ヒット習慣予報 vol.110『気遣いセレクト』
こんにちは。ヒット習慣メーカーズの馬場です。
3月3日はひな祭りということで、我が家では小さなひな人形を飾っています。私の印象ですが、昔からある習慣のうち、ひな人形を飾るということは廃れずに実践する人が多い印象があります。残念ながら廃れていく習慣と、残り続ける習慣の差を紐解くとヒット習慣を生むヒントが見つかるかもしれません。
さて、今回は「気遣いセレクト」という新習慣を取り上げたいと思います。「気遣いセレクト」とは、日用品を選ぶ際に、「その製品を使う中で、周囲に迷惑をかけずにすむか」といった、自身の好みなどではなく、周りの人への気遣いを重視する習慣を指します。
例えば、イヤホンを購入する際に、音質やデザインだけでなく音漏れの少なさを重視するといった買い物は「気遣いセレクト」です。骨伝導イヤホンなどは、骨伝導させることで音を伝える効率を高め、周りに音が漏れることを極力減らすことができるため「気遣いセレクト」を捉えた商品といえます。Googleトレンドで「骨伝導」の検索ボリュームを見ると、近年右肩上がりで増加していますが、このことはまさに「気遣いセレクト」が広がりつつあることを示しているのではないでしょうか。
ほかにも、後ろではなく前に抱えやすいデザインのリュックサックが発売されていますが、これもリュックサックで通勤して、電車内でリュックの持ち方に気をつけている人が増えているという変化を捉えた商品です。また、広くは電子たばこなども、周囲に副流煙を広げないように選ばれているとすれば「気遣いセレクト」の一つといえるのではないかと思います。
なぜ「気遣いセレクト」が増えているのでしょうか。大きく2つの理由があるのではないかと考えています。1つ目の理由は、SNSなどが広がったことで、人々が日常生活で気になることを共有・共感しあうことが当たり前になったからです。もちろん、これまでもイヤホンの音漏れや電車の中でのマナーを気にしている人はいましたが、その声がネット上で見える化されたことで、意識的に気を遣う人が増えているのではないでしょうか。ネットニュースなどで、様々なマナーに関する記事が散見されるのも、こういった流れを示しているのではないかと思います。
2つ目の理由は、人間中心の商品設計が広がったことが挙げられます。視覚的なデザインや性能などでいかに競合よりも優れた商品を作るかが主眼に置かれるのではなく、利用者の目線に立って、いかに普段の生活の中で使いやすいかということを深く考えて商品が作られるようなケースが増えています。商品の多様化が進み、差別化が難しくなった結果、商品自体が生活者への「気遣い」を持つことが重要になっているのです。
最後に、「気遣いセレクト」のビジネスチャンスについて考えてみました。
「気遣いセレクト」のビジネスチャンスの例
■ 駅売店や自動販売機で売っている飲料をストローつきのペットボトルで販売し、電車内で飲みやすい設計にする。
■ 洗剤メーカーとたばこメーカーが喫煙所での臭い移りを気にする喫煙者に、電子たばこのフレーバーとにおいをブロックする洗剤をセットで販売する。
■ 服飾メーカーが足の臭いが消える靴下を発売する。
など。
マナーや気遣いは行き過ぎると息苦しくなる側面もありますが、「気遣いセレクト」が広がることで、お互いが気を張りすぎなくとも気を遣いあえる、過ごしやすい世の中に近づくといいなと思います。
▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。
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博報堂 マーケティングシステムコンサルティング局
ヒット習慣メーカーズ メンバー2016年 博報堂に入社。
入社以来、データ/デジタルマーケティングに従事。業務で培った知見を活かし、新たな習慣を生み出すべくヒット習慣メーカーズに参画。