JIAA 20周年記念シンポジウム ~インターネット広告の次の20年に向け、トップリーダー達の描く未来~
2019年11月27日、東京・千代田区のイイノホールにて一般社団法人 日本インタラクティブ広告協会(JIAA)主催の『JIAA 20周年記念シンポジウム~インターネット広告の次の20年に向け、トップリーダー達の描く未来~』が開催されました。
「次の20年に向けたJIAAの取り組み」というテーマで、パネリストとしてヤフー株式会社 代表取締役社長CEOの川邊健太郎氏、株式会社博報堂DYメディアパートナーズ 代表取締役社長の矢嶋弘毅、株式会社日本経済新聞社 常務取締役 デジタル事業担当 日経イノベーション・ラボ所長の渡辺洋之氏が登壇し、モデレーターをJIAA理事長の髙田佳夫氏が務め、熱い議論が交わされました。
■JIAAが5,000人にアンケートを実施!
インターネット広告に対するユーザー心理が明らかに
冒頭、インターネット広告に関するユーザー調査を実施し、5,000人から回答を得たことが報告されました。そのアンケート結果に対して、どこが興味深く、どこが課題で、どう思ったのか、パネリストからさまざまな意見が挙がりました。
インターネット広告がユーザーの情報をもとに表示されることに不安を感じる割合は8割で、ターゲティングの目的の明確化やデータ取得の拒否権など、ユーザーとの向き合い方への課題に話は及びました。広告に触れる世代やメディアリテラシーによっても捉え方は異なるため、課題解決には多角的な検討が必要との意見も出ました。
議論の中では、ユーザーの9割がインターネット広告を有効だと回答した結果も紹介されました。これはインターネットサービスを無料で利用できる理由を把握している証しであり、情報を送る側に与えられた成長の余地でもあります。
今まで以上に広告を受け入れてもらうには? 信頼を得るには? プラットフォーマーの取り組みやクリエイティブの方向性に、新たな変化が求められていると思われます。
- (矢嶋)
- 「データの取得や活用に対する透明性をプラットフォーマーが開示すべき」と訴え、個人情報をより慎重に扱う必要があると語りました。
- (川邊氏)
- 川邊氏は「若い人は自分に合った情報しか求めていない」との現状を踏まえ、広告でもパーソナルな情報を求める傾向が強まるのではないかと話しました。
- (渡辺氏)
- 個人情報の取得に関して「何の目的かを伝えることが大事」と、渡辺氏は自社のサブスクリプションサービスに重ね合わせて見解を示しました。
■どうする? どうなる?
ステークホルダーへの対応
続いて髙田氏がパネリストに投げかけたテーマは、ステークホルダーへの対応についてです。ユーザー、広告主、官公庁、広告団体……。JIAAを取り巻く環境はとても複雑ですが、どこを中心に、どのように付き合っていけばいいのでしょうか。
パネリストから挙がったのは、健全なインターネット広告発展のために、広告主、メディア、プラットフォーマー、エージェンシーの協調が不可欠だという声でした。アドフラウドやブランドセーフティーといった広告価値を毀損しかねない課題や安全性の担保に対して、JIAAだけで解決することは困難です。そのため、あらゆるステークホルダーが共通のテーブルにつき、ユーザーの意見にも耳を傾けながら、議論を進めていくことが肝要だと考えられています。
ディスカッションでは具体的な見解も示されましたが、共通していたのは生活者保護の観点にもとづいたガイドラインの策定やビジネス推進のためのルール整備など、JIAAの取り組みへの期待感でした。インターネット広告に携わる者の共生――。その調整役として、JIAAをはじめとする業界団体が大きく関与していくことは間違いありません。
- (矢嶋)
- 「プラットフォーマーなどがいかに共生し、ルールをつくるか」とテーマを掲げ、個人情報やトランスペアレンシーの課題にも言及しました。
- (川邊氏)
- 川邊氏はグローバルの関係性を見ながら、「全体がどのように動くのか先読みも重要だ」と語りました。
- (渡辺氏)
- 渡辺氏は、「国内におけるプラットフォーマーの再編についても注視している」と述べました。
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■トップリーダーたちが語る、
次の20年に向けた期待や展望とは?
インターネット広告の可能性と課題――。それぞれと向き合うためのガイドラインやルールづくりに関し、「今から取り組むべきこと」と髙田氏は見据えつつ、最後に次の20年への期待や展望をパネリストにたずねました。
議論の大半を占めたのは、今までとまったく異なる変革期が来るという予測でした。現在がアフターデジタルの世界なら、この先はフルデジタルの世界です。テクノロジーもジェネレーションも変わろうとしている時代に求められるのは、これまでのインターネット広告を覆すユーザー体験だといいます。また昨今の状況を受け、広告の情報価値向上のためにユーザーへの働きかけも欠かせないでしょう。
この20年、世の中を変えたのはインターネットでした。そして、インターネットのなかで技術を生み出したのは広告です。今後も広告業界が技術の先端を担うと考えられています。技術の進化と深化によって、広告に携わる人たちが新しい体験をどのように創造するのか? インターネット広告を中立的な立場で見る、JIAAの存在感も増すことになりそうです。
- (矢嶋)
- 「まったく違う広告業界に変わらなくてはいけない」と語り、大きな変革にJIAAがどのように並走できるかに注目していると述べました。
- (川邊氏)
- 「これまでの20年をしのぐ変化があるので予測は困難」と川邊氏は述べつつ、2020年に取り組むべき課題として広告の情報価値向上を挙げました。
- (渡辺氏)
- 「技術の進歩は止まらない」と渡辺氏は話し、今の延長線上にないユーザーエクスペリエンスをつくりだしていく重要性を示唆しました。
この記事はいかがでしたか?
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髙田 佳夫一般社団法人 日本インタラクティブ広告協会(JIAA)
理事長
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川邊 健太郎ヤフー株式会社
代表取締役社長CEO
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渡辺 洋之株式会社日本経済新聞社
常務取締役 デジタル事業担当
日経イノベーション・ラボ所長
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株式会社博報堂DYメディアパートナーズ
代表取締役社長