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デジタル広告市場が急成長する「ASEAN」における、博報堂DYグループのグローバルビジネスの取り組み
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デジタル広告市場が急成長する「ASEAN」における、博報堂DYグループのグローバルビジネスの取り組み

博報堂DYメディアパートナーズとデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC)は、海外デジタルメディアにおける企業のデータドリブンマーケティングを推進するため、両社が一体となってグローバルビジネスの一体運営に取り組んでいます。
特に、急成長するASEAN地域のデジタル広告市場に注力し、主要プラットフォーマーとの連携や、現地のデータドリブンマーケティングを支える基盤の整備などを進めています。
今回は、ASEAN地域の状況や、現地で両社が提供しているビジネス、今後の取り組みなどについて、DACグローバルビジネス本部の新田歩、中野貴光、内田あゆみと、現地で事業推進に当たる宮本彩香(タイ)、岡本英輔(インドネシア)に聞きました。

急成長するASEANでデジタルビジネスを支えるチーム
博報堂DYグループ一体でASEANのデジタル広告市場を攻める

新田
博報堂DYメディアパートナーズのグローバルビジネス局と、DACグローバルビジネス本部グローバルビジネスプランニング部のマネージャーを兼務している新田です。現在特に注力しているのがASEAN地域です。国内は50人強、海外はアジアを中心に約600人の体制で、DACの中国、台湾、タイ、インドネシア、シンガポールの拠点や、2019年7月に子会社化した韓国のデジタルエージェンシーeMFORCE、博報堂DYグループのデジタル広告会社アイレップのベトナムやインドネシア、米国の拠点と連携して動いています。

DACグローバルビジネス本部の機能は3つあります。1つめは海外拠点をサポートする機能で、DACの現地子会社の事業統括やデータ基盤の開発・支援に加え、博報堂DYグループの現地拠点と共同でクライアントへの提案支援などを行っています。2つめはクロスボーダー(越境)の広告取引を支援する機能で、訪日外国人向けのインバウンドビジネスや、日本企業がデジタルメディアで海外に広告配信する際のサポートなどをしています。3つめはアライアンス戦略を担当する機能で、海外の企業やテクノロジー等をリサーチして提携や国内導入などを図っています。

中野
海外拠点の案件を日本側から支援している中野です。私はもともとエンジニアで、システム領域やデータマーケティング領域に長年携わってきたので、クライアントのニーズに沿って新しいソリューションを開発する際、主にこの2つの領域からサポートを行っています。
内田
グローバルビジネス開発部の内田です。海外拠点のサポートがミッションですが、その中でもソリューション開発に重要な地元企業(主に媒体社などデータホルダー)との協業の推進が主な役割です。現在は、現地で活用しているDMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)の精度を高めるために、地元のパートナー企業を開拓して3rdパーティデータを拡充し、データマーケティングや広告配信の基盤整備を進めています。
新田
両社のグローバルビジネスを一体運営することになった背景は、市場の成長性が高く参入障壁が低いデジタル領域を起点に、DACの強みであるテクノロジーと現地で築き上げてきた関係値に、博報堂DYメディアパートナーズが国内で培ってきたナレッジや提案力を融合させてグローバルビジネスを加速させ、クライアント企業に対して最適な価値を提供することが大きな狙いです。またデジタルを起点としながらも、博報堂DYメディアパートナーズが持つコンテンツやメディアビジネスを海外展開することも視野に入れています。

多くの企業ニーズに対応すべく、ソリューションとして提供開始

新田
ASEAN地域では経済成長に伴ってデジタル広告市場も毎年二桁以上で伸びており、2023年には1.6倍の成長が見込まれています(2018年比)。また、ASEAN各国に韓国・台湾・香港・インドを加えた、日中以外のアジアのデジタル広告市場規模は2023年に1.63兆円になるとも言われています(日本のインターネット広告媒体費:2019年1.66兆円)(※1)。

(※1)出典:電通「2019年日本の広告費」

ASEAN地域では、生活が豊かになるとともにスマートフォンが爆発的に普及しました。パソコンは所有せず、スマートフォンのみという人が多いのは日本と大きく違うところです。
デジタル化が進むとデータドリブンマーケティングの取り組みも増え、クライアント自身が自社で保有する1stパーティデータの活用を模索する動きが、ここ2~3年で加速しています。その中で我々は、主にASEAN地域に拠点を置く日系の自動車メーカーや日用消費財メーカーとともにさまざまな取り組みを行っています。

中野
最近、顧客企業から「オフラインデータとオンラインデータを組み合わせたCDP(カスタマー・データ・プラットフォーム)を構築したい」とご相談いただくことが増えてきました。そこで自動車メーカーと取り組んだのが、ディーラーが店舗で取得したデータと、メーカーのブランドサイト等のデータを掛け合わせたCDPの構築です。また、広告コミュニケーションでの活用だけでなく、ディーラーでの販売にも活かせるような分析を行うことで施策の提案につなげています。
内田
例えば、ディーラーに来店して自動車の購入予約をした人が、その後に購入した場合としなかった場合にどのような違いがあったかをオンラインの行動データから分析したり、予約した人の特徴を分析してまだ予約していない人の中から予約しそうな人を見つけ出して、効果的な施策を実施して来店を促すようにしたりしています。
新田
自動車メーカーのオンラインでの広告コミュニケーションは、従来、行動ターゲティングやリターゲティングが主流でした。車名やメーカー名などを検索した人、つまりニーズが顕在化した人を見つける手法です。近年はデータ活用によって、これから検索しそうな潜在層に対してもアプローチできるようになりました。こうした知見やノウハウは、ダイレクト販売や日用消費財メーカーなど他の業界にも取り入れ、同様の取り組みを始めています。
中野
健康食品メーカーの場合、定期購入の増加に加え、定期購入品以外の商品も買ってもらいたいなどの課題があります。そのために、購入者のデータを分析して別の商品にも興味を持ちそうな人を見つけ出し、クロスセル(他商品の同時購入)につながる施策を行っています。
新田
こうした取り組みを個別の案件ベースで数多く実施してきたことで、知見が蓄積され、ロイヤルカスタマーを増やすためのさまざまな分析の切り口が見えてきました。そこで、多くのニーズに迅速に応えていくために、一連のサービスをソリューションとして開発・商品化し、2019年から提供を開始しました。
内田
DACでは2014年頃からASEAN地域でDMP構築を行ってきましたが、当初は、分析に使うにはデータの粒度が粗く、主な用途はアドネットワーク配信の際のターゲティングでした。そのため我々としては、DMPのデータの精度を高めることと同時に、日本で培ってきたデータ解析のノウハウを組み込む下準備から始めました。ノウハウを組み込むといっても、その作業は案件ごとにデータサイエンティストが手作業で行っており、人手と時間がかなりかかっていたため、この部分を汎用性のある形にソリューション化することで、マーケターが迅速に分析結果を参照できるようにしました。これまでに自動車メーカーを中心に、タイで5社、インドネシアで3社にご利用いただいています。
中野
このソリューションには、顧客になりそうな人を優先順位づけする「ヒートスコア」という機能があります。以前は案件ごとにデータサイエンティストが算出していましたが、今では機械学習を活用して自動化しています。このヒートスコアを基に、広告やCRMなどのコミュニケーションを行う優先度や施策内容を決定し、最適化されたマーケティングを実現できるようにしています。

タイ、インドネシアでも3rdパーティデータの拡充が進んでいる

内田
タイのDMPは、当初アドネットワークのデータを中心に収集していたことから、ユーザーのデータが細切れになりオンライン行動を追いきれないという課題がありました。ユーザー行動を細かく把握するには、アドネットワークベースではなく、ユーザーが閲覧している媒体社のコンテンツデータが重要になります。
この課題を解決するためにDACでは、2015年より、タイのプレミアム媒体とのデータ連携を推し進め、2016年に上位10数の媒体社とともにDMP「オンライン・プレミアム・パブリッシャー・アソシエーション(OPPA)」を構築しました。それにより非常に細かい粒度でユーザーの属性や興味関心をセグメント分けし、分析や広告配信に活用できるようになりました。信頼性のある媒体を集めたので、データは安心安全である点も強みだと思います。
DACが日本で開発・提供するDMP「AudienceOne®」(※2)は、約1,000の属性や興味関心のカテゴリーでデータを保有していますが、タイの「OPPA」も既に500以上のカテゴリーを有しており、自動車であればメーカー別、車種別、新車・中古車別など細分化して分析や配信が可能です。近い将来、「AudienceOne®」のように1,000を超えていくと思います。
宮本
「OPPA」の立ち上げから携わり、現在は現地でデータソリューション開発などを行っている宮本です。タイからの訪日者数は年々増えているので、「訪日セグメント」というのも新たに作りました。これらの興味関心データをクロスボーダー領域のコミュニケーションに活用できるようにしています。
内田
さまざまなデータを追うことでそのユーザーが来日前・来日中・来日後ということが分かるので、状況に応じて「次はここに行きましょう」といった情報を配信することもできます。
宮本
「OPPA」の中にタイ最大の口コミ・掲示板サイト「Pantip」があります。匿名では利用できず、自分の国民IDを登録しなければならないので不審な情報などを書くと特定され登録抹消される仕組みになっていて、書き込みには信頼性があるといえます。掲示板上には、「日本でここに行ったらこのお店でこれを買ってみて!」といった具合に、おすすめの観光情報が書かれているので、読んで参考にする人が非常に多いです。
新田
タイやインドネシアでは、GoogleやFacebookなどの大手プラットフォーマーの存在感が日本以上に増しています。ただ「ウォールドガーデン」と言われるようにそのデータはプラットフォーマーのエコシステム内での活用が前提になるため、OPPAのような現地媒体のデータを使うことで分析の幅や自由度が非常に上がっています。
岡本
インドネシアでDMP事業の立ち上げ等を担当している岡本です。インドネシアでは2015年、DACとASEAN地域最大の財閥SalimGroupで合弁会社PT Data Arts Xperience(DAX)を設立し、DACの「AudienceOne®」と同じ機能を持ったDMPをDAXが保有しています。SalimGroupは1万7,000店を超えるスーパーマーケットやコンビニ、自動車などのさまざまな企業があるので、各社が保有するデータをこのDMPに取り込んでいます。
現在は自動車メーカーが中心ですが、今後は食料や通信などのクライアントに対してもDMP活用やソリューション開発を行っていきたいと思っています。
新田
ASEANのデジタルメディア環境は日本と共通する部分も多く、これまで博報堂DYグループが日本で培ってきたナレッジや事例を大いに活用できる市場だと感じています。今後さらに、現地拠点を中心に博報堂・博報堂DYメディアパートナーズ・DAC間の連携を強めながら、ASEAN各国のクライアントにとって高付加価値で博報堂DYグループの独自性が高いデータドリブンマーケティングソリューションを開発・提供していきたいと考えています。

(※2)DAC が開発し提供している「AudienceOne®」は、月間 1 億以上のモバイル広告 ID、2 兆レコード以上の膨大データを保有し、そのデータを解析して高精度な 3rd パーティデータを提供する国内最大級のデータ・マネジメント・プラットフォーム(DMP)です。Web サイトの行動データや CRM、広告配信結果、パネルアンケート結果などさまざまなデータを統合し、分析/可視化、また豊富な連携チャネルを活用した“新規顧客の獲得”から“既存顧客への LTV 向上”までを一気通貫で実現する高度なマーケティング環境の提供を可能にします。

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  • 博報堂DYメディアパートナーズ 
    グローバルビジネス局ビジネス統括グループ ディレクター
    兼 デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム グローバルビジネス本部グローバルビジネスプランニング部 マネージャー
    外資系メディアエージェンシーを経て、2013年博報堂DYメディアパートナーズ入社。メディアプランニング業務に従事する一方で、博報堂DYグループのデータ基盤「生活者DMP」やテレビCM効果を最大化するソリューション「Atma」等の構築にも参画。2019年4月より現職、海外拠点やクロスボーダー広告出稿のプランニング支援、 ASEAN各国のデータマーケティングソリューション構築を推進。
  • デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム グローバルビジネス本部 ディレクター
    システムベンダーでシステムエンジニア、システムインフラに特化したベンチャーでITコンサルタントを経て、2009年博報堂DYインターソリューションズ(現デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム)入社。博報堂DYグループのナレッジツールのシステム開発やデータドリブンマーケティング基盤の構築を担当。2019年よりグローバルビジネス本部、現在はASEAN各国のデータマーケティングソリューション構築やCDP/DMP構築を推進。
  • デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム グローバルビジネス本部グローバルビジネス開発部 チームリーダー
    2011年デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム入社、国内媒体社向けのソリューション営業としてDMPを含むデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム自社開発のアドテクやパートナー企業の各種テクノロジー導入・運用コンサルに従事。2015 年よりグローバルビジネス本部で海外企業各社とのアライアンスを手掛け、現在はASEAN地域における事業開発・パートナー連携を担当し、海外拠点におけるデジタルデータマーケティングソリューション構築を推進。
  • I-DAC Bangkokデータソリューション部 マネージャー
    2014年デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム入社。グローバル本部(当時)でタイのDMP「OPPA」の立ち上げに携わった後、2018年よりデジタル・アドバタイジング・コンソーシアムのタイ拠点、I-DAC Bangkokに出向。現在「OPPA」の3rd パーティデータを活用した、オーディエンス分析等のデータソリューション提供や、データ関連のビジネス開発をすべく、I-DAC Bangkokにデータソリューション部を立ち上げ推進。
  • デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム グローバルビジネス本部 ディレクター
    兼 PT Data Arts Xperience(DAX) ディレクター
    ITコンサルティング会社にて4年間システムエンジニアを経験した後、2004年デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム入社。インターネット広告業務に関わる各種業務システムの開発プロジェクトに従事し、会計システム、プランニングシステム、進行管理システム、出稿量調査システム等を開発。2014年グローバルビジネス本部、2015年よりインドネシア財閥との合弁会社であるData Arts Xperience社へ出向しDMP事業の立ち上げを推進。