
DATA GEARの新たなチャレンジ【連載第4回】 「AI-Ready」時代に備える――マーケティング組織とデータ基盤の進化を支援するソリューション〈DATA GEAR for AI-Ready〉
AI技術の急速な進化とともに、企業のマーケティング業務における「AI活用」は喫緊のテーマとなっています。しかし実際には、「AIを導入したが活用できない」「データが整備されていない」「業務が属人的で再現性がない」といった“AIを使える状態になっていない”という課題も数多く存在します。
そうした企業の現実に向き合い、生成AIの活用を見据えた業務体制・データ基盤の整備をワンストップで支援するソリューションが、〈DATA GEAR for AI-Ready 〉です。
AIをマーケティングに実装できる状態――すなわち“AI-Ready”をどのように実現していくのか。その思想と実践について、メンバーに語ってもらいました。
CDPの次に問われる「AIを使いこなせる環境」のつくり方とは
──現在企業が抱えている「AI活用」の課題とは、どのようなものですか?
- 土井
- 近年、生成AIの話題が急速に広まりましたが、企業の多くは「AIをどう導入するか」という表層的な議論に留まっている印象があります。本質は「AIをどう活かせる環境を整えるか」という点にあります。
具体的には、データが分断されていて連携できない、業務が属人的でAIに引き継げない、PDCAが回らずに誤った学習が起きるなど、“AIを導入しても上手く活用できていない”ケースが少なくありません。
私たちが「AI-Ready」という言葉で表現しているのは、こうしたボトルネックを取り除き、データ・業務・組織をAIが機能できる状態に整えること。データ基盤を導入して終わりではなく、それをどう整備・運用し、AIと協働できる状態に持っていくかが問われています。
- 内海
- AIは魔法の杖ではありません。
AIを活かすためには、それを支える「土台」の整備が欠かせません。データの質や更新頻度が整っていなければ、いくら高性能なAIを搭載しても、期待通りのアウトプットは得られません。
また、活用したい業務自体が整理されておらず、属人化していると、AIに適切な役割を与えることすらできません。
私たちは「AIをどう使うか」ではなく「AIを活かせる組織のあり方」を支援していくことに力点を置いています。
- 棚田
- 現場では「データはあるけど、どう使っていいか分からない」
「CDPは入れたけど運用が定着しない」といった声が多く聞かれます。
そうした悩みの背景には、業務とデータの接続がなされていないという課題があります。
私たちは、まずクライアントと一緒に「どこにAIを活かす余地があるか」を見極めるアセスメントから始め、業務設計、データ基盤の構築、そしてAI活用まで一貫して支援します。それがAI-Readyの実装プロセスです。
- 小林
- AI-Readyという考え方は、決して特定のテクノロジー導入の話ではありません。「業務の流れが明確か」「データが連携されているか」「PDCAを回す仕組みがあるか」といった、組織の土台全体に関わるテーマです。
この“前提条件の整理”こそが、今後のマーケティング組織にとって不可欠になっていくと感じています。
アセスメントから業務、データ基盤の構築、AI導入までを一気通貫で支援
──「DATA GEAR for AI-Ready」のサービス内容について詳しく教えてください。
- 土井
- AIを業務で活用するためには、活用可能なデータが整備されていること、AIが連携できるシステム環境があること、そしてAI活用が根づく組織体制が構築されていることが前提条件となります。『DATA GEAR for AI-Ready』では、こうした“AIが活躍できる環境”を整えるために、データ・システム・組織体制の3領域にまたがって、アセスメントから設計・実装・運用支援までを一気通貫で行っています。
例えば、「部門ごとにデータがサイロ化している」「施策の振り返りが人任せで再現性がない」といった構造課題を丁寧に整理し、それに応じた業務プロセスやデータフローを再設計します。
- 小林
- クライアントと伴走しながら、実務レベルで「AIをどう実装するか」に落とし込んでいきます。データ活用の課題に加えて、「AIを使う目的がそもそも不明確」といった状態から伴走支援することもあります。
- 内海
- 「DATA GEAR for AI-Ready」の特長は、「現場が使いこなせる」ことを徹底している点です。
構想段階の理想論に留まることなく、現場の担当者が日々の業務の中で実際に活用し、PDCAを回せるレベルにまで落とし込むことを重視しています。分析からアクションまでがスムーズに連動する業務プロセスを設計・実装しています。
- 棚田
- 現場とシステムの橋渡しをするのが我々の役割です。AIが活躍するには、入力データと業務の設計が整っている必要があります。逆にいえば、そこが整えばAIは非常に強力なパートナーになりえます。
AI活用だけではない、既存データの“再発見”も支援
──どのような支援フェーズが特に重要になりますか?
- 棚田
- まず、アセスメントフェーズがとても重要です。
クライアント自身も気づいていなかった業務のボトルネックや、活用可能なデータ資産が見えてくるケースが多々あります。
例えば、過去のコールセンター対応の音声ログやアンケートの自由記述欄など、これまで埋もれていた非構造化データを棚卸しする中で、「顧客の本音」や「対応の質」を分析できる重要な資産であることが判明したケースもあります。こうした非構造化データは、生成AIの活用によって新たな価値を引き出せる可能性を秘めています。
- 内海
- また、AIの性能を引き出すためには、従来の表形式で管理された「リレーショナルデータベース」だけでなく、意味の近さを数値で捉える「ベクトルデータベース」や、情報同士のつながりを可視化する「グラフデータベース」といった新しい構造への見直しが重要です。私たちは、こうした生成AIと相性の良いデータ構造への再設計を通じて、AIがより自然に推論・応答できる環境づくりを支援しています。
- 土井
- AI-Readyでは、「PoC止まり」を防ぐための“仕組み化”が大事になります。
最初から完璧な環境をつくるのではなく、小さく実装し、成果が出たら横展開する。この“スモールサクセスからの拡張”を支援することで、現場への定着と効果の可視化を両立させています。
──今後、AI-Readyが目指す世界とはどのようなものでしょうか?
- 小林
- 私たちは「AIを導入する」ことがゴールだとは思っていません。AIと人が協働しながら、生活者にとって本当に意味のある体験を生み出せる環境をつくることがゴールです。
そのためには、ツール導入だけでなく、業務設計や組織文化の変革も伴走して支援する必要があります。
- 棚田
- 例えば、営業支援の文脈では、商談音声データから学習して、若手営業にベテランの知見を継承するAIスクリプトをつくる、という活用も可能です。そうした“AIによるナレッジの民主化”も、AI-Readyの先にある世界です。
- 内海
- 今後、AI-Readyは「マーケティングだけの話」ではなくなっていくと思います。人材育成、営業、商品開発など、あらゆる企業活動の前提として“AIを使える状態”が求められていく時代が来ています。
- 土井
- だからこそ、私たちはデジタルの“内側”だけでなく、“出口”まで見据えた支援をしていきたいと考えています。リアル店舗での体験、営業現場での提案精度、全社的な意思決定の質向上など、AIを通じて提供できる価値は無限にあります。
DATA GEARとしても、そうした幅広い領域に対応できるチームに進化していきたいと考えています。
──今後のDATA GEARの活動にかける思いを最後にお聞かせください。
- 小林
- DATA GEARはもともと広告配信の最適化を支援することを主な目標にしていました。昨年から人材も増えてより幅広い領域でクライアント支援ができる体制が整ってきました。今後さらにできることを増やして、クライアント課題に全方位的に対応できるチームになることを目指していきたいと思っています。
- 棚田
- クライアントのビジネス成果に確実につながるソリューションやサービスを提供し続けること。それがすべてだと思います。そのためにできることはまだまだたくさんあると考えています。
- 内海
- DATA GEARはこれまで、どちらかというとシステム領域でクライアントをご支援してきました。今後はシステムのノウハウに加えて、より魅力的なアイデア、クリエイティブなアイデアによってマーケティング成果を生み出していけるチームに成長していきたい。それがこれからの目標です。
- 土井
- デジタル領域で強みを発揮してきたのがこれまでのDATA GEARでした。その強みをこれからも伸ばしながら、一方でデジタル以外の領域でもクライアントに貢献できるチームを目指していきたいと考えています。例えば、データを活用してリアル店舗での新しい顧客体験を創出していく。あるいは、データを営業活動に活用して受注率を上げていく。そんな新しい「デジタルの出口」をつくることによって、このチームが提供できる価値をさらに高めていきたい。そんなふうに思っています。
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博報堂 マーケティングシステムコンサルティング局
データプラットフォーム推進部
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博報堂 マーケティングシステムコンサルティング局
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ビジネスプラニングディレクター
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