ヒット習慣予報 vol.83『ハッシュタグドラマ』
こんにちは。ヒット習慣メーカーズの植月です。
8月に入り、暑い日が続いていますが、いかがお過ごしでしょうか?
夏といえば、花火大会、海、プールなど、ドキドキするイベントが盛りだくさんですね。
私は、夏らしい青春イベントの予定がないので、ひたすら友人のSNS投稿を見て擬似的に夏を満喫しています……。
今回は、そんな風に実際に誰かがリアルに体験した出来事を、ドラマのようにSNSで楽しむ「ハッシュタグドラマ」を取り上げます。
最近、自身の実体験を題材に、SNSでマンガや小説を書いて公開する人が増えています。そして、その物語にタイトルをつけ、1話、2話、3話……と長編の続きものとして掲載されているものが多いです。そのため、読者はハッシュタグで検索することで、更新されていないかどうかをチェックし、少しずつストーリーが進展することを楽しむという、テレビドラマ的楽しみ方をしています。
中でも、「コミックエッセイ」と言う、漫画で小説のように少しずつストーリーを描くタイプのものが多いのですが、この「コミックエッセイ」に関するSNS投稿も徐々に増えています。
〈「コミックエッセイ」の検索数推移〉
まず、題材として多いのは、「育児」「ダイエット」等の日常生活に関する「ハッシュタグドラマ」です。
こうした日常生活を題材としたものは、主に自分ならではの工夫や方法を紹介していたり、ちょっとしたほのぼのエピソードを載せたりしているものが多いです。例えば、年長・年少男児の母が、年長の子どもに対し、敢えて弟の前で“お兄ちゃん”と呼ぶことでリードする意識を育むといったお話があります。こうしたストーリーは、育児の参考に見ていることもあれば、子供好きの方などがスキマ時間の癒やしとして楽しんで見ていることもあります。
他にも、「不倫騒動」「嫁姑問題」など、ドロドロした展開が予想されるものを題材としたものもあります。
テレビドラマでも同様の題材のものが多くありますが、それに比べると、実体験であるためにさらにリアル感があり、次の展開にハラハラドキドキさせられます。例えば、夫の不倫現場に鉢合わせしてしまった妻が、離婚調停を経て親権を獲得し、シングルマザーになるまでを描いたエピソードなどがあります。このような題材ではちょうど決定的な瞬間を迎える手前で、一話を終えることが多く、次の更新が待ちきれないという読者のワクワク感をつくることができるのも特徴です。
では、なぜ「ハッシュタグドラマ」は増えつつあるのでしょうか?
理由は大きく2つあると考えられます。
1つ目は、日常における時短志向です。以前、時短エンタメのコラムでも紹介させていただいたように、エンターテインメント性のあるコンテンツにおいても、一つ一つにじっくり時間をかけるのではなく、サクッと楽しむという潮流ができつつあります。その結果、ストーリーもののコンテンツにおいても、1話1時間かけてじっくり見るものだけでなく、スキマ時間で楽しめる4コマくらいのものも増えてきたのだと考えられます。
2つ目は、双方向のコミュニケーションです。テレビドラマでは、リアルタイムで視聴者の要望を取り入れることは制作のスケジュール上難しくなっています。しかし、SNSではコメントで「〇〇の部分はどうしたんですか?」などと質問することで、本来は知りえないバックストーリーの部分を本人に尋ね、教えてもらうことができます。そういったコミュニケーションの楽しみが付加されていることも、「ハッシュタグドラマ」が支持される一つの理由かもしれません。
最後に、「ハッシュタグドラマ」のビジネスチャンスとしては下記のようなことが考えられるのではないでしょうか?
「ハッシュタグドラマ」のビジネスチャンスの例
■ 劇的な実体験ネタを提供する「実体験ネタ売り屋」という職業をつくる。
■ 食品メーカーが、自社商品を用いた実体験を募集し、コミックエッセイ化する。
■ 話題のノンフィクション小説のエピソード・ゼロ(特別編)を、
専用のアカウントでコミックエッセイとして出し、小説をPRする。
など。
実は私も、以前友達から教えてもらった、とある「ハッシュタグドラマ」の更新を毎週密かに楽しみにしております。
スキマ時間にサクッと楽しめますので、みなさまもお気に入りの「ハッシュタグドラマ」を見つけてみてはいかがでしょうか?
▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。
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博報堂 統合プラニング局 ヒット習慣メーカーズ メンバー2017年 博報堂に入社。
マーケターとして、社会の荒波に揉まれながら、社会に新たな潮流をつくることを夢見て奮闘中。