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ヒット習慣予報 vol.76 『情緒テック』
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ヒット習慣予報 vol.76 『情緒テック』

こんにちは。ヒット習慣メーカーズの村山です。

突然ですが、最近個人的に、右脳ブームです。
日々、Twitterやニュース、本などから得られる大量の情報を左脳的に整理して仕事に活かそうと意識しているので、その揺り戻しで右脳的にそそられるなあ、とか癒されるなあ、とか気持ちいいなあ、とか感じるものを無意識的に求めてしまっているのかもしれません。

さて、そんな右脳的な感覚にも通じる、今回のテーマは「情緒テック」です。

企業のブランド価値を示す言葉として「情緒的価値」と「機能的価値」があるのはご存じの方も多いと思いますが、役に立つ機能的価値と対をなす“感情に訴える価値”が「情緒的価値」です。

テクノロジーというと、AIはじめ生活をより便利にしてくれる機能的価値を提供するイメージがあると思いますが、近年、生活に情緒的価値を提供するテクノロジーの潮流があるのでは、と感じています。

そもそも、こんなことを考えるようになったのは18年11月に発売開始したクッション型セラピーロボット「Qoobo」がキッカケでした。このクッションは丸いクッションにしっぽがついているネコでもイヌでもない不思議な生き物のような造形をしているのですが、“撫でるとしっぽが動くだけ”で生活を便利にしてくれる特別な機能は搭載されていません。このようにシンプルな商品ですが19年4月に累計販売数1万台を突破し好調に売れ行きを伸ばしています。さらに、18年10月に発表された家庭型ロボットも、機能的には全く役にたたないのですが、おとぎ話にでてきそうな愛くるしい造形と、ユーザーを癒し・愛されるためだけに活用されている最先端のテクノロジーにとても衝撃をうけたのを覚えています。

テクノロジーが提供する情緒的価値の可能性はSNS上でも見て取れます。
博報堂のSNS分析ツール、TopicFinderで「ロボット」がどのような単語とともに、投稿されているか調べてみると、4番目に「可愛い」という形容詞が投稿されていることが分かります。

出典)TopicFinderより分析
(2017/6~2019/5の2年間・「ロボット」で分析)

さらに、「ロボット」が「便利」という単語とともに投稿されている数と比較してみても年間通じて、「可愛い」と投稿されている数のほうが多いことが分かりました。

出典)TopicFinderより分析
(2017/6~2019/5の2年間・「ロボット&便利」「ロボット&可愛い」で分析)

生活者視点で考えると、企業の工場や研究施設で活躍する便利で機能的なイメージよりも、映画や漫画などで登場するロボットが与える愛くるしいイメージのほうが親和性のある価値なのかもしれません。

AIやロボティクスの進展によって想像を超えて便利になる未来の生活が現実味を帯びていくなかで逆に、情緒的価値が生活者から歓迎され始める潮流の芽があることを数的にも見て取ることができました。

他にも、感情や感性に訴える様々なテクノロジーが発表されています。
例えば、青空や太陽光を人工的に再現する照明パネルです。部屋を長く明るく照らすという機能的な価値に重点をおくのではなく、まるでさわやかな春の日に心地よい日差しをあびるような“気持ちいい”環境を提供するためにテクノロジーが活用されています。

生活者の好みをAIが分析・学習し、最適な香りにカスタマイズしてくれるディフーザーも登場しています。言語化できない人それぞれの気持ちのよい環境を提供してくれる「情緒テック」だと思います。

以前には、観葉植物をスピーカーに音楽を楽しむイベントが開催され話題になっていました。音楽を鑑賞するという体験において機能的な音質を追い求めればもっと違うテクノロジーの活用方法があったと思います。ただ、植物を鑑賞しながらその植物固有の音楽を鑑賞して楽しむという体験は、機能的な体験以上に新しく情緒的な価値を提供していたのだと思います。

ではなぜ、このような「情緒テック」に対する需要が芽生え始めているのでしょうか。
それは僕自身もリアルな実感として冒頭に述べたように、スマホなどの情報端末の発達による「左脳的な情報の氾濫」と、どんなにテクノロジーが進展しても代替できない人間ならではの感性や感情に基づいた価値だからではないでしょうか。
利便性や効率性といった機能的な価値ではない、テクノロジーの在り方に注目してアイディアを考えていくことで新しい未来が見えてくるかもしれません。

最後に、「情緒テック」のビジネスチャンスについて、少し考えてみたいと思います。

「情緒テック」のビジネスチャンス例
■ オフィス空間を情緒的なテクノロジーで快適にアップデート
■ 満員電車などストレスフルな環境を情緒テックで快適にアップデート
■ ノンバーバルな情緒テックをインバウンド施策に活用

など。

僕もしばらく情緒的価値をゆさぶられる商品や現象について、意識的に情報収集してみたいと思います。自分の原体験を思い返してみるのも何かのヒントになるかもしれませんね!

▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。

  • 博報堂 統合プラニング局
    ヒット習慣メーカーズ メンバー
    営業職を経て2015年にPR職に。車からファッションに至るまで様々なクライアントの情報戦略に携わる。毎日きまった街のきまった飲み屋に入り浸っているので、知らない街の知らない店に飲みに行く活動を実施中。