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生活者中心のスマートシティの実現へ──生活者共創型のまちづくりサービス「shibuya good pass」始動(生活者ドリブン・スマートシティ構想発表会レポート)
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生活者中心のスマートシティの実現へ──生活者共創型のまちづくりサービス「shibuya good pass」始動(生活者ドリブン・スマートシティ構想発表会レポート)

博報堂は三井物産と2020年9月からスマートシティ領域で連携し、「生活者ドリブン・スマートシティ(=生活者が主役のまちづくり)」の実現に向けた取り組みを開始しています。そのコアサービスとして始動する、生活者共創型のまちづくりサービス「shibuya good pass」の構想発表会を、サービス展開の舞台となる東京・渋谷で11月13日に開催しました。
生活者と共創する都市サービスとは何か。そしてそこに生まれるスマートシティの姿とは──。発表会に登壇したスピーカーの発言をダイジェストでお届けします。

発表会は多くの報道関係者の取材が入る中、前半の構想発表会と、後半のモビリティサービス体験会の二部構成で実施されました。開会宣言を受けて、まず博報堂の吉澤と三井物産の松本氏の二人が登壇。両社が掲げる「生活者ドリブン・スマートシティ構想」の全体像について説明しました。

生活者視点で都市をアップデートしていく
(博報堂 ミライの事業室長 吉澤 到)

現在、都市を取り巻く環境は大きく変化しています。モビリティ、医療、教育、行政サービスなど、都市の生活に関わるあらゆる領域でDX(デジタルトランスフォーメーション)が進み、さらにはコロナ禍によるリモート化の進展も影響して、都市のあり方そのものが大きく変わろうとしています。このような中で「スマートシティ」という都市構想が、これからの都市生活のあり方、産業モデルに大きな変化をもたらすイシューとして期待されています。

スマートシティの議論は、都市のデータ基盤やセンシング、自動化といったテクノロジーと紐づく話として語られるケースが大半です。しかし私たちは、テクノロジーよりも、もっと根本的に大事だと考えているのは、「その街に住む、生活者一人ひとりの暮らし」です。いかに生活者の視点で都市をアップデートしていけるか、いかに生活者が主役の社会デザインを実現できるか──。そのビジョンを実行していくために、博報堂と三井物産はスマートシティ領域での事業開発で連携することを決めました。連携のテーマは「生活者ドリブン・スマートシティ」。博報堂が企業フィロソフィーとする生活者発想にもとづき、街に暮らす一人ひとりの生活をより良いものにしていくことを目指して、生活者のニーズや都市の社会課題に向き合い、個別の都市に応じたサービスを提供していきます。

我々「ミライの事業室」は、博報堂の新規事業開発専門組織として、“チーム企業型”の事業創造を方針に、産業の枠を超えた多様なパートナーと連携し、一企業では成し得ない大きな社会課題を解決することで未来の新しい生活を創造していくことを目指して活動しています。特に注力しているのがスマートシティ領域で、今年5月には「Smart Citizen Vision」プロジェクトも立ち上げ、多様なパートナーとともに共同研究や事業開発、実証実験などを進めています。

本日発表する「shibuya good pass」も、三井物産、渋谷区および渋谷未来デザイン、そしてさまざまな関係企業の皆さんと、大きな“チーム”として連携しながら構想を進めてきたものです。博報堂がこれまでに培ってきたクリエイティビティと生活者発想をフルに発揮して、それぞれの都市に生きる生活者の皆さんに本当に必要とされるサービスを生み出していきたいと考えています。

渋谷から日本全国へ、そしてグローバルへ
(三井物産 エネルギーソリューション本部 New Downstream事業部長 松本陽介氏)

三井物産は、低炭素・脱炭素化社会の実現に向け、2020年4月にエネルギーソリューション本部を新設しました。その新しい部署が中心となって、博報堂とともに「生活者ドリブン・スマートシティ」の実現を目指しています。

スマートシティ事業における三井物産の強みは「総合力」と「グローバルネットワーク」にあります。総合力とは、産業間の垣根を取り払い、多種多様なバックグラウンドをもつ人材とコミュニケートしながら、ともに価値を生み出していく力を意味します。グローバルネットワークとは、世界に価値を発信し、世界から価値を取り入れる双方向のコミュニケーションを可能にするネットワークのことです。

三井物産、博報堂のそれぞれの強みを掛け合わせて、テクノロジー視点ではなく生活者視点による創造的なまちづくり、すなわち「生活者ドリブン・スマートシティ」の実現に取り組んでいく中で、我々が目指す都市の姿を大きく3つ掲げています。「Livable City」(人が豊かに暮らせるまち)、「Sustainable City」(環境負荷をみんなで減らすまち)、「Creative City」(誰もが参加できる創造的なまち)です。これらのテーマのもと、モビリティ、エンターテインメント、ヘルスケア、サーキュラーエコノミー、教育など多様な分野で生活者のニーズに寄り添ったサービスを開発し、2025年までに国内複数都市での実装を目指します。さらにその後は、日本全国および海外の都市への展開を進めていきます。

その活動の第一弾となるのが渋谷エリアでの取り組みです。渋谷は世界でも有数の文化・トレンドの発信地で、スタートアップの活動が盛んであり、新たな都市像を発信するのに最適な街と考えています。渋谷区は「ちがいを ちからに 変える街」というビジョンを掲げていて、生活者一人ひとりの声を重視するその姿勢は、まさに「生活者ドリブン・スマートシティ」のビジョンとも深く共鳴するものであり、取り組みを旗揚げする地としてふさわしいと考えました。

多様なパートナーの皆さんと力を合わせながら、渋谷で新しい都市の形を生み出し、それを全国に、そしてグローバルに広げていきたいと思います。私たちの活動にご期待ください。

続いて、渋谷区の一般社団法人渋谷未来デザインの久保田氏がご登壇。今回の構想における博報堂、三井物産との連携について、渋谷の視点からご説明いただきました。

力を合わせて渋谷の未来を創っていきたい
(渋谷未来デザイン プロジェクトデザイナー 久保田夏彦氏)

渋谷未来デザインは、渋谷の未来を創るプロジェクトを構想し推進していくために生まれたオープンイノベーションハブです。渋谷区のビジョンである「ちがいを ちからに 変える街」を実現するために、行政や民間を結びつけプロデュースしていくこと。それが私たちの役割です。

私たちは今年、会員企業の皆さまとともに「スマートシティシブヤ」というプロジェクトを立ち上げました。渋谷区の基本構想の実現に向けて、都市サービスのDXを推進し、スタートアップ間のエコシステムを実現することなどがこのプロジェクトの目標で、渋谷らしいスマートシティの実現にむけて活動を進めています。博報堂と三井物産の「生活者ドリブン・スマートシティ」構想は、渋谷区のビジョン、そして私たちの活動の目標とまさに合致した取り組みであると共感します。渋谷における「生活者ドリブン・スマートシティ」を推進するパートナーとして、今後いっそう連携を深め、渋谷区の社会課題解決に貢献し、よりよい渋谷の未来をともに創り出していきたいと考えています。

ここからは、生活者ドリブン・スマートシティのコアサービスとなる「shibuya good pass」についての発表です。博報堂の大家がサービス全体の概要をご紹介したあと、第一弾となる連携サービス「shibuya good ride」の詳細が、三井物産の生澤氏とWILLERの村瀬社長から発表されました。

みんなでつくる、goodな渋谷 誰もが街づくりに参加できるサービス「shibuya good pass」の概要
(博報堂 ミライの事業室 ビジネスデザインディレクター 大家雅広)

よりよい社会の実現のためには、産、官、学、民の各セクターがビジョンを共有し、協働できる仕組みをつくることが必要です。また、都市に生きる生活者一人ひとりが楽しく、かつ積極的に街づくりに参加できる仕組みも不可欠です。

今回、私たちが開発した「shibuya good pass」は、行政、企業、生活者が力を合わせてよりよい渋谷の街をつくっていくことを実現するサービスです。サービスのキーメッセージは、「みんなでつくる、goodな渋谷」。スマートフォンで利用できるデジタルアプリサービスとして、2021年春よりベータ版の提供を始め、2021年中の本サービス開始を目指しています。

登録は無料で、月額基本料をお支払いいただくことで多様な機能を利用することができるのがこのサービスの基本的なモデルです。渋谷で展開されるいろいろな活動やプロジェクトに参加したり応援したりすることができるほか、渋谷エリアでの暮らしが便利になるさまざまな提携サービスを利用することができます。提携サービスは今後続々と増えていく予定ですが、すべてのサービスに共通するのは、「ソーシャルグッド」であること。渋谷に住む人や渋谷に通っている人、みんなにとっても自分にとってもgoodなサービスにしたいと思っています。

本格的なサービス展開に先んじて、今年度からいくつかの連携サービスや市民参加型活動の実証実験を行っていきます。まずは、博報堂が毎年行っている全国規模の定量調査を活用して、スマートシティに対する生活者ニーズを都市ごとに分析し、渋谷エリアに特徴的なニーズを把握します。また市民参加型の活動として、スペインのバルセロナで開発された市民の声をまちづくりに反映させるためのオープンプラットフォーム“decidim”を活用した実証実験を「shibuya good opinion」と題して実施し、「shibuya good pass」で展開予定のサービスへの意見や、都市に対するニーズの把握に活用していきます。さらに、「shibuya good idea fund」という、さまざまな市民活動や企業活動と連携して地域の活動を応援するクラウドファンディングの取り組みも行っていきます。 

こういったサービスを利用したり活動に参加したりしていくと、アプリに“good score”が加算されていきます。自分の行動が可視化され、一人ひとりの声や行動で実際に街がアップデートされていく様子を実感することができます。 

サービスのリリースを楽しみにしていてください。 

新しい地域交通の形を実現する「shibuya good ride」
(三井物産 エネルギーソリューション本部 New Downstream事業部 新事業開発室長 生澤一哲氏)

「shibuya good pass」の連携サービスの第一弾が、新しいオンデマンドモビリティサービス「shibuya good ride by WILLER mobi」です。

現在、全国各地でデータを活用して地域の交通を最適化し、社会コスト削減、渋滞緩和、環境改善などを実現しようとする動きが進んでいます。渋谷は比較的交通の利便性が高い街ですが、いくつかの課題もあります。街のバリアフリー化の遅れ、駅における乗り換えの煩雑さ、地域内における移動の不便さなどです。

「shibuya good ride」は、そういった渋谷エリアにおける移動の課題を解決するモビリティサービスです。サービスのポイントは、「好きな時に、好きな所へ」「目的に応じたクルマを」「月額利用で乗り放題」の3つ。アプリで車両を呼び出すと、好きな時間に好きな目的地まで移動でき、移動の目的に応じて車の大きさや種類を選ぶことも可能で、月額固定料金で何度でも利用できます。

実際にどのような人がどのようなニーズで移動しているかを継続的に把握できるのもこのサービスの特徴です。多くの人が使えば使うほど、そのニーズを汲み取って走行ルートやサービスが最適化されていきます。交通事業者から一方的に提供されるのではなく、地域に暮らす人々の共創によってブラッシュアップされていくモビリティサービス。それが「shibuya good ride」です。

サービスのコンセプトは「コミュニティモビリティ」
(WILLER 代表取締役 村瀨茂高氏)

「shibuya good ride」は、WILLERが開発したAIオンデマンド交通サービスを活用して提供されます。当サービスは、AIルーティングによる効率的な運行と需要の先読みができ、アプリによって検索、配車、決済が可能です。アプリで車両を呼び出してから10分程度での配車が可能で、約2kmの生活圏内をちょい乗りしながら自由に回遊することができます。

モビリティサービス開発において私たちが大切にしているコンセプトは「コミュニティモビリティ」です。地域に暮らす人々が移動手段を共有することで、移動時間やコストを最適化できると考えています。「shibuya good ride」は、渋谷におけるコミュニティモビリティサービスとして、自宅からの近距離生活圏内の移動のあり方を大きく変えるはずです。外出のストレスがなくなり、商業施設や商店への来客が増え、地域経済が活性化する。その結果、地域の絆がより深まる、そんなコミュニティモビリティを提供したいと思っています。2020年度中に実証実験を行い、21年春に本格的にサービスを開始する予定です。どうぞご期待ください。

発表会後の体験会では「shibuya good ride」の車両紹介やアプリ呼び出しのデモンストレーションが行われました。その後は渋谷の街でのテスト走行・試乗体験(3日間)も開催され、さまざまな方に新しいモビリティサービスを体感いただきました。
最後に、その他の連携サービスについて博報堂の喜田村が紹介しました。

「shibuya good pass」の多彩な展開
(博報堂 ミライの事業室 ビジネスデザインディレクター 喜田村夏希)

「shibuya good pass」では、オンデマンドモビリティのほかにも、エネルギー、農園、オフィス、教育、スポーツ、カートなど多様な都市サービスを提供していきます。すべてのサービスに共通するのは「渋谷エリアの社会課題の解決に寄与する」ことです。便利で楽しいことはもちろん、使うことによって渋谷の街をよりよくしていくことができる、そんなオリジナルのサービス開発を目指しています。その中からいくつかの構想中のサービスをご紹介します。

「shibuya good farm」
IoTセンサーで作物の状態を確認しながら、会員同士で協力し合い野菜を育てる会員制都市農園サービスです。育てた野菜を使った料理を近隣のレストランで楽しむこともできます。渋谷区のスタートアップ、plantioと共同で開発を進めています。

「shibuya good office」
密を避けながら、好きなオフィスを好きな時に選んで働ける会員制オフィスサービスです。渋谷区や港区でオフィス事業を展開するrealgateとの共創で実現します。

「shibuya good energy」
環境にやさしい再生可能エネルギーを提供するサービスです。その料金の一部は地域の社会活動などに還元されます。地域単位での電力の共同購入をサポートする、リバースオークションにも取り組みます。三井物産がCO2フリー電力を供給します。

「shibuya good education」
「shibuya good pass」に集まった区民の声やデータを教育にも活用し、子供たちのアイデアで街の未来の設計図を創っていきます。街を学舎として、子どもたちの未来を生きる力を育んでいきます。

「shibuya good cart」
渋谷区民の20%以上は高齢者です。あらゆる世代の人々が自分らしく、生涯にわたり元気に暮らせるためのサービスとして、スズキが開発した乗車も歩行もできる可変電動アシストカート「KUPO」を活用したパーソナルモビリティサービスも実施します。

「shibuya good cart」として活用予定のスズキ「KUPO」は、このあとの体験会で報道陣に初公開されました。

スズキ 次世代モビリティサービス本部 モビリティサービス企画部 グループ長 笠原智氏
人々が求めているのは、できる限り自分の足で歩きたい、そしていつまでも健康でいたいということ。『自分の足で歩くことを補助するモビリティ』として誕生したのがKUPOです。今後渋谷でKUPOのレンタルサービスや健康増進サービスの実証実験の検討をすすめ、未来のモビリティの姿を実現していきたいと考えています。

おわりに

これらの連携サービスは、今年度から順次実証実験をスタートさせていきます。また、ほかにもさまざまなサービスが現在構想中です。2021年内の本サービス提供に向けて、多くのパートナーのみなさんとともにサービスの具体化を進めていきます。
「shibuya good pass」にどうぞご期待ください。

>> shibuya good passについてのニュースリリース:https://www.hakuhodo.co.jp/news/newsrelease/86220/
>> shibuya good pass特設サイト:https://goodpass.app

■「生活者ドリブン・スマートシティ™(=生活者が主役のスマートシティ)」
博報堂と三井物産が共同で進める、生活者を中心としたまちづくり構想。テクノロジーが主役のスマートシティではなく、生活者が主役のスマートシティへ。生活者の「ありたい街」や「ありたい暮らし」を実現する新たな都市サービス、生活者が主体的に関わる創造的なまちづくりを通じて、次世代の持続可能なスマートシティモデルの実現を目指します。

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