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スマホの中から売り場まで。データ統合戦略のカギは「ID」にある! 【博報堂×ノイン対談】後編
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スマホの中から売り場まで。データ統合戦略のカギは「ID」にある! 【博報堂×ノイン対談】後編

今、化粧品業界に新風を巻き起こしているノイン株式会社。独自の化粧品ECプラットフォーム「NOIN(ノイン)」を擁し、2017年のサービス開始以来アプリは220万DL、Instagramは26万フォローを獲得。ECにおける化粧品販売の新しい可能性を切り拓きながら、消費者の行動データを基にしたメーカー支援を通じた業界全体の活性化と進展を目指しています。ノイン代表取締役の渡部賢氏、取締役COOの千葉久義氏に、博報堂の信川絵里、大澤裕が、化粧品業界の最新動向や課題、今後の展望などについて伺いました。
※前編はこちら

■IDマーケティングによる若者の解像度向上と新しい購買体験

信川
SNS(Instagram)でのファンの獲得後、ユーザーとのタッチポイントから得られるデータについてお伺いしたいです。
渡部
今の化粧品業界においてデータマーケティングはほとんど活用されていません。

たとえばある大手OEMの会社が新しい技術を開発しても、トレンドとは対極にあってなかなか需要がないといったケースもある。せっかくどの国にも引けを取らない素晴らしい製造技術があるのだから、我々のデータを活用することでよりイノベーティブな商材がつくれるのではないかなと考えています。実際にその企業は新商品ブランド企画を公募していて、僕らがパートナーとして選ばれたんです。僕らの持つ販売チャネルも魅力的だったのかもしれません。

大澤
業界が本当に転換期を迎えようとしているのを感じますね
渡部
僕らとしては、とにかく世界中から優れた化粧品を集めてくる、なければ開発する、という商品戦略をとっています。

ラグジュアリーブランドでもプチプラでも関係なく素晴らしい商品を取りそろえることで信頼が醸成され、「その中でも特にあなたにはこれを薦めたい」と言われれば、お客さんも買う気が起きるはず。

千葉
素晴らしい商品を取りそろえたうえで、コスメという領域に限られず、「美」つまり美しくなりたいというすべての人を、応援していきたいと考えています。
信川
データ活用の面で、ユーザー分析はどのあたりまで進められていますか。
千葉
データはまさに今詰めているところです。個人データもそうですが、アイテム自体のデータもまだ足りていませんね。ユーザーデータでいうと、年齢、エリア、肌の悩みの情報などをさらに充実させていければと考えています。僕らがやりたいことの一つに、リコメンドを正確にしたいというのがあります。あるタイミングでこういう商品を買った人に対して、一定の時間経過後にどんな商品が勧められるか。必ず傾向はあるはずなので、今後そこを詰めていきたいですね。

また、ノインで購入したお客さんに「#はじめてノイン」というハッシュタグをつけてTwitterもしくはInstagramで投稿してもらうという取り組みをしています。投稿後にDMで知らせてもらい、その方たちにはノインのアプリ上でポイント付与する。非常にアナログではありますが、そういう方法でノインとSNSのID統合を進めています。

信川
データ活用において、弊社は購買データ(POSデータ)などデータプラットフォームを活用した自社と競合の分析や、特定のターゲット・悩みを軸としたインサイト抽出を年間通して行っています。弊社のデータを扱うノウハウや視点と組み合わせたら、ターゲットのことがより立体的にわかりますよね。さらに新しい筋の良い仮説が生まれるかもしれないですね。

また私たちは、メディアのID活用による、外部メディアから自社オウンドまで一気通貫したIDマーケティングに挑戦しています。ノインIDを利用すれば、IDベースで顧客の属性情報(年齢、性別など)から購買まで一気通貫してトラッキングできます!ユーザーの解像度も格段に上がるでしょう。

そこから精度の高いターゲティングもできるので、今後はこのようなID活用をベースに、ノインと得意先の自社オウンドメディアを横断したデータマーケティングの設計ができればと思います。

大澤
データの面などでは、博報堂も不足している部分もあるので、お互いに補足していけるといいですよね。
信川
お互いのデータを活用しつつ、複眼的に分析・プランニングができればベストですね。

さらに、今後は売り場(リアル)のデータをどのように獲得、活用していくかも重要になるのではないでしょうか。弊社でも、サイネージを使ったオフラインデータの獲得や、売り場のリアルデータとオンラインの行動データを連携した施策に挑戦しており、実際にドラッグストアやスーパー、ポップアップストアで実証実験を進めています。

千葉
デジタルのデータに加えて、売場のデータをどのように連携していくかは、私たちも重要なミッションだと思います。

僕らはECプラットフォームではありますが、やりたいことは“本当に欲しい化粧品が当たり前に買える世界をつくること”です。化粧品が購入されている場はほぼリアルであり、ECがどれだけ進んでいてもリアルの重要性は揺るがない。ですからノインをプラットフォームとして、リアルにも持っていく考え方というのが、やりたいこととしては近いと思っています。

渡部
僕らのテクノロジーやデータを使って、検討の新しいUXをつくっていくというのが、今後の重要な戦略になってくると思います。コロナで店頭のテスターが使えなくなっている今、ますますお客さんは店頭で迷いたくはないはず。購入の寸前までをデジタル化し、さらには店頭でしか提供できない価値、体験をそれによって支えていく。ノインですべてを完結させなくてもいいと思っています。

■ノインと博報堂の新しい取り組みへ向けて

信川
今後、我々博報堂との協業の可能性という点で、美容業界に関わらずクライアント様のファーストステップの取り組みとしてどんなことが考えられるでしょうか。
千葉
自分たちのメディアで配信は行いませんが、クリエイティブをつくることは可能です。また若い人を対象にしたアンケートも得意分野です。ドラッグストアさんなら、食品、飲料、サプリなど美容以外の購買データもとれます。化粧品メーカーがアンケートをとろうとしても、10代、20代、どこどこに住んでいる女性…といったファネルになってしまい、そもそも化粧品に興味があるかすらもわかりませんが、我々のお客さんの場合は化粧品好きだということが間違いなくわかっている特性があります。
渡部
サンプル配布も非常に得意な分野です。ノインにはカスタマーに対して喜んでもらえるような商品体験を実現する配送組織があるので、アンケートをとりながら商品認知を進めるといったことも需要があるかと思います。
大澤
ありがとうございました。
今回のコロナの影響を受けて、マーケティングにおけるデジタル活用の重要性は急速に高まったと言えます。今までも求められていた内容ではあったのですが、緩やかに起こっていた変化のスピードが急速に上がっています。そのような変化に対応していく化粧品メーカーをこのような新しい取り組みで支援していければと思っています。
信川
ありがとうございます。
ぜひビューティー周辺領域で、ノインだからこそできるコミュニケーションの形を活かしながら、今後いろいろと取り組ませていただければと思います。

特に、ご紹介したように博報堂にはカテゴリーワークスという外部専門メディアとの協業の座組があります。前半パートでもお話したようなコンテンツ制作やターゲティング配信から、データ活用、そしてECとオフラインでの売りにつなげるまでの新しいマーケティングソリューションを一緒に開発していければと思っています。

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  • 渡部 賢
    渡部 賢
    ノイン株式会社 代表取締役CEO
    Naver Japan (現LINE)にてディレクション業務を行った後、グリーにてスマホ版GREE NEWSを立ち上げ、同サービスを数百万MAUに成長させる。その後、サービス開発のマネジメント、新規事業の企画/開発/提携業務/子会社の立ち上げを経験。2015年よりフリーランスのプロデューサーとして、上場企業など数社の新規サービスの立ち上げや運用などを行う。2016年11月に個人事業を法人化させたノイン(株)を設立。
  • 千葉 久義
    千葉 久義
    ノイン株式会社 取締役COO
    2011年電通に新卒入社、テレビ局にてメディアバイイング業務を行った後、2014年にGunosy入社。マーケティング責任者としてユーザー規模の拡大に貢献。2016年より執行役員として、KDDIとの共同事業である「ニュースパス」、女性向けアプリ「LUCRA」の立ち上げなどを行う。2017年より広告事業本部副本部長としてGunosyAdsの売上を伸長させる。同時に事業計画策定も行い、東証マザーズ上場、東証一部への市場変更を経験。2019年3月にノインに取締役として参画。
  • 博報堂 CMP推進局
    2016年博報堂入社。飲料・食品・トイレタリーなど諸分野での戦略立案、商品開発、コミュニケーション設計に従事したのち、マーケティングソリューション開発に携わる。また「博報堂キャリジョ研」のメンバーとして働く女性の生態やインサイトを研究している。
  • 博報堂 第三プラニング局
    教育系事業会社で経営企画・海外新規事業開発に従事したのち、2015年に博報堂入社。入社後は、化粧品を始めとした消費財からサービス業まで幅広い領域で全社戦略立案や統合型マーケティング戦略立案に取り組んでいる。