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ブランドの価値を守るために必要なことは何か ──デジタル広告におけるブランドセーフティの実現を目指して【アドテック東京2019レポート】
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ブランドの価値を守るために必要なことは何か ──デジタル広告におけるブランドセーフティの実現を目指して【アドテック東京2019レポート】

デジタル広告におけるブランド価値をいかに守っていくか──。現在、広告主、メディア、広告会社、アドテクノロジー事業者のすべてが、「ブランドセーフティ」をめぐる課題に直面しています。2019年11月に開催された「アドテック東京2019」では、その課題について語り合うセッションが設けられました。博報堂DYグループの一員であるデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC)の徳久昭彦がファシリテーターを務めたセッションの模様をお届けします。

ブランドイメージの毀損をいかに防ぐか

徳久
デジタル広告配信を適切にコントロールしていくことを「アドベリフィケーション」といいます。日本インタラクティブ広告協会(JIAA)はその取り組みとして、「ブランドセーフティ」「アドフラウド」「ビューアビリティ」の対策が必要であるとしています。
ブランドセーフティとは、広告掲載先の品質を確保し、ブランドの安全性を守ることを意味します。アドフラウドとは、自動化プログラム(Bot)を利用したり、スパムコンテンツを大量に生成したりすることで、インプレッションやクリック数を稼ぎ、不正に広告収入を得る悪質な手法のことです。ビューアビリティは広告の視認可能性を指します。
このセッションのテーマは、その中のブランドセーフティです。ブランドセーフティを守るためには2つのカテゴリー、すなわち、「広告掲載不適切コンテンツカテゴリー」と「ブランド毀損リスクコンテンツカテゴリー」の広告掲載を排除しなければなりません。前者は「違法なもの」、後者は「危険なもの」と理解しておけばよいと思います。
欧米ではさまざまなアドベリフィケーションが進んでいます。では、日本での取り組みはどうなっているのか。日本アドバタイザーズ協会(JAA)の小出さんからご説明いただきます。
小出
世界広告主連盟(WFA)が昨年発表した「グローバルメディアチャーター」を参考に、JAAでも「デジタル広告の課題に対するアドバタイザー宣言」を策定しました。この宣言は8項目からなっていますが、その2つめが「厳格なブランドセーフティの担保」です。
今後、JAA、日本広告業協会(JAAA)、JIAAの3団体で「JICDAQ」という新しい枠組みをつくり、広告取引の新基準と、それを監査・認証する仕組みをつくっていく予定です。
徳久
広告主としてブランドセーフティをどう捉えているか、お考えや具体的な取り組みについてお聞かせください。
日高
私たちは、ブランドイメージの毀損につながるものはすべてブランドセーフティに関わると考えています。具体的には、不適切なプレースメント、誤ったターゲットへのリーチ、何度も同じ広告が表示されるオーバーフリークエンシー、それから、広告がそもそも見られていないというビューアビリティの問題です。
ブランドセーフティを守るためには、広告業界全体で測定方法を標準化し、オペレーションを透明化していく必要があると思います。当面の広告主サイドの取り組みとして、私たちは独自に自社の広告配信をモニタリングしています。まず、オンターゲットパーセンテージ(OTP)、つまりターゲットへのリーチの正確性ですが、2年前の測定では、正しいターゲットに広告が配信されているケースは4割以下でした。つまり、6割の広告は無駄に投下されていたということです。また、ビューアビリティの平均は5割以下でした。これは、半分以上の広告が見られていないことを意味します。その後コツコツ改善を重ねることで、これらの数値はかなり伸びてきました。このような測定と指標づくりを、今後業界全体で進めていく必要があると思います。
小出
資生堂ではブランドセーフティについて「反社会的勢力の資金援助にならない」「ブランドイメージを毀損させない」「広告メッセージを届きやすくする」という3つの視点を重視しています。それに基づいて、この3年ほどの間さまざまな取り組みを続けてきました。
まず、ツールを活用しながらブラックリストをつくりました。この段階では、ブランドごとに対応の差があったのですが、トップマネジメントからの「すべてのブランドのリスクをゼロにするように」との指示を受け、ホワイトリストの策定を行い、ブロッキングツールも導入しました。その結果、ブランドリスクはゼロにはならないものの、取り組み以前と比べて10分の1程度のリスク値まで下げることができました。
ブランドセーフティを守るためには、ほかにも対策を施すべき要素があります。ユーザーエクスペリエンスの軽視、生活者の嫌悪感につながる広告フォーマット、広告の重複掲載、広告枠の散乱、フェイク広告との同載などです。こういった問題にも今後は対応していかなければならないと考えています。

業界を横断する取り組みが必要

徳久
メディアとしての取り組みについてもお聞かせください。
近藤
グノシーの広告枠の大半はいわゆるインフィード型で、記事の見出しと広告が同列に並ぶフォーマットになっています。したがって、広告が事件・事故などを含む記事、根拠のない誹謗中傷を含む記事、あるいは他社広告と同一掲載面に掲載される可能性がある。それが大きな課題です。
その課題への対応として、掲載される記事の提供会社の審査、トピック面に掲載される記事のファクトチェック、アドフラウドの自社システムによる排除などに現在取り組んでいます。しかし、それで十分だとは考えていません。今後、記事と広告の組み合わせ方法の最適化、運用型広告とインプレッションのバランスの検討などを進めていく予定です。また、自社内の仕組みを活用するだけでなく、外部の審査を積極的に受け入れていくことも必要であると考えています。
中村
ヤフーでは「広告配信ガイドライン」を定め、配信すべきではないサイトを明確に定めています。例えば、知的財産権を侵害するサイト、プライバシー権を侵害するサイト、差別を助長し人権侵害につながるようなサイトです。
また、2019年5月には、広告品質における3つの価値と6つの対策項目からなる「広告品質のダイヤモンド」を策定しました。ブランドセーフティは、その3つの価値の中の「ブランド価値とメディアの信頼性の担保」の対策項目に該当します。
具体的な取り組みとしては、人の目による審査、システムによる審査、外部の企業や団体との連携による審査の3つの審査を掛け合わせることで、広告主のブランド価値を守ることを徹底しています。
徳久
現在のところ、媒体、広告主各社が独自にブランドセーフティに取り組んでいるのが実情だと思います。日高さんがおっしゃるように、今後は業界を横断する取り組みが必要になってきそうですね。
日高
何がブラックで何がホワイトかという基準は、現在は各媒体社でばらばらです。統一的な指標をつくって、共通の対応をしていただくことが望ましいと私たちは考えています。また、その指標づくりのために、広告主側もある程度のコスト負担をするのはやむを得ないと思います。というのも、いったんブランドが毀損されてしまうと、そこからの回復に膨大なコストが必要となるからです。それと比べれば、指標づくりにコストをかける方が理に適っています。
小出
統一基準が必要であるというのはまったく同感です。一方、それに対してコストを負担することを心情的に納得できない広告主も少なくないという気もします。メディア側が安心できる環境をつくった上で広告を出稿するというのが、従来の広告取引の形だったからです。その点については、今後前向きな話し合いを続けていきたいと思います。

ブランドセーフティに対する意識を高めるために

徳久
JAAと宣伝会議による「デジタル広告における意識・実態調査」では、ブランドセーフティを意識していない業界関係者がまだ15%もいるという結果が出ています。残念ながら、広告会社の人たちの意識もまだまだ低いようです。
近藤
運用型広告の場合、CPCやCPAといった指標は非常にシンプルでわかりやすいのですが、これにブランドセーフティという視点が加わると、広告主への提案が格段に複雑になっていきます。そのため、広告会社がブランドセーフティに正面から向かい合うのが難しいといった事情もあるのではないでしょうか。
徳久
しかし広告会社の一員として、そこはしっかり向かい合っていかなければならないと強く思います。中村さんはどうお考えですか。
中村
やはり、業界全体で取り組みを進めていくことで、ブランドセーフティに対する認識も広まっていくのではないでしょうか。各社がインターネット広告全体の品質を向上させていくという意識が必要だと感じます。
近藤
あるメディアが基準を厳しくすると、より基準の緩やかなメディアに不正事業者が流れていく。そんな傾向がこれまでは続いてきました。業界全体で基準を統一することで、正直者がバカを見ないような仕組みをつくっていかなければならないと思います。
徳久
今回発表された「アドバタイザー宣言」が業界全体での仕組みづくりのスタートになりそうです。ブランドセーフティを守り、広告の価値をいっそう高めていく努力を皆さんとともに続けていきたいと思います。
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  • デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム
    専務取締役CMO
    デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC)では専務取締役CMOとして、研究開発とオープンイノベーションの推進を担当。DACにはジャスダック上場前の2001年に参画し、CTOとしてアドテクノロジー開発や新規事業開発をリードしつつ、ベンチャー投資も推進。2011年には戦略子会社プラットフォーム・ワンを設立し、初代社長を務めた。東証一部企業メンバーズ、ALBERT等の社外取締役も歴任。 また、2019年より博報堂DYホールディングスの執行役員として、グループ全体の戦略投資領域とテクノロジー領域を担当。
  • 小出 誠
    小出 誠
    資生堂ジャパン
    メディア統括部エグゼクティブマネージャー
    日本アドバタイザーズ協会常務理事
    1984年資生堂入社。大阪の販売会社の営業部門を経て、商品開発部。
    その後、宣伝部にてブリント媒体の出稿、イベントを担当。
    1994年より経営企画部で企業理念づくり、社内保育所の設置などを担当した後、2003年よりプロフェッショナル事業部でヘアサロンへの業務用品事業および美容室などのサービス事業運営に携わる。
    2008年より経営企画部に在籍し、本社ビル建て替えとグローバル総本店新設を含む「銀座再開発プロジェクト」と企業サイトの運営を担当。
    2014年4月よりコミュニケーション統括部長。
    2015年10月より資生堂ジャパン(株)コミュニケーション統括部長。
    2018年1月より同メディア統括部長。
    2019年1月とよりメディア統括部エグゼクティブマネージャー、日本アドバタイザーズ協会常務理事。
  • 日高 由香子
    日高 由香子
    プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン
    シニア メディア マネージャー
    1998年P&G入社、SK-IIブランドに配属される。2002年にSK-IIグローバルデザイン・ブランドマネージャーとなり、数々のスキンケア製品を世に送り出す。SK-II、Olayなどのスキンケアブランドのマーケティングを経たのち、2011年より日本国内のメディアプランニング担当。
  • 近藤 洋司
    近藤 洋司
    Gunosy
    執行役員 メディア事業本部 
    ニュースメディア広告推進部 部長
    2001年に茨城大学を卒業後、株式会社セプテーニに入社。2012年1月に同社子会社としてTrading Deskのイーグルアイを設立、同代表取締役社長に就任。2015年7月、米国に本社を持つ位置情報技術の「xAd」の日本法人設立に参加、ロケーション・マーケティングを提案、実践した。2017年10月より現職。国内広告テクノロジーの相関を示したLUMAscapeの公式ローカライズ版「カオスマップ」の作者。
  • 中村 茜
    中村 茜
    ヤフー
    マーケティングソリューションズ統括本部
    トラスト&セーフティ本部 ポリシー室 室長
    2007年にヤフー株式会社に入社。法務・コンプライアンス部門を経て、広告事業に関するポリシーを制定する部門に従事。2018年よりポリシー室長に就任。

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