これは、着地点が見えていることで、ステップ①②を理解しやすいからです。
いきなり謝ります。この記事では「イケてるスライドの書き方」については一切触れません。ご紹介するのは「プレゼン内容の考え方」のテクニックです。
コツ紹介の前に、皆様はプレゼンを考える際、何から着手されますか?
・「何を伝えたいか?」を書き出す
・パワポでフォーマットと資料の流れをつくる
・作ったグラフや表をパワポにどんどん貼る
などでしょうか?
データマーケターだと三番目の「大量生産したグラフをパワポに貼る」から始めることが多いですよね。しかし、もう一度謝ります。上に挙げた3つから始めることは、オススメいたしません。
理由は2つです。
①相手目線でなく自分目線になってしまっている。
②「プレゼン方法がパワポ前提」となってしまって表現の自由が狭まってしまう。
プレゼン作り、最初の3問
では、まず何から始めるか? 正解はないですが、基本は次の3問から考えます。
①聞き手をどう動かしたいか?の例は次があります。
・実行へのGOをもらいたい
・意見や懸念点をフィードバックしてほしい
・経営層や他部門に話を入れてほしい
・ただ状況を把握してほしい
これが出発点であり到達点です。プレゼンの成功とは、ここで定めた目的を達成できること。話の上手い下手は二の次なのです。
②聞き手が抱える「問い」は何か?について。
聞きたくなる話とは、聞き手が抱える問いにドンピシャで答える話。
例えば、昼飯の直後に「ランチの客引き」をされてもスルーしますよね。これは「どこでランチを食べるか?」の問いをもう抱えていないから。
聞きたくなる話をするには、まず「聞き手が悩んでいる問いの把握」が肝要です。
データマーケターのプレゼン相手が抱えることが多い問いは、例えば以下があります。
・売上アップのための課題は何か?
・認知度を上げるアイデアは?
・今後の○○広告の予算はいくらにするか?
・プロジェクトでの次のアクションは?
・先月のプロモーションの結果は? など。
③「①と②」の接着点はどこか? について。
これの意味は「あの人はアレが気になっているから、こう話を入れてみるか」を考えることです。例えば、
①が「考えたアイデアの実行許可が欲しい」で、
②聞き手が抱える問いが「認知度アップのための課題は?」だったら、
「課題とアイデアのセット」で話を入れてみよう、となります。「課題」が気になっている人に、いきなり「アイデア」を話始めても、「ちょっと待って」となるから。
ここまでは「紙とペン」でやることをオススメします。PCだと新着通知などの誘惑が多く、思考を深めにくいから。次にようやくPCを取り出します。しかしパワポではありません。ワードです。
ワードでトークスクリプトを書く
プレゼンの達人に教わった極意に「トークが8割、資料は2割」があります。資料はあくまでトークの補助。例えばプレゼンイベントTED。聴衆の拍手喝采を引き出すのは、資料でなくスピーチ。
反対に、最悪なのは「資料の読み上げマシーン」となること。データマーケターは気を抜くと「図表の説明」に終始してしまいがちなので、気をつけましょう。
そこで、「ワードでトークスクリプトを書く」のです。
いざ聞き手を目の前にしたとして、自分ならどう話すか?それを想像しながらワードで一気に文字起こしをする。音声入力できればさらに良いです。いちいち振り返らず、一息で書き抜ける。ワードを使う理由は「デザインに凝り出す」を防げるからです。
スクリプトを一度書いたら、推敲に入ります。彫刻を削るように、文字を削りにいきます。
聞き手を動かす一言。それを見つけるのが狙いです。
この削る作業をする際は、漫画『HUNTER×HUNTER』30巻の「王と対峙したウェルフィン」の気分が非常に参考になります。
パワポでなくてジェンガだってアリ
スクリプトの推敲が終わったら、いよいよ資料化です。トークスクリプトを見ながら、次を考えます。
資料はトークの補助。理想は「口頭で伝えにくいこと」だけ資料化する。その際、「資料=パワポ」と飛びつかず、一度自由に表現手法を考えてみませんか。
例えば、映画『マネー・ショート 華麗なる大逆転』にある「ジェンガを使った金融破綻シナリオ」の説明。アレです。
「資料=パワポ」の思い込みがあると、ジェンガを使うようなアイデアは閃きにくい。
一度パワポをそっと閉じて、表現の自由を享受するのも楽しいです。
パワポ以上の表現方法が見当たらない場合、ようやくパワポ解禁です。(スライド作成のテクニックは割愛します。)
聞き手目線チェックのために、営業マン10人に会う
トークスクリプトと資料(主にパワポ)を見ながら、「聞き手目線」で最終チェックします。
もちろん「誰かに聞いてもらう」のも有効です。
この作業に際し「自己チェックしたいが、聞き手目線がピンとこない」という一年目の方も少なくないと思います。それもそのはず、「インスタ未使用者が、インスタ映えしているか?を評価できない」ように、「プレゼンの聞き手役」になった経験が少ないと、プレゼンを評価できません。
処方箋は「営業パーソン10人に会う」です。
仕事に関係する企業に問い合わせをしてみて、サービス紹介を頂く場をセッティングする。そこに上司・先輩も招く。累計10人から説明をしてもらえば「心を動かすプレゼン」が肌で分かってきます。メリットはそれだけではありません。
・書籍に書いてない「業界知識」も効率良く吸収できる。
・ヒアリング内容をまとめて部内でシェアすれば、上司・先輩たちも助かる。
・ここから何某かの成約に至れば、営業の方もハッピーに。
一石で三方良しになるのです。
プレゼンのKPIは「キーマンとのアイコンタクト数」
いよいよプレゼンです。繰り返しますが、プレゼンの成功とは、話が旨いことでも、資料が綺麗なことでもありません。「目的が達成できること」です。
その手前で、プレゼンの手応えを測る方法として「キーマンとのアイコンタクト数」があります。なぜならアイコンタクトが起きるには、次の2条件が必要だから。
つまり、アイコンタクトを一度も取れなかった場合、「資料の読み上げマシーン化」の可能性があります。
ちなみに、聞き手からプレゼン直後に「面白いお話、ありがとうございました」と言われたら黄色信号です。私の経験上、この発言をするのは「イマイチだからシャンシャンと終わらせちゃおう」な時が多いです。反対に、聞き手の心が動いた時は「厳しい質問」が飛んできます。なぜなら、何某かの実行を頭の中で検討し始めているから。
相手の「社交辞令」を鵜呑みにしないよう、気を引き締めてプレゼンしていきましょう。
以上、vol.2「プレゼン作成のコツ│パワポの前に紙・ペン・ワード」でした。
次回は「仮説を立て、検証する」データ分析の際のコツです。ご期待ください。
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博報堂プロダクツ データビジネスデザイン事業本部 CRMデザイン部 データマーケティングディレクター / データシェフ学芸大附属高校・慶應義塾大学卒業。2014年博報堂PRODUCT'S入社。ダイレクトマーケティング流のデータ活用が武器。toC・toBにおけるプロモーション・営業支援からCRM・カスタマーサクセスまでの統合プランニングに従事。主な担当業種:化粧品/IT/飲料/保険/官公庁