ヒット習慣予報 vol.63『なんちゃって音体験』
こんにちは。ヒット習慣メーカーズの植月です。
3月に入り、花粉もピークになってきましたね。
花粉症で目鼻のむずむずに悩まされている方も多いのではないでしょうか?
私は昨年から花粉症が激化し、外には出たくないけれど、お花見などのお出かけも楽しみたい……という葛藤に悩まされています。
今回は、私と同じようなお悩みを持っている方にもおすすめの「なんちゃって音体験」を取り上げます。
耳かきをしているときの“ゴリゴリ”という音だったり、美容院でシャンプーをしてもらっているときの“ワシャワシャ”という音だったり、何かしら聞いていて気持ちいいと感じる音は、みなさまの中にもあるのではないでしょうか?最近では、そういった音体験を総称して「ASMR(Autonomous Sensory Meridian Response)」と言い、動画サービスにおいても人気コンテンツの一つとなっています。
〈「ASMR」検索数〉
具体的にどのような音体験があるのかを見ていきましょう。
まず1つ目は、「食べる」音体験です。
チキンを食べるときのサクサクッという音だったり、焼きそばを食べるときのすする音だったりと、実際に食べるシーンの音声による体験です。人がモノを食べているときの音声を聞いてどうするのか?と思われる方もいるかもしれませんが、実は、音を聞くだけで「食べた気になる」ことを目的としている人も多いです。例えば、ダイエットをしている人や、あと少し待てばご飯という時間帯にお腹が空いてしまった人が挙げられます。本当は食べたいけれども我慢しないといけないというときに、音で疑似体験することで実際にはカロリーを摂取せずに、食べることを楽しめるのです。
2つ目は、「ときめく」音体験です。
耳元でささやくウィスパーボイスや、髪をなでるときの音声による体験です。中には、眠れないときに横で添い寝をしてくれるなど、シチュエーションを限定してアップロードされているものもあります。自分もその状況に合わせて、ベッドで横たわるなどして聞けば、よりリアリティのあるドキドキ感を感じられます。日常生活において、なかなかときめきがないといった方にも人気のコンテンツとなっているようです。
3つ目は、「季節を楽しむ」音体験です。
夏のセミの鳴き声や波の音など、その季節を連想させる音声による体験です。実際には、部屋で半袖のシャツを着て、セミの鳴き声を聞きながら、アイスを食べることで、夏を満喫するといった事例もありました。夏というと、海やプールなど外ではしゃぐイメージが強いかもしれませんが、年々猛暑化が進んでいることを考えると、快適な室内で夏を満喫するというのもいいかもしれませんね。
では、なぜ「なんちゃって音体験」は増えつつあるのでしょうか?
理由は大きく2つあると考えられます。
1つ目は、エモさ第一の風潮です。特に若い層ではモノ消費よりコト消費とよく言われますが、そのコト消費においても、「エモさ(感情が揺さぶられること)」が最大のキーとなっています。しかし、エモさは実態のない情緒的価値であるため、それさえ創出することができれば、極論実態はなくてもいいのです。それに加え、音だけで決まった絵や写真はないため、自分の想像でエモさを増幅しやすいという点も大きいかもしれません。
2つ目は、AR・VRと比較した手軽さです。体験型コンテンツといえばAR・VRが人気ですが、本格的な体験には機器が必要なため、今のところ気軽にできません。一方、音体験であれば、誰もが使える動画サービスにアップロードされているものが多いので、好きなときに好きな場所で好きな音を聞くことができます。
最後に、「なんちゃって音体験」のビジネスチャンスとしては下記のようなことが考えられるのではないでしょうか?
「なんちゃって音体験」のビジネスチャンスの例
■ 音だけで楽しむオンライン上の「音声動物園」を開園する。
■ 漫画・小説を、環境音や効果音を存分に活かして「実音化」する。
■ 旅行会社のプランとして、格安の「音声旅行プラン」を導入する。
など。
私もお花見に行きたいと思っていましたが、あまりに花粉症が辛ければ、友達を家に呼んで、室内花見を楽しみたいと思います。みなさまもぜひお試しください。
▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。
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博報堂 統合プラニング局 ヒット習慣メーカーズ メンバー2017年 博報堂に入社。
2年目のマーケターとして、社会の荒波に揉まれながら、社会に新たな潮流をつくることを夢見て奮闘中。最近は、キュンキュンを求めてひたすらドラマと少女漫画を見ています。